Devils front line   作:白黒モンブラン

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―些細な事でも一歩前進した事になる―


Act150 Take a step forward

フシール・ハンデルと呼ばれる町を訪れて翌日。

時刻が正午を過ぎた頃。泊っていた宿屋を後にし、歩道を歩くブレイクとグローザの姿があった。

町巡りをしている訳でなく、二人はゴールドスタインと呼ばれるガンスミスにまつわる場所へと向かっていた。

先行くブレイクの後を追うグローザ。

初めて訪れた町に少し興味があるのか、町並みを眺めていた。

S10地区やかつて過ごしていた町と比べると、少々古風な造りの建物が多い。だがかえってそれがこの町の良さであり特徴であると言っていい。

現にグローザもそれを感じ取っており、どことなくであるがこの町の魅力に惹かれている様子だった。

それに気付きながらもブレイクは彼女の折角の一時と邪魔すまいと歩くスピードを緩めるとかつて過ごしていた町の周囲を軽く見渡した。

 

(…変わってねぇな)

 

そんな事を思いながらも彼の脳裏を過るはフェーンベルツを訪れる前、ここに過ごした時の思い出。

同業者たちが居て、凄腕のガンスミスが居て、気のいい住民達が居た。

仕事をこなす度に銃をぶっ壊した日々があって、今も変わらぬ町の姿があった。

そしてブレイクにとって忘れる事の出来ない出来事があった。

 

(…どちらにせよ俺が関わっているかも知れねぇ)

 

今回の一件は自身が関わっている。

同時に自身と当事者にしか知らないその【出来事】やらが関わっているのではとブレイクは推察していた。

 

(もしそうなら…)

 

 

 

―俺がケリをつけねぇとな―

 

 

 

彼の心で響くは覚悟の声。

普段から笑みを湛える彼の様子からすれば、今の彼は少しばかり違っている。

しかし残念な事にグローザがそれに気付く様子はなかった。

 

大通りから路地を通り抜け、裏通りへと出た二人。

裏通りだというのに人気は多く多くの車が行き交っている。ブレイクからすれば変わらぬ光景と言えた。

懐かしい光景を思いを馳せながらブレイクは目的へと歩き出し、それに続く様にグローザも歩き出す。

 

「S10地区とは違うわね。賑わいも人の多さも」

 

「前々からそうさ。居て退屈はしない」

 

「それは言えてるかもね。…それで目的はそろそろかしら?」

 

「ああ。もう少しさ」

 

通りをただ真っすぐと歩いていき、繁華街の入り口の前を通り過ぎる。

町の奥へと進んでいくにつれて、先程の喧騒は何処へ消えたのか、静けさに包まれた通りへと出た。

そこは町の中央とも言える場所から離れた位置にする通りで当時のブレイクが便利屋として行動していた際に住んでいたアパートがある通りだ。

治安が決して悪いとは言い切れずとも、この辺りではチンピラやギャングとかいった連中が少なからずいたりする。

二人とすれ違う若者たちの身なりは普通の住人とは程遠い格好している点でそれは明らかと言えるだろう。

そして数分歩いた時、とある場所を前にブレイクが足を止めた。

それを見てグローザはどう反応したらいいのか、困惑した声を上げる。

 

「えっと…」

 

彼女がそんな声を上げたのも無理もない。

そこに広がっていたのは焼け跡が残ったなにか。その形からして店だった事が伺える。

ここがそうなのかとブレイクへと尋ねようとするグローザだったが彼の表情を見て言葉が出なくなってしまった。

 

「…」

 

それはブレイクが神妙な面持ちで焼け跡が残った店を見つめていたからだ。

こんな表情を見せる事が決して珍しいという訳でない。

悪魔が関わっている事件や作戦に協力してくれる時も今の様な表情を見せる事もある。

見慣れたというのに、何故言葉に詰まったのか?

その答えをグローザは既に導き出していた。

 

(圧というのかしら。珍しいわ、ブレイクがそんなのを発するなんて)

 

彼自身から発せられる何か圧された。ただそれだけの事であった。

しかしこのまま沈黙を保ったままでは行かない。

自分達は依頼をこなさなくてはならない。それを理解していたグローザは気を取り直し、問いかける。

 

「ここがそうなのね」

 

「ああ。婆さん、いや、ゴールドスタインの店さ。…しかし驚いた。まだ残っているとはな」

 

「ここで何があったのか聞いていい?」

 

「良いぜ。ただ立ち話になるのはしんどいから、最寄りの喫茶店で話そう。糖分も欲しいからな」

 

「さっき食べたばっかりでしょ…」

 

そんな事を知らんといった様子でブレイクが最寄りの喫茶店へと向かおうとした時、とある人物が二人を見て話しかけた。

 

「お前さんら、ゴールドスタインのファンってやつかい?」

 

「ん?」

 

その声の主の方へ向くと、居たのは一人の男性。

チンピラやギャングといった連中とは違い身なりの整った三十代くらいの男性。

髭を蓄え、かぶっている帽子が良く似合っていた。

面識のない男に声をかけられ、少し警戒するグローザに対しブレイクは驚いたと言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

「レイズか…?」

 

「ん?その声…まさか、お前さん、ブレイクか!?」

 

彼の声を聞き、レイズと呼ばれた男は驚愕の表情を浮かべた。

まるでこの町にブレイクが居る事に驚いているみたいである。

二人はどういった関係なのか分からず、蚊帳の外へ一人残されるグローザを見たブレイクがレイズへ提案する。

 

「懐かしい話は近くの喫茶店でしようぜ。ローザにもお前の事話さなきゃならねぇしな」

 

 

ブレイクの提案にレイズが同意した事により、三人は喫茶店に訪れていた。

レイズのおごりでストロベリーサンデーを楽しむブレイクに呆れた様なため息をつくグローザ。

目の前に座っている男性を紹介してくれるのではなかったのかと言わんばかりの表情を浮かべていた。

それを見てコーヒーカップをソーサーへと静かに起きレイズは軽く笑うと自己紹介を始めた。

 

「紹介が遅れてすまんね。レイズ・D・マートン。しがない情報屋だ。ここに居た時のブレイクに仕事の斡旋していた身でね」

 

「なるほどね…。私はローザ。彼のパートナーよ」

 

「ほほう?ブレイクのパートナーとはな。さぞかし大変じゃないかね?」

 

この町に居た時の彼を知っているからこその問いだろう。

その問いの意味を察したグローザは小さく頷きつつも笑みを浮かべた。

 

「否定はしないわ。でも…離れる気はないわ」

 

ブレイクを見つめる彼女の瞳を見て、レイズはそこから根掘り葉掘り聞こうとはしなかった。

パートナーという意味がどういう意味を指しているのかを察したからだ。

コーヒーを一口飲むと彼は静かに微笑む。

人生、何があるのか分かったものではないなと思いながら。

ブレイクがストロベリーサンデーを食べきり、漸く本題へと入った。

二人がここに来た理由を聞くとレイズは指を顎に当てつつ成る程なと呟いた。

 

「噂に聞いていたが本当だったとはな。しかし…亡くなったあの人を狙うってどういう事だ?」

 

「それはこっちが聞きてぇ。ただ婆さんに関連する何かを狙ってるのは明白だろうな。作った銃とかか?」

 

「それはないな。店が焼け落ちた後、彼女を懇意していた連中が残ったもんをかき集めて残してある。もし作品を狙っているとして、それが奪われたとなりゃ俺の所にも情報は転がってくる」

 

作品が狙いではない。

それ以外何が残っているのかブレイクには見当が付かなかった。

何か手がかりになるものが無いのやらかと頭の中の記憶の棚から探し出すが中々出てこない。

すると二人の話を聞いていたグローザがレイズへとある事を尋ねた。

 

「その人って…独り身だったの?」

 

「だと思うが。ん…?待てよ、そう言えば…」

 

そこで何かを思い当たる事があったのだろう。

思い出す素振りを見せるレイズにブレイクが尋ねる。

 

「何かあったのか?」

 

「つい数日前にな。俺の所にある男が尋ねてきてね。ゴールドスタインが営んでいた店の場所を教えてほしいって頼み込んできたのさ」

 

「そいつの名は?」

 

「流石に教えられんよ。しがない情報屋でも守秘義務ってのがあるんでね。だが今回は事情が事情だ。一つ教えるとなれば、そいつは息子だと言っていた」

 

名前は分からずとも、手掛かりにはなる。

まさしく行き詰っていた調査が一歩前進と言えた。

隣で基地にいるダレンに調べてもらおうと密かに思っているグローザに気付きながらも彼は肩を竦めた。

 

「オーケー。それ以上は聞かねぇよ」

 

「賢明な判断だ。…にしてもお前とこうして会うとはな。最後に話したのは、この通りがおかしくなり始めた時だったかね?」

 

「…だったな」

 

彼ははっきりと覚えていた。

レイズの言っていた通り、ここら一帯では何者かによる殺人事件が連続して起きていた。

便利屋を生業とする者、普通に働いていた女性、カフェを営んでいた老夫婦、十にも満たない小さな男の子…。

無差別事件とも言えるそれはこの町一帯を恐怖へと陥れた。

ブレイクがレイズと最後に言葉を交わしたのはその事件は起き始めた辺りであった。

 

「…犯人は今も尚捕まっていない。この町に住んでいた住人からすれば悪魔より恐ろしいもんだった」

 

「…」

 

「世界は滅茶苦茶。普通に過ごしているのが精一杯だった言うのにな…」

 

そこからレイズは口を閉ざした。

代わりにほんのりと温かさが残っているコーヒーを口を付けた。

ブレイクもグローザもそこから先から言えずにいた。

何か言う程の勇気が不思議なくらいになかったからである。

 

 

レイズから手掛かりとなる情報を得られた後、三人は喫茶店を出ていた。

これでお別れとなる前にレイズはブレイクへと尋ねた。

 

「そういえばブレイク、今何処で行動してる?」

 

「S10地区さ。移住を決めてるなら、家賃の安いアパートでも教えてやるよ」

 

「魅力的な話だが、暫くはここに居るつもりでね。良い相手がいなくなったら転がり込むとしよう」

 

被っている帽子をかぶり直しレイズは二人に背を向け歩き出した。

去りゆく彼の背を見届けると、二人もその場を後にすると近くにあった電話ボックスへ向かった。

情報を得られたのであれば、依頼主に伝えなくてはならない。

ボックス内へ入ったグローザは公衆電話の受話器を持ち上げると懐から通貨を一枚取り出し入れた。そのまま相手の電話番号を入力した後に受話器を耳に当てた。

コール音が三度続いた時、電話相手が出てきた。

 

『あいよーワシじゃ、ダレンじゃ。個人の連絡先にかけてきたのが誰かのう?』

 

何とも間抜けた声で出迎えるダレンについ笑いそうにもなるグローザ。

しかし今は笑っている状況ではない事は分かっている。

仕事をしている時の表情が彼女の顔には浮かび上がっていた。

 

「グローザよ」

 

『おおー、お主か。それで何か分かったかえ?』

 

「全部とは言い切れないわ。…今すぐに調べて欲しい事があるの」

 

グローザはこの町に来てから得られた情報を全て話した。

語られた情報に対しダレンは興味深いといって声を漏らした。

 

『ゴールドスタインの息子とやらか』

 

『今回の一件にどう結ぶのかは分からないけどね。取り敢えず所在とかを調べて欲しいの。もしかすれば相手の先手を取れるかも知れないから」

 

『了解した。ワシの方で調べてみよう。お主らは一旦戻ってくるが良い』

 

「わかったわ」

 

ダレンとの連絡が切れるとグローザは受話器をそっと元の位置へ戻した。

軽く息を吐きながら、電話ボックスから外へと出ると傍にいたブレイクを告げる。

 

「一旦戻ってこいって」

 

「分かった。…どうやら面倒くせぇ事になりそうだな」

 

「全くよ」

 

お互いに肩を竦め微笑み合う。

置いてある車へと戻った後に、二人はフシール・ハンデルを後にした。

 

 

 

「思ったより近いの」

 

グローザから頼まれた調査対象の所在を突き止めたダレン。

愛用している端末には相手の所在地のマップが映し出されていた。

普通ならばこのままグローザたちへと伝えるつもりなのだが、場所が場所と言う事もあってあえて彼女はそれをせず、ソファーでのんびりしていたある者の名を口にした。

 

「ルージュよ、ちょいと頼まれてはくれんかの?」

 

「またですか…?」

 

淹れたてのお茶を楽しんでいたルージュは何処かげんなりした様な表情を浮かべるのであった。




遅くなって申し訳ございません…。え?待ってない?
そっか…(´・ω・`)

グダグダしまくってますが、何卒宜しくお願い致します。

では次回ノシ
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