Devils front line   作:白黒モンブラン

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―狩りの後の一杯―


Act122-Extra Coffee time after hunting Ⅲ

残った仕事はとても大変だったが楽しかったとシーナは語る。

この世界では悪魔は存在しない。先程まで戦っていた敵の事をせめて今回の騒動に出動した組織に属する人形達に事情を説明する必要があったのだ。

当初こそは驚かれたりしたものの悪魔という存在をこの目にしたからには人形達もシーナの話を信じるほかなかった。

その事を指揮官に伝えるという者もいたが、それに対しシーナは待ったをかけた。

 

「言った所でかえって大丈夫かって心配されるだけだと思う。あれは…この世界に居ない筈だから。貴女達に教えたのは実際あれを見たから教えた。…それでも伝えるというのであれば止めはしない」

 

そう告げてから、シーナ達は自分達の素性を明かす事無く早々にその場を立ち去っていた。

立ち去る前に何者かと尋ねられた時彼女は簡潔に伝えた。

 

「…"この世界"じゃ多分存在しない人、かな」

 

誰しもが首を傾げる中、彼女の口から答えの意味が伝えられる事はなかった。

 

時刻は午後14時辺り。

道路橋での騒動、その場にいた人形達に説明した後、早々にその場から離れたシーナはギルヴァ達を連れてある店へと向かっていた。

路地を抜けて、小さな通りに出た一行。公園と対面する様に建った店を見て、代理人は何処か驚いた様に口にした。

 

「喫茶鉄血…。ここがそうなのですか、シーナ?」

 

「うん。皆と合流する前に訪れたの。それにこの喫茶店の店主さん、何度か私達みたいに異世界からやってきた人達と会った事があるみたい」

 

「それはまた…」

 

自分達の様な存在を何度も会ってきたと聞かされ、代理人は思わず顔を引き攣らせた。

処刑人も同じ様に顔を引き攣らせる一方で、ギルヴァ、ブレイク、ノーネイムは特に反応を示す事はなく、それどころか三人を置いて店へと向かっていこうとしていた。

 

「さぁーて…ストロベリーサンデーとかあれば良いんだが」

 

「私はコーヒーで充分だ」

 

「ギルヴァに似ちまってるな?良くもまぁあんな苦いもんが飲めるぜ」

 

「貴方が甘党過ぎるだけだ」

 

ノーネイムの返答に肩を竦めながらブレイクは店の扉に手をかける。そして扉を開けた時、中にいた客を見て彼は店内へ歩もうとした足をつい止めてしまった。

いたのは道路橋での騒動に出動した人形達。まさかここで再開を果たす事になるとは思わなかったのか、ブレイクは追い付いてきたシーナの方へ振り向き、苦笑交じりに尋ねる。

 

「店間違えたか?」

 

「そんな事無いよ!?」

 

店前でシーナのツッコミが炸裂した。

 

 

流石に店前で立ち尽くすのは迷惑になると思った矢先店主たるエージェントに素早く六人はカウンターの端へ案内された。

妙な六人として、情報は既にこの店にも行き渡っていたのだろう。

見覚えのある者達から視線が飛んでくる中、一通り自己紹介を終えた後甘、党な為ブレイクはパフェを、それ以外の五人は淹れたてのコーヒーを片手に寛いでいた。

そんな中、代理人は目の前に居る別世界の自分をちらりと見た。

この世界にも人形が存在し、ましてやグリフィン、鉄血が存在している事は道路橋での一件で分かっていたが、よもや自分を見るとは思ってもなかった。

暴走した自分。対するもう一人のは自分はここで喫茶店を経営している。どのような過去があるかは分からない。だが世界が違うとこうも歩んできた道は違うのだと感じていた。

こちらの世界の自分が淹れたてコーヒーを一口含む代理人。

苦味とほんのり感じられる甘味。そして風味を味わっている中、エージェントが彼女に尋ねてきた。

 

「どうですか、代理人()

 

「とても美味しいです。私もコーヒーを淹れますが、これには負けますね。流石です、エージェント()

 

「ありがとうございます」

 

顔、声、姿が同じな為、どっちが喋っているのか分からないといった表情を浮かべる人形達。

その一方で…

 

「そうだ…!カウンターに座る代理人に「彼女をください。幸せにしてみせます!」と伝えて許可を得られば…!」

 

「ちょっとこいつを止めて」

 

お互いに微笑み合う二人を見て、つい暴走しかけそうになったどこぞの対物ライフルの戦術人形が周りの人形に取り押さえられると言った事が店の端の方で起きていたが。

因みに二人を見分ける方法は一つ。髪型である。

異世界からやってきた代理人はシニヨンにしてまとめていた髪をほどき、ポニーテールにしている。本人曰く、自分らしさを表す為に行ったとの事だ。

 

「さて…約束通りこっちの事を話さないとね」

 

「ええ。その約束でしたね。…お聞きしても?」

 

「うん」

 

約束通り、シーナは自分達の世界の事や自らこの世界に来た理由、悪魔の事を話した。

こっそりとその話を聞いている者もいたが、シーナは気にする事無く全てを明かした。

世界に関しては世界の壁を越えてやってきた者達から聞いた中で同じ世界だと思われる要素があった為、エージェントは驚きはしなかった。

しかし人知れず悪魔が存在すると聞かされた時は驚きを覚えていた。

 

「人知れず存在する悪魔。そして悪魔の血を流しながらもそれを狩るお二人…。何だかとんでもない事になっている気がするのですが…」

 

「まぁそう思われても仕方ないかな。私だってギルヴァさんと会うまでは悪魔の事なんて全然知らなかったもの。それに悪魔と言われても、御伽話の中だけと思っていたから」

 

「そうなのですか…」

 

そこで会話が途切れる。

ちょうどその時、コーヒーを飲み終えた処刑人が口を開いた。

それは耐えかねたというべきだろうか。店に入った時、彼女はそれを感じていた。

 

「なぁ、少し良いか?」

 

「どうされました?」

 

「…さっきから腰に下げている義手に熱烈な視線を送っているあいつ、どうにかしてくれねぇか?」

 

親指を立て小さく後ろを差す処刑人。

その先にいたのは偶然にも休憩に来ていたアーキテクト。

見たことのない義手という事もあって、何かが刺激されたのだろう。その視線は予備のデビルブレイカーを下げる用ホルダーに吊り下げてあったブリッツ、ガーベラ、トムボーイに向けられていた。

はぁ…とエージェントは小さくため息を付き、処刑人に提案する。

 

「何か一つだけで構いません。よろしければ見せてやってくれませんか」

 

「…了解」

 

このままずっと視線を向けられるのも処刑人にとて良くなかったのだろう。

ホルダーに下げていたブリッツを取り外すと、アーキテクトの方へ振り向く。

 

「好きに鑑賞しな。それと壊すなよ。んでもって弄るのもナシだ」

 

そう言ってブリッツを彼女へと投げ渡すと再び正面へと振り向く処刑人。

後ろでは興奮冷まらぬ様子でブリッツを多方面から見ていくアーキテクトの声が響いていた。

この後にアーキテクトと、そしてこの店の従業員であるマヌスクリプトと呼ばれる人形が休憩時間を利用してギルヴァ達の武器の鑑賞会が別室で行われたのは別の話。

流石に人の武器である為、壊さない、そして見るだけと決めた上で鑑賞が成されたとの事。

ただ無銘やリベリオン、クイーン、狩人、クイックシルバー関しては見せる事は許されなかった。当然と言えば当然である。

因みにであるが、ブレイクの愛銃であるフォルテ&アレグロを見た時は…

 

「純粋に美しい。そして芸術品。それ以外の言葉が出ない上にこの二丁を手掛けた人に是非会ってみたい」

 

といった感想が出たそうな。

 

 

ここに来ている客が今回の騒動に関わった人形達である為、ちょっとした交流会が行われる事となった。

ブレイクとシーナはグリフィンの人形達と、処刑人はハンター、AR-15と、代理人はエージェント、ノーネイムはここの従業員達と交流していた。

そんな中、ギルヴァだけは誰とも交流を取っていなかった。

コーヒーを飲み終えた後、彼は目を伏せてずっと考え事をしていた。

 

(…蒼でも知らない悪魔。一体何処の者が…)

 

―それが分かれば苦労しないと思うが?

 

(そうだな…)

 

魔界出身である蒼でも知らない悪魔。そしてその悪魔は人工的に作られたのではギルヴァは予想していた。

そのまま考えに没頭しようとした時、蒼が咎めた。

 

―折角の機会なんだぜ?こういう時ぐらいは楽しめよ

 

(…)

 

その必要はないと返答しようとした時、彼の傍にここの従業員の一人が声をかけてきた。

 

「あ、あのー…」

 

「む…」

 

伏せていた目を開き、声の主の方へ向くギルヴァ。

黒い髪に白い肌の少女。そして何よりも一部がとても大きかった。

 

―こいつはすげぇッ!!もはや絶滅危惧種レベルだ!魔界の女でもここまでデカくねぇぞ?!

 

やや興奮気味に語る蒼にギルヴァは心の内であるがため息をついた。

だがそれを表に出す事無く、彼は返答する。

 

「何だろうか?」

 

「え、えっと、その…おかわりどうですか?」

 

彼女…フォートレスが向く先にあるのは空になったマグカップ。

飲み終えてからというものの空になっていたまま。考え事に没頭していた為、頭を切り替えたいと思っていた事と美味しいコーヒーをもう一杯欲しいと思った彼は手元のマグカップを彼女へと差し出した。

 

「…貰おう。ブラックで頼む」

 

「は、はい!」

 

新しい一杯が注がれる。

良い豆を使っているのだろう。豆の良い香りが鼻腔をつく。

 

「お待たせしました」

 

「ああ」

 

新たに注がれたコーヒーが入ったマグカップを受け取るとギルヴァは魔力を用いて桜の形をした飾りを錬成し、対価としてそれをフォートレスへと渡した。

群青色に輝くそれを見て、不思議そうな表情を見せるフォートレス。それを見たギルヴァは告げた。

 

「淹れてくれた礼だ。好きに使え。…それとこいつはこの店の何処かに飾ればいい」

 

そう言って彼が渡したのは、群青色に輝きミニマムサイズの満開に咲いた桜の木だった。

かつて基地の跡地で亡くなった者達に献花として手向けたもの。それを部屋に飾る様に小さくしたものだ。

渡されたそれを見て綺麗…と呟くフォートレスに対しギルヴァは彼女が淹れてくれたコーヒーをただ静かにゆっくりと味わうのであった。

 

 

楽しい一時は過ぎ去り、別れの時がやってきた。

鑑賞会に貸していた武器は返され、ギルヴァ達は路地裏に来ていた。

そこには映されし異界の鏡が浮かんでおり、そこをくぐれば元の世界に帰る事となる。

見送りには喫茶店の従業員、今回の騒動に関わった者達が来ており、代表としてシーナは礼を言う。

 

「見送りまでしてくれるなんて…。美味しいコーヒーありがとうございました。…また来ますね」

 

「ええ。またお会いしましょう」

 

エージェントと握手を交わすシーナ。

色々あったが、この出来事は決して忘れる事は無い。奇跡があればここに訪れようと思いながらシーナは鏡の中へ消えていった。

それに続く様にブレイクとノーネイムが鏡の中へ飛び込んでいく。

残り三人となった時、処刑人がエージェントにある事を伝えた。

 

「ここの世界は色んな連中がいるって聞いた。その中には元の世界で死んだ奴がこの世界でのんびり暮らしている事もな。…もしこの世界に俺の身を案じて死んだ狩人が流れ着いたら伝えてくれ。…最期まで身を案じてくれてありがとうってな。…それとこいつはやるよ」

 

叶う事のない話と思っていたのだろう。

アーキテクトへの土産としてデビルブレイカーの一つ、ブリッツを置いていくと相手の返答を待つ事無く処刑人は鏡の中へ飛び込んでいった。

 

「皆様、本当ありがとうございました。…そしてエージェント()。貴女に良い出会いがある事を願っていますわ」

 

こんな自分が今や妻となったのだ。

この世界の自分も幸せになって欲しいと願った台詞。

処刑人と同じ様に彼女も返答を聞く事なく鏡の中へ消えていった。

そして最後の一人となったギルヴァ。

鏡の方へ向きながら、彼も別れの言葉を告げる。

 

「また会おう」

 

とても短い台詞。

しかし今のギルヴァにはそれだけが限界であった。

彼が鏡の中へ飛び込むと役目を終えた様に映されし異界の鏡は粒子となって消失。

かくして世界を跨ぐ悪夢は終わりを告げるのであった。




という訳でコラボはこれにて終了です!
いろいろ様、本当にありがとうございました。

お礼として…

・対悪魔用戦闘義手「ブリッツ」

・フォートレス用群青色の桜型ヘアアクセサリー

・店内用鑑賞物 群青色の桜の木(ミニマムサイズ)

を差し上げます。ご自由にお使いください!


また今回の話で代理人が二人いますので…こちらの世界の代理人はそのまま「代理人」と表記。そして喫茶店側の代理人は「エージェント」と表記させていただきました。

次回はどうするかな…。
もしかしたら更新遅れるかもです。ではノシ
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