Devils front line   作:白黒モンブラン

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幕引きは手短に


Act136-Extra operation grave guard Ⅶ

中央動力区画。

そこでは魔の暴走を抑え我が物とした追跡者を圧倒する蒼い悪魔の姿。

 

「くっ…!」

 

飛んでくる強烈な攻撃の数々。

苦い表情を浮かべながらも追跡者は上手く躱し、そして刀で上手く防いでいく。

反撃する隙など与えない。ギルヴァの攻撃に防戦一方の追跡者。そしてただ見ている訳には行かないのか、追跡者の後方から大剣を大きく振り上げた蛮族戦士が迫る。

 

「ッ!?」

 

薄ら寒いのを感じた追跡者は横へと飛び込み攻撃を回避し、地面を蹴り後ろへと飛び下がった。

彼女の目が二人を鋭く睨む。

 

「二人がかりとはね…?」

 

刀を杖代わりにして立ち上がる追跡者。

それに対しギルヴァはフードゥルを解除し無銘の鯉口を切り、蛮族戦士は右腕の大剣を青く光らせた。

追跡者の文句など知った事ではない。そもそもフェアプレイなどこの二人にはないのだ。

故に二人は答える。

 

「戦いに綺麗も」

 

「キタナイ モ」

 

これは試合などではない。

 

「ない」「ナイ」

 

殺し合いであると。

どちらかが生き残り、どちらかが死ぬ。ただそれだけの事。

二人から放たれる殺気が中央動力区画全てを包み込む。その濃度は空間すらも侵食し震わせる。

ここから先、何が起きるか分からない。

ただ一つ言えるとするのであれば…追跡者がこの二人に勝つ事はゼロに等しいであろう。

このまま追跡者が二人に圧倒されればの話であるが。

 

「そっかぁ…」

 

圧倒され、戦意喪失するかと思いきや追跡者の様子は違った。確かに一対一を望んでいたのは事実であり、その声は何処か残念がっている様にも見える。

だが同時にこうなる事も予想していた。

 

(だったらさ…)

 

何よりこのままやられるつもりなどない。ニヤリと笑みを浮かべる追跡者。

今の状態で勝てないのであれば、更に上へと行くだけ。全てを切り捨て魔へ堕ちればいい。

この姿も、感情も、何もかも全て。

 

(これをやっても文句はないだろう?)

 

内包していた魔力を全面開放。

保っていた女性としての姿が段々と魔物へと姿を変えていく。

最早細胞レベルで変貌を遂げていく追跡者。魔力によって具現化していた翼は更に大きく広がり、人形の姿は欠片一つ残っていない。薄っすらとだがその姿はギルヴァがデビルトリガーを引いた時の姿に似ている。

何もかもを切り捨て、愚直なまでに魔へと堕ちた者の姿だけが残っていた。

 

「…」

 

言葉を発する事無く、魔物へと変貌した追跡者…D.チェイサーは背の翼から魔力を勢いよく放出させながら刀と大剣を構える。ここから本番であり、最後である。

訪れる静寂。構えた武器の刀身の切っ先が向く先は敵。そして―

 

「!」

 

瞬間移動したかの様に三人の姿が消え、目で追う事すら叶わない程の速さで剣戟の嵐が広間の中央で激突した。

飛び交う攻撃。そして何処かへ飛んでいく斬撃。飛んで行ったそれは壁を容易く切り裂き、気付かぬ内に天井が轟音立てて大きな穴をあける始末であった。

それでもこの者達は止まらない。落下してきた瓦礫すら切り裂き、それどころか地に落ちる事を許さないのか剣風で落とさぬ様に瓦礫を宙に維持させるといって芸当までやってのける。

 

「ヌン…ッ!!」

 

しかし剣戟はそう長く続かなかった。

見た目は大剣。しかし彼にとってはそれは爪。

蛮族戦士は青く輝く刀身を薙ぎ払い、D.チェイサーに一太刀浴びせ壁へと吹き飛ばして戯れを強制的に中断。

強烈な一太刀を受け吹き飛ばされたD.チェイサー。壁に体が叩きつけられても決して表情を歪める事などしなかった。そしてその身は最早悪魔に成り果てたのか、蛮族戦士に斬られた箇所が素早く修復していた。

狙いをギルヴァから蛮族戦士へと切り替え、突進した。

 

「…イイダロウ」

 

再び勝負を仕掛けてきた事を感じ取った蛮族戦士はニヤリと笑みを浮かべ、大剣を構えた。

勢いよく地面を蹴り先程とは段違いの速さで蛮族戦士の目の前まで迫るD.チェイサー。

懐に潜り込む様に姿勢を低くし、彼女は居合の姿勢から刀の柄を握る。

最初の勝負の時と同じく空いた手で攻撃を受け止めようした蛮族戦士は気付く。D.チェイサーの手に大剣が握られていない事に。

 

「…!」

 

鋭い何かが蛮族戦士へと迫る。

それは先程まで彼女が握っていた大剣。魔力を用いられた大剣はまるで生きているかの様に自立して動いており、D.チェイサーが疾走居合を仕掛けると同時に蛮族戦士へと飛ばされていた。

後ろへと飛び退く蛮族戦士。迫る刀身。

その時蛮族戦士へと向かっていた大剣が何処から飛んできた群青色に輝く幾つもの刀によって撃ち落され、蒼い悪魔が蛮族戦士の前に降り立つとD.チェイサーの放つ攻撃の一瞬に合わせ無銘の刀身を振り下ろした。

甲高い音が響き渡る。

自慢の一撃を弾かれ、その反動で体勢が崩れるD.チェイサー。

自身と同じ技を阻止し素早く次の攻撃へと移行するギルヴァ。

どちらが次の攻撃を繰り出せるのかなど見ているだけでも分かるだろう。

 

「はっ…!」

 

鞘による殴打。二回目の攻撃を当て腕を後方へ引くと逆手で柄を握り抜刀。

左下から右上と一閃。そのまま素早く連続してD.チェイサーの体を右肩から斜め下に切り裂く。

攻撃を受けた箇所から噴き出す血。しかしそれはすぐに納まり魔を解放している為、斬られた箇所が再生を起こし始める。

 

―全く…面倒なもんを身に付けたなぁ。んで?どうする?

 

(どうするもなにもやる事は変わらん)

 

蒼の問いに対し己の内で答えながらギルヴァは無銘を振るう。

再生するのであれば、再生が追いつかなくなる程のダメージを与えればいい。

体を翻し斬撃を浴びせ、今度は刀の柄を両手に握り逆袈裟で斬り上げD.チェイサーを浮き上がらせる。

反撃の隙は与えない。上段の構えを作り刀身に魔力を纏わせる。

片足を一本踏みこむと同時に彼の声が轟く。

 

「っぜあぁっ…!!」

 

振り下ろされる刃。蒼い魔力が弧を描き、余りの威力に空間が振動。

強烈な斬撃がD.チェイサーの再生能力を追い付かなくなる程のダメージを与える。

普通ならこの一撃で大概の敵は消滅するのだが、今回は違う。それすらも見越していたギルヴァは魔力で錬成した幻影刀を吹き飛ばしたD.チェイサーの上から雨の如く降らせた。

降り注いだ群青色の雨により身動きが取れなくなるD.チェイサー。そしてこの時を待っていたかの様にギルヴァの横を通り過ぎる様に青い光を纏いし大剣が駆け抜けた。

穿ちし一撃は最速であり、手負いであり五月雨幻影刀によって動けないD.チェイサーが避けれる筈もない。

流星の如き速さで駆け抜けた蛮族戦士の一撃は疑似的ながらもデビルトリガーを引いたD.チェイサーの体の半分を吹き飛ばす。そして攻撃を受け過ぎた事もあり彼女の体は再生が追い付かなくなっていた。

攻撃する余裕も反撃する余裕も回避する余裕もない。ただ体が地面につくまで無防備な状態を晒し続けるD.チェイサー。

そしてこの男がパーティーの幕を引こうと最後の攻撃に出ていた。

元より長くなってしまったパーティを終わらせるため、早々に終わらせる気でいたギルヴァ。

彼はD.チェイサーの目の前まで急接近すると居合の構えを作りながら魔力を周囲に放出。

発せられる魔力が風となって吹き荒れ、まるで渦の様に回っており、その技の範囲が異常なまでに広い事を察したのか蛮族戦士は素早くその場から離れる。

 

「…斬る」

 

ノイズ交じりの声がかかり無銘の鯉口を切る音が響いた瞬間、瞬きすら許さない神速の斬撃が無数に奔った。

視界に映る景色がまるでずれ落ちたかの様な錯覚がおき、無数の斬撃に巻き込まれたD.チェイサーは地面に墜落する手前で時が止まった様に静止。

いつの間にか居合の姿勢から片膝をついた蒼い悪魔は無銘の刀身を鞘へと納め始めていた。

ただ静かに、そしてゆっくりと納められていく刀身。

刀身の殆どが納められ、鞘と鍔の間から見える玉鋼がほんのわずかに輝きを放ちかち合う音が小さく鳴った時、カランと音を立て地面に何かが落ちる。

そこにあったのは彼女が持っていた刀。しかし何故か所有者の姿はなかった。まるでどこかへ消えたかの様に。

 

「…ホウ」

 

感嘆な声を上げる蛮族戦士。

ここまでの力を持つ強者。いつか死合をする為に挑戦を申し込んでおきたい。

その他にも理由はあるのだが、そのために協力したのだ。

挑戦を申し込むために声を掛けようとした時彼よりも先に魔人化を解除したギルヴァが口を開く。

 

「断る」

 

それはまるで挑戦を申し込む事を分かっていた様な口振りであった。

理由を尋ねられる前にギルヴァは話し出す。

 

「何を考えているのかは知らん。だが貴様の私情でこちらは振り回されたくないのではな」

 

「…」

 

「納得が行こうが行くまいが俺の知った所ではない。シーナに目を付けたのも不味かったな」

 

ブレイクや処刑人、ルージュ、そして自身が蛮族戦士に目を付けれた事はギルヴァはとうに分かっていた。

そしてシーナにも目を付けている事も。

確かに魔の技術を扱う者であるが、それは高みに上る為のものではない。悪魔という強敵に立ち向かい、仲間を守る為のもの。

同時にS10地区前線基地を統べる指揮官なのだ。そんな立場に就く彼女に何かがあれば基地全体が大きく麻痺する。ましてや彼女を狙う時点で敵対行動だと思われても可笑しくない。

 

「何より貴様と殺し合った所でこちら側が得られるものなどない」

 

そう言い切ると彼は追跡者の残した刀を回収し、中央動力区画の出口へと歩き出す。

残された蛮族戦士はそこから先は何も言わず、彼の後を追っていった。




はい、という訳で対象の敵全て討伐完了です。
これにてコラボは終わり!…と言いたいのですが、もう一話だけ続きます。
と言っても墓場から帰還した後の話になります。
それにご機嫌斜めの二代目お姫様をなだめないといけませんからね。
もう少しだけお付き合い下さい。

それと試作強化型アサルトさん、申し訳ない…。
戦った所で得られるものがないという理由で挑戦を断らせて頂きました。
他にも色々理由を告げるべきかと思ったのですが…中々思い付かず。
いや…ホント申し訳ない…。

で、でもギルヴァさんの技を見れたからいいよね!?
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