Devils front line   作:白黒モンブラン

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奏者は赤き狩人と暴れる亡霊の三人

さぁ、一曲奏でよう


Act134-Extra operation grave guard Ⅴ

破砕音が、雄叫びが、銃声がまるで音楽を奏でる様に響き渡る。

処刑人とリホがアルテミスと戦っていたドームと比べると格段に狭く熱気が漂う拷問部屋でギガノスは荒れ狂うかの様に丸太の様に太い剛腕から繰り出される連撃で四人へと襲い掛かる。

ただでさえ狭い空間で戦闘を強いられている状況、ブレイクは華麗に回避しながらもロイヤルガードで攻撃を防いだりするが、ランページゴーストの三人にとってやりづらい状況と言えた。

しかしだ。相手がこれだけデカいのであれば狙い撃つまでもない。両手に持った20mmバルカン砲で攻撃しつつノアが叫ぶ。

 

「釣りはいらねぇ!取っておきなぁッ!!」

 

バルカン砲から繰り出される弾幕に交わるかの様に腰のアーマーから無数のマイクロミサイルが放たれる。

それぞれの軌道を描き放たれたミサイルの群はギガノスに着弾し盛大に爆ぜる。しかしこの程度で死ぬ相手ではない事は誰にだって分かる。

爆炎の中でギラリと輝く赤い瞳がノアを捕えるとギガノスは彼女へ目掛けて雄叫びを上げながら突っ込んできた。それを止める者が一人。

ブレイクが展開した魔術の壁を足場にしてギガノスの顔の高さまで彼女は跳躍する。

突如として目の前に現れた事により反応が遅れる巨人。

「ハイパーマキシマムムテキドールスーツ」を身に纏うRFBが叫ぶ。

これが恐怖へと立ち向かう力であると言わんばかりに。

 

「どおぉぉりゃああああぁっ!!!!」

 

雄叫びと共に放たれた右ストレートが巨人の顔面に炸裂。

鉄球がぶつかったのではないかと思いたくなる程の衝撃波が奔り、ギガノスはその一撃でノックアウトしそうになる程に仰け反る。

そこにもう一人が追撃に入った。

とある神話に出てくる刀剣の名を冠したブレード アメノハバキリを構え、アナがギガノスに迫る。

斬らねばならない。ただそれ一点に全神経を集中。

 

「っ…!」

 

一閃。

ギガノスの首筋から血飛沫が舞い上がる。だが彼女の表情を宜しくない。

 

(浅い…!)

 

一見すれば大きな一撃を与えたと思うであろう。しかし与えたのは微々たるダメージでしかない事に剣筋を通して感じていた。

雑念があるのか、或いはそれ以外の何かか…。

どちらせよ今の一撃で仕留める事が叶わなかったのは事実。首筋から血を噴き出しながらも、ギガノスはアナの方へと振り向き、彼女へ目掛けて拳を振る。

回避し素早く距離を取ろうとする。しかしふと彼女の中で悪寒が走る。

 

「逃がさぬ…!」

 

回避される事は予測済みであったのだろう。ギガノスはアナが回避した直後を狙い、駆け出していた。

しかも最悪な事に彼女の後方には壁。銃を撃って止まる相手ではない。

不味いと思った矢先、この男がギガノスの目の前に飛び出す。

赤いコートを揺らめかせ、手には髑髏の装飾が施された反逆の名を持つ大剣であり魔剣。

普段は地上で使う事が多い技であるが、空中でもやろうと思えばやれる。

移動距離は極端なまでに短くなるが、相手を吹き飛ばすには十分。

 

「受け取りな!」

 

保有する魔力を刀身に纏わせ、そのままリベリオンを勢いよく突き立て突進。

RFBが放った右ストレートの威力を超える一撃が直撃し、巨体であるギガノスが後ろへと吹き飛ばされ地面を転がっていく光景が広がりアナはその場から離れる。

リベリオンを肩に担ぎながら地へと着地するブレイク。ニヤリと笑みを浮かべながらギガノスへと話しかける。

 

「無視すんなよ。流石の俺も悲しいぜ」

 

「貴様ぁ…!」

 

「やれやれ、悪魔ってのは美人、美女の前だと良いとこ見せたくてはしゃぎだす。迷惑も良い所だ。所でこの三人の中じゃ誰が好みか聞こうか?因みに俺は全員一位だな。可愛すぎて差なんて付けられねぇよ」

 

何でそんな事を言ったのかはさておき。

ブレイクの冗談を聞くつもりはないのかギガノスの再び立ち上がると大きく咆哮を上げた。

余りの大きさに空間が振動する程で心なしか赤い瞳が不気味に輝き始めて息も荒い。

本格的にキレた。それは誰もが見てもそう言うであろう。ランページゴーストの三人は素早く武器を構え、銃を連射。

 

「潰す!潰す!潰す!!潰すうぅぅぅぅッ!」

 

襲い掛かる弾幕に怯む事はなくただ狂ったかの様に叫ぶ声が響き、それどころか先程まで二足歩行だったギガノスは突如として四足歩行で駆け出し始めた。

その巨体に似合わず、弾丸の嵐を駆け抜けていく様はまるで獣だ。

 

「嘘でしょ!?」

 

「ビビんな!たかが四足歩行に変わっただけに過ぎねぇ!轢かれんなよ!!」

 

「ッ…!分かってる!!」

 

(動きもそうだが、ブレイクの一撃を受けてもピンピンしてやがる…どんなだけ体力があるんだよ、こいつ…!)

 

こうしてバルカン砲を連射している訳だが効いているのかすら怪しい。

RFBの右ストレートとブレイクのスティンガーの一撃を受けた為、ギガノスがダメージを負っているのは事実。だがこのまま長期戦になれば苦しくなるのも事実であった。

弾丸だって無限ではない。誰かが弾切れを起こせば戦力が半減する事は目に見えた話であろう。

どうにかしなくてはならないと思われた時、RFBが叫んだ。

 

「ちょ!?ブレイク、何してんの!?」」

 

何をとち狂ったのか、あろう事かブレイクがリベリオンを背に収め無防備な状態を晒したまま突っ込んでくるギガノスの前方で突っ立っていたのだ。

この状況なら相手に轢き飛ばされない様に動き回りながら攻撃するが普通だ。

 

「さてと…」

 

だというのにこの男は吞気に肩を回し始めていた。

いくら彼と言えど暴走するダンプカーみたいな巨人の体当たりを真面に喰らえば只では済まないだろう。

その一方でノアは思った。

何か状況を覆す策があるからこそブレイクはああしているのではないか、と。

だが何か行動をする様な素振りすら見せないのは何故か。最悪な事態にならぬよう隊長である彼女は二人に指示を飛ばす。

 

「撃ちまくれ!足を止めるほかねぇ!!」

 

三人による一斉射がブレイクへと迫るギガノスへと襲い掛かる。だが相手は止める気配すらない。

それどころか彼へと迫る速度が速まった様にも見える。

 

「ブレイク、避けろッ!!!」

 

「大丈夫だって。そこで見てな」

 

何が大丈夫だ。

もうすぐそこまで相手は迫って来ている。今何とかしなくては状況は一気に最悪な方へ持っていかれる。

 

「援護する!アナ、あいつを!」

 

「了解!」

 

シューティングスターを展開しその機動力を活かしてアナがブレイクの後方から迫る。だが…

 

(間に合わない…!)

 

ほんのわずかに動き出す事が遅かった事に彼女が悟った時であった。

突如として弾ける様な音が響き渡り、宙に何かが舞い上がった。

ブレイクではない。舞い上がっていたのは血飛沫が上げながらギガノスの片腕。そして片腕を失ったギガノスは地面を転がっていく姿と平然とした様子で何時もの笑みを浮かべるブレイクの姿。

何が起きたのかノアとRFBには分からず、転がってくるギガノスを避けるためからその場から離れる。

そしてその一瞬の光景を見ていたアナは声に出す。

 

「反撃、した…?」

 

彼女が見たのはほんの一瞬であったが覚えていた。

ギガノスがブレイクを轢き潰そうした瞬間、まるで瞬間移動したかの様にブレイクが背後に移動していたのだ。防御した事によって蓄積した魔力を放出させ突進する彼が巨人の腕を弾き飛ばす所もしっかりと目にしている。

鉄壁の防御と主とした戦法は決して防御だけに特化しておらず反撃にも特化しており、状況を覆すには適している。

ただ攻めるだけが全てではない。時には相手に合わせ防御と反撃を繰り出すのもまた必要。

この状況で、この場に居る者の中でそんな事が出来るのはブレイクだけと言えた。

 

「言っただろ?大丈夫だって」

 

「そう言われましても…正直不安しかありませんでしたが」

 

「厳しいな。ま、こうしてピンピンしてるんだ。大目に見てくれ」

 

一度肩を竦め、ブレイクはギガノスを見つめる。

片腕を失くし、大量の血を流しながらもまだ戦う気があるのか立ち上がり体を大きく仰け反らせ咆哮していた。

その姿に一度辟易した様なため息をつき歩き出そうとするが何かを思い付いたのか、ふと彼は笑みを浮かべた。

 

「アナ、ちょいとだけだがこいつらを貸してやるよ」

 

「え?」

 

そう言ってブレイクが彼女へと投げ渡したのは愛用している白のアレグロと黒のフォルテだった。

コルトガバメントをベースとし極限なまでに大型化、堅牢化を施した二丁拳銃。アジダート&フォルツァンドの先輩とも言える銃がアナの手に握られていた。

いきなり相手の愛用する二丁の銃を渡され、啞然とする彼女に対しブレイクは言葉を続ける。

 

「その代わりだ。アジダート&フォルツァンドを貸してくれ。壊しはしねぇから安心しな。」

 

寧ろ大事に扱ってくれないと困る。

白銀の二丁拳銃は彼女を支える相棒とも言える存在なのだから。

 

「壊したら請求書叩きつけますので」

 

「それはごめんだね。んじゃそろそろ行くか」

 

アナからアジダート&フォルツァンドを受け取るとそれをホルスターへとブレイクはギガノスへと歩き出す。ノアもRFBも、そしてアレグロとフォルテに握ったアナも既に動ける状態にある。

その時ブレイクが人差し指を立て腕を上へと動かし始めた。

 

「イカれたパーティーの再開か。派手に―」

 

人差し指が高らかに天へ指した時、彼は叫んだ。

 

「行くぜ!」

 

パーティーの再開が宣言された瞬間、内包する魔に引き金が引かれた。

彼の肉体が細胞レベルで変化する。

人から悪魔へと。

周囲に放たれた赤い光は数秒も経たぬ内に消え去り、ランページゴーストの三人の前に立つのは一体の赤い悪魔であり、魔人化を果たしたブレイク。

ノアを除き、二人にこの姿を見せるのは初であるが彼は気にしてはいなかった。

どう捉えるかは本人次第。どう思われようが気にする程ではない。

 

「トリック!」

 

エアトリックを用いてブレイクはギガノスの顔面の前まで急接近し攻撃を仕掛ける。

彼が動き出した事によりノアとRFBは攻撃を開始。20mmバルカン砲が、パワードスーツの内蔵火器が火を噴く中、アナはブレイクから貸し出されたアレグロとフォルテを見つめる。

連射特化したアジダート&フォルツァンドとは違う特徴を持つ二丁拳銃。この二つだけが持ち奏でる音色がそこにある。

こんな機会はそうそうない。フッと微笑むと彼女に楽器へと話しかける。

 

「アレグロ、フォルテ…」

 

ベースがベースという事もあって反動はアジダートとフォルツァンドの上を行くであろう。

しかし彼女にとっては先輩が奏でる曲がどこか楽しみで仕方なかった。

二つの銃をギガノスへと向け、アナは誘う様に問いかける。

 

「一曲奏でましょうか…!」

 

引き金を引く指は指揮棒となり、銃声は音となって曲を奏でる。

アジダートとフォルツァンドとは違う音が奏でる曲は一味違う。撃つ度に響く銃声と伝わる反動がそれを感じながらもアナは思う。

巨人を相手にして戦う彼はこの二丁拳銃をマシンガンの如く連射しているのかと。

アジダートとフォルツァンドは伝説の魔工職人によるものだが、アレグロとフォルテは人間の手によるものだ。

あれだけ連射して壊れない。それはこの二丁を作ったガンスミスの腕の高さを感じさせる。

 

「ちょこまかと…!」

 

後方から飛んでくる弾幕の嵐の中で舞う様に飛び回り、そして苛立つ様な声を出すギガノスの攻撃を華麗に避けながら攻撃を繰り出すブレイク。

代理人から借りたショットガン「Devil」を空中でヌンチャクの様に振り回して散弾を叩きつけ、ヴァーン・ズィニヒを呼び出し突撃し車体をギガノスの顔面へとぶつけ相手の体を足場して空高く舞い上がった。

体を空中で上下反転させながらホルスターから白銀の二丁拳銃 アジダートとフォルツァンドを抜くと高速回転と共に下に居るギガノスへ銃弾の雨を降らしながらブレイクははしゃぐような声を上げた。

 

「いいねぇ、この連射力!惚れちまいそうだ!」

 

アレグロとフォルテでも連射出来るがアジダートとフォルツァンドの連射はその倍を行く。

ブレイクの持つ技術も相まって振り注ぐ銃弾は集中豪雨へと化していき、ランページゴーストの三人による一斉射もあってギガノスは動けない。

ダメージを受け過ぎている事もあって、すぐさま攻撃へと転じる事は叶わない。

それをチャンスと見たのだろう。ノアが突撃するとパワードスーツの制限を解除したRFBとシューティングスターを展開しブレードを構えたアナが突撃。

 

「最終楽章だ!派手に決めるぜッ!!!!」

 

犬歯を剥き出しに叫ぶノア。それを聞いたブレイクはニヤリと笑みを浮かべるとグラインドトリックで素早く地表へと降り立つ。

 

「ならこいつで派手に決めな、嬢ちゃん!」

 

そう言って彼はヴァーン・ズィニヒを呼び出し、バイクだけノアの方へ走らせた。

走ってくるそれを見てノアは20mmバルカン砲をしまい、軽々とした身のこなしでバイクにまたがり車体を反転。スロットルを捻りエンジン全開にしてギガノスへと急接近し、ウィリーの体勢からジャンプしバイクと共に宙へと舞い、バイク形態から双剣形態へと変形させた。

 

「くたばりやがれッ!!!」

 

振り下ろされた二つの鋸がギガノスを斬り刻み、その体に二筋の刀痕が残る。

そこから噴き出す鮮血の雨。それでも巨人は止まらない。それどころか残った片腕による拳をノアへ目掛けて飛ばす。

 

「やらせないッ!!!!」

 

だが、パワードスーツの制限を解除したREBが内蔵火器を一斉射して飛んでくる拳の威力を衰えさせ、タイミングを見計らってからスピードと威力が落ちた拳に対し勢いよく拳を飛ばしぶつけた。

最初の右ストレートの上を行く一撃は巨人は体を仰け反らせ、無防備な状態を見せる。

そして彼女が動き出す。

 

「斬る…!」

 

重力に引かれつつもシューティングスターのスピードを織り交ぜる。

流れ星の如く迫りながら彼女は構えを取る。

それは居合の姿勢。どことなくギルヴァが繰り出す技「疾走居合」の構えを彷彿させる。

もう雑念はない。恐れもない。今はただ斬る事のみに全神経を集中させる。それが死であろうと。

距離を縮まる。曇りなき刀身が淡く一瞬だけ輝きを放った瞬間、一閃奔る。

先程まで空中にいた筈なのにいつの間にか地上に降り立ち、ギガノスの背後に立つアナ。

そして何故か動く気配の見せないギガノス。

刀身に滴る血を払い落し、アメノハバキリをシューティングスターへゆっくりと収めながら同時に彼女は呟く。

 

「死を視ること…帰するが如し」

 

そして刀身が収まる音が響いた瞬間、まるで合わせたかの様にギガノスの頭がずれ落ちた。

大量の血を噴き出しながらその体は崩れ落ち、ずしんと音を立てる。

最後は自分が止めを刺そうと思いながら魔人化を解除するブレイク。最後はアナの一閃により出番はなくなってしまったが、まぁ良いかと思っていた。

 

「しっかしとんでもないものを見せてくれたな。ギルヴァの技をちょいと真似たのかね?」

 

ギガノスが倒された事により空間が元に戻り始める。

パーティーの終わりが告げられた事を察しながらブレイクはアナの元へ歩み寄り声を掛けた。

 

「俺の出番まで取って行くとはな。やってくれるぜ」

 

「貴方だけに頼る訳には行きませんので」

 

「そうか。…まぁ良いさ。それとこいつらを返すよ」

 

手にしていたアジダートとフォルツァンドをアナへと返すブレイク。

愛銃を返されたアナは同じ様にブレイクにアレグロとフォルテを返した。

ふと何かを疑問に思ったアナは彼へと問う。

 

「何故武器の交換を?」

 

「さぁね。ちょいとした気まぐれさ」

 

肩を竦めアレグロとフォルテをホルスターに収めながら、彼はノアやRFBに声を掛けるため歩き出していった。

何故武器の交換してきたのか。その真意が彼の口から語れる事無い。

どこか腑に落ちない気分になりつつも、アナはアジダートとフォルツァンドをホルスターへと収め彼の後を追うのであった。




すまん…二組分を一話に納められなかった…。

という訳でブレイク&ランページゴースト隊vsギガノスは終了です。
次回はルージュ&Mk18vsブルート・アンジェロ。

そしてその次はギルヴァ&蛮族戦士対追跡者編へ


そろそろパーティーも終わらせましょうかね!

では次回
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