Devils front line   作:白黒モンブラン

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―普通じゃなくなるのは当たり前―


Act131-Extra operation grave guard Ⅱ

S10地区から遠く離れたとある地区。

そこは「S地区」などといった固有名称は存在しない無名の地区であり、古びた家屋が各所に存在していても長い間人間がここで過ごしていたという記録は存在しない。

危険な場所でないが、戦略的価値がある土地でもない。

寧ろ平穏な地区とも言えるにも関わらず人は寄り付かない。

どうしてなのかと疑問に思ってもその答えを返してくれる者はいない。

 

『この土地は来訪者を拒んでいる』

 

そんな噂が流れたとしても時が流れる様にそんな噂が風と共に消え去っていき、人々の記憶の中から消え去る様にこの地区の存在も忘れ去られた。同時に生み出されながらも破棄された鉄血の人形達が眠る墓場の存在も。

そして何時しか墓場は拠点として扱われた今。

暴走する者を、魔物を討伐する為、この土地に来訪者たちが現れる。

 

 

機体の側面にS10FLBと綴られたデカールを貼った二機のヘリは暴走する追跡者がいるであろう拠点から少し離れた位置に着地した。

それぞれの機体からは来訪者たちが降り立ち、周囲を見渡す。

所々に建つ古びた家屋。人気を感じさせず無駄に広がる平原が寂しさを感じさせる。

そして向いている体を後ろへと向ければ周囲を木々に囲まれた例の拠点が佇んでいた。

 

「普通に見えるのに何故か嫌な何かを感じます。ピリピリした様な何かを…」

 

「それ私も思った…。何なの、この嫌な感じ」

 

佇む拠点を見ていたランページゴーストのアナのつぶやきにパワードスーツを装着したRFBも同じ様なものを感じ取っている事を明かす。

すると大鎌を肩に担ぎ、プロトタイプ・ナイトメアを背に背負い、専用外骨格を身に付けたルージュが二人の後ろから歩み寄りながら答える。

 

「拠点内部ではかなりの魔力を有した魔物がいるみたいですね。それも一体ではない…複数体居ると見ていいでしょう」

 

「それってブリーフィングで挙がっていた情報の中に確認出来ていない個体も存在するという事…?」

 

RFBの問いにルージュは小さく頷く。

一度を目を伏せて大鎌の柄を握り直してから瞼を上げた。

ルビーの様な赤い瞳が拠点を睨みつけ、彼女は口を開く。

 

「ですが今回参加してくださった皆様を守ります。…その為に()()()()()()()()は存在しているのですから」

 

()()()()()()()()…?」

 

最後に呟いた言葉が聞こえていたのだろう。アナが聞き返す様にその言葉を口にする。

しかしルージュはそれには答えようとはしなかった。

 

各々が準備している中、ギルヴァは腕を組み拠点を見つめていた。

一見普通そうに見えるはそこから放たれている魔力はS11地区と比べる段違いと言えた。

 

「どうや?かなりやばい感じか?」

 

「そういうお前はどう見る」

 

「そうやな…あんときはよう分かってなかったが、今なら分かるで」

 

被っていた帽子のひさし部分を摘み、少しだけ下ろすと彼女の雰囲気が変わる。

それ程までに今回の一件を深く見ている。それを見てギルヴァは安堵した。

どうやら今回は悪魔を鹵獲しに来た訳ではないのだと。

 

「…普通やないわ。まるでこの世にある負の感情の四分の一をここに集めた感じやな。例えがあっとるかは分からんけど、そんな感じや」

 

「ハハッ、四分の一か。あの時の元社長さんにしては良い例えしてるぜ」

 

ギルヴァが口を開く前に準備を終えたブレイクがリホへと話しかけながら歩み寄る。

彼の手には代理人が愛用するショットガン『Devil』が握られていた。

どうやら代理人の許可を得て借りたらしく。それをコートの懐へ収めると彼女の隣に並び立つ。

 

「どうだい?調子は」

 

「ぼちぼちといった所やな」

 

「そうなのかい?俺からみればあの強面の男(ギルヴァ)に脅されたから今もビビってる感じがするけどな」

 

「っ…!?」

 

その指摘に一瞬だけ肩をはねたリホの姿をブレイクは見逃さなかった。

表で平常心を保っていたとしてもギルヴァを相手にしている時にビビってるリホの状態を彼は見抜いていた。

当然ギルヴァもそれを見抜いていたのだが、自分がどうこう言った所で恐れられるだろうと判断していた為に何も言わなかった。

 

「悪いね。45、416、95式や代理人には優しいくせにあいつは変な事する相手には女だろうと容赦ねぇ奴でな。まぁあんたがこっちの許可なく余計なもんを持ち帰る事がしなかったら脅す事はしねぇよ。だから安心してくれ」

 

「そう言われてもなぁ…。怖いもんは怖いんで?」

 

「おっと…こりゃ重傷だな…。おい、ギルヴァ。こんなに良いお嬢さんになんてトラウマ植え付けてんだ」

 

ブレイクにそう言われてもギルヴァは対応するつもりはなかった。

ヘリが着陸してから時間は経っている。全員準備は出来たであろうと判断すると彼は拠点へと歩み出したのだが数歩歩いた後、ふと足を止めた。

 

「…今回も世話になるぞ」

 

それだけを言い残して歩き出すギルヴァ。

彼が動き出した事により沈黙を保っていた蛮族戦士が動き出す。他のメンバーを待つ気がないのか二人はどんどん向かって行く。

 

「やれやれ、生真面目な二人だぜ」

 

その後ろ姿を見て軽く肩を竦めるとブレイクも二人の後に続く。

残りのメンバーも慌てて三人の後を追うのであった。

 

先を動き出したギルヴァと蛮族戦士。

お互いに会話する気などないのか、動き出してから終始沈黙を保ったままだ。

その時、蛮族戦士が尋ねる様にギルヴァへと話しかける。

 

「…ヒトリ カ」

 

「その様だな」

 

そのやり取りだけでこの二人はそれを感じ取っていた。

前方から誰かがやってきていると。気配もあれば薄っすらであるが歩いている音もこの者達には聞こえていた。

敵なら即座に始末。

足を止めて前方からやってきた者を見つめた。

彼らの前に姿を現したのは一人の少女であった。白髪に黒のジャケット、白い肌に緋色の瞳。アサルトライフルらしきものを手にしている。

その少女を見た瞬間、その気配で相手の正体を見抜いたギルヴァだがそれを言葉にする事はしなかった。

敵か味方か分からない今、余計な消耗は避けたい。

だが相手がどう出るかによる。静かに彼は幻影刀を相手の周囲に展開できるように準備した。

 

「あなた達…もしかしてこの先に向かうのかしら」

 

「そうだと答えればお前はどうする」

 

「どうするもなにも。私は味方としてここに来ているのだけど」

 

味方として来ている。

それを聞いていた蒼がギルヴァへと話しかける。

 

―ちょいときな臭いが、敵意は感じられない。まぁ何かあるのは分かるんだがな―

 

(今は味方として見るべきか)

 

―その方が良いと思うぜ。

 

信用に足るかはどうかは別にして戦力が増えるのであれば嬉しい話。

最も彼は何かこちらに仇成す事をすれば即刻斬り伏せるつもりであるが。

 

「名は?」

 

「Mk18」

 

「そうか…ついてこい」

 

後からついてきた者達も何も言わない。

自然とリーダー格としてギルヴァが動いている事もあり、彼が問題ないと判断したのであれば口出す事はしなかった。

Mk18を含めたギルヴァ一行は拠点へと歩み始めるのであった。

 

 

拠点へとたどり着いた一行は偶然にも開かれていた入り口から内部へと侵入していた。

電力は辛うじて保たれているのだろう。薄っすらとだが灯りはともっていた。

それからそれなりの距離を歩いた時一行は足を止めた。

 

「分かれ道か。それも四つも出し物を用意してくれてるなんて気前がいいな」

 

ブレイクの言う通り、道は四つに分かれていた。

『中央動力区画』『資材搬入区画』『情報管理区画』『廃棄処分区画』。

それぞれの区画へと道は続いており、その先で相手が待ち構えていることなど言葉にせずとも分かるだろう。

 

「さて、どうする?全員で一個ずつ相手からの出し物を楽しんでいくかい?」

 

「下らん。分断して事に当たればいい。その方が効率的だ」

 

「やれやれ、真面目だな。んじゃ…どっちに行くかさっさと決めるか。主催者も早くもてなしたくて仕方ねぇだろうしな」

 

ブレイクは相変わらずというべきだろう。

指を額に当てながら小さくため息をつくギルヴァ。

だがこの状況で漫才をやっている暇はなどない。かくして誰がどの方向へ向かうか話し合われた。

 

数分だけ行われた話し合いで誰が何処へ向かうのか決まった。

 

「…足を引っ張るなよ」

 

「ソチラモナ」

 

中央動力区画にギルヴァ、蛮族戦士。

 

「宜しくお願いします、Mk18」

 

「こちらこそ宜しく」

 

資材搬入区画はルージュ、Mk18。

 

「うちら上手くやれるんやろうか…」

 

「やんなきゃわかんねぇだろ?」

 

情報統制区画へは処刑人、リホ・ワイルダー。

 

「お嬢さんたちと一緒か。嬉しいね」

 

「こういう状況でも平然としていられるなんて…流石というべきなのかな」

 

廃棄処分区画にはブレイク、ランページゴースト隊となった。

向かう場所も決まり、各々が歩き出した。するとルージュの後を歩いていたMk18がついギルヴァとぶつかってしまう。

 

「ごめんなさい」

 

「問題ない」

 

特に痛みがあった訳でない。

ギルヴァから問題ないと聞くとMk18は小さく一礼しルージュの後を追っていき、資材搬入区画へと通ずる道へ向かい奥へと消えていった。

それを見届けるとギルヴァはそっとコートの懐へと手を伸ばした。

Mk18がどこからわざとぶつかった様に感じたのとコートのポケットに何かを入れていった事に彼は気付いていた。

 

「やはりか」

 

懐から取り出したのは一枚のメモ用紙。それを広げると彼女が書いただろうと思われる文が綴られていた。

そこにはギルヴァ宛か、或いは討伐組の誰かに宛てられたメモ用紙にはこう記されていた。

 

『私はあなた達と敵対するつもりはないけど、立場上敵対せざるを得ないわ。もし大きな男性型鉄血ハイエンドと小柄で角がついた鉄血ハイエンドが戦場にいたら、彼らの敵対行為は演技のようなものであるという事を知ってて欲しいの。彼らもあなた達に犠牲を出すような事はしない筈よ。』

 

―こりゃ色々複雑になりそうだな?

 

(…そうだな)

 

ギルヴァは既にMk18が鉄血のハイエンドモデルだという事は既に気付いている。

味方している事とは別に何らかの理由があると睨んでいた。

そして睨んでいた通りに相手はこのメモ用紙を渡してきた。そしてこの拠点内部の何処かにメモ用紙に記されている二体のハイエンドモデルが居るというおまけ付き。

 

「ドウシタ?」

 

「何でもない。行くぞ」

 

先へ向かおうとしていた蛮族戦士に呼ばれてもいつもの様子で彼は中央動力区画へと歩き出す。

この先に居るであろう追跡者の気配を感じ取りながら。

 

 

ギルヴァらが中央動力区画へと向かい始めた一方で情報管理区画へと向かっていた処刑人とリホの二人は予想だにしていなかった事態に見舞われていた。

 

「どうなっとるんや…」

 

真っすぐと続く道を歩き、敵が居るであろう扉をあけたらどういう訳か明らかに構造が違う場所に出てきてしまっていたのだ。

そこは図書館の様で、数ある古びた本棚には無数の本が無造作に置かれていた。

鉄血が紙媒体が扱うとは思えず、まるで別の場所へ来てしまっている様な感覚を覚えると同時にここに漂う魔力を処刑人は感じ取っていた。

 

「…広がった魔力の影響で疑似的ながらも空間が作り出されたってか。となりゃ他の奴らも別空間に飛ばされているかも知れねぇな」

 

「このまま道なりに進む他ないのやろか?」

 

「それが良さそうだな。恐らくだが出口がある筈だ。多分そこを抜ければ誰がか居てくれるだろうぜ」

 

ガチャガチャと装備している武器が揺れる音を鳴らしながら処刑人は歩き出し、リホもそれに続く。

 

 

そしてこの者達も作り出された空間にきてしまっていた。

もっともそこは図書館ではなく、駅みたいな所で間違えて外に出てしまったのではないかと錯覚を覚える程に。

 

「どうなってるの…?私達さっきまで内部に居た筈だよね?!」

 

「その筈だ…。何だここ?駅みてぇだが辺りは薄暗いから分かんねぇぜ」

 

下へと通ずる階段の先には一台の貨車が停車していた。

そしてレールが果てしない程に奥へと長く続ていた。

 

「拠点に溢れ出した魔力の影響か。何かの再現か或いは作り出されたか。そのどっちかだな。後ろのドアは開かねぇだろうし、向こうが用意してくれた"リムジン"に乗る他ねぇな」

 

そう言われて後ろのドアが開くか確認するRFBとノア。幾ら扉を開こうとしてもびくともせず、どのみち"リムジン"に乗っていくほかないと言えた。

ほらな?と確かめる様に言うとブレイクはのんびりと歩きながら階段を下り始めた。

ランページゴーストの三人もお互いに頷くと彼の後を追う。

ブレイクの言う"リムジン"へと乗り込んでいく。

 

「さぁてリムジンの乗り心地…どんなものか楽しませてもらうか」

 

「こんなのがリムジンでしたらタクシーが泣きますね」

 

「ハッ!そりゃそうだな」

 

四人を乗せたリムジンは走り出す。

それが何処へと繋がっているのか誰にも分からなかった。

 

 

処刑人達とブレイク達が作り出された空間に来てしまった一方でルージュとMk18は作り出された空間に来てしまう事無く資材搬入区画へと繋がる長い道を歩いていた。

アサルトライフルを装備しているMk18だが、ルージュが肩に担いでいるヘル=バンガードの大鎌に視線を向けていた。

余りにも大きいと思われる大鎌。人の手によって作られたものとは思えず、戦術人形ですら扱えない筈にも関わらずルージュはそれを軽々と担いでいる。

 

「扱えるの?それ」

 

「それって…これの事ですか」

 

腕を軽く動かし、Mk18に大鎌の事かと尋ねるルージュ。

返答として頷いたため、彼女は微笑みながら答える。

 

「全然扱えますよ。これら以外にも扱えますし銃器も扱えますよ」

 

「まるで人形ね…。戦闘に特化した感じの」

 

「かも知れませんね。…寧ろ私は()()()()()()()()()()()()()()()()()ですから」

 

「え?」

 

いいえ、何もと微笑み返しルージュは先へ向かって行く。

先行く彼女を見てMk18は小さく呟く。

 

「模倣する様に生み出された存在…?どういう事…?」

 

ルージュが最後に呟いた事が聞こえていたMk18は彼女の背へ向かって疑問を投げかけるとすぐさまその後を追いかけるのだった。




という訳で拠点編。

今回は四つの区画へと向かう面々を描かせて貰いました。
少し飛ばし飛ばしなので許せ…。

またMk18、彼女からメモ用紙に記された二体のハイエンドモデルですが…
鮭酒様作「人形傭兵団パイライト」からです。
どうやらあちらにも色々あるみたいで…。

そして別空間に来てしまった二組ですが、処刑人&リホさんの所がDMC5でアルテミスへ向かって行く道中の図書館みたいな感じです。
ブレイク&ランページゴースト隊はDMC3でベオウルフへと向かって行く道中に出てくる「生贄搬入貨車 乗車場」みたいな感じです。

またルージュのイメージですが、分かりやすく言えばM82A1に近いです。
長い髪はそのままに白と赤のグラデーションがかかった色、M82A1の胸よりも大きくした胸、ホットパンツを穿いている。
それがルージュの容姿と思って頂けたら幸いです。

では次回!
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