Devils front line   作:白黒モンブラン

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―さぁ第二ラウンドだ


Act127-Extra operation chase game Ⅱ

耳を防ぎたくなるような銃声が響き渡る。

襲撃側と防衛側による戦闘は開戦早々激化していた。

ただ基地の制圧は後回しにしているのか、偶然にもS10地区前線基地を襲撃してきた追跡者達は何故かギルヴァやブレイクを優先的に狙っている節が見られた。

何らかの情報を得ていたのか。あるいはS10地区前線基地だけに対しては近接戦を仕掛けてくる者を優先して狙う様にプログラミングされているのか。どちらせよ二人を狙っていた。

ガトリングガンを両手に装備した追跡者は人形を優先的に攻撃していたが、大盾、大型チェーンソーを装備した個体に限ってはギルヴァやブレイクの他、処刑人やルージュにも反応したのか二人も狙っていた。

 

「くたばりやがれッ!!」

 

処刑人がスロットルを捻ると推進剤噴射機構が唸る。

噴き出す炎によって斬撃が加速。大盾を両手に装備した追跡者へ目掛けてクイーンを振りかぶる。

だが反応速度は今まで見てきた鉄血の人形とは一線を画すのか追跡者は上手く処刑人の渾身の一撃を盾で弾いた。

勢いが付いていた事もあり弾き返された時の反動は凄まじく、態勢が崩れそうになる処刑人だが素早く体を後ろへ回転しつつ跳躍し距離を取った。

攻撃へと転じようとした時、処刑人は目を見開く。

 

「!」

 

彼女に迫るは大型チェーンソーを持った追跡者。

エンジン音唸りを上げ、高速回転する刃が処刑人を斬り刻もうとする。

着地した瞬間でもあった為、咄嗟の反応に遅れる彼女。右腕に装備している義手はトムボーイだった為、直ぐに回避行動へと移行できない。

そこに大鎌を持ったルージュが飛び出しチェーンソーを持った個体に飛び蹴りを叩きこみ着地。大鎌を振るい目の前にいた追跡者の体を盾ごと一閃。

上半身と下半身が分かれ、地面へと崩れる追跡者に目をくれる事もなく、ルージュは敵を睨む。

 

「すまねぇ!助かった!」

 

「お気になさらず。当然の事をしたまでです」

 

振り返りニッコリと微笑み返答するルージュ。

そして彼女は先程から感じている違和感について尋ねた。

 

「それよりも気付いてますか?ダミー部隊とはいえこいつら…」

 

「ああ。微かにだが魔の気配がある。これであっち(鉄血)も魔の技術を得たって事がはっきりしたぜ」

 

「そうですね…。さて、おしゃべりは此処までにしましょうか」

 

「だな。あいつらに負けれらんねぇよ!」

 

処刑人とルージュはちらりとある方向を見た後、襲い掛かってくる追跡者達へ駆け出す。

二人がちらりと見た方向。

そこにはチェーンソーを持った個体と盾を持った個体の群に囲まれながらもそのど真ん中で大立ち回りするギルヴァとブレイクの姿があった。

後方から挟撃しようしたチェーンソー型の突撃を躱すと二人は対角線上に居た盾持ちに向かって一閃。そこから体を翻して地面を蹴り移動。そのまますれ違うと飛び掛かってきたチェーンソー型に一撃を浴びせると同時に自身の後方にいた盾持ちへと向けて吹き飛ばす。

斬られて辛うじて息があった二体のダミーは勢いよく飛んで行き、吸い込まれる様に盾持ちに直撃し跳ね返り再び彼らの後方へ戻ってくる。

跳ね返ってきたそれを躱した同時にギルヴァは無銘の、ブレイクはリベリオンの刀身を突き立て突進。

お互いがスティンガーを放ち、中央で二体を吹き飛ばす。

そしてギルヴァが片足を軸にして回転しつつ無銘の刀身を薙ぎ払い、背中合わせとなったブレイクが頭を逸らしてそれを避けると愛銃のフォルテとアレグロを抜き取り敵へ向けて連射する。

 

「やれやれモテモテだな俺達!握手会でもやっておくかい?」

 

「一人でやっていろ!」

 

この状況にも関わらず吞気な事を言うブレイクに対しギルヴァがツッコミを入れる。

にも関わらず見事な連携を披露していく二人。

もはやこの戦闘は二人が暴れ回っている事もあって、追跡者達の数は次々と減らしていく。

 

「大立ち回りだな。接近戦だけあんなに減らしているとは。あの二人がいなかったらどうなっていたやらか」

 

「確かにね。ここの皆もそれなりに強い筈なんだけど今回は少し厄介だわ。ガトリングガンを両手に装備しているあれもそうだけど、ダミーにしては動きが良すぎるわ」

 

「ダミーの戦闘力は普通に侮れないと思うが?」

 

「普通のと比べたらの話よ。下手したらあんたらと渡り合えるんじゃないかしら?それに何故かしらね…あいつらを見ていると薄気味悪いのを感じて仕方ないのよ」

 

錬金術士がそう言葉にすると偶然にも隣にいたUMP45が険しい表情で追跡者達を見た時の正直な感想を漏らした。

悪魔が関わる案件を何度か経験した事もあったからこその台詞であったが、45の台詞は決して間違っていなかった。

ほんの少しであるが追跡者達には魔の技術が施されている。下手をすれば下級悪魔程度あれば難なく倒す事が出来る。

その恩恵もあって身体能力が向上しているのだ。でなければ重武装にも関わらず機敏に動く事はまず不可能であろう。

 

「やれやれとんだ場所に来てしまったな。生命保険でも掛けておくべきだったか」

 

軽く肩を竦め吞気な事を言いながら銃撃を続ける錬金術士。

その隣で45は新たな弾倉を差し込み敵へと構えるとニヤリと笑みを浮かべ彼女へ尋ねる。

 

「そんなものあると思ってる?」

 

「ハッ!思う訳ないだろう!」

 

身を出し、銃の引き金を引く二人。

それと同時に防衛側の弾幕はさらに激しくなる。

一方でRF部隊混じって代理人は正確な狙撃でシルヴァ・バレトを放っていた。砲撃音と共に29mmの砲弾が砲口からはじき出され、狙い定めたガトリングガン型をバラバラに吹き飛ばす。

槓桿を操作し排莢、装填。そして砲撃を続ける。

代理人の相棒として君臨しているシルヴァ・バレト(銀の弾丸)は魔の人形達に喰らい付いていく。

 

「全くでたらめも良い所ね、その銃は」

 

「今更何を。もう見慣れたでしょう?PzB39」

 

代理人で隣で狙撃していた彼女は呆れた表情を浮かべる。

黒い髪に赤い瞳。軍服を彷彿とさせる衣服。

そして長大な対戦車ライフルを放つのはRFの戦術人形 PzB39だ。

最近ここに所属した人形ではない。シーナが着任して暫く経った時に彼女は所属した。

 

「それでもよ。それを普通に操る貴女も相当だけど」

 

「それを言われたら反論できないのが辛いですね。それで?私の化物喰らい(シルヴァ・バレト)に怖じ気つきましたか?」

 

「まさか。大物喰らいに化物喰らい…中々に面白い組み合わせじゃない」

 

同時に二人が動き出す。

発砲から手早く槓桿を操作し排莢装填。

薬莢が地面を跳ね、二人の銃が火を噴く。

狙いは別々。そして吐き出された弾丸は敵を穿ち破壊する。

勝手にヒートアップした二人であるが、それに鼓舞されたのか周囲のRF部隊の命中率が上がっていく。

防衛側の強烈な攻撃により追跡者達は次々と倒れていく。

しかしギルヴァとブレイクは戦いながらもある違和感を感じていた。

 

「大口を叩いた割には呆気ねぇな。…何かあるな」

 

「ああ。こいつらからは微量の魔力を感じられる。策を講じているのは明白だろう」

 

基地を陥落させるには追跡者が放った重武装部隊『追跡者達』の数は少なく、開戦してから30分足らずで追跡者達は壊滅寸前まで追い詰められていた。

宣戦布告していた割には随分と呆気なさ過ぎる。

それが返ってギルヴァとブレイクには違和感でしかなかった。当然ながら処刑人にもルージュもそれを感じ取っていた。

そうこうしている内に最後の個体が蜂の巣にされ地面へ倒れる。

戦場は静まり返り、硝煙の匂いが周囲に漂う。地面に無数に転がる薬莢と倒された追跡者達の亡骸。

戦いに勝利した実感が沸かない。寧ろまだ何かあるという不気味な雰囲気が辺りを包む。

 

「シーナ指揮官、油断なさらぬ様に。…勘でしかありませんが嫌な予感がします」

 

『分かった。…私もそんな感じがしてたから』

 

 

 

「まさかこんな事が…」

 

拠点で放った追跡者達が全滅した事を受け、本体である処刑人は顔を俯かせていた。

自信があったのか。あるいはそれ以外か。

顔を俯かせたまま、彼女は動かない。余程ショックだったのだろうか。

ふと追跡者の体が震えた。怒りか、いや、その反応は…

 

「…ククッ……アハッ…アハハハハハッ!!!」

 

可笑しくたまらないといった反応であった。

体を仰け反らせ、手で顔を塞ぎ壊れた笑いを続けていた。

笑いながら彼女はコンソールパネルを操作し始めた。

 

「何て言うとでも!?この程度ッ!!想定の範囲内さッ!!ハハハッ!ハハハハハッ!!!!」

 

追跡者の笑いは止まらない。

響き渡る笑い声。もはや彼女は狂っていた。

暴走による狂いではない。根幹部分で狂っていた。

 

「倒してくれてよかったのさッ!!どんな方法で倒そうとも問題ないのさッ!ハハハハハッ!!」

 

すると画面にとある文字が浮かび上がる。

そこにはこう記されている。

 

Trismagia(トリスマギア) system』

 

もしこの名をマギーやダレン、グリフォン、フードゥル、そしてギルヴァの中で存在する蒼が見ればトリスマギアが何なのか答えたであろう。

トリスマギアとは魔界に存在する悪魔の名であり、三つの顔を持つ。

暗黒の知識を信奉する魔の賢者たちであり、三つの顔はそれぞれ炎、氷、雷を操り、一つの顔へ合体すれば莫大な魔力を生み出す事が出来ると言われている。

 

「あー…笑った。さて、第二ラウンドと行こうじゃないか」

 

何の躊躇いもなく、追跡者はそのシステムを発動させた。

 

 

 

「…」

 

その光景を見てギルヴァは沈黙を貫いていた。

もはやそれは予想出来た事であった。

突如として倒した筈の亡骸たちが動き出し、一つの何かを作り出したのだ。

肉と骨は一つとなり、装備していた武器は巨大な武器と化していく。

鈍い音と駆動音が交差する様に響き合い、最後は死体たちで出来上がった化け物を姿を現した。

右腕を纏う様に複数のチェーンソーが円状に配置され、まるでドリルの様に回転しており、左腕はガトリングガンを何重にも束ねたものを装備。そしてその化け物…トリスマギアの周囲には無数の大盾が浮遊しており、いつでも攻撃を防げるといった雰囲気を出していた。

それぞれが持っていた魔力が一つになった影響で右腕から炎が噴き出し、左腕には雷が迸り。体から冷気が漂う。

ダミー達が残したパーツで組み上げられ、醜悪な姿へと成り果てた化け物。右半身は内部骨格がまる見えに対し左半身は生体パーツがそのまま残っていた。

いびつで醜悪。人口血液が滴る中、トリスマギアはギルヴァ達を睨んだ。

 

「やれやれ、本番はこっからみてぇだな」

 

フォルテとアレグロをホルスターへと納めると肩を竦めるブレイク。

そして背に背負っているリベリオンの柄へと手を掛け、構える。

 

「こうなりゃ悪魔とそう変わんねぇな。前の姿が好みだったぜ」

 

「あれを相手してんのによくそんな事が言えるよな」

 

漸く本番。

さっきまでの戦いは処刑人とって準備運動に過ぎなかった。

体が漸く温まってきた。獰猛な笑みを浮かべるとクイーンの切っ先を地面に宛がい、スロットルを捻る。

クイーンの低く唸る音が響き渡り、防衛側も何時でも動き出せる様に既に臨戦態勢を整えていた。

もうすぐ第二ラウンドが開幕を告げる。そしてそれは処刑人の声で告げられる。

 

「漸く本気になれそうだぜ…!!」

 




という訳で本体が発動させた「トリスマギアシステム」により倒したはずの追跡者達の亡骸が一体化を果たし化け物と化した「トリスマギア」の登場です。

攻撃手段は右腕の多連装突撃剣(所謂グラインドブレード)による突撃及び薙ぎ払い。
左腕の何重にも束ねたガトリングガンの掃射及び周囲に浮遊している大盾を飛ばしてきます。
その他にも火炎放射を行ったり、落雷を落としてきたり、氷の槍を飛ばしてきたりします。
また浮遊している大盾を自身の周囲に浮遊させ、一定時間防御形態を取ります。不用意に近づけば大盾を飛ばして反撃してきますので注意。


では次回ノシ


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