Devils front line   作:白黒モンブラン

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―表の一幕、裏の一幕―


Act144 One act on the front and back

特殊作戦、ダレンからの依頼。

シーナ達やギルヴァ達にとって立て続けに起きた事件から数日が経過していた。

天気は晴れ。追跡者達による攻撃で受けた傷も修復し、S10地区前線基地はいつもの日常へ。

例の「墓場」の武装保管庫から基地への運搬及び搬入作業はその数日間で行われ、その膨大な量に第一格納庫で収まらず、第二、第三格納庫を使う事になった。

それだけで済めば、リヴァイアサンがここに持ち出された時や回収した魔具の時とそう変わらない。

だが問題はこの後に起きた。

 

「はえー…」

 

第一、第三格納庫とは違い、外へ繋がる第二格納庫…改名して第二兵装保管庫に搬入されたそれにマギーはたまげた様な声を上げた。

 

「これはまた…とんでもないものが出てきましたね」

 

そこにはどういう意図があって開発されたのかすら明白になっていない戦車が鎮座していた。

まるで正規軍のホバータンク「テュポーン」を思わせる外見。しかしそれは横から見たらの話。

ホバー式ではなく装輪式。まるで足を思わせる様な独立可動式脚部。

しかし兵装もエンジン回りも不完全のままに加え装甲すら取り付けられてはおらず、フレームが剥き出しのままである事から明らかに未完成である事を物語っている。

余談であるがこの未完成の戦車を祈祷師が見た時、「パーティーでもしそうですね」やら「死ぬ時は立っていた方が…」などバクでも引き起こしたのか、或いは何かの影響を受けたのか変な事を言っていた。

 

「それにコックピットがない。ハイエンドモデルが運用するというよりはAIでの運用を目的としたのでしょうか。いつ製造に着手したかは分かりませんが…このご時世、人材の損失に関しては組織も重く見ていたようですね」

 

有人での運用は想定されていない事からAIによる運用が想定されていたのではと仮説を立てるマギー。

すると彼女の後方から声が掛かる。

 

「対E.L.I.D用無人戦闘車両として製造されたらしいよ。AIは兎も角、全体的なコストがかかり過ぎる事と整備性の劣悪さから開発は頓挫。未完成のままお蔵入りになったとか」

 

未完で終わった経緯を話すのはここに就く事になった元鉄血のハイエンドモデル 墓守。

マギーが名も無き戦車を眺めている傍で彼女は工具ベルトを腰に携えながら持ち運ばれた膨大な量の武器、兵装の点検を行っていた。

墓場の管理人であった事もあり情報に関しては電脳に全て入っているものの使えるかどうかに関しては彼女にも想像がつかなず、この基地に身を置く事になってからはこうして一つ一つ武器を手に取っては点検する日々を送っていた。

 

「う~ん…っと!戦闘も出来なくはないけど、僕としてはこっちが性に合ってるねぇ」

 

「そうなのですか?てっきり技士として生み出されたのではないかと思っていたのですが」

 

「当初の計画としてはそっちなんだけどね。でもまぁそれだけじゃダメみたいで戦闘能力も備わっているよ。結局僕は眠る事になった訳だけど」

 

話しながら行っていた武装の点検を終え傍に置いてあった台車の上へと置きながら彼女は軽く苦笑いを浮かべながら肩を竦めた。

 

「ま、鉄血の考えなんか知らないし、ここに置いてくれている以上は作戦に参加はするし戦う気でいるさ。そう言えば仮設でだった独立遊撃部隊に正式名称と、僕を含めたハイエンドモデルの名前が決まるんだったっけ?」

 

「ええ。シーナや私、ギルヴァやルージュさんにこの基地にいる皆で考えさせて頂きました。明日の正午には正式発表なので、楽しみにしていて下さい」

 

「おおー。それは楽しみにしないとね。今日は眠れるかどうかは分からなくなってきた」

 

どこか子供の様な反応を見せる墓守を見て微笑むマギー。

すると何かを思い出したのか、羽織っていたグリフィンの制服の内ポケットからある物を取り出した。

それは以前の特殊作戦にて処刑人がS13地区基地の指揮官 リホ・ワイルダーから渡され、マギーの手へとやってきた八卦炉。

罅が入っている為、使用は厳禁であるが処刑人から聞いた話から彼女はこの八卦炉の凄さを感じ取っていた。

 

「小型化による出力不足はよく課題として挙げられますが…それすらも克服しているとは」

 

デビルブレイカーも小型でありながら高出力を誇るが、耐久性の低さに難がある。

故に数を揃える事で耐久力の低さを補っている。

しかしリホ・ワイルダーから処刑人へと譲り渡された八卦炉は小型化による出力不足、耐久力の低さは見受けられず、言わば理想の武器とも言える代物だ。

携行武器としては申し分ないと思われる程の物を何故処刑人に渡したのか。

考える時間は必要ない。処刑人から渡され、話を聞いた時からマギーは分かっていた。

 

「挑戦…と言いたいのでしょうか」

 

S13地区の治安はここS10地区と比べると最悪レベルであり、以前の追跡者達の集合体によってS13地区基地は全壊レベルでの損傷を負ったとシーナから聞いている。

そこで思ったのがS13地区基地にはこの八卦炉を修理できる程の設備が整っていない事であった。

最もリホ・ワイルダーはこの八卦炉がどのような進化を遂げるのかを思って託したのだが、マギーからすればこの様な物を渡されてしまえば思う事は一つしかない。

もしかすれば他の理由があったのかも知れないが、彼女はこの八卦炉を渡したリホ・ワイルダーへと呟く。

 

「いいでしょう。伝説の魔工職人を本気させたのです。やってやろうではありませんか」

 

リホ・ワイルダーからのそれは、魔工職人を本気にさせる一端でしかなかった。

 

「礼にしては程遠いですが…」

 

スナップを効かせ八卦炉を上へと放り上げる。

勢い良く回転しながら宙へ舞い上がったそれはやがて慣性を失い重力に引かれるとマギーの手の中へと納まる。

そして彼女の見つめる先にあるのは、とある武器が収められたウェポンラック。

 

「運用試験を終え軽く改造を加えたV.S.E.Rを送りましょうかね」

 

 

 

一方で便利屋「デビルメイクライ」にて、買い出しから戻ってきた代理人は珍しい光景を目撃していた。

 

(珍しいですね…)

 

彼女の目に映るのは来客用のソファーの真ん中に腰掛け静かな寝息を立てるギルヴァ。

普段であれば書斎の椅子に腰かけて眠るギルヴァ。その姿を何度も目撃している代理人からすれば今回はソファーに腰かけて眠るギルヴァの姿は珍しかった。

 

(特殊作戦にダレンからの依頼がありましたし…少なからず疲れているのかも知れませんね)

 

このままそっとしておこうと買って来た商品をしまおうと歩き出す代理人。

しかし台処へと通ずる入り口の手前で彼女は足を止めた。

今この場にいるのはソファーに腰かけて眠るギルヴァと自身のみ。

二人っきりという状況を理解した時、頭の中で何かが駆け抜ける。

 

(甘えるチャンスでは!?)

 

最近は作戦やら事件やらが立て続けに起き、近くにいれど甘える事が出来なかった代理人。

それを言えばUMP45やHK416、95式も該当するのだが、任務へ出撃している事もあり直ぐには戻ってこない。

二人っきりの時間が到来。この時を見逃す程、愚かではない。

そうとなれば速実行。この時の彼女の行動するスピードは非常に早かった。

買って来たものを素早く台処へ収めるとそのままソファーへと直行。

寝ている彼を起こさぬ様に右側に腰掛けると片腕を絡ませ、体を凭れさせる。

 

(…少しだけ眠りましょうか)

 

愛する人の体温を感じ取りながら、代理人はそっと目を伏せ、眠る事にした。

願わくばこの二人っきりの時間は出来るだけ長く続く事を願いながら。

代理人がギルヴァに寄り添うように眠りについた三十分後。

出先から戻ってきたノーネイムは眠っている二人を発見する。戻ってきた時に静かだったのはこういう事だったのかと納得していると指を顎に当て考える素振りを見せる。

 

「ふむ…」

 

顎に当てていた手を下ろし、ノーネイムは静かに眠っている二人へと歩み寄る。

すると彼女は代理人の膝を枕代わりにしてソファーへと寝転がった。

ソファーはそこまで広い訳ではないので足が外へと出てしまうがノーネイムは気にしない。

こうやって甘える事は滅多にはしないが、今ぐらいは許されるだろう。

軽く片足を曲げ、手を腹の上に組みながら瞼を下ろす。そのまま静かに眠りにつくのであった。

そこから三十分後、任務から戻ってきた404小隊が三人が寄り添って眠る様子を目撃する。

もはやそこから会話が生まれる事はない。45はギルヴァの脚の間に座るとそのまま体へ凭れ、416は左側に座り体を預ける。9もノリに乗って416の隣に座り、G11は彼女の膝に頭を載せて寝転がる。

そのまま四人も静かに眠りに付くのだが、数分後95式が任務から戻ってくる。

 

「ふふっ」

 

本当の家族の様に寄り添いながら眠るギルヴァ達を見ると母親の様な笑みを見せた。

すると何かを思い付いたのか、彼女は一旦その場から離れる。

暫くして戻ってきたのだが、その手にはカメラ機能を持った携帯端末が握られていた。思い出を残す為に95式が購入したもので、S10地区前線基地に訪れる前から持っていたものだ。

 

「ニャン丸も一緒に写る?」

 

「にゃっ」

 

彼らが眠っている事を察しているのだろう。95式の誘いに小声で答えるニャン丸。

カメラを起動させ、まるで自撮りする様な感覚で上手くソファーで寄り添いながら眠る男女らが上手く納まる様にする。そして95式は小さくウインクしながら立てた人差し指を鼻へと当てながらカメラのシャッターを切るのであった。

後にこの写真は現像され95式の思い出アルバムに納められるのだがその写真の端には彼女の直筆でこう言葉が綴られている。

Please be quiet!(お静かに!)

 

 

某所。

それはS10地区前線基地よりも、フェーンベルツよりも、墓場よりも遠くにある。

周囲が城壁で覆われ、遠くから見せる白き聖堂。ホワイト・カサンドラと名付けられた都市があった。

聖堂の内部。とある一室で老人が椅子に腰掛けて静かに本を読んでいた。

時は既に夜。

ロウソクに灯る火だけが部屋を照らす。外から届く風の音に耳を傾けながらも、老人はページを捲る。

すると老人のいる部屋の扉が開く音が響く。

入ってきたのはモノクルを付けた体格のいい男。クリップボードを片手に男は老人の近くまで歩み寄った。

 

「お休みの所、失礼致します。教皇様」

 

「問題ない。…して、何用か」

 

教皇と呼ばれた老人はそっと本を閉じる。

閉じられる音が聞いた男はここに訪れた理由を話し始めた。

 

「先程、鉄血の者から報告を受けました。…どうやら失敗した模様です」

 

その知らせを聞き、老人はため息を漏らした。

それは呆れにも近いものであった。

 

「やはりか。当てにならんとは思っていたが、その様だな」

 

「はい。…どうされますか?」

 

「…始末しろ。手段は問わん」

 

「御意。…それと例のものですが」

 

例のもの。

それが何を指すのかは老人と男にしか分からない。

理解している老人は伏せていた目を開く。

 

「現状七割程でございます。完成に至るまではもうしばらく時間が必要かと」

 

「そうか。必要であれば民を使えば良い。資金が足りぬなら提携先に増やす様に指示しておこう」

 

「おおー…!配慮に感謝いたします。…いずれもこの()()を現実のものといたしましょう」

 

「うむ。期待しておるぞ」

 

「はっ…!」

 

深々と頭を下げると男は部屋を出ていく。

再度一人となった老人は本を開く。ふと開いたページの一文にこう記されていた。

 

―その力は神か?悪魔か?

 

まるで自分達のやっている事を問われている気がした老人は小さく呟きながら答える。

 

「…無論神の力に決まっておる」

 

浮かべる笑みはまるで悪魔の様だ。

しかしそれを老人に伝える者はいなかった。




今回はちょっとした日常、かな?
最後の部分は…まぁ大規模コラボの前触れです。
因みに以前のコラボは緊急コラボです。
大規模コラボを開くそん時は異世界の扉を開けるかもしれませんねぇ…。


後、二~三話投稿したら四章は終わり、4.5章に入ろうかと。
4.5章ではぼのぼのをメインにやっていきたいと思います。異世界のコーヒーも頂きたいのでね…
まぁ四章ほど長くはならない予定です。
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