Devils front line   作:白黒モンブラン

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─見えつつある敵の正体─


Act153 Being visible

(図体こそは大きいですが、攻撃は単調ですね)

 

町に現れた悪魔 オラングエラの攻撃を己の身体能力を駆使して回避しながらルージュは内心そう呟いた。

剛腕を用いた振り払いを後ろへと回転しながら躱すと、鴉刃の柄に手を掛ける。

しかし間合いはオラングエラに分があり、今度を両腕が彼女を圧殺しようと迫るも容易いと言わんばかりにその場から大きく跳躍し、鴉刃を引き抜くと空中で身を翻して勢い付けると同時に刀身を突き立て急降下。

狙うは悪魔の頭部。幾ら大型の悪魔と言えど頭をやられてしまえば、ひとたまりもない。

中には頭部を吹き飛ばされても驚異的な再生能力を有す悪魔も居るため、例外もあり得る。だがルージュはこの悪魔がそんな能力を有してない事は既に見抜いていた。

 

「はあっ…!」

 

鴉刃の刀身がオラングエラの頭部へと迫る。

だが寸での所でオラングエラは後ろへ飛び退き、攻撃を回避。避けられた事に小さく舌打ちしながらも姿勢を立て直し地面に着地するルージュ。そのまま距離を詰めようとした瞬間、狙いをソルシエールからルージュへと変えた小型悪魔 ムシラの群れが襲い掛かる。

四方八方から鋭い爪を振り上げ、切り裂こうと迫るムシラ達。それに対しルージュは体を翻しながらも大きく後ろへと後退し一度包囲網を抜けると目に留まらぬ速さで再度集団へと突進。

鴉刃の刺突による強烈な一撃が集団を吹き飛ばすと彼女はそのまま左足を軸にして回転し、腰を落としながら縦一直線を描く様な唐竹を繰り出し、複数のムシラを同時に頭から股下まで一閃。

そして一度刀身を鞘へ納め、勢い良く地面を蹴った。

刹那、彼女の姿が消え、同時にその場に残っていた悪魔どもが無数の真空刃が切り裂かれた。

何が起きたのか、知能の低い悪魔らには到底理解できないだろう。

その光景を見ていたオラングエラでさえ、何が起きたのか分かっていなかった。

だが鮮血を上げながら死んでいくムシラ共を背に刃に付着した血を振り落とし、刀身を鞘へと納める女が何かをやったとだけは分かっていた。

そしてその理解にたったほんの数秒の時間を要していた事がルージュに懐へ飛び込まれる要因となった。

接近にされた事に気付いたオラングエラは腕を大きく振り払って迎撃しようするもルージュは身をかがめて回避すると、脇の部分目掛けて体を捻りつつ小さく飛び上がりながら連続して逆袈裟斬り。

攻撃が肉質を無視し、斬られた箇所が段々と大きくなっていく。傷を負った所に連続して攻撃を与えられたら幾ら巨体を持つオラングエラでも耐えられるわけがない。

激痛に耐えながらも空いた片腕でルージュを吹き飛ばそうとするが既に時遅し。大きく広がった傷口に目掛けて彼女は大きく飛び上がり鴉刃の刀身を勢い良く振り上げたその次の瞬間、先程まで繋がっていたオラングエラの片腕が血飛沫を上げながら宙へ舞い上がった。

斬り落とされた事にオラングエラは未だ実感していない。目を丸くし不思議そうに瞬きするだけ。

そして自身の片腕を地面に落ちた時に何が起きた事に対して気付いた。

 

「!!!!!!??????」

 

「喚くな」

 

腕を斬り落とされた事により奔る激痛。

声にならない程の悲鳴が町全体に響き渡る。頭を振って悶えるオラングエラに対しルージュはそう冷たく言い放ちながら残されていた片方の腕に向かって鴉刃による斬り上げを敢行。

今度はたった一太刀で両断。再び空へと舞い上がった腕。これでオラングエラは両腕を失くした事になる。

攻撃手段はほぼなくなり、止めを刺そうと接近した時何かを感じ取りルージュは後ろへ後退した直後、オラングエラの口から何かが吐き出された。

何が吐き出されたのか分からない。しかし攻撃である事は気付いているのか、ルージュは何も無い所で体を反らした。何かが彼女の横を過ぎ去り、着ているコートがゆらりと揺れる。

その僅かな事で自身の横を通っていったものに彼女は気付いた。

 

「…成程。空気を圧縮して砲弾の様に撃っているのですか」

 

その通りであった。

オラングエラの口から放たれたのは空気の弾。目に見えないが、予備動作がある事から分かりやすい攻撃と言える。

ルージュからすれば無駄な足掻きとしか言えないのだが、相手が遠距離戦を望むとなればと思い鴉刃の能力を解放する事にした。

その場で力強く突きの構えを取ると鞘から駆動音が鳴り響き特殊な力場が彼女を中心に大きく広がった。

 

「鴉刃は只の刀ではありません…!」

 

そのセリフと共に彼女は流れる様に素早く鴉刃は振るう。

居合抜刀から連続逆袈裟、袈裟と繰り返される太刀筋から次々と飛ばされていく光の刃。

その光の刃は何故か黒く染まっており、その姿はまるで鴉の羽を彷彿される。

黒く染まった光刃はオラングエラから吐き出される空気の弾を容易く切り裂いていき、そのままオラングエラの体を切り裂いていき、巨大な体を持つ悪魔を仰け反らせていく。

両断を斬り落とされた事、鴉刃の光刃によるダメージが蓄積され、ついにオラングエラは片膝をついた。

息も荒くなり、本格的にルージュという少女に恐怖を覚えたのかその場から逃げ出そうと動き出した。

逃げ出す気だと感じたルージュは逃げ出す前に止めを刺そうと駆け出した時だった。

 

「横に避けて!」

 

「ッ!」

 

後方から届いたソルシエールの声。その言葉に従う様にルージュは横へと飛び込んだ。

その瞬間、ルージュの後ろを光の濁流とすら言える巨大な光線が駆け抜けた。

紫電を纏った光線が真っすぐと、吸い込まれる様に逃げようとするオラングエラの頭に消し飛ばすと、そのまま空の彼方へと消えていった。

塵一つ残さない一撃により頭が消し飛んだオラングエラ。完全に生命活動が停止し膝から崩れてから地面へと沈んだ。

その最期を見届けた後ルージュはソルシエールの方を見た。

彼女の手に握られているのはあのカートリッジ式光学兵器。先程の攻撃はそれによるものだと察しつつも、とある事を尋ねる。

予想している答えが返ってこない事を願って。

 

「今の…カートリッジ何発分ですか?」

 

「…一発分」

 

「一発分!?」

 

ソルシエールの返答にルージュは戦慄した。

たった一発分だというのに、巨大な光線を撃ち出す事が可能。そしてその威力は過剰とすら言える。

狙撃による拠点破壊を謳った代物だという事は聞いていたとしても、やり過ぎであると思うしかなかった。

 

「悪魔相手ならまだしも、人相手に使える代物ではないですね…」

 

粒子となって消失していくオラングエラ。背に背負っていた籠も消失し囚われていた魂があるべき場所へと戻る為飛び立っていく様子を静かにルージュは見つめていた。

数時間もすれば、町の住人も目を覚ますだろう。そう思う一方で店主が既に居なくなっていた事、そしてその行き先の情報を得られなかった事を悔やんでいた。

得られた情報と言っても、【子供と人形が殺し合う賭け試合の存在】だけ。

 

「はぁ…」

 

軽くため息をついてルージュは考える事を止めた。

どちらにしろ報告しなくてはならないのだから。

 

「先が思いやられそうです…」

 

空を見つめながら彼女はそう呟くのであった。

 

 

悪魔達の戦闘は無事終了し、二人は町の外へと出ていた。

道中で見つけた小さなカフェに寄り、カウンターでソルシエールがコーヒーを飲んでいる一方でルージュは公衆電話でダレンへと報告する為に連絡を入れていた。

受話器からルージュの耳に届くコール音。

いつもならもっと早く出ている筈だと少し疑問に感じている中、相手が出るのを待つ。

コール音が5回程鳴った時、漸く相手は電話に応じた。

 

『遅かったですね?待ちくたびれました』

 

「その声…ジンバック?」

 

しかし電話に応じたのはダレンではなく、ジンバックだった。

何故彼女がダレンの携帯端末を持っているのか疑問に感じたルージュはその事を問いかけた。

 

「どうして貴女が?」

 

『ダレンがシーナの元に呼ばれましてね。自分の代わりに報告を聞いて欲しいと頼まして』

 

「成程。因みにダレンはどの様な要件で指揮官に呼ばれたかはご存知で?」

 

『いいえ、全く。ただ向こうも今回の一件も調べていた様ですし、その件ではないかと思いますわ』

 

「そうですか…」

 

お互いに電子戦を得意、また情報収集を得意とする二人が仲が良い事はルージュも知っている。

基地にお世話になる以前も二人はよくそう言った話題で盛り上がっていたのを見た事があったからだ。

特に疑う事はないと判断し、ルージュは報告内容を伝える。

 

「結果から言います。…先手を打たれてしまいました。私達が来た頃には既に店主の姿はなかったです」

 

『…何処へ行ったかは分かりますか?』

 

声の雰囲気が変わったと思いつつも、彼女は言葉を続ける。

 

「それも分からずじまいです。ただ今回の一件には悪魔が関わっています。現に私達も襲われたので』

 

『怪我の心配した方が良いですか?』

 

「結構。私もソルシエールも無事なので。…それと関連するかどうかは分かりませんが、調べて欲しい事が一つ。…調べ物に関しては貴女も負けていない筈ですよね、ジンバック?」

 

その声はどこか試している様な感じであった。

それを感じ取ったジンバックはフッと小さく笑い声をこぼすとルージュの頼みに答える。

 

『良いでしょう。何を調べて欲しいんですか?』

 

 

「分かりました。はい…ええ、ダレンにも伝えておきましょう。…安全運転を心がけて戻ってきてくださいまし」

 

基地内部。ダレンが勝手に呼称している情報収集ルームにジンバックは居た。

ルージュとの通話を切り、端末を近くの机に置くと三台のモニターとキーボードが置かれたデスクへと向かい、頼まれた調べ物に調べ始めた。

手慣れた手つきでキーボードを操作し、ありとあらゆる所から情報を引っ張り出していく。当然その中には裏にも通ずる情報や、やり取りのメールの内容も存在していた。

支援指揮を目的として生み出された事はあるのか、足跡もきっちり消しておくという徹底ぶり。瞬く間に集まった情報に目を通していくジンバック。そしてその中にあった情報に彼女の目が止まった。

 

「これは…」

 

画面に映し出されているのは、とあるメールのやり取り。

何やら物騒な内容が記載されており、最後の一分にはゴールドスタインと名前らしきものがあった。

もしかしてと思った彼女は送信元が誰か調べ始める。あらゆる技術を駆使し行き着いた答えに少しばかり驚いたと言わんばかりの表情を浮かべた。

 

「これはまた…。若くして社長の座まで上り詰めた女社長のものとは」

 

その女社長の事はジンバックは知っていた。

と言うのもこの基地に世話になった時に知った名前であるのだが、若くして社長の座に上り詰めた女社長として有名でありテレビやラジオによく出演していた事もあって顔も声もよく覚えていた。

 

「これが女社長の裏の顔の一部分という訳ですか。まぁ役柄としてはありきたりではありますが」

 

さて、と前置きを置いてからジンバックはその女社長の悪事を片っ端から調べ上げる事にした。

悪魔との関連性は見いだせない。だが自分達が潰しに行く相手になるであろうと思った。

この世界では法など機能していないに等しい。そしてこの女社長の様に悪事を働いている者がどのような末路を迎えるか。

最早言葉にせずとも分かる事であった。

 

 

某所。

その場所は地下に存在していた。薄明りの通路の奥から薄っすらと聞こえてくるは歓声らしきもの。

通路の奥に広がるそこでなにが起きているのかは誰にも分からない。

その歓声が耳に届いたのか薄暗い部屋の中で倒れていた男は目を覚ました。

 

「ここは…?」

 

右目に眼帯をした男はゆっくりと起き上がり、周囲を見回す。

窓もなければ机もない。灯りにしては物足りない電球とただコンクリートに覆われた塀があるだけ。

何故自分が此処に居るのか、目覚めたばかりの彼には分からなかった。

段々と意識がはっきりしていく最中、部屋の奥から物音が響く。

それに気付いた男は音がした方向へと向き、そこに居た者を見て驚愕した。

 

「あ、あの…」

 

体を同化させようとしているのではないかと言わんばかりに壁に身を寄せ小さく震わせ、男に対して少しだけ怯える銀髪の少女がいた。

その少女を見て男はある事に対して疑問を覚えた。

 

(この子の服装…どう見ても民生用の人形が着るもんじゃねぇぞ…)

 

そう思いつつも男はいきなりその事に対する質問をしようとは思わなかった。

 

「あー…その、驚かせたら悪い。ここがどこが聞いて良いか?」

 

自分は敵ではない事を伝える為。

怯える少女に対して男は優しく問いかける。

すると少女はその問いに対し首を横に振った。その答えが何を示しているか男は理解する。

次に何を聞こうかと思った時、せめて自身の名前は明かしておこうと男は少女へと自己紹介した。

 

「ロック・ゴールドスタイン。辺鄙な町で銃砲店を営んでいる男さ。ロックとでも呼んでくれ」




いきなりこんな感じの展開ですが…許せ。

さて、そろそろパーティーの舞台を設けないとな…。


では次回ノシ
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