Devils front line   作:白黒モンブラン

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―雨と霧に潜む


Act142-Extra Lurking in the rain Ⅱ

雨音に混じる様に響く銃声と爆発音。

それはBB小隊、ランページゴースト、パラケルススの魔剣による鉄血下級モデルとの戦いが起きている事を指していた。

高所に陣取り狙撃を得意とする鉄血下級モデル イェーガーがライフルを構え狙いを定めた時、高速回転する禍々しい色をした何かがイェーガーの後方から迫り、その体を一閃。

上半身と下半身真っ二つに切り裂かれ、体がずれ落ちる中自身が攻撃を受けた、既に機能停止した事にも気づく事無くイェーガーは崩れる。

一方でイェーガーを切り裂いたそれはブーメランの様に弧を描きながら何処かと消え去る。

姿を消したそれが向かう先にいるのは、戦闘が勃発している地点から離れた位置に存在する建物の外でその様子を眺めていた重武装したルージュ。

投擲し帰ってきた大鎌を容易くキャッチすると肩に担いだ。

 

「今のでこちらの存在がバレたかもしれませんね…。よもやランページゴーストの方々がいるとは思いませんでした」

 

「騒ぎ事となれば奴らは現れる。以前の時の様にな」

 

その呟きに答えながらルージュの後方からギルヴァが姿を現した。

ルージュとは挟撃しようとしていた別の鉄血下級モデル部隊を相手していたギルヴァは会敵してから数十秒も経たぬうちに壊滅へと追いやっていた。ルージュと合流する間も何気なく幻影刀を投射し援護していた。

それもあってか、戦闘音は何時の間にか消え去っていたのだが、戦闘そのものが終わった訳でなかった。

まるで残り香の様に戦場には未だ狂気が漂っている。

彼と合流出来た事に安堵しながらもルージュは援護している際に見かけたある人物について話しだした。

姿は男性でありながら、その実は人形である彼の事を。

 

「あちらの部隊の中に一人、男性を見かけました。気配からして人ではなかったのですが…」

 

ルージュが言っている者が誰の事を指すのか、聞いていたギルヴァは察する。

S11地区の時の作戦に義勇兵として参戦した『彼』の事だと。

 

「M16A4か。S11地区の作戦では義勇兵として参戦し、H&R社の作戦にも奴は居た。…正直今のS10地区前線基地の状況を見せたくない相手とも言えるが」

 

「それは何故?」

 

「奴は鉄血を恨んでいる。それも並ならぬ程にな。そんな奴が今のS10地区基地の状況を見れば、何が起きるか分かったものではない。…最もそこまで自身を制御できない奴ではないと思うが」

 

近くの壁に身を預けながら腕を組むギルヴァ。

彼とてかつての作戦に参加してくれた者達と刃を交えたいとは思っていない。

だがH&R社の作戦に参加していた彼が鉄血離反しても尚敵と見なしていた所をギルヴァは知っている為その点を踏まえての台詞であった。

ただ彼は知らぬがM16A4にも色々あった模様で鉄血への憎悪はある程度落ち着いている。ただしそれは敵対しなければの話になるが。

 

「…!」

 

「…この気配は」

 

そろそろ別の狙撃地点へと移動しようとした時、二人はある気配を感じ取った。

その方向へと向くと高所で一方的な狙撃を仕掛け、戦闘を繰り広げる赤色の夢想家の姿。

二人の存在には気付いていないのか、夢想家が攻撃を仕掛けているのはグリフィンの部隊。高速から迫るノアを相手にし両手に持った重火器で攻撃を繰り出すその様は流石ハイエンドモデルと言えるだろう。

だからといってこのまま眺めている気など二人には無いのだが。

 

「狙えるか」

 

「やってみます」

 

ギルヴァの指示を受け、V.S.E.Rを構え夢想家へと狙いを定めるルージュ。

可変速エネルギーライフルと名付けられたこの銃は、高速かつ貫通力のある光線から低速かつ威力の高い光線を幅広い域で撃ち分けられるという機能を有し、特に高速弾を発射する際は三又状の銃身が前方にスライドし、発射形態を取るといった変形機構も備わっている。

 

「ふぅ…」

 

狙いがぶれない様にする為、ほんの少しだけ呼吸を止めるルージュ。

それにより狙いがより一層安定し、全神経を撃つ事だけに集中させる。

雨粒が肌に当たる感覚、雨の降る音が、響く戦闘音、心臓の鼓動する音など音といった音全てが遮断され彼女は無音の世界に包まれ、引き金に指をかけられた時であった。

 

「ッ!?」

 

瞬きもする間もない閃光は奔った直後、何処から飛んできた砲撃が夢想家がいた建物に着弾。

何もかもを塵へ変える様な大きな爆発、舞い上がった黒煙がキノコ雲を形作る。

そして砲撃を受けた建物は赤い夢想家と共に塵一つ残す事無く消し飛んでいた。

小さな核弾頭が飛んできたのではないかと思う程の威力。

狙撃しようとしていたルージュが余りにも突然過ぎる事態に啞然とする傍でギルヴァは砲撃が飛んできた方向を見た。

 

「あれは…」

 

自身が居る地点から距離はあるものの、工場群の一角に一体の人形が操るにしては無理があるとは思われる巨大な砲を持った人形が一人。

小型核弾頭を撃ち出すという世界を本当に消失させる気かと言っても過言ではない最悪の兵器「ヒュージキャノン」を装備した鉄血のハイエンドモデル「チーフ(主任)」がそこに居た。

 

―おいおい…あのイカれ人形、まさか…!

 

(味方を撃ったというのか…)

 

危険とも言える程の威力を有る兵器を装備している。

撃ち出される弾が小型核弾頭だという事はギルヴァは知らないが、その危険性を感じ取っていた。

二射目を撃たせてはならない。魔を解放しようとした時、ノアがチーフへと突撃して行く姿を目撃する。

立ち向かっていくノアに続くアナの姿もあった。

 

―あの二人なら何とかなるんじゃねぇのか?無茶する様な性格でもねぇしよ

 

(……!)

 

―それにこっちも援護に行けそうになさそうだしな

 

楽観視し過ぎでないかのかと蒼に対しそう思いながらもとある気配を感じ取り、後ろへ振り向くギルヴァ。

啞然としていたルージュもその気配を感じ取ると素早く後ろへ振り向いた。

奥から雨に打たれながら二人へと歩み寄る何か。

青く不気味に輝く瞳。人間を模った姿は白く彩られ、その形だけは女性を思わせる。

優雅さを感じさせる佇まい。悪魔とは思わせない外見。

しかし細腕から生えてきた様に展開された血の様に赤い刃が自らを悪魔だと知らしめている様だ。

 

―サプライズゲストにしてはインパクトに欠けるな。見覚えのある奴だからかね

 

(知っているようだな)

 

―魔界の中じゃそれなりに出来る魔物さ。頑丈ではないが、ちょいと面倒なもんを持ってる

 

(それは?)

 

その問いに蒼が答えようとした時、白色の魔物の腰部から霧の様な物が放出された。

それは辺り一面を覆い、ギルヴァとルージュを包み込む。

その行動で相手の特性を瞬時に見抜いた二人は背中合わせになり、攻撃に備えた。

 

「奇襲攻撃を仕掛ける悪魔…。そういった知能はあるみたいですね」

 

「その様だな。…それにこの霧、魔力が混じっている。恐らく気配や殺気を断つものだろう」

 

「手始めの相手が私達で良かったですね。…もし私達が居なかったらどうなっていたか」

 

「苦戦は間違いだろう。…俺達以外に一人だけ倒せるかも知れん奴が居るが」

 

その者とは最早戦術人形という枠を飛び越え、防人へと化し始めたとある人形なのだがルージュには彼の言う人物が誰なのか分からなかった。

だが何となく予想は付いており、あまり会話した事の無いので機会あれば話してみたい。そしてあの三人の中の一人に、自身のある事を教えた彼女へとこの魔物が向かわなくて良かったと思っていた。

そんな事を思いながらルージュはギルヴァと共に武器を構える。

 

「っ!」

 

霧の中から襲い掛かってくる悪魔。

振るわれた赤い刃がルージュの首を狙うが一瞬だけ放たれた殺気に反応し素早く振り向くと同時に彼女は大鎌を薙ぎ払い迎撃。

刀身同士がぶつかり火花が散る。

追撃を仕掛けるルージュだが悪魔にしては動きがよく、彼女の攻撃を回避すると悪魔は再び霧の中へと潜んでしまう。

 

(厄介な相手ですね…。彼ならどうするのでしょうか)

 

周囲を警戒しながらもギルヴァがどう出るか伺うルージュ。

そんなギルヴァは悪魔に対してどう攻撃するのではなく、展開された霧をどうするのかを思案していた。

攻撃を仕掛けてきた一瞬に合わせて反撃するのも相手は視覚外からの攻撃に拘っているのか、彼が反応した直後に反撃を恐れ霧の中へと再び潜ってしまう。

 

―全くミストは面倒な奴だぜ。そういうのは好かれないんだがな

 

(それがあの悪魔の名か)

 

―正解。魔界の住人にして狩りを得意とする悪魔さ。魔力を編み込んだ霧を放出して相手を包み込み、自身が優位に立てる状況を作る。人の近い姿してんのは、それが狩りに適しているからその姿してるのさ

 

蒼が襲い掛かってくる悪魔、ミストの解説に耳を傾けながらも攻撃を躱していくギルヴァ。

状況からしてミストが優位に立っているのは明白。

そこに蒼が助言する。

 

―ま、わざわざ相手に合わせる必要はねぇさ。こんな薄っぺらい魔力の霧なんざ払っちまえばいい

 

(…成程)

 

それが答えとなったのだろう。

ギルヴァは無銘の刀身を鞘に納めると静かに目を伏せた。

突然の行動に背中合わせになっていたルージュは彼を一目見てから大鎌を一回転させると刀身の切っ先を地面へ宛がった。

霧の中へと動き回るミストからしてみれば仕留めるには絶好のチャンス。今度こそ二人を仕留めるために壁を勢いよく蹴り、腕のブレードを振りかざしてながら迫ったその時であった。

 

「!」

 

声には出さずとも、ミストはその光景に驚いた。

突如として放たれた膨大な量の青い魔力が展開していた霧を消し飛ばしてしまったのだ。

それによりミストが何処から二人を襲おうとしているのか丸わかりになる状況となっていた。

このままではやられると判断したミスト。再度腰部の器官から霧を噴出させ、後退しようとするがそうは問屋が許さない。

逃げ出そうとするミストに迫るは大鎌を振り被ったルージュ。

 

―逃がさない―

 

その想いに呼応する様に大鎌の刀身が輝き出す。

赤い瞳がミストを鋭く睨み付け、死の恐怖を与える。その圧に当てられたのかほんの一瞬だけミストの動きが鈍くなる。

それを見逃しなかったルージュは一気に距離を詰めるとすれ違いざまに大鎌を右から左へと大きく薙ぎ払った。

弧を描き禍々しい色に彩られた刀身がミストの腹部を斬り裂き、斬られた箇所から血が噴き出す。

空中で斬られた事により体勢が仰向けになるミスト。そこに映ったのは灰色の空を背に体を捻りながら鞘から刀身を抜刀し銀色の刀身をミストへ向かって振り下ろす蒼い悪魔の姿。

 

「砕けろ」

 

ノイズが掛かった声と共に降ってくる袈裟斬り。

致命傷を受けたミストに回避する体力はなく、降下してきた蒼い悪魔がすれ違った同時に斬撃が奔った。

噴き出す鮮血の雨。体が朽ちていくミストを背に蒼い悪魔…デビルトリガーを引いたギルヴァは片膝を着きながら無銘の刀身を静かに鞘へと収めると鯉口と鍔がかち合う音を静かに響かせた。

それに合わせたかの様に地面に激突しそのまま朽ちていくミスト。

地獄へ還っていく悪魔を見届けると何故かギルヴァはデビルトリガーを解除せず、チーフへ向かっていったノア達の方を見つめた。

どうやらミスト戦っている間にチーフは倒されており、ノアがどこかへ飛んで行く姿を彼の目に映る。

 

―向こうは片付いたみたいだが、まだまだ終わりそうにないな

 

(ああ)

 

状況が今どうなっているかは分からない。

だが援護だけで何となる状況ではないと判断していたのでギルヴァはデビルトリガーを解除しないままでいた。

 

「表に出る」

 

「!」

 

その台詞が何を意味しているのかルージュは理解した。

どうやら彼は裏方の仕事(援護射撃)から表の仕事(大暴れ)に切り替える気なのだと。

 

「分かりました。…飛行は出来ないので運んでくれませんか?」

 

「良いだろう」

 

ルージュをお姫様抱っこする様に抱えるギルヴァ。

四枚の羽を大きく広げると勢い良く地面を蹴り空へと舞い上がると飛翔。

雨降るこの戦場の空に悪魔も泣き出す二人組が大暴れする為に裏方から表へとその姿を現した。

 

余談であるが、ギルヴァがミストの霧を払う為にデビルトリガーを引いた時に放った魔力が、グリフィン側には正体不明の反応として検知されちょっとして混乱が起こるのだが彼がそれを知る筈もなかった。




という訳で向こう側がチーフと戦った一方でこちら側で勝手に出した悪魔「ミスト」の討伐は完了です。

ギルヴァもルージュも状況は把握しておりませんが、増援部隊の排除及び撤退までの時間稼ぎをする為裏方から表へと姿を出します。
因みにギルヴァはデビルトリガーを引いているので、今は魔人化したまんまです。

なので刀を持った蒼い悪魔と大鎌と重火器を持った少女が突然現れても撃たないでね!
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