Devils front line   作:白黒モンブラン

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―邂逅 発生 急行―


Act120-Extra Coffee time after hunting Ⅰ

「…どういう事なの?」

 

鉄血。

その言葉は自分達の世界でよく耳にする名。

それが何故別世界である此処でも聞く事になるのか、困惑するシーナ。

人々が行き交う小さな通り。通行人の邪魔にならない様に端により、指を顎に当て思考を巡らせる。

 

(別世界なのに鉄血の名前。となるとグリフィンも存在する?)

 

自分達の知る鉄血は今や人類の敵。

軽く観察していると例の喫茶店から出てくる客の姿もある。

もしこの世界でも鉄血が人類の敵となっているのであれば、店の名前にその様な名前を付けるだろうか。

同時に何故かシーナにはこの世界が荒廃しているとは思えず、逆にこの世界は人形はあれど、世界が荒廃と化す要因となった出来事はなく平和な世界ではないのかと思った。

 

「願うのであればそんな世界だといいんだけど…取り敢えず今は悪魔を追わないと」

 

しかしだ。

何の手掛かりも無いのにどうやって悪魔を追うのか。

予め言っておくが魔具は扱えど、シーナは純粋な人間である。ギルヴァやブレイク、内部骨格に魔の力が使わているノーネイム、デビルブリンガーを持つ処刑人の様に魔力を探知出来ない。ましてや地形すら把握していない状況だ。

この世界に逃げ込んだ悪魔がどんな行動をするかは分からないが、情報を得ない事には何も始まらない。

捜査の基本はまず足からとは言うが、どうしたものかと考え込む。

その時だった。その場から動かず考え込み、尚且つグリフィンの制服だったから余計に目立っていたのだろう。気付かぬ内にある人物が歩み寄り、シーナへと声をかけてきた。

 

「すいません、少しよろしいでしょうか」

 

「あ、はい。…え?」

 

声をかけてきた者を見てシーナは言葉を失う。

自分の知る者とは髪型こそは違えど、姿、声、顔と言い知っている者だったからだ。

 

「代理人…?」

 

何故ならそこに居たのは、あの"代理人"だったからだ。

その反応を見た時、声をかけてきた代理人が何かを確信した表情をしている事にシーナは気付く事はなかったが。

 

 

「どうぞ。そこへお掛けになって下さい」

 

「は、はい」

 

喫茶店 鉄血の店主たる代理人に声をかけられたシーナ。

後に店内へと案内され、言われるがままカウンターに腰掛けたのだが緊張が止まらない状態にあった。

 

(どうしよう…)

 

偶然にも店内に客はいなかった。

しかし別世界から来ましたなど言える筈がない。そんな事すれば完全に頭のとち狂った女としか見られないだろう。

だがシーナは知らない。ここ「喫茶 鉄血」は何度も世界の壁を超えてきた者達と邂逅を果たしている。

この辺りでは見ない顔だったからこそ、もしかしてと思った代理人が彼女に声をかけたのだが当然それを知る由もない。

 

「紹介が遅れました。私、ここ喫茶鉄血の店主を務めております。代理人と申します」

 

「あ、えっと…私はS10地区前線基地の指揮官、シーナ・ナギサと言います。あの、私は…!」

 

とち狂った女として見られても良い。せめて素性とここに来た理由を話さなくてはと思ったシーナに対し、代理人はそっと手を上げて制し、告げた。

 

「ご安心を。何度か世界の壁を超えてきた方たちを見てきましたので」

 

「えっ…ど、どういうこと?」

 

告げられた事にシーナは困惑を見せる。

自分と同じ様に世界の壁を越えてきた人たちが居る。理解は出来るが、驚きを隠せなかった。

 

「その話をしたい所ですが、まずは飲んで落ち着きましょう。見るからに混乱している様なので。…何になさいますか?」

 

経験している為か、手慣れている感が否めなかったシーナだがその案に乗る事にした。

確かに混乱はしている。

色んな事が起き過ぎている為、頭の中がオーバーヒートを起こしかけているのも事実。

だが自分達の通貨がこの世界に通用するかと思った時、それを察したのか代理人は代金について話した。

 

「代金に関してはご安心を。代金はそちらの世界の話を聞かせてもらえれば問題ないので」

 

代金もこちらの世界の話で良いと言われたのであれば、そうする他ない。

一端落ち着く為、メニューからアイスコーヒーを頼もうとした矢先。

備え付けのテレビから緊急速報ニュースが流れた。

 

『速報です。S09地区に繋がる道路橋にて謎の繭が出現したと近隣住民から通報がありました。謎の繭は行動を起こす事無く静寂を保っていますが、緊急事態である為現在警察、グリフィンが出動。一帯は封鎖され、既に民間人の避難は済んでいるようです。…今中継が繋がっているとの事です。現地の…』

 

画面が切り替わる。

恐らく上空から撮影されているのだろう。ヘリのローター音が響いている。

そして道路橋の奥の方には謎の繭が広がっていた。

まるでドーム状というべきか。そこまで巨大でもなく、光に反射している事もあって何処か美しかった。

 

「うわ…ホントに繭だ。一体あれは…?」

 

「私でも見当が付きませんよ、D。…シーナ?どうかされました?」

 

その声はシーナに届いていない。

オーバーヒートを起こしそうになっていた頭は冷たい水を上からかけられた様に熱暴走をストップさせており、それどころか混乱から一転。冷静な雰囲気を見せていた。

それは年若い少女が見せるものではない。余りの変貌ぶりに店主である代理人と隣にいたDと呼ばれた彼女も驚きを見せる程であった。

テレビに映る繭を見た時には既に彼女は血相を変えており、気付かぬ内に立ち上がっていた。

 

「あの道路橋ってここから遠い?」

 

「遠い訳ではありませんが、それなりに距離はあるかと。メインストリートを抜けた先にありますが…まさか知っているのですか?あの繭を」

 

「細かく話している時間はないけど、答えはYESだよ。それとごめんなさい…こっちの世界の話、そして()()()()()()()()()()()()()()()も後になるみたい」

 

そう言い残してシーナは店を飛び出し道路橋へと駆け出した。

代理人が彼女の名を呼び声が響くが、シーナは止まらなかった。

 

「急がないと…!」

 

責任を果たす為。ただそれだけの為に。

 

 

その頃、一台の車両が道を駆け抜けていた。

運転には代理人、その隣にはデビルブレイカーを外した処刑人。

 

「ラジオのおかけで見つかるとはな。んで?あとどれくらいだ?」

 

「近くまで来ていますよ。そこまで遠くはないようですね」

 

この世界に来る時に車など持ってきていない筈なのに、何故乗っているのか。

偶然にも二人は同じ場所に流れ着いていたのだが、最悪な事にそこは小規模テロ組織が拠点としている所であった。何やらグリフィンに襲撃など物騒なことを言っていた為、二人は構成員全員を背後から気絶させた後に組織が所有していた車を拝借し今に至るのである。

因みに気絶させた構成員は両手足を縄で縛り上げ、適当な所に転がしておいたとの事。

二人は知る由もないが、後にグリフィンの部隊が訪れ、既に壊滅していた様を見て驚いていたらしい。

猛スピードで道を駆け抜ける車両。すると処刑人が車窓を開き、身を外に出した。

その先に見えるのは道路橋。距離はあるが、悪魔の気配を処刑人は感じ取っていた。

 

「折角の異世界旅行なんだ。とっとと終わらせて観光に洒落込もうぜ」

 

「観光ですか。それもいいですね」

 

 

同時刻。

シーナ、代理人、処刑人が道路橋へと向かっている一方でノーネイムも悪魔が出現した道路橋へと急行していた。

テレビ、ラジオではなく彼女は普通に悪魔の気配を感じ取ったのだ。布に包んだジェラシー二丁を背負い颯爽と駆け抜ける姿につい見惚れる者も居るが、気にする事無く彼女はその先にある道路橋を見つめた。

 

「間に合うといいが…」

 

そう静かに呟きながらもノーネイムは現場へと向かう。

 

 

そしてこの二人も動き出していた。

 

「折角異世界だというのに急かせてくれるぜ。まぁ探す手間が省けたからそれはそれで良いがな」

 

赤いコート、そしてギターケースを背負った男。

何処から取り出したのか一台のバイクにまたがると、エンジンを唸らせる。

 

「んじゃ飛ばすぜ!」

 

スロットルを捻り彼はバイクを発進させるのだった。

 

 

「意外と早く見つかったか」

 

地区から少し離れた場所で日本刀を手にした彼はある方向を見つめながら呟いた。

風によって揺らめくコート。施された青い刺繡が特徴的だ。

 

「…急ぐとしよう」

 

彼の体が光に包まれる。

そして勢いよく光が周囲に放たれた時、そこに立っていたのは彼ではなく一体の青い悪魔だった。

膝を曲げ空へ向かって勢いよく跳躍。人間では到底届かない筈の高さまで飛びあがり、四枚の翼を広げるとその悪魔は大空を飛翔した。

向かう先はただ一つ。道路橋である。

 

 

役者は揃い始める。

この世界に招いた悪夢を終わらせるために。




前回の後書きでも言いましたが、いろいろ様作「喫茶鉄血」とのコラボです!

また道路橋ですが、イメージとしてはDMC5 「M01 Nero」にて出てきた橋と思って下さい。

ん?何で繭なのかって?悪魔じゃないのかって?
安心しなはれ、ちゃんと考えてあるから。

次回は異世界で悪魔とダンスと参ります。

ではノシ
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