Devils front line   作:白黒モンブラン

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―その名は意味は不可能、奇跡、夢叶う、神の祝福―


Act146 Blaue Rose

「んで?誰から発表で行く?」

 

新たな名前と独立遊撃部隊の名前が正式発表を聞く為に執務室に訪れた元鉄血所属のハイエンドモデル…代理人、ノーネイム、処刑人、錬金術士、侵入者、墓守、祈祷師ら計七名。

シーナから発表の宣言が出ると、壁に凭れていた処刑人は誰から発表するのから尋ねた。

誰から行こうがこの者達にとって気にする程ではないのだが、一気に全員の新たの名を発表されても味気ないというもの。

彼女の発言はそれを思ってのものであった。

 

「ならお前から行け。そこから代理人、ノーネイム、私、侵入者、墓守、祈祷師の順で良いだろう。…それで異論はないか、シーナ」

 

「そうだね。それで行こうか」

 

処刑人とは離れた位置で壁に凭れつつ腕を組みながら提案するのは錬金術士。

言い出しっぺのである彼女から反論が飛んでくる前に、矢継ぎ早に提案し取り付けに成功。

これで一番に処刑人の名前が発表となり、シーナは手に持った名前が記載してあるメモ用紙とは別に書斎の棚からある物を取り出す。

それなりの大きさがある箱で外見からして高級といった印象を感じさせる。

誰しもがその箱の中身に気になりながらも一人として問う事はしなかった。それを出したという事は遅かれ早かれ、彼女の口から明かされるだろうと判断していた為である。

 

「それじゃあ処刑人から。…貴女の新しい名前は「ネロ」。考えたのは私」

 

「ネロか…。まぁ悪くねぇ名前だな。意味とかあんのか?」

 

「意味は黒。良く着ている服装や貴女の持つ剣の色から取った感じかな」

 

「なるほどな。…その、えっと…ありがとな。大事にするからよ…」

 

この基地に身を置く事を許してくれたのは他ならぬシーナ。

恩人とも言える彼女に名前を付けてくれた事が嬉しかったのか、処刑人、否…ネロの頬にはほんのりと赤みがかかっていた。

一応本人はバレてないつもりでいるのだが、シーナ含む周りにはバレバレだったりする。

それを見た錬金術士は茶化そうとするのだが今後の嫌がらせの為に取っておく事を思い付き止めた事にネロが気付く筈もないのだが。

錬金術士が悪巧みしている事に気付いたシーナはこっそりと微笑むのだが、敢えてネロにその事を伝えない事にした。

 

「じゃあ次は代理人。名前はシリエジオ。考えてくれたのは…ギルヴァさん」

 

「ギルヴァが?」

 

「うん。愛する人の新たな名前が決まるから自分が考えるのが義務と言ってたの。因みにシリエジオは、イタリア語で桜を意味する言葉「シリエージョ」を捩ってシリエジオ。ギルヴァさんなりに考えてくれているみたいだね」

 

桜。

それはギルヴァが一番好きな花である事は代理人…シリエジオは思い出す。

 

「新たな名、有難く頂戴致します。シーナ」

 

「どうも致しまして。ギルヴァさんにもお礼を言ってあげて。あの人なりに考えてくれたらしいから」

 

「ええ。分かっていますとも」

 

自分の好きな花の名を愛する人に与えるのは実に彼らしいと口元を手で隠しつつ微笑む。

その名を現す様に今着ている服を少し変更を加えようと思うシリエジオであった。

 

「次はノーネイム。名前はネージュ。意味は「雪」。考えてくれたのはシリエジオと同じくギルヴァさん」

 

「父が…。ならば母と共に礼を言わなくてはならないな」

 

「そうだね。ふふっ、二人の名を考えるなんてね。愛されているね」

 

「かも知れない。…貰った名は大事にしないとな」

 

普段からあまり笑みを見せない彼女。

しかし今は綺麗な笑みを見せていた。

血の繋がりがある訳ではない。それでも家族の様に、それも娘として愛してくれる。

そんな父から与えてくれた新たな名前。ノーネイムからネージュという名前になった彼女にとってそれは最高のプレゼントとも言えるものだろう。

愛する夫から、愛する父が考えてくれた二人を見てシーナの表情も穏やかなものになる。

最近は作戦でギスギスしていた事もあった為、今の様な雰囲気は彼女にとってある意味癒しと言えた。

少女らしさも残しつつも大人にも近い笑みを浮かべながら、名付けは次へと行く。

 

「さて次は錬金術士だね。貴女の名前に関しては私やギルヴァさんではなく、ダレンさんから」

 

「ほう?あの胡散臭い女からとはな。して…奴が考えた名は?」

 

「ヘルメス。錬金術士の祖と言われる神人から来てるね」

 

その名を聞き、つい噴き出しそうになる錬金術士。

よもや自身の名前が錬金術士の祖と言われた神人の名を与えられるとは思ってもみなかったからだ。

だが悪い気分ではなかった。寧ろ悪くない名前を付けてくれたものだと感心した程であった。

 

「良いだろう。その名、有難く頂くとしようか」

 

「意外だね…。否定的な事を言うかと思ってたけど」

 

「まさか。くれた名に不満などないさ。私とて与えられる新しい名前を楽しみにしていたのだからな」

 

意外だなとシーナは思った。

彼女の中では錬金術士は名前や細かい事を気にせず戦いを好む性格であると思っていた。

それが今の彼女はどうだ?全くそれに関するガサツな感じを見受けられない。

本当に新しい名前を与えられる事をどこか楽しみしていたのではないかと思わせる程だ。

 

「…奴にも礼を言わなくてはならんか」

 

そんな事を思っているシーナを他所に名前を考えたダレンへ礼を言わなくてはならないと口にする錬金術士もといヘルメス。

鉄血を離反した事、そして離反後はダレン達と行動していた事は誰もが知っている話。

こればかりはヘルメスだけにしか分からぬ事であるのだが、彼女はダレンに恩義を感じている。

感謝を言葉にして伝えるのでなく、戦いで返すつもりでいる点は彼女らしいと言うべきだろう。

そんな事を思っている事は知る筈もなく、発表は侵入者へとなる。

 

「侵入者の新しい名前は「ジンバック」。考えたのはダレンさんとルージュの二人。カクテル言葉で「正しき心」との事。…何故お酒の名前を使ったんだろう?」

 

純粋な疑問を口にするシーナ。

それを聞いていた侵入者が答える。

 

「嗜む程度ですがお酒を飲むことがありまして。恐らくそこから来たのだと思いますわ」

 

「へぇー…。てか飲むんだ?てっきりそういうのは好まないと思っていたけど」

 

「まぁ…そこまで興味を示さなかったというのが大きいかと。ヘルメスと会う前に興味本位で飲んだお酒が中々に美味しかったもので。それ以降好きという部類に入っております」

 

(そう言えばこいつ…私と会った時も飲んでいたな)

 

二人の会話を耳にしながらも、あの廃屋で出会った時の事を思い出すヘルメス。

あの時もウイスキーを飲んでいた彼女であったが、その時からだろうかと考察する一方であの時の酒を機会あれば飲んでみたいなと思っていた。

一緒に行動する様になったあの日に飲んだ酒の味。彼女からすれば思い出の味でもあり、もう一度味わいたい味なのだ。

 

(…金が入れば、買ってみるか)

 

今は無一文である為、暫くはお預け喰らうことになる。

報酬の出る仕事を受けるべきかと今後の事を考えるヘルメスであった。

そうこうしている内に未だ発表されていないのは残す所、墓守と祈祷師の二人だけとなる。

順番で行けば墓守なのだが、墓守と祈祷師はほぼ同時期にこの基地に来た事もあってシーナは一気に二人分の名を明かす事にした。

 

「次は墓守だけど…一緒に祈祷師も行こうか。二人の名前を考える時になった時は、私やマギーさん、この基地に所属する人形達で話し合ったけど…これがまた白熱して」

 

「…総勢何人で行ったんだい?」

 

「えっと…15人くらいかな?」

 

「じゅっ…15…」

 

参加人数に驚く墓守と目を丸くし啞然とする祈祷師。

どんな風に白熱したかは中々のものであったと言っておくとしよう。

特に参加していたUMP45は祈祷師の胸に何か恨みがあるのか、物凄い名前を付けようとしていたが流石にそればかりはギルヴァに咎められて、彼に泣き付いたのはその場に居た者だけにしか知らぬ事であろう。

 

「ま、折角なら私も考えるって感じ便乗した子も居たからね。さ…二人の名前発表と行こうか」

 

「お願いします」

 

「ん、了解。…まず墓守の新しい名前が「ソルシエール」、そして祈祷師は「シャリテ」。ソルシエールはフランス語で「魔法使い」、シャリテは同じくフランス語で「博愛、慈悲」を意味するよ」

 

15名で行われた会議、またの名を「名前を決めよう会」にてその二つの名前を発案したのはあのマギーだったりする。

祈祷師はその性格から来ているが、墓守に関しては本人が持つ能力からその名前が出てきている。

最も墓場から回収された二人の専用装備はどう考えてもその名に似合わない外見と力を保有しているのだが、それを知るのは現在進行形で第二武装保管庫で作業しているマギーだけだろう。

 

「ははっ、魔法使いか。確かに僕は戦闘よりも技術者の側面が強いから間違っていないね。祈祷師の新しい名前も良く合っている」

 

「それはこちらの台詞ですよ。ソルシエール?…新参者に関わらず名前を与えて頂き感謝します、シーナさん」 

 

シーナへと深々と頭を下げる祈祷師。

つられる様に墓守も深々と頭を下げた。

 

「頭を上げて。ただ仲間はずれはしたくなかった。…折角ここに来たんだからね」

 

この二人はこの基地に来てからはというもののその日数は浅い。

新参者とも言える二人に何故シーナは与えようと思ったのか。

その一つは仲間はずれにしない為。そしてもう一つはただ鉄血の人形ではなく、このS10地区前線基地に居る人形として過ごしてほしいという思いがあった。

それは二人だけに限った話ではない。この場に居る者達にも言えた事でもある。

 

「最後は独立遊撃部隊の名前の発表だけど…。まず全員これを受け取ってくれるかな?」

 

開かれる箱。それは発表前に彼女が書斎から出した箱だ。

指示通り一人一人動き出し箱に入って居る物を手に取っていく。最初に手に取ったネロがそれの正体を口にする。

 

「ネックレス?飾りは…へぇー、"青い薔薇"か」

 

それを聞いた時、シリエジオはああ…とまるで青い薔薇の意味を察した様な声を上げた。

 

「確かに…"不可能"とも言える部隊ですね。鉄血の人形…それもハイエンドモデルだけで構成された部隊なんて」

 

「あ、やっぱり分かったかな?」

 

「ええ。遺伝子組み換えではない限り青いバラが生まれる事はない。それにかけたという訳ですか」

 

シリエジオだけには分かるものの他のハイエンドモデル達にはどういう事か分からずじまい。

それに気付いたシーナは独立遊撃部隊の名前を発表する。

 

「独立遊撃部隊 ブラウ・ローゼ。訳すと青いバラ。シリエジオが言った様に青いバラの花言葉には、不可能、奇跡、夢叶う、神の祝福といった意味を持つ。でもそういうのも悪くないじゃない?不可能とも言える部隊が今ここで発足したんだから」

 

「皮肉り過ぎてとんでもねぇけどな。でも面白れぇな。俺は好きだぜ、そういうの」

 

ネロの言葉に各々が頷く。

色々あってこの基地に身を置く事になった彼女達。

それが何の因果か一つの部隊となって出来上がった。

それはまさしく"奇跡"と言っても差し支えないだろう。

 

「だからそのネックレスを渡したの。ブラウ・ローゼの一人としてね。ただしシリエジオとネージュに関しては予備隊員という立場に置く事にした。基本的に二人は便利屋「デビルメイクライ」の所属だからね」

 

それに関しても当然とも言えた。

反論が出てくる訳でもなく、シリエジオとネージュを除く者達は小さく頷く。

 

「皆の武装や指揮系統など完全に決まってはないけど、名前と部隊の名前は決める気でいたの。暫くは間違えると思うけど与えた名前を忘れない事。そして…ここから始ましょ?貴女達の人生を」

 

そのセリフの通り。

新たな名を与えられたハイエンドモデル達の人生が今から始まる。

何が起きるか、何を巻き起こすか。

誰一人とてそれを察する事は出来ないだろう。




はい。これにてS10地区前線基地にいるハイエンドモデルの名前とハイエンドモデルだけ構成された部隊の名前が決まりました。

念の為変更後の名前をここにも記載しておきます。

処刑人=ネロ

代理人=シリエジオ

ノーネイム=ネージュ

錬金術士=ヘルメス

侵入者=ジンバック

墓守=ソルシエール

祈祷師=シャリテ

部隊名=ブラウ・ローゼ

では次回ノシ
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