Devils front line   作:白黒モンブラン

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─語るのは主へのちょっとした思い─


でびふろっ!えくすとら!よんはつめ!

代理人に店の中へと案内されたレーゾンデートルらは、まるでかつて彼女達の主が訪れた時の場面を再現する様に奥のカウンターに腰かけていた。

早速話へと移ろうとレーゾンデートルが口を開く前に、代理人は手を上げ止めた。

 

「まずは何かお飲みになりませんか?見た所、少々お疲れのご様子ですし…それに」

 

代理人の視線が机に突っ伏しているフォルテへと向けられる。

席についてからというものの彼女は突っ伏した状態のまま微動だにしていなかった。

隣に座るアレグロは咎めるつもりはなさそうであるが、手を額に当て、呆れた表情を浮かべている。

確かに先に何か注文する方が良いと判断したレーゾンデートルは頷き、隣に座るシルヴァ・バレトとペインキラーと共にメニュー表を見始め、アニマはアレグロと共に見始める。フォルテに限っては動く気配がないので、代わりにアレグロが伝える事となった。

 

「そうねぇ…欲を言えばピザなんだけど、流石に無理でしょうし。私はペペロンチーノをお願いしようかしら。アニマ、貴女はどうする?」

 

「俺はそうだな…。アレグロと同じのをくれ」

 

アレグロとアニマの注文を聞き、畏まりましたと頷く代理人。

そして彼女はちらりとフォルテの方を見て、アレグロへと尋ねる。

 

「そちらの方のは…」

 

「こいつにはストロベリーパフェを。出来れば一番に渡してやって」

 

それに、とアレグロへと前置きを呟くとコップに注がれた水を一口飲んでから喋った。

 

「いつもの通りじゃないとこっちが調子狂うのよ」

 

「ふふっ…優しいのですね?」

 

「さて、そいつはどうかしらね」

 

代理人の台詞に対し肩を竦めるアレグロ。

少しばかり表情が緩んでいるのを代理人は見逃さなかったのだが、あえてその事を指摘する事もなく、そのままレーゾンデートルたちの方へと向かって行った。

彼女達の方も決まっていたみたいでペインキラーはオレンジジュース、シルヴァ・バレトは紅茶を。

そしてレーゾンデートルはコーヒーを注文。

頼んだ品がやってくるまで彼女らは静かに待った。

暫くして糖分を得られたフォルテが復活を果たし各々が飲食を楽しんだ後、漸くと言うべきかレーゾンデートルらが一体何者なのかという話へと切り替わっていった。

別段隠す事でもなく、問われたら答えるというレーゾンデートルの意向の元、彼女に説明するように言われたシルヴァ・バレトが自身を含め、このカウンター席に座っている一風変わった者達の事を明かした。

 

「成程…。あの方々が愛用されている銃。そしてそれが皆さまであり、何故か人の姿となってこちらに迷い込んできたという訳ですか」

 

「ああ。だが一つこちらから聞きたい」

 

「何でしょうか?」

 

「店に来た時、貴女は何かを察している様子だった。あの娘から聞いた、と言ってたが…」

 

その問いはレーゾンデートルも含め気になっていた事であった。

シルヴァ・バレトの問いに代理人が答えようとした時、オレンジジュースを半分程飲み終えたペインキラーがコップをそっと机の上に置き口を開いた。

 

「あの娘って、M4A1の事でしょ?」

 

「という事は…貴女が」

 

「正解。私がペインキラーよ」

 

迷う事もなく、自分がそうであると伝えるペインキラー。

 

「ちなみに私を使ってくれているのは、シーナ・ナギサ。覚えているでしょ?」

 

「ええ。覚えていますよ。彼女はお元気ですか?」

 

「今の所、ね」

 

その含みのある言い方に代理人は首を傾げる。

その言い方はまるで今まで離れていたと言っている様な気がしたからだ。

彼女がその事に問う前にペインキラーは言葉を続けた。

 

「なんせ私はそれなりの間、彼女の傍を離れていたからね。再会果たしたのはつい最近よ」

 

「そうなのですか?」

 

「ええ。…まぁあの娘も色々あったとだけ言っておくわ。あの娘は私を捨てるつもりで居たし、私もそれでいいと思っていたからね。所があの人、シーナの教官と来たら…」

 

呆れた様に全くと呟くペインキラー。

そして彼女はフッと切なそうな笑みを浮かべた。

 

「まぁ…五体満足で彼女の元に戻れたのは素直に喜ぶべきなんだろうけど」

 

それ以上の事はペインキラーは語ろうとはしなかった。

切なそうな笑みから、少女らしい笑みを浮かべ話題を変え始めた。

 

「さて私の話はこれでおしまい。アニマ、次は貴女よ」

 

突然指名された事により、つい噴き出しそうになるアニマ。

それを何とか抑えつつ、紙ナプキンで口元を拭いつつ彼女はペインキラーを睨んだ。

 

「何で俺なんだよ!?いつから指名制になってんだ?!」

 

「うーん…何となく?」

 

「こいつッ…」

 

何か言いたげであったが、アニマは盛大に大きなため息をつくと手にしていたフォークを置いた。

 

「話すが良いが…っても何を話せばいいか」

 

面白い話でもあっただろうかと思いながら、アニマは先程ペインキラーが話していた内容を思い出す。

自身の主に関して話していたと思うとアニマは自身の主であるネロの事について話し始めた。

 

「流れ的に自分らの主の事についてみてぇだし…そんなので良いか?」

 

「ええ。とは言ってもこちらからお尋ねした訳ではありませんが」

 

「んじゃ今から話す事はそういう事についてにしようか。で、だ…俺の主はまぁ…色々訳アリじゃねぇかな」

 

訳アリと言っていい程、アニマの主であるネロ…旧名処刑人と呼ばれる彼女は複雑な経緯がある。

敵対して、大事な人を失って、右腕がアレになって…。

アニマがネロの元に渡った時期はそういった事が起きた後の事であったが、記憶をしっかりと受け継いでいるのかそれら全ては昨日のことのように覚えている。

だからといってそれらの事を明かす気などアニマにはなかった。

内容が色々物騒。のんびりとした空間でそんな事を話す事に気が引けたからだ。

 

「まぁアレだ…ガサツだが面倒見は良い。良い主に出会えたとは思ってるよ。…結構短いが話せる内容はこれくらいだ。んじゃシルヴァ・バレト、次は任せる」

 

「私か」

 

アニマから指名され、シルヴァ・バレトは味わっていた紅茶が注がれたカップをゆっくりとソーサーの上に置いた。

 

「彼女の事か…ふむ、そうだな」

 

指を顎に当て、思い出す素振りを見せるシルヴァ・バレト。

銀の弾丸と名付けられた常人では決して扱う事の出来ないその銃は、とある人形と出会った事によって今ではその者にとってなくてはならない存在となっていた。

 

「よくもまぁ私を使おうと思ったなと常々思う」

 

「と、言いますと?」

 

代理人の問いにシルヴァ・バレトは親指を立てると傍に立て掛けてある布に包まれた自身に差した。

対物ライフルすら凌駕する長大な銃身。本来は折り畳み式であるのだが、今回は折り畳んでない状態で布に包まれていた。

口径29mmという思わず笑いだしてしまう様なそれはどう考えても人形が扱う様なものではない。

そんな銃を異世界の自分は平然と扱っている。

その事を察した時、代理人は引き攣った笑みを浮かべた。

因みにであるが今店内に居るのは人形達のみ。それもあの道路橋の一件で関わった、及びその話を聞いた者達しかいなかったりする。

故にシルヴァ・バレトという常識外かつトチ狂った銃は代理人どころか戦術人形の彼女達ですら言葉を失う程の代物と言えた。

 

「それどころか弾を切らしたら私を鈍器にして振り回したりするのだぞ?」

 

「異世界の私は随分とパワフルなのですね…」

 

「パワフルだけで片付く方がまだ可愛い方だ。…まぁそんな事はどうでもいい」

 

紅茶を一口含むとシルヴァ・バレトは言葉を続ける。

 

「まぁこんな私を扱ってくれている事には関しては非常に嬉しく思う。後は無理をして欲しくないぐらいか。私が死のうとも、主が死なれるのは我慢ならん」

 

「…シルヴァ・バレトさん」

 

「化け物、狂気の産物と言われた武器…そんな武器しかなかった薄暗いあの場所で、私やニーゼル・レーゲンを見つけ愛用してくれている事に関しては嬉しく思う。だが私は所詮武器。いずれこの身が朽ちる事はあろう。だが彼女は違うだろう?確かに人の姿をしているが、ただの精密機械の塊だとその言葉で片付けるのは違うと思う」

 

「…」

 

「…いつまで稼働するかどうかと気にするのではない。どのように動き続けるか。どんな事に対してでも良い。それだけは忘れないで欲しいと思う」

 

店内が静まり返る。

伏せていた目を開き、シルヴァ・バレトは静かにティーカップを持ち上げる。

少々冷たくなった紅茶を飲み干すとシルヴァ・バレトは笑みを浮かべた。

 

「らしくないな。少し熱くなってしまったみたいだ。…では後は任せるぞ、アレグロ、フォルテ」

 

ペインキラー、アニマ、そしてシルヴァ・バレトの話を聞き、店内に居た全員が察した。

この者達はそう簡単に己の胸の内を明かす事はしないという事を。

だがそれも無理のない話と言える。

それぞれの銃達の主らは一つや二つ、もしくそれ以上の何かを抱えている。

支える側である銃達からすれば心配すべき事であるが、だからといってそれを口にするという気はない。

理由は様々にあるが、この落ち着いた雰囲気で暗い話を持ち出す事に対して抵抗を感じているのが大きく、それを思っているからこそ彼女らは余り語ろうとはしなかった。

 

「はいはい」

 

自分達が指名された事に適当に返事するアレグロ。ちらりと隣に座るフォルテを見ると、幸せそうな表情を浮かべてストロベリーパフェを頬張る姿を見て完全に復活したと判断。

最後の一口を口へと放り込み、紙ナプキンで口元を拭くと、フォルテへと話しかける。

 

「私達の番よ、フォルテ。何についてかは分かってるわね?」

 

「ああ。途中からだったが、何についての話かは理解しているさ」

 

「それで良いわ。さて…あいつの事ねぇ…」

 

若干困り気味といった表情を浮かべるアレグロ。

するとその表情を見て、フォルテが思った事に口にした。

 

「あれだな。浮気すんな、だな」

 

「う、浮気?」

 

突然の台詞に代理人がつい聞き直す一方でアレグロはあー…と納得した声が上げた。

 

「確かにあの時の事は浮気ね。女たらしならぬ銃たらしよ、アレは」

 

「あの、話が見えてこないのですが…」

 

「あら、ごめんなさい。そうねぇ…分かりやすく言えば、以前にとある作戦で私達の主…まぁ赤いコートのあいつが、私達の後輩にちょっとばかし浮気したのよ」

 

「アレグロさんとフォルテさんの後輩ですか?」

 

その問いにアレグロは頷く。

 

「ええ。アジダートとフォルツァンドと言ってね。ベースはベレッタM93R。無茶苦茶な連射に耐えられるように極限にまで大型、堅牢にしたものよ。連射に特化しているから、どっちかと言えば私の後輩に当たるのかもね。その娘らは、別の基地のある人形が使っているの。ある作戦で共に行動していた際に私らの主がちょっとだけ浮気した、という話よ」

 

「まぁ私達もアジダートとフォルツァンドの主に使われているから…こりゃどっちもどっちか?」

 

「まさか。10割中10割、あいつが悪いわ」

 

「だな」

 

お互いに肩を竦めながらお互いに苦笑いを突き合わせるアレグロとフォルテ。

 

「けど…あいつが居なかったら、私達が生まれる事なんてなかったんだがな」

 

「と、言いますと?」

 

「あいつが無茶苦茶な連射して銃をぶっ壊しまくっていなかったら、私達があいつの元に行く事はなかったという事さ…ただ、な」

 

「ただ?」

 

「…あいつが居なかったら、『あの人』が死ぬ事なんてなかったんだろうなってつい思っちまうのさ」

 

アレグロとフォルテ。

音楽用語の名を与えられた白と黒の銃は決して忘れはしない。

伝説的なガンスミスである彼女が手掛けた最後の作品、遺作となったのが自分達である事を。

悪魔によって殺されたガンスミスである彼女が、ブレイクに自分達を託した事を。

再び訪れた静寂にアレグロはため息を付き、フォルテを咎める。

 

「…フォルテ、止めておきなさい。その話はここでするものじゃないし、彼を恨むのも違うわ。雑に扱っている訳じゃないのだから」

 

「…あいよ。アレグロが言うならそうするさ」

 

「そうしなさい。…まぁ私達もさっき話した彼女らと同じ様に愛用している事は非常に感謝してるわ。メンテナンスもしっかりやってくれるから、言う事なしね」

 

重たい空気を脱しようとアレグロが話題を元へと戻し、主に対する思いを口にする。

そのまま最後となったレーゾンデートルへと振ろうとした時、レーゾンデートルが椅子から立ち上がった。

突然彼女が立ち上がった事に店内に居る者の視線が飛んでくるが、それを気にする様子すらない。

一体どうしたのだろうかと思いアレグロが尋ねる。

 

「どうしたの?」

 

「…例の鏡の様子を気になる。少し見てくる。シルヴァ・バレト、支払いは頼んだ」

 

シルヴァ・バレトが答えるのも待つ事無く、店の出入口へと歩き出すレーゾンデートル。

そのままドアノブを握った時、何故か彼女は立ち止まった。

再びどうしたのだろうかと誰しもが思った時、レーゾンデートルが振り向いた。

 

「…多分帰り道で迷う。誰か付き添いを頼めないか?」

 

無表情にも関わらず頬を赤らめながら言ったその台詞に全員がずっこけた。

そして全員が同時に思う。あ、覚えてないのね…、と。

 

 

なんやかんやあって、店を出たレーゾンデートルは自分達がこの世界に迷い込む際に存在した例の鏡『映されし異界の鏡』がある路地の袋小路へと向かって歩いていた。

その隣には付き添いを自ら志願したフォートレスが歩いているのだが、二人の間に会話が生まれる事は今の時点ではなかった。

 

「あ、あの!」

 

だがそんな会話一つない時間はまる意を決したかのようにレーゾンデートルへと声を掛けたフォートレスによって終了を迎える。

歩きながらも声をかけてきたフォートレスへ顔を向けるレーゾンデートル。

 

「ギルヴァさんはお元気ですか?」

 

自身の主がギルヴァである事は、店に来て最初の内から話している為、フォートレスはそれを知っていてもおかしくはない。

そして彼女が自身の主の事を何故聞いてくるのか…レーゾンデートルはそれを既に察していた。

 

「…元気だ。特に変わりはない」

 

実は前の作戦で、とある事情で愛刀を自身に突き立てたなど口が裂けても言える筈もなく。

余計な心配はさせまいとレーゾンデートルは元気である事だけを伝えた。

 

「…すまない」

 

そしてレーゾンデートルはフォートレスへと謝罪の言葉を口にした。

突然謝られた事にえ?と声を漏らすフォートレス。何故謝るのかが分からず、目を丸くしていた。

どうして謝るのかと彼女が問うとした時、レーゾンデートルがその理由を明かした。

 

「…練習したとみる。本来であれば私ではなく、主…ギルヴァが来るべきだった」

 

「それは…」

 

映されし異界の鏡は気まぐれな性質を有している為、何時でも世界を渡る事は出来ない。

今回レーゾンデートルらがこちらの世界に迷い込んできたのも、ある意味偶然とも言えるのだから。

 

「…次は彼を連れてくる」

 

できるかはどうかなどではない。

必ず連れてくる。台詞の裏に隠れたその思いをフォートレスは感じ取ったのだろう。

 

「…はい。必ず連れてきて下さいね」

 

彼の愛用する銃…レーゾンデートルと約束を取り付ける事にした。

 

「待っていますから」

 

「…ああ、承知した」

 

そこで会話が途切れるが、同時に二人は例の鏡がある袋小路に到達。

陽の光が薄っすらと入るそこ。そして魔訶不思議とも言える鏡が宙を浮かびながら佇んでいた。

この鏡へ飛び込めば元の世界へと戻れるのだが、何かを感じ取ったのかレーゾンデートルはそれの前に立つとそっと鏡へと手を触れた。

 

「…!」

 

普通であれば通り抜ける筈の手。しかし手は中へと沈む事もなく、只々鏡の冷たさが伝わってくるのみ。

 

「ど、どうしました…?」

 

隣に立つフォートレスが不安げ表情でレーゾンデートルへと尋ねる。

どうしたものかと思うレーゾンデートルだったが、そのまま今起きている事を正直に明かした。

 

「…どうやら帰れなくなったらしい」

 

「えっ…?」

 

フォートレスがその言葉を理解するのに相当時間が掛かったのは言うまででもない。

 

 

「「「「「帰れなくなったぁっ!!??」」」」」

 

レーゾンデートルを省く五人の声が店内に響き渡る。

それも無理もない。自分達が元の世界に戻る為には映されし異界の鏡は必要不可欠。

だがどういう訳か通り抜ける事が出来なくなってしまったのだから、それは当然の反応と言えるだろう。

 

「おいおい、マジかよ。このままこっちでのんびりスローライフでも送るか?」

 

「馬鹿言ってんじゃないわよ!」

 

フォルテの冗談にアレグロの怒号が飛ぶ。

 

「鏡自体が消失していない点を考えると、所謂扉が開いていない状態か?」

 

「…そう考えて良い。私の記憶が正しければ鏡に向こうの景色が映る筈。だが先程見た時は映っていなかった」

 

アニマの問いにレーゾンデートルが答え、傍に立っていたシルヴァ・バレトがふむと頷く。

 

「となると暫くこっちで過ごす必要があるわね。でもどっかのホテルで泊まる金は…」

 

「ないな。さっきの食事代で私達全員無一文だ」

 

「ですよねぇ…」

 

無一文という事実をシルヴァ・バレトから突き付けられるとペインキラーは項垂れる。

分かっていた事であったが、現実を知ると何とも言えないもの。

どうしたものかと唸る六人。最悪野宿でもするかとレーゾンデートルが思った時、代理人が手を上げ、六人に伝える。

 

「流石にこの店で泊まるとは行きませんが…グリフィンの基地で泊めてもらうのはいかがでしょうか」

 

その提案にレーゾンデートルらの視線が代理人へと向けられる。

それが可能であるのであればそうしたい所である。そこにシルヴァ・バレトが尋ねる。

 

「良いのか?私達はグリフィンの者ではない。全くの部外者だ。そんな奴らを泊める事に向こうが許すとは思えんのだが」

 

「事情に関しては私からお話しいたします。それに貴女方はあの道路橋での一件で悪魔という存在を、そしてその悪魔を討伐した者達を知る方々です。もし貴女方があの時の事を知っていると知り、誰かが尋ねきたのであれば…それはそれで色々面倒なので」

 

確かにあの時の事が流れてしまえば、色々面倒なのは事実。

その事が分からない彼女らではない。

しかし不安が残る。思案しかねた時、レーゾンデートルがシルヴァ・バレトへと声をかける。

 

「…シルヴァ・バレト」

 

「む?」

 

「…ここは甘えるしかない。礼はここに滞在している間に返せばいい」

 

そう言ってレーゾンデートルは閉じている目を開き、シルヴァ・バレトを見つめた。

淡い水色の瞳。そこに宿る何かを感じ取ったのかシルヴァ・バレトは薄っすらと口角を吊り上げ、代理人の方へ向く。

 

「済まないが…ここは甘えさせてもらっても良いだろうか?」

 

「畏まりました」

 

後に映されし異界の鏡が復帰するまでの間、レーゾンデートルらは数日間だけグリフィンの基地で世話になる事になったのだが、彼女らが居たのは結局の所、たった数日間程度であった。

因みにその数日間ではこんな事があった。

 

 

まず一日目から三日目…。

一日目ではグリフィン基地内部でレーゾンデートル、シルヴァ・バレト、アレグロ&フォルテの四名が戦術人形の訓練相手を務めペインキラーとアニマは監視役を務めたのだが、四人の戦い方は戦術などあったものではなかったらしい。

訓練に参加した多くの戦術人形は訓練相手を務めた彼女らに対してこう感想を述べている。

 

「相手してくれたのはレーゾンデートルさんだったかな…。あの人、どういう動きしてるの?気を抜いたら一瞬で距離を詰められてペイント弾装填したリボルバーを突き付けられてたのよ?刀とか持っていたら絶対にすれ違いざまにズバッとやられていたわね」

 

「シルヴァ・バレトか…。レーゾンデートル同様に動きがおかしい。側転しながら撃ってきたり、空中で正確な射撃をしてくるんだ」

 

「おかしいわよ!!なんのあの二人はさ!?ハンドガンだよね?!なのにマシンガンみたいに連射してくるのよ!?おまけにこっちの攻撃は全部撃ち落されるし!あ、でも最後の決め台詞はかっこよかったかな。確かにレーゾンデートルがあれだけは言うなよって言った後に、あの二人がジャックポット!って…。思えばあの二人やレーゾンデートル、シルヴァ・バレトもそうだけど息ぴったりだったわね…」

 

この一件からレーゾンデートルらは戦術人形らに相当な程の印象を与えたらしかった。

 

 

四日目から五日目。

この時はグリフィンではなく、彼女らは喫茶 鉄血にてお礼を兼ねて店の手伝いをしていた。

一応制服が貸し出されたのだが、何故かレーゾンデートルとアレグロの二人だけに執事服が渡されるという事態になっていた。

これを渡した張本人は「似合っているから」と述べたそうだが、どう見ても胸に視線が行っていた為、それに気付いたアレグロに危うく蜂の巣になりかけた模様。

そんなこんなで店の手伝いをしていた彼女らだが、その最中にこんな事があった。

休憩がてら店に訪れていたUMP45。ふとした時彼女がつまずいてしまったのだ。

周囲がその一瞬に反応が遅れる中、店内に風が疾走した。

それは誰がどう見ても一瞬だった。

UMP45が地面に接触する前に、そして痛みを与える事もなく優しく受け止めた者が一人。

銀髪を揺らし、UMP45の表情を見つめる彼女は問いかけた。

 

「…大丈夫か」

 

助けたのはそう、あのレーゾンデートルである。

因みに彼女、つい先ほどまで店の端に居たのだがつまずいたUMP45を見て瞬きすら許さない速さで接近している。あの状況ならすぐに態勢立て直す事は出来たのだが、どうやらレーゾンデートルにはそれは関係ないようで。寧ろ彼女はお客様なので何もせず見ているなどという考えはなかった。

その思いが今回の行動に出ているのだが、ふとレーゾンデートルは先程の台詞に間違いがあった事に気付く。

わざと咳払いをし、失礼と呟くと柔和な笑みを浮かべて再度UMP45に問う。

 

「…お怪我はありませんか、お嬢様」

 

「は、はい…」

 

怪我はないという事が確認出来るとレーゾンデートルは彼女を立ち上がらせた後、お礼も聞かないまま仕事へと戻っていき、後に店内では黄色い悲鳴があがったのは言うまででもない。

因みにレーゾンデートルの行動を見ていたシルヴァ・バレトらは呆れた様な表情を浮かべていたのだが、レーゾンデートルがそれを理解する事はなかった。

 

 

そして六日目。

映されし異界の鏡が機能再開している一報を受けた後、レーゾンデートルらはこれまで世話になった者達にお礼を述べた後、自分達の世界に戻っていった。

この時、レーゾンデートルが店を去る前にフォートレスに向かって伝えた。

 

「…今度は彼を連れてくる」

 

それを伝えた後、レーゾンデートルらを店を去っていき自分達の世界へと戻っていった。

ただレーゾンデートルらは一つだけ問題を残していってしまっていた。

本来であれば勝手に消えていく筈の映されし異界の鏡。

だが今回に限っては何故かあの袋小路に佇んだまま残ってしまっていたのだ。

それが一体何を意味を示すかは分からない。何かを予兆しているのか或いは…。

その答えは誰一人とて分かる筈がない。

こうしてちょっとした問題を残しつつも悪魔狩人達らを支える銃達の不思議な旅行は終わりを告げるのであった。




という訳でコラボ回はこれにて閉幕となります。

本来であればもっと早く投稿したかったのですが、仕事やらで時間が中々取れず滅茶苦茶遅くなってしまいました。いろいろ様、本当申し訳ございません。
そして今回コラボをして頂き本当ありがとうございました!


何か変な鏡置いちゃってるけど、特に害がある訳ではないので安心してね!
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