Devils front line   作:白黒モンブラン

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―咲かせる花火は決して綺麗では無い


Act135-Extra operation grave guard Ⅵ

舞台は変わり、資材搬入区画では火災現場になりかけていた。

剣戟をぶつかり、その後に爆発するような音を響き炎が煌々と、火の粉がまるで桜の花弁の如く彩り咲き舞い散る。

振るわれる大剣に臆する事もなく大鎌を振い果敢に攻めながら展開した炎を用いた技も繰り出すルージュ。

その彼女を援護する様に手にしたアサルトライフルをブルート・アンジェロへと放ちながらMk18は思う。

思っていた以上に面倒な事になってしまったな、と。

簡単に終わる事のない戦いとは思っていたが、これ程とは予想だにしていなかった。大剣を軽々と振るう改造されたブルートを相手に善戦するルージュという少女が居なければ、状況は最悪になっていたとも言えるだろう。

普通とは思えぬ力を保有していようともこの状況ではルージュは頼もしいとも言える存在であった。

 

「"上"が置いたものなのかしらね…。まぁそんな事を考えている暇なんてないけどさ!」

 

投げナイフ型C4を投擲しようにも、派手に炎をまき散らすルージュが相手と元気に斬り結んでいたら援護が出来ない。

彼女がブルート・アンジェロの隙をつき蹴りを放ちお互いの距離が開いた瞬間Mk18はナイフを投擲。真っ直ぐと吸い込まれる様にブルート・アンジェロへと向かって行くナイフ。

同時にMk18が叫ぶ。

 

「離れて!」

 

「!」

 

その声を聞きルージュは後ろへ跳躍し後退。

爆発の範囲外から彼女が逃れたのを確認するとMk18は起爆スイッチを押した。

投擲されたナイフは相手の目の前で爆ぜ、発生した爆発にブルート・アンジェロは飲みこまれる。

しかしその程度では大したダメージにはならず、それどころかナイフが爆発する寸前に大剣の剣幅で爆風を防いでいた。

 

「ちっ…反応の良い奴ね」

 

「騎士みたいな奴らは大体反応がいいですよ、腹立つ位に」

 

「それって経験談?」

 

「似た様なものと言っておきます」

 

Mk18の問いに答えながら大鎌を構えるルージュ。その視線はブルート・アンジェロを見据えていた。

先程の剣戟で感じたのは技量の高さの他、身に纏う鎧が予想以上に硬かった事。

そして纏う鎧は魔力によって防御補正が掛かっている事及び並程度の攻撃では破壊出来ない程の堅牢を有している事を彼女は見抜いていた。

 

(これの出番かもしれませんね…)

 

背に背負った武器へちらりと視線を向けるルージュ。

S地区応急支援基地から送られたそれは黒く染められた機銃の姿をしている。しかしそれは以前向こうの基地に所属する人形にマギーが送った試作武装「プロトタイプ・ナイトメア」を元に改造が施された「転禍為福」である。

光弾及び極太レーザーを放つ機構は残し、そこに「浄化モード」を搭載されているという事は付箋に記されていた内容を見て把握している。

本体以外にも専用外骨格を送られたのは、この「浄化モード」の為という事も。

 

(私が使うのは想定外かもしれませんが…使わせて貰いますね)

 

この改良が加えられた「転禍為福」を収めたケースに貼られていた注意事項を記した付箋の裏に書かれたS地区応急支援基地に所属する面々からのメッセージを彼女は思い出す。

どれもが健闘を祈るメッセージ。しかしその文面を通し、相手からの思いを感じ取っていた。

纏う炎が彼女の気持ちを現す様にまるで動物の尻尾の様にゆらりと可愛らしく揺れる。

 

(…温かいというのはこういう事なんでしょうかね)

 

小さな笑みを浮かべるも直ぐに切り替えて彼女は突進。

纏う炎を推進力にしてロケットの様に迫る。突撃してくるルージュに対してブルート・アンジェロは大剣を突き立てて突進。

まるでその姿はブレイクが繰り出す技「スティンガー」に酷似している。その速度は恐ろしいまでに速く、ルージュが攻撃を仕掛けるよりも先に到達するであろう。

 

「真似事ですか。あの追跡者といい、お前といい…ドッペルゲンガーですか?」

 

その攻撃が到達する寸前でルージュは勢いよく跳躍して回避。

急降下から地面へと向かって炎を纏わせた拳を叩きつける。

噴き出す様に彼女の周囲に現れる炎の壁。全て焼き尽くさんと鎧を纏う女騎士もどきに迫る。Mk18の投げナイフ型C4で大したダメージにはならなかったものの、その炎が違った。

大剣では防ぎ切れないと感じたのか、後方へと飛び退こうとするブルート・アンジェロ。だが炎の壁をすり抜ける様にルージュが持っていた大鎌が飛来。

空いた手で飛んできた大鎌は受け止められるが、それを予想済みであったのだろう。一瞬の隙をついてルージュがブルート・アンジェロの懐に潜り込み、格闘を仕掛ける。

 

「っ…!」

 

拳による素早いラッシュが相手の動きを封じ込め、そこから左から右へ水平に薙ぎ払う様な蹴りから元へ戻す様に今度は右から左へと蹴り払い。

そのまま勢い任せに体ごとを回転させながら次々と蹴りを繰り出していく。鎧を纏っていない所を重点的に攻め続け、確実にダメージを与えていく。

そして相手の体がくの字に曲がった所に頭目掛けて足を大きく上げ踵を叩きつけ、地面に寝かせる前に今度は顔面目掛けて体をひねりながらの蹴り上げて宙へ舞い上げつつ、自身も宙へ舞い上がり蹴りによる強烈な一撃を見舞う。

その蹴り技を次々と繰り出す荒技を披露したルージュを見ていたMk18はつい口が半開きになる程、驚いていた。

 

(いやいや…!?何あれ!?普通じゃない事は分かっていたけど、身体能力がおかしいでしょ!?)

 

彼女は知らないが、ギルヴァやブレイクも先程の技をやろうと思えばやれたりする。

「キック13」とか言った名前を付けているに違いないが。

そんな技を受けていたにも関わらずブルート・アンジェロはまだ動く。宙に舞い上げられても体勢を素早く立て直し、持っていた大鎌を投擲するがルージュはそれを容易くキャッチ。

そこに大剣を振りかぶるブルート・アンジェロが迫る。振り下ろされた一撃を大鎌の柄で受け止め、降下しながら激しく斬り結ぶ。

鍔迫り合いからお互いにお互いを突き飛ばし距離を取り、地面に着地。するとブルート・アンジェロの足元に何かが突き刺さった。

それはMk18の投げナイフ型C4だ。

 

「こっちも忘れないでくれる?」

 

起爆。

ブルート・アンジェロの足元でそれは爆ぜ、舞い上げられる。

生まれた隙。ルージュは大鎌を勢い投擲。弧を描いた刀身がブルート・アンジェロの鎧を纏っていない腹部に突き刺さり、そのまま天井へと縫い付ける。

かなり深くまで突き刺さったのだろう。引き抜こうにも中々抜けず足掻く女騎士もどき。

 

「今なら…!」

 

その場から飛び退き、Mk18の隣に降り立つとルージュは背に背負っていた転禍為福を構えると「浄化モード」を起動させた。

 

『転禍為福、浄化モードへ移行』

 

内蔵されているのだろう。音声が流れる。

すると黒い機銃の様な形をしていたそれは音を立てながら姿を変えていく。

 

「良い趣味してる」

 

褒める様に呟くルージュの目に映るのは変形を終えた転禍為福。

所々から碧く光る光脈が流れる銃は近未来感を感じさせる。

 

「何をする気…?」

 

その隣でMk18が問いかける。

砲身を片手で支え天井に縫い付けられたブルート・アンジェロへ狙いを定めながらルージュは答える。

 

「打ち上げ花火でも上げようかと。…時間を稼いでくれますか?」

 

「銃弾もC4も効かないのに、時間稼ぎが出来ると思う?」

 

「ならばこのまま延長戦を繰り広げますか?私は構いませんが、貴女はそうでないでしょう?弾やそれも無限ではない筈」

 

痛みに耐える声を出しながらも僅かずつであるが大鎌を引き抜きつつあるブルート・アンジェロ。

ルージュと違って、Mk18が今頼れるのは手にしているアサルトライフルと投げナイフ型C4の二つ。数に限りがある為、両方が尽きれば確実に足手纏いになるのは明白であった。

無くなればテレポートを用いて逃げ出す事も可能なのだが、彼女はそれを良しとは思わなかった。

ルージュがやられるとは思っていない。

だがもしもやられてしまった場合今後の事を踏まえればMk18、否…Mk18"達"にとっては厄介な相手になる事に違いなかった。

はぁ~と軽くため息をつくMk18。伏せていた目を開くとアサルトライフルをブルート・アンジェロへと向ける。狙いを定める目は覚悟を決めた目つきをしていた。

 

「一発で決めて。その銃、時間がかかるやつみたいだし」

 

銃声が鳴り響く。飛び出る薬莢が地面に落ちては音を立てて転がる。弾が尽きたら素早く新たな弾倉を差し込み、引き金を引き続ける。

 

『エネルギーライン、全段直結』

 

その隣で転禍為福が発射に必要なエネルギーをチャージしていく。

 

『機体固定用パイル、ロック』

 

発射に至るまでの機能が次々と行われていく。

だが発射まではまだ時間がかかる。

普通なら早くと慌てる所。だがルージュは至って冷静であった。

 

『ゲージ内、正常加圧中』

 

「ねぇ!まだなの!?そろそろヤバいわよ!」

 

急かす声が響く。

それはルージュも気付いている。深くまで突き刺さっていた刀身は既に半分以上引き抜かれていた。

転禍為福の浄化モードによるチャージ中は動く事も出来ない。もし撃てなかったら二人共終わりだ。

 

『ライフリング、回転開始』

 

音が響く。

もう少しで発射できると判断したルージュは背の炎を勢いよく噴射させた。

転禍為福の浄化モードでの発射は専用外骨格を身に付けていたとしても相当の反動がある。その事を把握していたルージュは展開した炎を反動抑制用噴射装置として利用しようと考えていた。

しかしこれでどこまで抑えられるかは分からない。だが何もしないよりは良いと言えるだろう。

そして時は訪れた。

 

『撃てます』

 

「…ッ!」

 

引き金を引かれる。

発射の反動は凄まじく、専用外骨格と即席で行った炎による反動抑制噴射装置があっても彼女は立っていた位置から大きく後ろへと下がってしまう。

砲口から放たれた巨大な光弾は放物線を描く。当たるかどうか怪しく感じる。

だがルージュにとってその事は想定範囲内であった。

大鎌が引き抜かれ地に落ちる。地面を跳ねルージュの足元に転がり、ブルート・アンジェロが降下し始めた瞬間。

 

「!」

 

まるで合わせたかの様に光弾がブルート・アンジェロに直撃し爆ぜた。

悪魔を大幅に弱体化させる一撃は過剰なまで魔の技術を施されたブルート・アンジェロを一気に弱らせる。

一方でルージュは転禍為福から放たれた光弾を見て納得した様に呟いた。

 

「成程、ホーリーウォーターに似た力ですか。…しかしどこでそんなものを得たのでしょう?石ころの様に落ちている訳では無いのですが」

 

疑問に思いながらもルージュは転禍為福を元の形態へと戻し背に背負い、大鎌を拾い上げると地面に墜落しゆっくりと立ち上がるブルート・アンジェロへと視線を向ける。

防御力は激減し、動きも鈍く大剣を杖代わりにして立ち上がるのが精一杯の様子であった。

 

「弱っている…?」

 

「その様ですね。打ち上げ花火が結構効いたみたいです」

 

Mk18の隣に並び立つルージュ。

戦況は一気に傾いた。それはこの戦いの終幕を示していた。

大鎌を構えるルージュ。止めを刺そうと歩き出した時、Mk18が呼び止める。

 

「悪いけどこっちが弾切れなの。…これで援護はするけど巻き込まれないでね」

 

そう言って見せたのは投げナイフ型C4。

転禍為福の一撃を受けるまでは大した効果を得られなかった武器であるが今は違う。弱体化をしており、鎧にかかっていた防御補正も無いに等しい今、確実なダメージを与えられるだろう。

 

「分かっていますよ。…さて、大きな花火でも上げましょうか」

 

「綺麗な花火になるとは思えないけど」

 

「そこまで拘らなくていいと思いますよ」

 

悪魔の為に綺麗に咲かせてやる花火などない。

地面を蹴りルージュはブルート・アンジェロに迫る。彼女が迫った事により重くなった体を何とか動かし、大剣をまるで居合の構えに似せた態勢を取った。

ブレイクの「スティンガー」に似せた技に続き、今度はギルヴァの技である「疾走居合」に似せた技を放とうとするブルート・アンジェロ。

その様子にルージュは呆れた様な声を上げた。

 

「また真似事ですか。いい加減見飽きました…!」

 

攻撃が繰り出される前に大鎌を投擲するルージュ。

大鎌が突き刺さった直後に炎を推進力にブルート・アンジェロに近き、柄を握ると肉体を抉る様に背後へと回り込む。そこにMk18が投擲したナイフがブルート・アンジェロの胸部に突き刺さった。

それに気づきながらもルージュは大鎌を力強く薙ぎ払う様に動かす。

相手の肉質を無視した攻撃はいとも簡単に切り裂いていき、高身長であるブルート・アンジェロを上半身と下半身に別れさせ、勢いが強すぎたのか上半身が回転しながら宙へと舞い上がる。

 

「終わりよ」

 

舞い上がる上半身を見てMk18が起爆スイッチを押す。

二人の間で爆発が起こり、爆炎に包まれるブルート・アンジェロの上半身。跡形もなく消え去っていき、上がった花火は決して綺麗でもないが咲き誇った。

訪れる静寂。展開していた炎を解除しMk18の方へ振り向くルージュ。

しかしそこには彼女の姿はなく、この場に居たのはルージュ一人だけであった。

辺りを見回しても、何処にも居ない。

彼女が何処へ消えたのか分からない。少しばかり寂しさを覚えながらもルージュは探す事はしなかった。

 

「…またお会いしましょう、Mk18」

 

届くかどうか分からない。

それでもこの声が聞こえたらいいなと思いながら彼女は資材搬入区画を後にした。

 

 

アルテミス、ギガノス、ブルート・アンジェロ…。

強力な魔物が討伐された今、残るのは追跡者のみとなった。

中央動力区画にギルヴァが辿り着いた時には蛮族戦士が追跡者と戦っていた状況であった。

何やら大きな事でも起きそうだったのか。蛮族戦士が何かを仕掛けようとしていたのだろう。

ギルヴァが訪れた事に気付くとやろうとしていた事を中断。彼に声を掛ける前に追跡者が話しかける。

 

「あはっ…。やっと来てくれたんだぁ…。待っていたよ、君の事を」

 

一部姿が変わりながらも狂った笑みを浮かべる追跡者。

しかしギルヴァは答えようとはしない。

 

「さぁ、心ゆくまで楽しもうじゃないか」

 

長くなってしまったパーティーはいい加減終わらせなくてはならない。故に時間を掛ける気はなかった。

雷撃鋼 フードゥルを装備し構えるギルヴァ。

追跡者を見据えながら口を開いた。

 

「悪いが―」

 

刹那、彼の体から碧い何かが放たれ姿が変わっていく

数秒経たぬ内にそれは消え、その場に居たの一体の蒼い悪魔だ。

 

「遊ぶ気などない」

 

早々に終わらせるため。

人から魔へと姿を変えた男は追跡者へと突進した。




という訳で次回はギルヴァ編!

さぁて…終わりにしようか!!

では次回ノシノシ
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