道路橋に突如として現れた謎の繭。
それはギルヴァによってダメージを負ったヘル=マザーによるもの。
蒼の言っていた通り魔界に存在しない悪魔であり、その実は現代科学と魔術によって作り出された悪魔であり試作品。
予想以上のダメージを負った事と生命維持の為に魔力が暴走を引き起こした結果ドーム状の繭を展開したのだ。
当然その事を別世界からやってきたギルヴァ達は知る事はない。
眠る母を守る様に現れた門番、悪魔ヘル=チルドレン。そして繭へ行かせんと次々と生み出されし蟻の様な姿をした悪魔「ヘル=アーマイゼ」の群れに対しグリフィンの部隊、警察、鉄血の部隊は近づけさせんと迎撃していた。
「良い機会だわ!今までのストレスをこいつらにぶつけるッ!!」
「そんな事やってる場合か!!」
散発的ではあるが某何やらの会のせいでストレスマッハ。胃薬が常時手放せないFALがヘル=アーマイゼを丁度いいサンドバッグにすると言い出せば、MG部隊の部隊長であるMG5から怒号が飛ぶ。
状況から察する通り今そんな事をやっている場合ではない。
「大して固くはない。だが数が多いな」
「ああ。この数に加え、奥に居る門番も相手しなければならん。一筋縄ではいかんな」
槓桿を操作しながら呟くリー・エンフィールドとジェリコが冷静に状況を分析する。
しかしその表情は決して余裕と言えるものではなく、険しい表情であった。
持っている武器の弾が効かない訳ではない。一発で仕留めきれずとも何発か与えれば倒せる相手だ、
しかし数は多いのだ。何体倒しても減っている様子すら感じられない。
じわじわと追い詰められているのを誰もが感じられずにはいられなかった。このままでは弾薬がそこを尽きるのも時間の問題と言えた。
劣勢と言える中、赤い制服を着た一人の少女がこの道路橋の騒動を受けて出動していたグリフィンの特殊遊撃部隊の部隊長であるM4の横を駆け抜けていった。
「待って!!そっちは危ない!!」
黒髪を揺らし、ヘル=アーマイゼへと向かって行く少女にその声は届かない。
化け物が居るにも関わらず、怯える様な様子すら見せていない。
年若い少女の筈だ。だが向かって行く後ろ姿は最早歴戦の戦士そのものだと誰しもが思った。
最もシーナ・ナギサという女性は必要であれば必要とあれば銃を手に取って戦場に向かって行く様な人物である。
過去に一度だけ。本気キレた時は修羅の片鱗を見せた事もあった。
一体何が彼女をそこまでさせるのか。それは本人にしか分からぬ事であった。
「もう好きにはさせない…!!」
そのセリフと共に彼女は…異世界からやってきた少女 シーナ・ナギサは悪魔たちに向かって手を突き出した。
時計の針が動く様な音がその場で響き渡った瞬間、魔訶不思議な事が起きた。
妙な球体が現れ、複数のヘル=アーマイゼを包んだ瞬間、相手の動きがまるで"時間"が緩やかになった様に遅くなったのだ。
余りにも突然過ぎる現象に一部が目を見開き言葉を失い、一部が超常現象をやってのけたシーナを見つめる。
「もって一秒…。でもこれだと…!」
「いや、これで弾を当てやすくなった」
「! 今の声って…!」
シーナの後ろから響く声。
聞き慣れた声に驚く中、その者は現れた。
両手にガトリングガンを二門取り付けた武器を持っていながらも助走をつけて空高くへと跳躍。空中にも関わらず華麗なアクロバティックを見せつけこの場にいる者達の頭上を軽々と飛び越えると、その者はシーナの前へ着地。
白いコートを身に纏いながらも銀髪を揺らし、蒼い瞳が悪魔どもを睨みつける。どこか氷の様な雰囲気を漂わせ女性であれば誰もが羨むであろう体つきをした彼女の名をシーナは口にする。
「ノーネイム!」
「済まない。遅れた」
「嫉妬」の名を持つ多連装六銃身ガトリングガン「ジェラシー」を構えた瞬間、弾丸の嵐がヘル=アーマイゼの群れにに襲い掛かる。
高速回転する砲身が次々と吐き出される弾丸。貫かれ肉片と血飛沫をまき散らしながら死んでいく悪魔達。弾切れという概念がないのか、圧倒的な弾幕であれだけいた数を瞬く間に減らしていく。
だがそれでは決定打にはならない。次々と現れる蟻の悪魔。このままでは平行線を辿る一方だ。
誰でもいい。奥にいる門番と元凶に突撃する奴が欲しいと思われた時、後方からクラクションを鳴らしながら一台の車両が道路橋へと突っ込んできた。
「あわわっ!!?」
「真っ直ぐ突っ込んでくるとか何考えてんだ!!?」
横に飛び込み、車を回避する部隊の人形達。
迷う事無く突っ込み、シーナ達と部隊の傍で停車した車両に対し文句があがる中、助手席のドアが開き一人の人形が降りたった。この状況にも関わらず余裕そうな態度で処刑人は偶然にも近くにいた人形…この騒動に出動していた国際警察所属のハンターに話しかけた。
一瞬だけであったが、処刑人が少し悲しい表情を浮かべたのだがハンターがそれに気付く事はなかったが。
「ハグでもして欲しいか?でも悪いね、片腕でさ。ほら、あぶねぇからとっとと下がりなよ」
右腕の義手を繋ぐアタッチメント部分を指さした後、彼女はそのまま悪魔どもへ向かって歩き出した。
丈が短くフードが備わった黒いコートを羽織り、背には機械剣らしきもの。片腕にも関わらず向かって行く処刑人にハンターは止めようと叫ぶ。
「おい、正気か!?死ぬ気か!!?」
「大丈夫です」
「何がだいじょ…ぶ…だ、って、代理人!?」
運転席から降り立ち、重武装している代理人がハンターの傍に立つ。
そんな彼女を見て驚きの声を上げるハンターであったが、気にする事無く代理人はそのまま言葉を続ける。
「私も彼女も悪魔をぶちのめすのが趣味なので。好き勝手させればいいですよ」
「悪魔…?それよりもあいつを止めろ!片腕で何が出来る!!死ぬぞ!?」
その声が聞こえていたのだろう。
途中で足を止める処刑人。何処かうんざりした様な表情で後ろへと振り返った。
「片腕じゃなかったら良いんだな?んじゃ…」
右腕が腰に備えたホルダーに向かって勢いよく突き刺す様に下ろされる。
その先にあるのは、とある義手。
アタッチメントが紺色に染められた義手…対悪魔用戦闘義手 デビルブレイカーの一つである「ブリッツ」に接続され、電流が迸る。
「これで良いんだろ?」
両腕になった証拠を見せつけた後、処刑人は動き出す。
自身の後方にいたヘル=アーマイゼに向かって振り向きと同時に掌底を放ち、吹き飛ばす。
そして鉄骨の上部後方から奇襲をかけようとする別の個体に気付くとブリッツの電撃発生機構を展開。
相手が飛びあがったと同時に彼女も跳躍。相手もより高く飛び上がると、頭を掴み重力に従いつつ地面へ叩きつけたと同時に電撃を放つ。
低級悪魔程度なら一発で屠る事の出来る電撃。当然ヘル=アーマイゼも例外ではなく、強烈な電撃によって死に絶える。
展開したブリッツを元の姿へと戻し、彼女は周囲を見渡した後不敵な笑みを見せた。
背負っているクイーンの柄に手を伸ばし、引き抜く。
刀身の切っ先を地面に突き立て、処刑人は微かに笑みを浮かべた。
グリップを捻る。同時にクイーンが炎は吹き出しながら唸った。
「それじゃゴミ掃除の時間だ」
ヘル=アーマイゼ達に向かって突撃。クイーンを振い被りながら体を回転。それを利用して繰り出される横へと薙ぎ払う一撃が蟻の様な悪魔達を一閃し、蹴散らしていく。
数の差をものともせず大暴れする処刑人。そしてこの場に集まった謎の少女 シーナ、ノーネイム、代理人に後方にいる人形達から視線が向けられる。
しかしそんな事は知った事ではないとシーナは二人に指示を飛ばす。
「ノーネイム。このまま此処に居て。必要であれば援護。代理人は突撃して。但し奥には行かず、その場で暴れ回って。あとレールガンが出来るだけ使わない様に。あれは強力過ぎる」
「分かりました。…シーナ、これを」
「ん?」
代理人がシーナへと渡したのは自分達の世界でも愛用している銃 MP5とその弾倉。
乗ってきた車の中にあったものであるが、拳銃だけでは心許ない。
その場しのぎだが念の為と思って代理人が渡したのだ。
「うん、ありがとう」
お礼を述べながら渡されたMP5を手に取るシーナ。
隣にはノーネイムが並び立ち、そして指示通り代理人が突撃。
「ふっ…!」
待機形態であるニーゼル・レーゲンの持ち手を握り、スラスターを点火。正面にいたヘル=アーマイゼに接近し顔面目掛けて横にフルスイング。
ぐしゃりと鈍い音が響き渡り一体を吹き飛ばすとそのまま周囲から群がる悪魔を薙ぎ払う様に高速回転。
そこから回転の反動を生かして宙へ身を投じ、回転の同時にニーゼル・レーゲンを地面へ叩きつける。
叩きつけた事によって発せられる衝撃波に群がるヘル=アーマイゼは宙へ舞い上げられ、代理人はニーゼル・レーゲンを軽く蹴り上げる。次の瞬間、原形すら残さない変形が一瞬で行われ、銀色に輝くガンケースはいつの間にか銃槍形態「カノーネ・ランツェ」へと姿を変えた。
片足を軸にその場で勢いよく回転しながら一閃し、瞬時に悪魔達を消失させる。
「何なの、あれ…。M4の持つコンテナと似た武器じゃないの?」
「それどころか原形すら留めてないわよ…。どういう仕組みよ」
現実度外視の驚異的な変形が披露されて、どよめく人形達。
それを耳にしながらも、代理人は処刑人へと指示を飛ばした。
「ここは受け持ちます。貴女は奥へ!」
「了解。…ギルヴァやブレイクには悪いが俺が頂くぜ!」
クイーンを背に収め、繭がある奥へ駆け出す処刑人。
だが既にこの男は来ていた。
「…?バイクの音?」
特殊遊撃部隊のAR-15がそう呟いた。
何処から響くバイクの音。後方からではない。厳密に言えば、横から聞こえてくる。
シーナ、ノーネイム以外の者達が辺り見回した時、どうやって道路橋の高さまで飛びあがったのか、赤いコートの男…ブレイクがバイクにまたがって、彼女達の前に現れた。
「イヤッホ―!!イェア!」
おまけにテンションが高い。大丈夫か、こいつと言いたくなる程である。
車体を綺麗に地面へと着地させると、そのまま処刑人の後を追う様に突撃。
前を塞がるヘル=アーマイゼを次々と轢いた後、ブレイクは車体と共に跳躍。空中で一回転しつつ、ヴァーン・ズィニヒを分離、双剣状態へ変形させた。
「バイクが分離して…」
「剣になったぁ!?」
先程の驚異的な変形といい、今度はバイクが双剣へ変形。
もはや何でもありとも言え、人形達からすればツッコミどころ満載である。
「うちってホント現実度外視の武器が多いよね…」
「まぁ…今更の事だと思うが」
そんな中、驚異的な変形をするガンケースといい、双剣へと変形するバイクといい…自分達の持つ武器がどれだけぶっ飛んでいるのか、今更ながらしみじみと思うシーナに対しノーネイムは冷静に答えるのだった。
「よっと!」
双剣へ変形したヴァーン・ズィニヒを群がる悪魔に向け叩きつけるブレイク。
回転するホイールから刃が出現し、相手を斬り刻む。
再度宙へ身を投じると自身も回転しながら空中で襲い掛かってくる悪魔達を吹き飛ばす。そして最後はバイク形態へと戻しながら着地し繭の方へと突撃。
処刑人と合流すると、バイクから降り立ち余裕のある笑みを浮かべながら話しかけた。
「パーティー会場はここであってるかい?招待状は持ってねぇが」
「安心しろって。招待状は無くても飛び入り参加枠という事にしといてやるよ」
「そいつはありがたい話だ」
繭の前で立ちふさがる門番、ヘル=チルドレンの方を見るブレイク。ギターケースから愛剣「リベリオン」を抜き取り、背へと背負う。
もう一人が来ていない中、二人は門番へと立ち向かった。
一方、後方では既に悪魔達は既に殲滅されており、戦闘も段々と落ち着きつつあった。
しかし油断は出来ない。奥にある繭と門番が仕留められるまで戦いは終わっていない。
シーナ、ノーネイム、代理人は静かに見守っており、この騒動に駆けつけてきた人形達も静かに見守っていた時だった。繭へと向かって空飛ぶ青い何かが現れた。
一人がよく目を凝らして見ると、いたのは四枚の羽を広げ、正しく"悪魔"と呼ぶに相応しい何か。
あれは何なのか、どよめく中シーナとノーネイムは確信し、代理人はそれへ投げかける様に呟いた。
「遅いですよ、ギルヴァ」
今、この時をもって役者は揃った。
門番であるヘル=チルドレンはブレイクと処刑人が近づいてきた事を察知すると、その巨体に似合わない速さで二人へと突撃。
リベリオンを、クイーンを手に取る二人。しかしヘル=チルドレンが二人に到達する前に空から降ってきた何かよって日本刀で頭から股下を一閃。呆気も無くヘル=チルドレンは門番の役目を終えてしまう事となった。
折角の相手をこうあっけなく倒され、不満を感じたブレイクは魔人化と解除し無銘の刀身を鞘へと納めるギルヴァへと抗議する。
「おいおい、せっかくの出迎えだぜ?楽しみってのが無いのかよ」
「下らん。俺達の問題を何の関係もない世界に持ち込んだのだ。楽しむ理由がどこにある」
「やれやれ、生真面目なことで。そう思わないか、処刑人?」
ブレイクにいきなり振られた事に、え、俺に振るの?みたいな顔をする処刑人。
下らんやり取りに付き合う気はないのか、ギルヴァは二人を置いて繭の中へと歩いていった。
彼が中に入っていった事で、二人も後を追い繭の中へと足を踏み入れる。
ドーム状となっている内部は陽の光が差し込んでおり、透明感があるのか神秘的であった。しかし繭が放つ魔の酷い臭いが漂っており、三人はここは見かけだけでその実はごみ溜めみたいな場所だと判断した。
「…居ない?」
この繭を発生させたはずの張本人がいない事に処刑人は疑問の声を上げる。
だがこの時点でギルヴァとブレイクは気付いていた。
この場にいない筈がなく、そいつは自分達を捉えていると。
そしてそれは今、襲い掛かってきている事も。
「「っ!!」」
「おわっ!?」
いち早くそれに気付いた二人は後ろに振り向きつつ処刑人の肩を掴むと自分達の後ろへと投げ飛ばし愛用している武器を抜刀、刀身でその攻撃を受け止めた。
受け止めた先にいたのはまるで大鎌をさらに巨大化させた何か。それは尾と一体化しておりこれが本体でない事は二人は既に見抜いている。
襲い掛かってきた尾を弾き返すとそれは怯んだように下がっていく。そして襲ってきた張本人が優雅に舞い降りながらその姿を見せた。
修道女が纏う様なローブを身に付けているが、それだけしか纏っていないのか下手をすれば女性特有の部分が見えてしまう程、露出している。
背に生えた六枚の羽だがその形はまる花の花びらを思わせ、優雅な佇まいからまるでそれは天の使いを彷彿させるが飽くまでもそれは見た目だけの話。中身は全く違う。
魔力の暴走により変貌したヘル=マザー…またの名をヘルズ=ヘブンが威嚇する様に三人へと甲高い叫び声を上げた。
「姿を変えたか」
姿を変貌させる前の姿を知っているからこそ、静かに呟くギルヴァ。
「てことは変える前は美人だった訳だ。一度お目にかかりたかったぜ」
それを隣で耳にし、吞気な事を言うブレイク。
「言ってる場合かよ。…どうやらあっちは俺達をダンスに誘いたいみたいだが?」
「品のないダンスなど興味ない。早々に斬り捨てる」
ヘルズ=ヘブンを睨みつけながら臨戦態勢に入るギルヴァ。
やれやれと肩を竦め、笑みを浮かべるブレイクだが彼もまたリベリオンの柄を握り直し、臨戦態勢へと入った。
そんな二人を見て処刑人は自分は要らないのではとつい思ってしまうが、どうせなら自分もダンスの相手をさせてもらおうと判断。
「んじゃ…踊ろうか!!」
その一声で三人は同時に動き出し、戦いの火蓋が切って落とされた。
「喰らいやがれッ!!」
一番に攻撃を開始したのは処刑人だった。
ヘルズ=ヘブンの頭へと目掛けて、クイーンの刃を振り下ろす。
相手の攻撃手段は大鎌と一体化した尾だけ。それ以外の手段はないと彼女は思った。
しかしそれが間違いだと気づかされるのはこの直後だった。
「っ!?」
ヘルズ=ヘブンの周囲から何処からともなく杭の様なものが現れ、それら全て処刑人へと向けられた。
攻撃を中断し、回避に転じようとする処刑人。
その時、どこからか放たれた斬撃が杭全てを一閃し射出を阻止。
天使の皮を被った悪魔の横からエアトリックを用いてギルヴァが接近し、無銘を抜刀。
首を狙った一撃は躱されるが、空中にも関わらず居合の態勢へと移行。
「ふん…!」
何時抜刀したのかすら分からない神速の抜刀。
それは空間すらも切り裂く為、距離を取っただけでは回避は困難。
連続して繰り出される次元斬がヘルズ=ヘブンに浴びせられ、仰け反らせる。
「aaaaaaaaa!!!」
悲鳴にも似た声を上げながら、狙いを処刑人からギルヴァへと変えるヘルズ=ヘブン。
尾を飛ばし、先端の大鎌を振るう。それを容易く受け止めるとギルヴァは無銘の柄を持つ手を力を入れる。
そして弧を描いた刀身を中ほどから一閃。あろう事か両断したのだ。
自慢の武器を破壊された事に、流石のヘルズ=ヘブンも目を見開き、それが隙となった。
「失礼するぜ」
吞気に挨拶しながら尾の上に降り立つブレイク。
尾の上に伝いながら彼は女体部分へと突進しながら、フォルテとアレグロを引き抜き連射。
マシンガンをすらも凌駕する連射。放たれる銃弾が嵐となって女体へ襲い掛かる。
銃弾の嵐に怯むヘルズ=ヘブンであったが、すぐさま態勢を立て直し杭を向かってくるブレイクへと連射。
その中を華麗にかわしながら、彼はリベリオンの柄を握ると女体へとリベリオンの刃を振り下ろした。
あれだけの攻撃を貰いながらも、まだ動けるのかヘルズ=ヘブンはそれを回避。刃は背の花びら部分を切り裂いただけに終わってしまい、暴れ出した事によってブレイクは振り落とされる。
その瞬間、ヘルズ=ヘブンは大鎌を破壊された尾で地面を叩きつけ、粉塵を巻き起こした。
内部を覆いつくす様な粉塵が三人の視界を奪う。その隙を狙ってヘルズ=ヘブンは繭から外へ逃走。
向かう先はシーナ達が居る方向である。
「逃がすかよッ!!」
しかしそれを見逃さなかった処刑人が義手に繋ぐためにアタッチメント下部に備えられたワイヤークローを射出させ、ヘルズ=ヘブンの体に突き刺すともう逃がすまいと後を追った。
先に出ていった処刑人を追う様にギルヴァとブレイクも急いでその後を追った。
飛ばしたワイヤークローで相手の体に飛び乗った処刑人はすぐさまブリッツの潜在能力を起動。
ガーベラの様な能力は持ち合わせていない。ブリッツに搭載されているのはもっと単純な能力。
それは義手を時限爆弾に変えるという能力だ。
空を舞い、組みついてきた敵を振り落とそうとするヘルズ=ヘブン。振り落とされない様に踏ん張る処刑人。
予想以上動きは早く、もう少しでシーナ達にいる所に到達してしまう。せめて手前で地面へと叩き落さなくてならない。
「こんの…はしゃぐんじゃねぇよッ!!」
右腕を振りかざして、ブリッツを無理矢理ヘルズ=ヘブンの体に突き刺す処刑人。
突き刺さったと同時に切り離され、赤く点滅し始めるブリッツ。
強烈な痛みに態勢を崩し地面へと墜落するヘルズ=ヘブン。処刑人は墜落した勢いで振り飛ばされ、人形達の方へ吹き飛び、地面へと叩きつけられる。
「処刑人!!」
代理人が彼女を叫ぶ。
地面に激突した痛みはある。近くにいた人形に補助してもらいつつ立ち上がり、処刑人は代理人へ伝える。
「代理人、ブリッツを狙撃しろ!!起動は済ませてある!」
「!」
起動は済ませてある。
それを聞いた瞬間、代理人はシルヴァ・バレトを構えた。
ゆっくりと立ち上がるヘルズ=ヘブンの体には赤く点滅しているブリッツが突き刺さっている。
息を止め、狙いを安定させる代理人。そして…
「爆ぜろ」
引き金を引いた。
まるで砲撃音の様な銃声と共に口径29mmという砲弾が放たれる。
狙いに一寸のぶれもない。まるで吸い込まれる様に、砲弾はブリッツに直撃した。
刹那、花を咲かせる様な爆発が上がった。ヘルズ=ヘブンを巻き込み、小規模の爆風が発生する。
そんな爆風にも動じず代理人はシルヴァ・バレトの槓桿を操作。薬室から薬莢が飛び出し、地面の上で跳ねる中彼女は目を見開いた。
「aaa…aaa…!!」
呻き声を発しながらヘルズ=ヘブンの姿を爆炎の中から這い出てくる。
あれほどの爆発を受けていながらまだ生きている事に、代理人は舌打ちする。
もう"あれ"を使うしかないと判断したのだろう。処刑人は新たな義手に接続せずアタッチメントを外した。すると彼女の右腕に悪魔の右腕「デビルブリンガー」が現れる。
悪魔の右腕にぎょっとする人形も居るが、そんな事を気にする暇もなく処刑人は突進。
拳を作り、右腕を大きく振りかぶった。渾身の一撃がヘルズ=ヘブンの顔面に叩き込まれた。
そして遅れてこの二人も攻撃に参加。
ヘルズ=ヘブンの後方からリベリオンを突き立て突進。そこから腕を高速で動かし突きの嵐をお見舞いするブレイク。
「吹っ飛びな!」
最後の一撃を放ち、ヘルズ=ヘブンをある方へ吹き飛ばすブレイク。
そこに居たのはシーナ達の前で魔力の渦を発生させるギルヴァの姿。腰をゆっくりと下ろしながら、居合の態勢を作る。
巻き込まれない様にシーナ達は下がっている。後は斬り捨てるのみ。
「失せろ」
ブレイクによって吹き飛ばされたヘルズ=ヘブンが間合いに入り、鯉口を切る音が響き渡る。
その瞬間ギルヴァの姿が消えたと同時に無数の斬撃が奔る。
人形達の目には景色がずれて見えていた。それもその筈で空間を切り裂いた無数の斬撃が放たれたのだ。
それはヘルズ=ヘブンが時間を止められたかの様に動きを停めてしまう技で、彼にしかできない技だ。
目も疑いたくなる様な超常現象に人形達が驚いている中、ギルヴァが姿を現す。
膝をつき、刀身を鞘へゆっくりと納めていく。刀身が殆ど納められ、一瞬の煌きを見せた後に鍔と鯉口がかち合い音が響く。
それと同時にヘルズ=ヘブンは跡形も残す事無く消失。断末魔も上げる事無くこの世から去っていった。
「…」
道路橋に静寂が訪れる。
まるで戦いが終わった事を知らせる様に。
奥にあったドーム状の繭も主が消えたと同時に静かに霧散していった。
悪魔の気配はない。シーナはそっと振り返る。
優しい笑みを浮かべ、彼女は人形達に一言。
「皆、ありがとう」
張りつめていた空気が消え去り、誰しもが胸をなでおろした。
しかしまだシーナ達にはやらねばならない仕事があった。
自分達の事を、そして悪魔の事を説明しなくてはならないという最後の仕事を。
書きたい事が多かったのでめちゃくちゃ長くなってもうた…許せ
取り敢えず道路橋に出現した悪魔の討伐は完了です。
色々キャラを出してしまいましたが…何か間違いがあれば言ってください。
次回でコラボ編ラストかな。さぁコーヒー飲むぞ、ぼのぼのするぞ。
一応出てきた悪魔をここで紹介をして置きます。(全部オリジナルです)
ヘルズ=ヘブン
:現代科学と魔術によって生み出された悪魔「ヘル=マザー」が魔力の暴走を引き起こした結果、変貌した姿。
神々しい雰囲気を漂わせながらも、その姿は悪魔といっても過言ではない。
ヘル=チルドレン
:ヘルズ=ヘブンによって召喚された悪魔。ヘル=マザーの時に召喚されたのと同一個体。母から生み出されし子供であるが、その姿を見るに子供とは言い難い。
巨漢で、頭部はガスマスクの様な形をしており、片腕が重火器と化している。
見かけによらず素早いのが特徴。
ヘル=アーマイゼ
:ヘルズ=ヘブンによって作り出された蟻の様な悪魔。
決して強くはないが、それを補う様に数で攻めてくる。