Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――合流。そしていつかの時の約束


Act124 Sometime at that time

「マギーさーん!」

 

金庫内でマギー達が、とある悪魔が姿を変えたエンブレムを二つ発見し、金庫内にある銃器や物資などを箱出す作業が行われてから数十分後、聞き覚えのある声がマギーの名を呼びながら、近づいてきていた。

あちらでの作業が終えた。

マギーは手にしているエンブレムから視線を金庫の入口へと向けた。

 

「マギーさーん!終わったよー!」

 

満面の笑みを浮かべて、金庫へとやってきたのは9。

手を振りながら、マギーの元へと近寄る姿はまるで人懐っこい子犬の様だ。

その後ろからは、組織から抜き取った情報を収めた端末を手にした45が歩み寄ってくる。

 

「お疲れ様です。何か収穫はありましたか?」

 

二人に労いの声を掛けつつ、結果を尋ねる。

待ってましたと、45がウインクしながら笑みを浮かべた。

 

「大漁よ♪」

 

「それは嬉しいですね。報告を聞いても?」

 

了解と答えると45は端末を操作し、画面をマギーへと見せた。

そこに写されているのは、誰かが記した日記の内容であった。

何故これをと問う前に、45がある一文を指さした。

 

「!」

 

指さした部分を見た時、マギーの表情が一変する。

再度この名を目にする事になろうとは思わなかったからだ。

 

「どういう訳か過去に関わった人権保護団体過激派基地や例の後方支援基地の名が出てきたわ。こことどういう繋がりがあるのかは分からない」

 

過去に関わった組織と例の後方支援基地。

その二つともマギーは覚えている。

前者は人間に擬態した悪魔によるもの、後者は悪魔に魂を売った指揮官によるもの…。

既に消滅した筈のそれらが何故今になって浮かび上がるのか。

訝し気な表情を浮かべる彼女を見て、45は当たり前の反応だと思った。

彼女ですら、この二つの名を目に見るとは思ってもなかった。

 

「ただ聞いた事のない組織名が一つ。これの内容によると、潰した人権保護団体過激派とS11地区後方支援基地はそこと関わりがあった。そしてこの基地にある魔具や相手した一部の悪魔はそこからもたらされたみたい。おまけに過去に何度かここと商談している。かなりの数の人形を買い取ったそうね。一生楽して生きていける分の額が支払われてる」

 

「…その組織の名は?」

 

「神の代行者。これに聞き覚えは?」

 

「いいえ、初めて聞く名ですね」

 

神々の代行者。

この荒廃した世界でそんな名前を名乗ろうとしたのか。

最早頭が壊れているとしか言いようがない。

だがマギーの中で一つだけはっきりした事がある。

今回の一件はその組織によるものであり、ひいては悪魔を知っている組織である事を。

でなければ、内部骨格だけとなってしまい悪魔と化した彼女達を動かす事やギルヴァやブレイクの報告にあった一部の敵に説明が出来ないのだ。

 

(となると、あの時の奴らも?)

 

そこで、彼女は思い出す。

錬金術士による基地襲撃事件の際、突如として現れた中身の騎士たちの事を。

襲撃してきた彼女すらその存在を知らない様であったとギルヴァから聞いている。

調査を行った時には、遺体は何らかの理由で消えかけている状態だった為、手がかりが得られなかった。

しかしマギーにはその組織と中身のない騎士たちが何ら繋がりがないとは思えなかった。

ただ確実に言える事は一つ。

あれらは魔界にいる悪魔ではない。それだけは分かっていた。

 

(…一体どうなっているのでしょうか)

 

繋がりそうで繋がらない。

もどかしくて仕方ない。

つい癖で考え込んでしまう。

 

「少し良いでしょうか、指揮官代理」

 

思考の沼に自ら浸かろうとしたマギーを引き止めるかの様に声が響く。

声のした方を向くと、居たのは映されし異界の鏡が置いてある部屋で万が一に備えて周囲の警戒に当たっていたAR小隊の一人 AR-15。

彼女がここに居る。そして銃声が鳴り響いてはいない。

それは何を意味しているのかマギーに察しがついていた。

 

「…帰ってきましたか?皆が」

 

「はい。今しがた無事に」

 

AR-15の声も心なしか柔らかかった。

悪魔との戦いは想定しない事がよくある。ましてや今回は専門家に交えて指揮官までも異世界へと飛び込んでいった。

身を置かせてもらっている事もあるが、無事指揮官たちが帰還した事はAR-15にとっても素直に喜ばしい事であった。

 

「それともう一つ」

 

「ん?」

 

そしてこれは想定してない事であろうか。

AR-15も想定しておらず、起きた事を告げる。

 

「本部直属諜報部所長と名乗る者が接触してきました。団体で動いている模様で、一人は大鎌を持った少女、残り二人は…鉄血のハイエンドモデル。内一人は、以前基地を襲撃した錬金術士です」

 

喜びも束の間。

新たな問題が上がった事に対し、少しは時間を置いて欲しいものである。

しかし愚痴を言った所では何も始まらない。

不満を口にする事無く、マギーは尋ねる。

 

「その本部直属諜報部所長の名は?」

 

「ダレン・タリオンと名乗っていました」

 

「ダレン・タリオン…?」

 

先程45から聞いた組織の時の反応とは違い、何か聞き覚えのある名にマギーは眉を顰める。

名前の響きが、何処か自分の知る面倒な友人の名を似ていたのだ。

 

「AR-15。案内を頼めますか?そのダレンとやらに会ってみます」

 

「分かりました」

 

これは自分も赴かなくてはならない。

先行くAR-15の後を追いながらマギーは思い出す。魔界の中で流れたとある噂を。

情報収集能力がずば抜けており、一度その者に知られれば全て見通されていると思え。

戦闘は得意ではないが、それを補う様に戦略、魔術、罠等を行使する。

魔界の中では色んな意味で敵に回してはいけないと言われる程の悪魔が一体だけいる、と。

もしその者が自分の知る友人だとすれば、尚の事。

正体を確かめなければならない。

その思いを胸にマギーは映されし異界の鏡が置いてある部屋へ向かった。

 

 

「…」

 

「…」

 

場所は変わり、AR小隊の三人と共に異世界から帰還したシーナ達は接触を図ってきたダレンたちとにらみ合っていた。

ダレンとしてはこうなる事は予想していた事であった。

自分やルージュもそうであるが、鉄血のハイエンドモデルの二人を連れているのだ。いきなり銃を構えられても何らおかしい事ではない。

ピンク色の髪をした戦術人形が後方幕僚の役職に就くもう一人を連れて戻ってくるまでは、このままの状態が続く。流石のダレンもいきなり過ぎた、と後悔した。

接触を図る際にルージュの意見を採用すべきだったと。

 

(さて…どうしたものかのう)

 

何か話の切り口になる事は起きないだろうか。

とは言え、そんな事が都合よく起きるわけがない。

そう思った矢先であった。

 

「…お前はあの時の」

 

誰が言葉を発したのか。

その場にいた者達が声の主の方へ向く。

声の主はギルヴァであった。彼の視線は大鎌を持った少女 ルージュへと向けられていた。

姿は違う。だがデビルトリガーを使える様になった今、彼にとってはこの気配は忘れる筈もなかった。

 

「…生きていた事にも驚いているが、随分と様変わりした様だな」

 

覚えているだろうか。

ギルヴァがS10地区前線基地に訪れて間もない頃。

 

「そうですね…。あの時と比べるとかなり変わってしまいました」

 

「…喋れたのか」

 

彼がカフェで、旅をして間もない時に出会ったとある化け物…美と醜悪が混ざった化け物と戦った事があると心の内で言っていたのを。

 

「ええ」

 

今は人の姿をしている。

一目見れば誰しもが彼女の事を人間と呼ぶであろう。

 

「…そしてあの時はご迷惑をおかけしました」

 

しかしだ。

かつて出会ったその美と醜悪が混ざった化け物こそ、目の前にいる少女 ルージュである。

 

「…」

 

かつての自分の事を、そして自分を覚えていてくれた事がほんの少しだけ嬉しかったのか、ルージュはギルヴァへと歩み寄ると、彼の頬へと手を伸ばした。

彼女の手が彼の頬に触れ、赤い瞳が彼の目を見つめる。ギルヴァは抵抗しない。

 

「見ない内に成長されたようですね」

 

「…かも知れんな」

 

その返答を聞くと可愛らしい笑みを浮かべ、小首をかしげるルージュ。

 

「いつか…手合わせ願いますか?この姿になった私が何処まで貴方を相手に戦えるか知りたいので」

 

「…良いだろう」

 

そんな二人のやり取りに誰もが言葉を失った。

無論それはダレンも同じであった。

まさかルージュがギルヴァと関わりがあったなど思わなかったのだ。

 

(そう言えば…)

 

ふと思い出すは昔の記憶。

ついぞ忘れていたが、何故かこの時になってダレンは思い出していた。

拾って数か月経った時に、ルージュが言っていた事を。

 

(だいぶ前に言っておったの。この姿になったのも"彼"と戦ったからこそ得たのだと)

 

思い耽っている内にAR-15がマギーを連れてきた。

そしてマギーはダレンを見た瞬間、確信した様に言葉を発する

 

「やはりでしたか。この気配…貴女、ダンタリオンですね?」

 

「んぬ?」

 

いきなり自分の正体を当てられ、ダレンは声の主の方へ向く。

セミロングで金髪の女性。

グリフィンの制服を身に纏いながらも、腰には彼女の象徴とも言える工具入れが提げられている。

そんな彼女…マギー・ハリスンを見て、ついダレンも笑みを浮かべてしまう。

居たのは彼女にとって唯一友人と呼べる者。

まさか人間界で再会を果たす事になるとはダレンも予想だにしていなかった。

 

「まさかのう…。よもやお前さんとこうして"人"の姿をして再会果たす事になろうとは思わんかった。そう思わんか?マキャよ」

 

再会を果たした喜びを表情に現しながら、ダレンはマギーの目の前まで歩み寄る。

 

「それはお互い様でしょう?ダンタリオン」

 

それはマギーも同じだったのか。

彼女もまた嬉しそうな表情を見せていた。

再会の抱擁を交わす二人。

置いてけぼりになる外野。ルージュと面識があるギルヴァ、ダレンと呼ばれる人物がマギーと親交がある点からして敵ではない事は明らかであった。

そして残った最後の不安を処刑人が口にして尋ねる。

 

「んで?あの二人と行動しているという事はテメェらも敵じゃないという事で良いんだよな?」

 

彼女が向く先にいるのは錬金術士と侵入者の二人だ。

返答を待ちながらも処刑人は密かにコートの懐に左手を差し入れ、愛銃であるアニマのグリップに手を掛けた。

侵入者は兎も角、錬金術士に至っては基地を襲撃した過去がある。

そう言った点ではまだ気を緩める訳に行かなかった。

 

「処刑人、銃から手を離しなさい」

 

「代理人?」

 

相手からの返答を待つ中、代理人が処刑人にそう諭した。

流石というべきか。処刑人が密かに銃に手をかけていた事もお見通しであった。

 

「比較的好戦的な錬金術士が我々の前に姿を出してまで攻撃をしてこないのは理由があると良いでしょう」

 

「ふん、流石は代理人か。単純な理由に過ぎん…。私も切り捨てられたのでな」

 

鼻を鳴らし、錬金術士は自身の立場を告げた。

それを聞き、どこか驚いた様な表情を見せる代理人。

 

「貴女も…?」

 

「ああ。ついでに言うが、こいつもそうだぞ」

 

「侵入者まで…?」

 

錬金術士に加え、侵入者まで切り捨てられた事を聞き代理人と処刑人は驚きを感じらずにいた。

どのような理由があって仲間を切り捨てるのか。その意図が全く掴めなかった。

資材さえあれば幾らでも自分達の代わりなど造れる。

それでも切り捨てる理由、わざわざ戦力を減らす理由が二人には全く分からなかった。

ただ可能性が一つだけあった。S10地区前線基地側について、関わる様になった"それ"の可能性を、

 

「嫌な予感がするぜ。まさかとは言いたいがよ、あいつらも…?」

 

「否定は出来ませんね。向こうも悪魔の力を…」

 

今の技術に加える様に悪魔の力が加わればどうなるか。

悪魔の技術は全てを凌駕する。現存の技術など古臭く感じる程に。

代理人も処刑人にとってもそれは考えたくない事であった。

 

「取り敢えず…ダレンさんやルージュさん、そして二人は敵じゃないという事で良いのかな…?」

 

この空気を脱する為か。

シーナの台詞に、剣呑とした雰囲気は消え去るのであった。

 

 

 

シーナ達がダレンたちを連れていった後、ギルヴァは既に消え去った映されし異界の鏡が置いてあった部屋にいた。

マギー曰く映されし異界の鏡は気まぐれな性質を有するらしく役目を終えたら何処へと消え去る性質があるといった説明を受けた後、彼は部屋の壁に凭れ目を伏せて沈黙を保っていた。

そこに処刑人が現れ、彼の隣に近寄ると壁に背を預け凭れた。

 

「あちらの世界での別れの時…何故ブリッツを渡した?」

 

口を開くや否や、ギルヴァは処刑人の行動に対し尋ねた。

魔工職人が手掛けた義手という事だけあって、その性能は優れたものだ。

壊れやすいという難点を除けば強力な力となる。

だがあちらの、平和な世界ではブリッツの力は過剰とも言える。

そんな武器を渡すなど、平和を崩しかねない一端になると思い、彼はそう尋ねた。

 

「お前も知ってんだろ?あっちのアーキテクトが熱い視線送ってきたからだよ」

 

「それだけではあるまい。…試したな?」

 

「…まぁな」

 

向こうの窓から見せる空を見つめ、問いに答える処刑人。

 

「あんだけ平和な世界ならブリッツなんぞ要らねぇさ。ただ…」

 

「ただ?」

 

「あっちにもこっちの力がどんだけやべぇ力か知ってほしかったのさ。好奇心旺盛なのは結構だが、それを人に向けて扱えるもんじゃないって事は分かってほしくて」

 

「…」

 

「まぁ、あっちのアーキテクトも察しは良さそうだしよ。あれを変な方に使う事はねぇだろうし、下手すればあれを手放すかもな。そん時は取りに行くさ」

 

信頼しているのか、小さく笑みを浮かべる処刑人。

すると彼女は別の話題へと切り替えてきた。

 

「そういやそっちもあっちの店員に、何か渡してたじゃねぇか」

 

「一杯目は無料とは言っていたが、二杯目は無料とは聞いてない。…あの者に渡したのは二杯目を淹れてくれた礼とその対価を受け取る者として渡したに過ぎん」

 

「ふーん…」

 

それ以上処刑人は問う事はしなかった。

訪れた沈黙は束の間、ギルヴァは処刑人に問う。

 

「…今度は二人で訪れるか」

 

「…そうだな」

 

ひっそりとであるが、今度あちらの世界に行く事があれば二人で行こうと約束する二人であった。




という事で合流&いつかその時の為に約束をするギルヴァと処刑人でした。
本来であれば、次回は緊急コラボ編へ行きたいのですが…ネタが決まり切っていないのと、緊急コラボに繋がる発端を描きたいと思い、先延ばしでございます。

いつかその時の約束ですが…。
主人公たるギルヴァは、二杯目を淹れてくれた彼女に何らかの危機が迫れば駆けつけるつもりでいたりします。
こちらの世界では「映されし異界の鏡」性質上はいつ、どのタイミングで現れても可笑しくない。故にいつでも別世界へと行けるようになったので…。


では次回ノシ
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