Devils front line   作:白黒モンブラン

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──異世界旅行はまだまだ終わらない──


でびふろっ!えくすとら!さんぱつめ!

レーゾンデートルとペインキラーがS09地区にある駅にへと向かっている一方で、フォルテとアレグロは地区へと向かう列車の車両内に居た。

つい先程まで無一文で金銭面での問題をどうにかしなくてはならなかった筈にも関わらず、何故二人が列車に乗る事が出来たのか。

それは二人と対面する様に座席に腰掛ける二人に答えがあった。

 

「まさか同じ地区に居たとはな。こればかりは驚きを覚えるな?アニマ」

 

「ああ。てっきり別々の地区に居たと思ってたんだが」

 

そんなやり取りを広げるのは、あのシルヴァ・バレトとアニマである。

フォルテとアレグロの二人が列車に乗る事が出来たのは、この二人と駅でばったり合流できた事にあった。

当然合流するまで資金をどうにかしようと奔走していた訳だが、偶然にも同じ地区に居た二人と合流し、漸く列車に乗る事が出来たのだ。

 

「二人とその老人に感謝ね。もし合流出来ていなかったら、今頃徒歩で移動していた所よ。ホント助かったわ」

 

「どうも致しまして。後はレーゾンデートルとペインキラーの二人だけだが…そっちでは見ていないか?」

 

「見てないわね。出来れば一緒に居て欲しい所だけど…」

 

「無理だろうな。レーゾンデートルは兎も角、ペインキラーが問題だな。向こうに到着しても暫くは探せばなるまい」

 

分かっていた事ではあるがアレグロは大きくため息を付き、額に手を当てつつ天を仰いだ。

 

「ホントッ…何なのあの鏡はさ。全員まとめて同じ場所に放り込めばいいのに。馬鹿なの?いや、馬鹿よ。正真正銘の大馬鹿よ」

 

「あ、アレグロ?」

 

ピザを食べれていないからか、まるで今までの鬱憤を吐き出すアレグロ。対してシルヴァ・バレトは表情を引き攣らせる。

その一方でフォルテが車窓から外を見つめながら、何かを思ったのか静かに呟いた。

 

「とことん…私達にはあってねぇ世界だな」

 

その呟きが聞こえていたのか、対面に座っていたアニマが尋ねる。

 

「いきなりどうした?」

 

「なに…何となく思っただけさ。私やお前、アレグロやシルヴァ・バレト、レーゾンデートル…私達はこの世界においてだと過剰な存在だなってな。威力は自分らでよく分かっているだろ?まだ常識内で言うのであればペインキラーがマシとすら言える」

 

「…」

 

その台詞にアニマは何一つ返す事が出来なかった。

確かに自分達の存在…その威力は過剰だ。決して人に向けて撃っていい代物ではない。

その過剰という部分は悪魔を倒す為にあると言っていい。

だがこの世界には悪魔は存在しない。それ故に発言だとアニマは感じたのだが、それ以外にも感じていた事があった。

 

「…ここに来る事が怖かったのか?」

 

その問いにフォルテは口角を吊り上げる。

まるでそれが正解だと示しているかのように。

 

「…正直言えばな」

 

「…気にし過ぎじゃねぇか?」

 

「だろうな。…どうやら糖分が不足しているせいか気にがみやすい状態になっちまっているらしい」

 

「そうかい。向こうに着いたらパフェでも注文しな」

 

「ああ。そうするさ」

 

彼女達を乗せた列車は間もなくS09地区に到達する。

そんな中で四人全員がレーゾンデートルとペインキラーが駅で待っていようとは知る筈もなかった。

 

 

一方、ペインキラーが持つ独特な探知能力のおかげでレーゾンデートルは迷う事無く駅に到達していた。

平日の昼間。人の出入りもそれなりにあり、普段からこの駅が利用されている事が言葉にせずとも分かる。

何かに追われる様に駅の出口へと目指す者もいれば、外から駅構内へと入る者もいる。

人々のすれ違いが幾度もなく繰り返される駅構内でレーゾンデートルとペインキラーはホームの出口付近でこっちに向かってきている四人を待つ事にした。

着ている服装。そして美人に美人。

思わず振り返る者がいれば、つい立ち止まって見つめてしまう者もいる中でレーゾンデートルがペインキラーに尋ねる。

 

「…似てないのだな」

 

「誰に?」

 

「…お前の主にだ」

 

銃の姿から人の姿になったレーゾンデートルは分かっていた。

この姿の一部は何処となく自身の主に通ずる部分がある、と。

姿や髪の色、性格など何処か似ている所があると感じていたのだ。

だがペインキラーはどれにも当てはまらない。その事にレーゾンデートルは疑問を抱き、尋ねたのだ。

だがその問いに対しペインキラーは笑みを浮かべた。

 

「確かに似てないかも知れないかもね。似ていると言えば服装程度。でも…」

 

「む…?」

 

「決して全てが主の姿に似ているとは限らない。彼女が見た過去の記憶から引っ張りだされるという事よ」

 

「…つまりその姿はシーナ・ナギサが過去に会った、或いは見た人物が元になっていると?」

 

「そういう事。じゃあその人物が誰なのかという話になってくるけど、私の口から明かすつもりはないわ」

 

「…」

 

気になりつつもレーゾンデートルはそれ以上問う事はしなかった。

本人がそう言うのだから、必要以上に問うまいと。

 

「お、いたいた。先輩!」

 

その時、自身を先輩と呼ぶ声がレーゾンデートルの耳に届いた。

その方へと顔を向けると、手を振りながら嬉しそうな顔を浮かべながら小走りで近寄ってくるアニマの姿。

普段はガサツでちょっぴり怖い人相。だけど意外と面倒見がいいアニマがまるで飼い主を見つけた犬の様に嬉しそうな顔を浮かべているのだ。

その表情は他のメンバーも気付いており、いつもの様子からは全く想像出来なかった満面の笑みに、彼女の後に続くフォルテ、アレグロ、シルヴァ・バレトは驚きの表情を見せている。

しかしそんな事を気はしないアニマはレーゾンデートルの前に立つと話しかけた。

 

「無事だったんだな。怪我がなさそうで良かった」

 

「そっちも。…別の地区にいたのか?」

 

「ああ。幸いにもシルヴァ・バレトと同じ地区にいてさ。あとでアレグロたちと合流した感じだ」

 

「そう。…なら後は向こうに向かうだけか?」

 

「正解」

 

次に向かう場所が決まった時、アニマの隣にシルヴァ・バレトが立つ。

 

「話は済んだか?」

 

「今し方な。…後輩が世話になったな」

 

「気にするな。一人で居るよりかは良い」

 

「そうか」

 

実はこう見えてレーゾンデートルとシルヴァ・バレトは同期である。

一時期は別々の場所に居た訳だが、ギルヴァはレーゾンデートルを連れてきて、そしてシリエジオがシルヴァ・バレトを見つけた事により二人は再会を果たした。

その時の記憶はシルヴァ・バレトもレーゾンデートルもはっきりと覚えている。

昔を少しばかり思い出しながらもシルヴァ・バレトは全員にへと声を飛ばす。

 

「さて行こうか。ここで長話する必要もないからな」

 

その台詞に全員が頷く。

そして漸く彼女達全員が合流。当初の目的であった例の喫茶店へと向かう為、歩き出すのであった。

 

 

駅を後にし、大通りを抜けていくレーゾンデートルら。

ペインキラーが先導する形で彼女達は喫茶店へと向かっていた。

過ぎゆく人々。走り去っていく車両。町の中で響き渡る喧騒音。しかしそれは決して不快ではなく、この世界だからこそ生み出せるものだ。

そんな変哲もない平日のS09地区の街を人の姿となって歩いている事にレーゾンデートルは少しばかり感動していた。

 

「あとどれ位だ…ペインキラー…?」

 

そして糖分を摂取出来ていない事が表に出ているのか、まるで幽鬼のようにフラフラと歩くフォルテのせいでその感動が台無しになってしまっていた。

それを知ってか知らずか、隣を歩いていたアレグロが呆れた表情を浮かべた。

 

「全く…もう少し我慢しなさいよ。レーゾンデートルが珍しい位にはしゃいでいるのに台無しにするつもり?」

 

「…!」

 

アレグロの台詞にはしゃいでいる事をバレたレーゾンデートルはわざと視線を外へとずらす。

あまり表情に出ていない為分かりづらいが、頬は少しばかり紅潮しており、アレグロ、シルヴァ・バレト、アニマは決してそれを見逃さなかった。

 

(ふふっ…可愛い所あるのね)

 

それを見て内心微笑むアレグロ。

そしてフォルテがやっとその声が届いたのか。げっそりした表情で返答する。

 

「…マジか…それはわりぃ…」

 

「駄目ね。これは色んな意味で」

 

それは誰もが見て分かる事であった。

もはやフォルテの目に生気を感じられず、かえって不気味だ。

最もフォルテの相棒を務めるアレグロが言うのだからそこに間違いなどないのだが。

 

「もうそろそろの筈。…あ、あそこね」

 

大通りを抜け、裏通りへと出た一行。

その通りに彼女達が目指していた喫茶店…喫茶 鉄血があった。

漸くたどり着いた目的地。限界を迎えてしまったフォルテはアレグロに支えてもらわないといけない状況であり、このままにしとくと何をしでかすか分からない。

いざ行こうとした時、アニマが疑問の声を上げた。

 

「金はあるのは良いけどよ…どうやって俺達の事説明するんだ?」

 

「別に言う理由はない。…向こうがこちらに気付いたら話は変わってくるが」

 

その問いにレーゾンデートルが答えると、そのまま店のドアノブに手を伸ばし開いた。

ドアに備え付けられたドアベルがレーゾンデートルらが入店した事を告げ、その音に店内にいた者達が気付くと、ある人物がレーゾンデートルを一目見た瞬間、まるで神速の如き速さで彼女の前に立つとその手を握って一言告げた。

 

「仲間ね」

 

「…?」

 

いきなり目の前に現れた彼女…以前にある部分についてこの店でやらかしたUMP45に仲間だと言われ何のことが全く分からないレーゾンデートルはただただ小首を傾げるのみ。

対するUMP45は満面の笑みを浮かべるだけなので尚のこと分からずじまい。

どうしたら良いのか分からないこの状況。だが救世主はすぐに現れた。

 

「全く…お客様に何をしているんですか、45さん」

 

UMP45の後ろから歩み寄ってくる一人の人物。

その者を見てレーゾンデートルはギルヴァから通して得た記憶から思い出す。

 

(彼女が…ここの)

 

レーゾンデートルの視線に気付いたのか、彼女…代理人は笑みを浮かべ話しかける。

 

「あの娘から話を聞いた時、まさかと思いましたが…成程、本人らではないみたいですね」

 

(あの娘から聞いた…?)

 

レーゾンデートルは知らないが、代理人が言っている事が分かるのはペインキラーのみ。

しかしペインキラーは可愛らしい笑みを浮かべているだけで全く答える様子はなかった。

 

「まずはお好きな席へどうぞ。詳しい話はその後で」

 

疑問が尽きない中、やっとたどり着いた目的地…喫茶 鉄血に到着したレーゾンデートルらは代理人の案内の元、店の中へと入っていくのであった。




何で45がレーゾンデートルに仲間といったのか?
そりゃレーゾンデートル…絶壁だからさ(銃声

さて漸くお店の方に。
さぁ!ぼのぼのすんぞ!

では次回ノシ!

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