Devils front line   作:白黒モンブラン

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―情報の整理整頓―


Act145 Information organization

その日。朝早くからシーナは執務室で今まで起きた作戦で得た情報を纏めていた。

かれこれ多くの特殊作戦が行われ、どれ程大掛かりな調査を行ったとしても不可解な事は多くあった。

悪魔が関わっていたという事もあるが、やはり何故この様な事になったのかは未だはっきりとしていない部分は多い。

そして今日の正午からは仮設であった独立遊撃部隊とここS10地区前線基地に居る元鉄血所属のハイエンドモデルたちの名前の発表がある。

それで時間が取られるであろうと思い、服装型魔具「サーヴァント」から供給する魔力を抑えミニマムサイズのシャドウとナイトメアを召喚。

主がやって欲しい事が分かっているのか、機敏に動きながらも散らばった書類を集めていくシャドウ。

そしてのしのしとゆっくりと歩きつつナイトメアが自慢のパワーで書類の束を作り上げる。

出来る限り現時点で得た情報を整理する為、彼女手に持った書類と報告書とにらみ合いながらまとめていく。

 

「最初は…ああ、これか」

 

悪魔の巣窟と化したS11地区後方支援基地制圧及び指揮官排除作戦「End of nightmare(悪夢の終焉)」。

フェーンベルツで起きた事件でギルヴァらが保護した元S11地区後方支援基地所属する人形 WA2000から得た情報から全てが始まった作戦。

 

「悪魔の魂を売った指揮官が引き起こした事件。その出自は富豪の家の生まれであり、出世意欲だけは一人前」

 

今やこの世から消えたその指揮官はシーナの言う通り、金持ちの家で生まれた。

あらゆるものを与えられた上、同時に高い能力を有した。

ただし決して性格までも良い訳ではなく、所謂腹黒い性格であり財力を使い、時には権力を使い、出世街道を歩んでいった。

 

「人形に手を出したんでしょうね…。功績が認められ上層の誘いを受けた直後に問題を起こした事でそれはキャンセルとなり、当時指揮官が居なかったS11地区後方支援基地へと送られた」

 

当時その基地に所属していたWA2000 OTs-14 SPAS-12 M590 Spit-fire Gr MG4や属していた戦術人形からすれば新任の指揮官が就いた日。

その日が地獄の始まりだったなど思いもしなかった筈だとシーナは思う。

まともな補給、休息などない。作戦が失敗すれば責任を押し付け暴力を振るう。

それが長い間続いていたとれば最早悪夢の他言いようがない。

 

―早く手柄を立てて、元の立場に戻りたいだけ。元の立場に戻って何でも言う事聞く奴隷が欲しかっただけよ、あれは―

 

当時を知るWA2000がそう語っていた事をシーナは思い出す。

 

「ただ元の立場に返り咲きたいから悪魔と結託したか…」

 

時期こそは分からずとも、元の立場に戻りたいだけに男が悪魔と結託したのは事実。

その悪魔もギルヴァの手によって始末されたが、魔工職人である事だけしか分かってない。

S11地区後方支援基地の指揮官に会うまでは何処で過ごしていたか、何をしていたかすら分かっていない。

だがシーナはある予想を立てていた。

 

「その悪魔も例の組織"神の代行者"に所属していた可能性がある」

 

そう言えるだけの根拠は異世界へと向かう前に潰した人形売買組織からUMP45、9の二人が得た情報からだ。

日記で記された内容であった事。同時に明確な事は記されていなかった事は把握している。

しかしその可能性は十分にあり得ると思っていた。

 

「そしてその組織はこの作戦の前に潰した人権保護団体過激派とも関わっていた」

 

神の代行者は初めて悪魔との戦いが始まった人権保護団体過激派とも関わっている。

グリフィンの人間に擬態した悪魔は過激派のメンバーを上手く操り、同時に人形売買も行っていた。

その情報はUMP45からもたらされた情報だ。

 

「もしかして人形売買組織と同じ様に過激派は神の代行者に人形を売っていた…?」

 

そう口にした所でシーナは目を伏せて指を顎に当てると考える素振りを見せる。

 

(仮にそうだとして神の代行者は敵になり兼ねない相手に態々交渉してまでして人形を欲したの…?)

 

動かしていた手を止めペンを机の上へ転がすと彼女は椅子の背もたれへと倒れる。

視線を天井へ向け、思考の沼へと自ら入っていく。

人権保護団体過激派、S11地区後方支援基地、人形売買組織、そして鉄血。

それらと何らかの関りを持つ謎の組織"神の代行者"。

その名にそぐわない事をやっているのは明白。しかしその中身までは分からずにいる。

 

「鍵を握るのは…」

 

グリフィン本部直轄諜報部所長 ダレン・タリオン。

その実は悪魔であり、その名は十の顔を持つとされる悪魔 ダンタリオン。

魔界で伝説の魔工職人と言われ今ではこの基地の後方幕僚を務めるマギー・ハリスンの友人であり、異世界から帰還した時にルージュ、錬金術士、侵入者と共にシーナ達に接触してきた。

接触理由は分からないままであるが敵ではない。でなければ追跡者との戦いで力を貸したりしないだろう。

そして全てを知る一人であるとシーナは確信していた。

 

(今ここに呼び出して問うべきなのかな…)

 

そう思いつつもそうするべきでないという思いが彼女の胸中で渦巻く。

背もたれから体を起こすと置いたペンを持ち上げのしのしとシーナへと歩み寄るナイトメアの姿が映る。

普段は巨人の様な姿をしているというのに、魔力を抑えている事もありその姿は小さく、ペンを渡そうと歩いてくる姿は何処か可愛らしい。

 

「ふふっ」

 

そんな姿を見て、つい表情を緩めるシーナ。

作業の続きをする為差し出されたペンを手に取り「ありがとう」と礼を伝えるが、ナイトメアはそれに反応する事はなく、踵を返すと再びのしのしと歩きながら書類の束を作り上げ始めた。

まるでロボット掃除機の様だなぁ~…と思いながら彼女は空いた手の指で軽くナイトメアの頭を撫でる。

しかしナイトメアはそれに気にする事無く、黙々と書類の束を作っていく。

 

「さて…続きをしますか」

 

撫でるのを止め、シーナは次の報告書を手に取る。

それは特殊作戦「chase game」と「grave guard」の報告書。

鉄血が"神の代行者"との関わりがあると確認される様になる切っ掛けとなった作戦である。

あれから数日が経っているもののシーナにとっては記憶に新しい作戦であった。

 

「そう言えば…」

 

この作戦を発令するに至った元凶である追跡者はある事を言っていたのを思い出す。

 

―彼女達をあんな風にしたのは僕さ―

 

彼女達とは人形売買組織が拠点としている基地から逃げ出そうとした人形達の事。

一部を除き、脱走に失敗した人形達は追跡者によって見るも無惨な姿へと変わり果てしまった。

シーナ達が人形売買組織を襲撃した際には魔の技術によって突如動き出して攻撃を仕掛けてきた。

 

「あの人形売買組織には神の代行者以外に鉄血も関わっていた…?」

 

あの通信で追跡者は彼女達をあんな風にしたのは自身だと認めている。

人形売買組織の裏に神の代行者以外に鉄血が関わっていたのではないかという疑問が浮かぶのは不思議ではないだろう。

 

(神の代行者は鉄血と手を組んでいる可能性がある…?)

 

まさかと思いたくなる。

ただの予想でしかなく、確証がある訳ではない。

それに謎だらけの組織に鉄血が手を組む事はないとシーナは思う。

だが鉄血はその組織と組んでいる。それを知っているのはダレン、ルージュ、錬金術士、侵入者だけなのだが。

 

「うーん…」

 

頭を回転させ悩みながらも丁寧に情報整理しつつ紙媒体へと文字を綴っていく。

黙々とペンを動かし、報告書と睨めっこし自分なりの考察を添えていく。

そんな事を続けていく内に数時間が経過。

正式発表まで残り数十分と差し迫っても尚シーナは情報整理に没頭していた。

だが集中し過ぎていたせいか、疲れが出てきたのかペンを置くと椅子から立ち上がり軽くその場でストレッチ。

凝り固まった体をほぐしていると机上のミニマムサイズのシャドウがジッとシーナを見つめていた。

それに気付いた彼女は机の上を眺めた。

散らばっていた書類や報告書らは綺麗に積み上げられており、シャドウはやる事が無くなったのか暇を持て余してしている様子であった。

ナイトメアもやる事が無くなったのか、その場で立ち尽くしている。

 

「ありがとう。戻って休んでて良いよ」

 

労いの言葉にシャドウは頷き、ナイトメアと共にサーヴァントへと身を潜める。

シャドウとナイトメアが戻っていくのを確認した時、執務室の外から声が響いた。

 

「シーナ、今よろしいでしょうか」

 

この基地で名前で呼ぶのは元鉄血所属のハイエンドモデル達だけ。

そしてこの声が誰なのかシーナは分かっていた。

 

「どうぞー」

 

入室の許可が下り、スライドして開く扉から入ってくるは侵入者。

正式発表はこの執務室で行われる為、少しばかり時間はあるものの早めに彼女はここへ訪れたのだ。

 

「あれ?今日は着物姿じゃないんだね?」

 

侵入者がいつもの服を着ている事に気付くシーナ。

以前ダレンから借りた着物を着ていた事が印象的であった事とと本人もそれを嫌っている様子ではなかった為、気になってそれを尋ねた。

 

「今日はこちらをと思いまして。着物も悪くないですけどね」

 

「私からすればとても似合っていたよ。正直似合い過ぎて羨ましく感じたかな」

 

「ふふっ…。そう言われると今後も着てしまうかも知れませんよ?見せつけるの為に」

 

ソファーに腰掛けながら笑みを浮かべる侵入者。

しかしシーナは気付いていた。

 

「その気はないと見るけど?」

 

「おや、バレてしまいましたか。流石はグリフィンの指揮官というべきでしょうか」

 

くすくすと笑い合う二人。

残りのメンバーが集まるまでの間、両者は適当な話題で時間を潰す。

そして元鉄血所属のハイエンドモデル達を集まった時、シーナは皆へと宣言する。

 

「皆の新たな名前を付けよっか!」

 

ここからは鉄血の人形ではなく。

以前からここのいる一人として、そしてS10地区前線基地に身を置く事になった一人として。

元鉄血所属のハイエンドモデル達の一歩が今始まろうとしていた




何となくの情報整理編。
そして次回は名づけ編です。

では次回ノシ
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