Devils front line   作:白黒モンブラン

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―二人は奈落の囚人と相対する―

―再び奈落へと帰せ。さすれば道は開かれる―


Act118 Give sanctions Ⅴ

一発の銃声が曲の始まりを告げ耳に付けている通信機から、リヴァイアサンから曲が流れる。

流れている曲は代理人が気に入っている曲をHGの戦術人形 Spit-Fireがカバーしたもの。

名前を付けるとしたら「Spit trigger」とでも命名するべきだろうかと思いつつも、代理人は笑みを浮かべた。

何故ノーネイムが曲を流そうとしたのかその意図は分からない。だが流れてくる曲によって気分が高揚するのを感じられた。

 

「では参りましょうか…!」

 

一発の弾丸はタルタシアンが飛ばした鉄球によって相殺された。

代理人は左手でホルスターからDevilを引き抜きタルタシアンへと突撃。

遠距離での射撃が効果ないのなら接近するまで、怪力によって飛ばされる鉄球は危険だが避けれない訳ではない。彼から貰ったアミュレットハーツもご機嫌な様子で、そのおかげもあって重武装しているにも関わらず動きは非常に軽やかだ。

 

「!」

 

鉄球が飛ばされる。

しかし一直線な為、避けるのは容易だ。Devilを突き立て突進、そこから地面と鉄球の間を滑り込みタルタシアンとの距離を詰める。代理人に距離を詰められた事により、それを迎撃しようと片腕の鉄球を動かそうとする双頭の悪魔。力任せに彼女へと向かって横へ薙ぎ払われるが、それを見越していたのかスライディングの姿勢から地面を蹴り後方へと跳躍。回転しつつ身を宙へと投じそのままタルタシアンの二つの頭目掛けてDevilの引き金を引く。

銃声と共に二つの銃口から放たれた散弾が二つの頭を切り裂く。幾ら体格が大きく、幾ら怪力を有していても、幾ら痛みに強くても、頭を狙われたら悪魔でもたまったものではない。

 

「ォォォォ…」

 

しかしそれは"普通"の悪魔の場合に限った話であるが。

 

「ォォォォ!!」

 

「ッ!?」

 

頭に散弾を喰らったというのにタルタシアンは平然としていた。

その姿を見て代理人の中で恐怖が芽生える。

痛みそのものを感じていない。これが悪魔なのだと改めて認識すると恐怖は一段と大きくなる。

だからといってそれに負けている訳には行かない。攻撃を貰う前に代理人はその場から後退し、タルタシアンとの距離を取った。

距離を取り地へ着地した隙を突く様にタルタシアンは鉄球を投擲。

怪力によって飛ばされたそれは一直線に代理人へと向かって行く。不用意に距離を取ったのが間違いだったと悔い、何とかしてでも攻撃を割けようと体を動かす。だが間に合わない。鉄球がぶつかる寸前で目を伏せる代理人。その瞬間、上空から鉄球だけ狙った光線が飛来した。

代理人の目の前で質量のある鉄球が地面へと叩きつけられ土埃が舞い上がる。耳に付けている通信機に冷静な声が響く。

 

『やらせない…!』

 

両者の頭上を轟音を立て飛ぶ姿は、まるで唸り声を上げている様でありリヴァイアサンが駆け抜ける。一人でこの悪魔と戦っている訳ではないと認識した代理人は少しだけ安堵した。

背中は愛する娘に守ってもらえる。それがどれ程心強いものだろうか。

小さく笑みを見せると、代理人はデビルをホルスターに収め、シルヴァ・バレトを背を背負い、交代するかのようにニーゼル・レーゲンのスリング部分を掴んだ。

勢いをつけて背負っていたそれを取り出し、そのまま地面へと叩きつける。それに反応し、ニーゼル・レーゲンは変形開始。原型をとどめない驚異的な変形が一瞬にして行われる。

変形し、新たな姿へと変えたそれを手に大きく振るい、構える代理人。

六角柱の形をしたケースの姿はない。

 

「少し戦い方を変えてみましょうか」

 

備えられた二つの杭と大口径の砲は最早凶悪の一言に尽きる。

だが悪魔を討つ為。やり過ぎなどない。

ただ穿つ為、ただ粉砕する為。悪魔を討つ白銀の銃槍「カノーネ・ランツェ」がそこにあった。

地を踏みしめ、タルタシアンへと突撃。

飛ばされる鉄球。

素早く側転で回避しながらデビルを発射。その程度でタルタシアンが怯むわけがない。

それには代理人も理解していた。回避行動からの銃撃は布石に過ぎない。本命は手にしているカノーネ・ランツェだ。

腕を引き、槍を突き立て突進。その構えはブレイクの技「スティンガー」に酷似していた。

 

「はぁっ!」

 

移動距離こそは彼に敵わない。しかしその威力は劣る事はない。

放たれた強烈な突きがタルタシアンの腹部に突き刺さった。

流石のタルタシアンもその一撃には声を出さずにいられず、叫びにも似た声を出す。

強烈な痛みにもがき苦しむ双頭の悪魔に対し代理人は攻撃の手を止めない。

持ち手付近の引き金に指をかけられ、吹き飛ばされぬ様に地面に踏みしめるとカノーネ・ランツェの出力を最大出力モードへと移行させる。

レールガンの最大出力時と同じ様に右目が水色へと輝き、砲口から光が集約し始める。

撃鉄が起こされると同時にシリンダーが回転。槍の下では今か今かとヒート・パイルの杭が飛び出すのを待っていた。

振り払おうとするタルタシアン。それに対し焦る事無く代理人は告げた。

 

「吹き飛べ」

 

引き金が引かれる。

砲撃が内部で炸裂し、追い打ちをかける様にヒート・パイルの杭がその体を穿ち、成型炸裂弾を撃ちこまれる。

二つの攻撃が巨体のタルタシアンの内部を破壊し、あまりの威力にその巨体が吹き飛び、地面に叩きつけられたと同時に破砕音が響き土煙が舞い上がった。

最大出力での砲撃の反動が凄まじかったのか代理人は立っていた地点から大きく後方へと下がっていた。

散弾をもろともしないあの悪魔に一撃を叩きつけ、傷を負わせた事は大きい。完全な止めを刺そうとタルタシアンへと向かって行く代理人。上空ではリヴァイアサンのコックピットでノーネイムが見守っている。

その時、土煙が舞う中、呻きにも似た声が轟いた。

ゆらりと浮かぶ上がる影。舞っていた土煙が風で払われた時、代理人とノーネイムは驚愕の表情を浮かべる。

 

『まだ生きているとは…』

 

「そのようですね…」

 

カノーネ・ランツェの一撃をまともに受けたにも関わらず、体に大きな穴を開けられようとも立ち上がるタルタシアン。最後の足掻きなのか、その体からは内包している魔力の様なものを放ち禍々しいオーラが放たれていた。

それがある能力と似ていると思ったのか、タルタシアンのその姿を見て代理人は静かに呟く。

 

「まさかあれはデビルトリガー…?」

 

『…あれが出来るのは父とブレイクの筈では?』

 

「私もそう思っていましたけどね。これではレールガンの最大出力で仕留められるかどうか怪しく感じてきました」

 

厄介な状況になり、代理人とノーネイムは険しい表情を浮かべる。

まさか相手がデビルトリガーを発動させるとは思わなかったからだ。

倒さなければならない。しかし強力な攻撃にも耐える事が出来る力を発動させられてしまえば、吹き飛ばすl事も難しいだろう。

どうするべきかと頭を悩ませる代理人。耐久力が桁違いになったとしても方法はあると踏んだのだろう。

ノーネイムがリヴァイアサンのブースターを吹かせ、代理人の頭上を駆け抜けるとタルタシアンへと突撃した。

 

『ノーネイム!?何をするつもりですか!?』

 

「何をするもあれを倒すつもりだ」

 

代理人の叫ぶ様な声にも冷静に応答しつつ、ノーネイムは右主砲の砲口がタルタシアンの正面に来るように操縦。鉄球が飛ばされる前にタルタシアンを捕えると掬い上げる様に機首を空へと向けた。

砲口に突き刺さったタルタシアン。逃れようと暴れ、鉄球を飛ばすがノーネイムにそれが届く事はない。

青い瞳が砲身に突き刺さった悪魔を睨み、手元の引き金へと指がかけられる。

 

「長い砲身には…」

 

主砲の砲口が光は輝き出す。

まるでタルタシアンに死を知らせる様に。

 

「こういう使い方もあるッ!!」

 

零距離射撃。

砲口から勢いよく迸る光線がまるで天を貫く様な光の柱が夜空を駆け抜け、タルタシアンは吐き出された光の濁流へと飲み込まれる。

幾らデビルトリガー擬きの様なものを使った所で全てを塵へ変える威力に踏まえ、射程も地上から宇宙まで届くリヴァイアサンの主砲には意味を成さない。

襲い掛かる光にタルタシアンの体は段々と塵へと化し始める。最初は頭が吹き飛び、四肢が消し飛ぶ。そして最期は断末魔を上げる事すら許されず、タルタシアンは光の中で消失していった。

光の柱が静かに音を立てずに消えた時にはもう双頭の悪魔の姿はなかった。

この後にS10地区では突如として空へと向かって行く光の柱が目撃される事が相次いで起きるのだが、当の本人がそれを知る由もなかった。

 

代理人とノーネイムが基地前広場に現れた双頭の悪魔「タルタシアン」を無事撃破した一方で、基地内部では突撃部隊と人間の姿ではなく本来の姿を晒した悪魔達との熾烈な銃撃戦が繰り広げられていた。

突撃部隊は二手に分かれており、殲滅部隊と救出部隊に分かれている。

殲滅部隊に加わったAR小隊は目の前で起きている現象を言葉を失っていた。

 

「派手に行くゼェッ!!」

 

猛禽類が一度翼を羽ばたかせば電撃が迸り悪魔達を切り裂く。

 

「消え失せろ!」

 

白狼が生み出す金色の雷が悪魔達の頭上を落ち、跡形も残す事無く消失させる。

悪魔でありながら二体の魔獣による攻撃はエントランスホールに集まり敵対する悪魔達に反撃の隙を与えない。

 

「あの二匹だけで何とかなるんじゃない?M4」

 

「かも知れないけど…。兎に角、今は撃って、AR-15」

 

「分かってるわよ。…あっちもあの二匹に劣らず派手に戦ってるけど」

 

悪魔に銃撃を開始するAR-15はちらりとグリフォンとフードゥルと同じ様に派手に戦っている彼女を見た。

白いブランケットを揺らし、向かってくる悪魔を一体、また一体と銃撃で屠っていく95式の姿がそこにあった。首に下げているアミュレットハーツの恩恵もあり、その動きは機敏だ。

 

「ッ!」

 

正面から向かってくる悪魔に銃撃を浴びせている彼女の後方から別の悪魔が襲い掛かってくる。

それに気付いた95式は体を翻し攻撃を回避。背に背負っているショットガンを抜き取ると襲い掛かってきた悪魔の後ろへと回り込む。そのまま頭部へ散弾を叩きこむと、手慣れた手つきで片手でスピンコック。シェルが排莢され、次弾装填。倒した悪魔に続く様に向かってきた悪魔の口に銃口を突き刺す。

 

「遅いです」

 

悪魔の口内で散弾が放たれ、血飛沫と肉片が飛び散る。

その光景をAR-15と共に見ていたM4は引き攣った顔を見せる。

 

「やっぱり私達は要らなかったかも」

 

「…今更気付く?」

 

数を物ともしない二匹と一人であるが、殲滅部隊は銃撃を止めない。

相手は原始的な攻撃を仕掛けてくる為、倒すにはそう時間は掛からない。だがその分、数ではS10地区前線基地所属の部隊の上を行っている。

長期戦となれば弾薬が底をつき追い詰められるだろう。故に一刻も早く殲滅しなくてはならなかった。

最も彼女がこの場に来てしまえば上位種を除き下位種の悪魔の殲滅にはそう時間は掛かる事は無くなるのだが。

 

「!」

 

殲滅部隊に加わっていたグローザの正面から悪魔が複数向かってくる。

それに気付いた彼女が即座に銃口を向かってくる悪魔達へ向け連射。三体の内に二体は始末したが一体が迫る。鋭い爪が振り下ろされ、回避行動を取ろうと動き出すグローザ。

その時、横から銃声が響きグローザへと襲い掛かろうとしていた悪魔の頭が穿たれる。空いた穴から血を流しながら地面へ転がり落ちる悪魔。

 

「今のって…」

 

「よぉ、無事か」

 

声をした方向へ顔を向けるグローザ。そこに居たのは地下遺跡でボルヴェルクと激闘を繰り広げ、勝利を収めた処刑人だった。左手には12連装のリボルバー「アニマ」が握られており、先程の銃撃は処刑人のものだと察するグローザ。

先行した仲間の一人と合流出来た事に安堵しながらもグローザは未だ尚向かってくる悪魔へと銃を放ちながら、処刑人へと話しかける。

 

「暇なら手伝ってくれないかしら。結構しつこい相手みたいなのよ」

 

「お前を口説こうとする奴が居るのか。後でブレイクにお仕置きされるな」

 

冗談が言える程処刑人は疲弊していない。

群で向かってくる悪魔達を睨むと、速攻で終わらせる気で居るのか右腕を大きく天へ向かって突き出した。

 

「はああぁっ!」

 

その声と共にまるで爆発する様に広がる魔の波動。処刑人の背にはほんの一瞬だけ魔人が姿を見せる。

青いオーラを放つ処刑人の姿を見てグローザは驚愕の表情を浮かべる。

 

「貴女、それって…!」

 

「まぁそういう事さ。…どいてな、俺が一気にカタをつけてやる」

 

銃弾飛び交う中、ど真ん中へと向かって行く処刑人。

彼女が射線上に飛び出た事に全員が銃撃を止めてしまう。

 

「処刑人!何を考えてるの!?」

 

「うっせぇ。黙ってみてな、M4」

 

背負っているクイーンを取り出すと腰を下ろし、構える処刑人。背の魔人も居合の構えを取る。

発せられる魔力がクイーンの刀身に纏わり始め、周囲へと広がっていく。無数の悪魔が向かってきているにも関わらず処刑人は動かない。

蓄積されていく魔力はどんどん増えていき、しまいには彼女が立っている場所の床が少し沈むほど。

 

「ありったけを…」

 

処刑人が動き出す。

右足を軸に勢い良く回転。左足を動かし更に回転。

そしてクイーンの重量を反動に刀身を大きく薙ぎ払うと後ろの魔人もそれに合わせる様に刀を居合抜刀。

 

「ぶち込む!!」

 

あまりの膨大な量に空間を切り裂きかねない程の魔力を纏った斬撃がX字を描く様に重なって放たれた。

真っ直ぐ突き進んでいく斬撃は向かってくる悪魔達全員を切り裂き、そして消失。

あれほどいた敵は一瞬で消え失せ、その場には処刑人と殲滅部隊だけが残った。

まるでそれが全てが終わったかの様な静寂にエントランスホールは包まれるのだった。

 

 

処刑人の覚醒、ブレイクの無着地撃破、代理人、ノーネイムの二人による強力な悪魔の撃破。

そしてこの男は…ギルヴァは道中群がって現れる悪魔を討伐していきながら奥の部屋を目指していた。

奥の部屋から溢れ出る何かを感じ取っており、部屋の前まで来る彼はそっと中へと侵入した。

 

「…」

 

部屋自体はだいぶ広い造りとなっていた。

並べられた本棚の数々がまるで図書館を彷彿とさせる。そしてこの基地のリーダー格が座るであろう書斎にはローブ姿の誰かが立っていた。

ギルヴァが訪れた事に気付くと、その者はゆっくりと振り返った。

真っ白なローブに身を包み、フードを深く被っている事もあってどんな表情をしているのか知り様はない。

だが顔立ちは女性を思わせ、何処か微笑んでいる様にも見える。

まるで修道女の井出立ちであるが、手にしている大鎌が決して修道女ではないと示していた。

 

―あの鎌、ヘル共が持つ鎌に似てるが…。けどこんな悪魔見た事がないぞ

 

(お前でも知らない悪魔、か…)

 

蒼でも知らないとされる謎の悪魔。

手にした大鎌を軽々と振るい、臨戦態勢を整える。

いつでも来いと言わんばかりに構える悪魔。

それに返事する様にギルヴァはただ静かに無銘の鯉口を切った。




ごっちゃごっちゃだけど許せ…(震え)

お次はギルヴァ。敵である謎の悪魔はオリジナルです。

そろそろこの回もお開きにせんとな…。

そう言えば皆さんはイベントどうですか?
僕はパイソンを漸くお迎え出来て喜んでいます


では次回ノシ
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