Devils front line   作:白黒モンブラン

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─とは言っても見た目はお猿さん─


Act152 The devil lurks in the tranquility

ロック・ゴールドスタイン。

ルージュの上司的な存在であるダレンが言うには、その者は不運の事故によって命を落とした伝説のガンスミス【ニール・ゴールドスタイン】の息子との事。

起きている不可解な事件の首謀者らにその人物は狙われており、安否の確認及び保護の為、自分とルージュは彼が経営している店がある町へと訪れていた。

 

「静かですね…」

 

「だね…」

 

ルージュが運転する車が町へと入った時、そこは不気味な程に静かだった。

車窓から周りを見渡しても歩道を歩いている者は一人もおらず、それどころか車すら走ってない。

事前に聞いた話では、この町はS09地区とS10地区の境界線上に存在する町らしい。総人口も決して少ない訳でもなく、活気にあふれたごく普通の町と聞いている。

それがどうだ?並んだ建物があって、道路の端に何台かの車が止まっているだけ。

今の町の状況を見てとてもじゃないが活気にあふれたごく普通の町とは言いづらい。

 

「…ダレンがミスを?」

 

「いえ、それは有り得ないでしょう。こんな初歩的なミスを彼女はしませんよ」

 

自身よりも付き合いが長いルージュが言うのであれば、そうなのだろう。

ではこの状況は何なのだろうか。

 

「嫌な予感がするね…」

 

「はい。…彼が心配です。少し飛ばします」

 

明らかに普通ではないこの状況。

傍に置いてあったショットガンを手に取り、何時、何が起きても良い様に備える。

そしてルージュは車の速度を少しだけ上げ、対象が営んでいる店へと走らせた。

車のエンジン音と走る音が響くだけで、それ以外は何も聞こえてこない。

それがかえってこの不気味さを増幅させている気がしてならない。

 

「どう思う?この状況」

 

自身よりもルージュがこういった事態に慣れていると思い、そう尋ねた。

専門家とは言えずとも何か分かるかもと思ったからだ。

 

「…人為的とは言い難いですね。考えられるとすれば…」

 

「…悪魔かい?」

 

「…はい」

 

悪魔。

数あるグリフィンの基地が鉄血や過激派組織、或いはイレギュラーといった存在と戦っているとすれば、悪魔はS10地区前線基地だけの敵とも言い切れるだろう。

不可解な現象などといった物は大抵は悪魔によるものだとあの基地に所属している人形達やシーナ指揮官はそう言っていた。

例外も存在するとも言っていたが。

ともあれだ。自身の問いに対しルージュがそうだと頷くのであれば、今はそれを信じるべきだろう。

 

「この感じ…発生してそんなに経っていないと見ていいでしょう」

 

「どうしてそう言い切れるんだい?」

 

「この状況が発生して…例えば三日経っていたとしたら、それでこそダレンの情報網に入ってくる筈。私達にとって有用な情報を態々言わないという事は今まで一度もなかったので」

 

「故にこの状況は発生したばかり、と。ダレンが知らないのもまだ情報網に引っかかっていないからと言う事で良いかい?」

 

「はい。その考えで間違っていないと思います」

 

だとすればこちらは一歩遅れた事になる。

しかしここまで大掛かりな事を仕掛けておいて敵が一度も姿を見せないのはどういう事だろうか。

何処からか攻撃の機会を伺っているのか、或いは既に目的を果たしこの場を去っているのか。

 

「…」

 

車内でも沈黙が訪れる。

それでも車両は繁華街が存在する通りを抜け、二つ程通り過ぎていき漸くと言うべきかロック・ゴールドスタインが経営している店がある通りへと到達した。

町に入った時と同様に状況は変わっておらず、やはり人の姿はない。

ここに来るまで敵が襲ってくる様子もなく、今動いているのは自分とルージュだけであろう。

気のせいだと思いたいが、誘われている気がしてならない。

そう思わせる程にこの状況は自身の警戒心を最大まで引き上げる要因にもなっていた。

 

「ここですね」

 

ルージュが向いている先。そこにロック・ゴールドスタインが営んでいる店があった。

どうやら息子たる彼も銃砲店を営んでいる模様だ。

ただここからでも分かる様に店内に灯りが灯っている様子はなく、店の名を綴ったネオンサインも灯りが灯っていない。

この状況下で店の中に店主が居るとも考えづらい。しかし良い方向に持っていきたいと思うのは人形でもある事だ。

店の中に居てくれる事を祈って、ルージュへと提案する。

 

「ルージュ、車のエンジンはそのままにして待ってて。僕が見てくる」

 

「分かりました。…気を付けて」

 

「うん、分かってるよ」

 

ショットガンを手に車から降りる。

建物と建物の間に流れ込んだ風が低く唸る様に響いた。

寂しさを示しているものではない。寧ろ恐怖を煽っているかの様だ。

そう感じさせるぐらいに起きている事は普通ではない。

 

「さて…」

 

軽く周囲を見渡してから、銃砲店の出入口へと向かう。

ドアに掛けらている掛看板には【open】となっており、ドアを開けてみればすんなりと開いた。

蝶番が軋む音が響き、店内へと足を踏み入れる。

灯りが灯っていない事から薄暗く、人の気配すら感じさせない。

それでもと思い、声を出す。

 

「すみませーん」

 

店内に声が響く。

しかし反応はなかった。

当然と言えば当然であり、分かっていたとしてもつい苦笑してしまう。

しかし今はそんな事を悠長やっている場合ではない。居ないのであれば、どこへ行ってしまったのかを調べるべきだろうがまずはルージュに報告すべきだ。

後ろへと振り向き、車両に残っているルージュへ向かって首を横に振って居ない事を伝える。

その返答に向こうも頷いて答え、車のエンジンを切ってから三振りの刀を装備して降りてきた。

 

「やはりいませんでしたか」

 

「うん。まぁ…この状況で居るとは思ってなかったけど」

 

「ええ。…店主には申し訳ないですが、店内を調べてみましょう。何か分かるかも知れませんので」

 

「そうだね」

 

調べない事には何も分からない。

取り敢えず手分けして店内を調べてみる事に。

建物の構造上二階建てとなっているが、まずは一階を調べる事になった。

ルージュが何か目ぼしいものがないかと隣接している部屋を行き来している間、自分はレジカウンター内へと入っていた。

ガンキャビネットには様々な銃が置かれ、ガラスケース内には数えるのも面倒になる位の拳銃やナイフやらが展示されている。

 

「まぁ銃砲店ならよくある光景か……ん?」

 

偶然と言うべきか。

カウンター内に置かれていた本の様な物を見つけ手に取ってみる。

中を見てみると日付やらが記載されていたので、本ではなく日記帳。字体からして男の文字なので、恐らく店主が書いたものであろうと推察する。

そこから何か読み取れるものはないかと一つ一つページを捲っていく中、とある日に対しての内容が目に留まった。

 

「日付は一週間前。ヘルメスとシリエジオが例の一件を聞く以前か…」

 

店主が書いた日記の内容から考えると、どうやら例の手段は一週間前から行動していた。

この時から噂はされていたらしいが、信憑性に欠けていた為、大した噂にはならなかったそうだ。

その一方で別の噂が流れていたみたいだ。

 

「子供と捕まえた人形を殺し合わせる賭け試合がある…?」

 

この日記の内容にはそう記されている。

しかしその噂も信憑性に欠け、町の住民も大して気にしていないとの事。

店主は日々の戸締りや防犯をしっかりしなくてはと防犯を意識する様な旨を綴っている。

その日の内容はそれで終わっており、次のページを捲ってみても何か大きな事件が起きたとか言った内容は綴られていない。平凡がどうとか、最近の客はどうたらとか愚痴の内容が綴られているばかりで特に気になる内容はなかった。

 

「何か分かりましたか?」

 

ある程度調べ尽くしたのだろう。

台処から出てきたルージュが尋ねてきた。

手がかりになるかとどうかは分からないが、言っておくべきだろう。

 

「店主の日記の内容でこの町で今回の事件が噂されていた様に、子供と人形を殺し合わせる賭け試合の存在が噂されていたみたいだね。それも一週間前にその噂が流れていたらしいけど…」

 

「店主がどこへ消えた事と関連するとは言い切れませんね」

 

「だねぇ…」

 

その賭け試合の件も真相を明らかにすべきだろうが、今はそれどころではない。

もう少し調べてみる必要がありそうだ。

 

そのまま調べてみた訳だが、特に手掛かりになるものはなく、その間に何か襲われるという事もなかった。

完全に行き詰ってしまい、どうしたものかと頭を悩ませていた。

 

「移動してみましょう。ここでなくても何か得られるかも知れません」

 

「そうした方が良さそうかな。ここに居ても何も掴めないし」

 

「ええ。それに状況からして芳しくないです。このまま被害が拡大してしまう事となれば厄介です」

 

「だね。急ごうか」

 

「はい」

 

店を出て、車へと乗り込もうとした時であった。

 

「ッ!掴まって!!」

 

「えっ…?おわっ!!?」

 

エンジンをつけ運転に座っていたルージュの叫んだ声が聞こえた瞬間、車両が急発進。

咄嗟に反応は出来た為掴まる事は出来たが変な体勢なってしまう。しかし先程まで車両が止まっていた所に何か重たいものが降ってきたのか大きな破砕音が響くのが耳に届いた。

 

「怪我はありませんか!?」

 

「大丈夫、大丈夫。にしてもどうしたのさ…?」

 

「…それは車を降りたら分かる事でしょうね」

 

含みのある言い方をしたので、どうやら最悪な事態を起きてしまった事を察する。

体勢を立て直しながら、夢想家のエネルギーライフルを改造した光学兵器を手に取ってから車から降りそこにあったものを見て、つい苦笑いを浮かべてしまった。

 

「これはまた…」

 

デカいお猿さんがいたものだ。

降ってきたのは恐らくこいつなのだろうと思っていると、背に何かを背負っている事に気付く。

よく見ればそれは籠の様なもの。しかしその中に囚われているのは、ゆらゆらと揺れる青白い炎の塊らしきもの。

その数は一つではない。数えるのも億劫になる程の数だ。

一体何なのかと思っていた時、隣に立っていたルージュはその炎の正体を明かした。

 

「…あれは人間の魂ですね。あの数からしてこの町に暮らす住人たちのものでしょう」

 

「…お猿さんにそんな器用な事を出来ると思う?」

 

「いいえ、全く。どうやら何者かが使役している悪魔でしょう。それにギャラリーも増えてきましたよ?」

 

周りを見回してみると確かにギャラリーが増えていた。

どこから湧いて出来たのか、建物の上や壁に黒い炎を纏った小さな猿達の姿。

お互いに背中合わせになりながら、身構える。

 

「私がデカいの何とかします。ソルシエール、小さいのを任せて良いですか?」

 

「やれやれ、重労働を押し付けてくれるね」

 

「なら代わります?」

 

「いや、止めておくよ」

 

デカいのが咆哮すると周りの猿たちが一斉に飛び掛かってきた。

素早くショットガンを構えて発砲。吐き出された散弾が猿達に喰らいつき、一体、また一体と地面へと墜落していく。

後ろをチラリと見ればルージュがデカい方へ向かって突進していくのが見えた。進行を妨げる猿達を刀で切り裂きながら臆する様子もなく、デカい猿へと斬りかかっていった。

向こうは彼女に任せるとして、自分は囲むように群がった猿達に対し軽口を叩く。

 

「餌を求めに来たのかい?悪いけどここには何にもないさ」

 

フォアエンドを動かして排莢、装填。

排莢口から飛び出していった薬莢が地面へと落ちて跳ねる。

 

「山に帰るか、餌代わりに散弾を喰らうか。どっちか選ぶと良いよ」

 

絶賛スタイリッシュに戦っているルージュの様に戦えないが、自分なりの戦いをするとしよう。




今回はソルシエール視点で描かせて頂きました。

次回は町に現れた悪魔どもの戦闘を描くつもりです。
今回の話で現れた悪魔ですが、両方ともDMC2にて登場しています。

デカいお猿さんの正体はオラングエラ。
原作の方では熱帯地方に出没する悪魔となっています。
まぁこちらで世界がアレな上に使役されてんだ、文句は無しで頼んます…。
DMC2ダンテ編だと最初のボスだった気がします…(間違ってたら申し訳ない)

小さいお猿さんはムシラ。
悪魔の餌食となった罪人の悪意や欲望によって生まれた悪魔。
DMC2におけるムシラは色んな姿をしたタイプがいますがこちらで出したのは通常のタイプでございます。


では次回ノシ
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