Devils front line   作:白黒モンブラン

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─不可能の意味を持つ部隊─

─今宵はその者達の門出─


Act157-Extra operation 777 Ⅱ

通信越しから響くパーティーの開幕を告げる声。

カジノの地下へ繋がる入り口近くにて待機していたそれは咆哮を上げるかの様にエンジン音を鳴り響かせた。

その発信源は墓場から回収された後マギーとソルシエールによって大幅な改造が施され、生み出されたS10地区前線基地の新たな戦力、移動拠点型戦闘車両【ヨルムンガンド】によるものだ。

未完成だった時の姿は何処へ行ってしまったのか、その外見は大きく異なっていた。

まずその車体の大きさ。リヴァイアサン程では無いにしろ、装甲車両という枠組みに収まるか疑問に思う程に大きかった。

移動拠点という事も含まれている為、内部にはある一定の居住空間が設けられている事が車体の大きさに影響しているのだが、ブラウ・ローゼ用として運用する事を前提とし、また部隊そのものが大人数という事もありこの大きさになったのだ。

車体全体に装備された材質の異なる装甲を三層に重ね合わせた高い防御力を誇る装甲。

バルカン砲、連装ロケット砲、棄てられた戦車から流用した120mmの戦車砲、スモークディスチャージャーなどといった豊富な武装。

また近接戦闘も可能となっているのか、格納型ショベルアームも搭載している。

そんな物騒極まりない装甲車両の上にブラウ・ローゼの面々は乗って武器を構えていた。

 

「パーティーとは…。確かに彼女らしくない」

 

そう呟くのはヨルムンガンドの操縦を務める事となったジンバック。

シーナからの通信で作戦をパーティーと称した事に小さく笑みを浮かべていた。

しかしそのまま微笑んでいる訳には行かない。操縦桿を握ると彼女は全員へ通信を飛ばす。

 

「このまま地下会場に突撃します。ソルシエール、シャリテはヨルムンガンドの前衛に就き進行ルート上にいる敵の排除。ネージュは後衛に就き、二人が討ち漏らした敵の始末。ヨルムンガンドで寛いでいる面々は現れた敵にパーティークラッカー代わりの銃弾でもぶつけて下さい」

 

『後ろから轢かないでね、ジンバック』

 

「その時は頑張って避けて下さいまし、ソルシエール?」

 

『ちょっとぉ!?』

 

「ふふっ、冗談ですわ。さて…パーティーしましょうか!」

 

エンジンは温まっている。

エンジン音が咆哮の様に響き渡り、その巨体からは信じられない速度でヨルムンガンドは地下へと繋がると通路へと走り出す

ヨルムンガンドが動き出した同時に専用装備【ワーロック】を纏うソルシエール、【ベルフェゴール】を纏うシャリテが先導する様にスラスターを吹かし、ヨルムンガンドの前を行く。

地下へ繋がる入り口は強固な扉で閉ざされている。しかしそんなのは知った事ではない。

 

『シリエジオ、扉を!』

 

「分かっています!」

 

声に返答しつつシリエジオはシルヴァ・バレトの槓桿を操作し榴弾を装填。

地下へ繋がる扉をへと狙いを定めると発砲。

もはや砲撃音と言っていい程に高らかに響く銃声。放たれた榴弾は扉に着弾し、木端微塵に破壊。

そのままなだれ込むようにソルシエール、シャリテ、ヨルムンガンド、【パトローネ】を纏うネージュも内部へと突入。

警備は手薄なのか、迎撃に現れる者もいない。先には暗闇が広がっており、ヨルムンガンドに備え付けられたライトが前方を照らす。きちんと整備されていない通路を突き進む中、このまま地下の会場へと行ければと各々が思った矢先、ヨルムンガンドの前を行く【ワーロック】を纏うソルシエールが何かを見つける。

前方から迫ってくるは鉄血のプロウラーを模った様なセキュリティメカ。それも一体ではなく、群れを成して迫ってきていた。

 

「やっぱり一筋縄じゃ行かないか!シャリテ!」

 

「はい!援護します!」

 

蝙蝠の様な形をしたウイングに内蔵されたスラスターを全開にして迫りくる群れへと突撃。

ルージュが持つ大鎌とは別にS11地区の作戦にて回収されたヘル=バンガードの大鎌をベースに改造が施された大鎌を振い、すれ違いざまに複数のセキュリティメカを両断。

そのまま機動力を活かしてヨルムンガンドの進行ルートを切り開いていくソルシエールを両肩に機械化されたマントの様な物を装備したシャリテが両手に持った大型ハンドガンを放ち援護していく。

初の戦闘にも関わらず見事なまでの連携で披露していく二人。しかし二人が活躍したとしても、セキュリティメカは何処からともなく次々と現れる。

会場へと繋がる通路をヨルムンガンドが突き進んでいき、振り落とされない様に捕まりながら迫りくる敵に銃弾を叩きつけていくブラウ・ローゼのメンバー。

すると地下制圧組に加わっていたパイソンが自身と同じ名を持つリボルバーの弾倉に銃弾を込めながら呟いた。

 

「獲物にしては物足りんが準備運動代わりに丁度良いか」

 

「ああ、獲物は大きい方に限るからな」

 

その声に返答するのはショットガンにシェルを装填していくヘルメス。

マギーとソルシエールがM1887をベースに改造したもので、銃身下部に大型ブレードを取り付けたものであり接近戦を得意とするヘルメス専用の複合武器である。

他にも彼女用に製作された武器があるのだが、今回は複合武器を二丁持ってきていた。

 

「ほう?貴様も分かるか、ヘルメスとやら」

 

「返答しなくても分かるだろう、シーナの教官」

 

お互いでしか分からないやり取り。

笑みを浮かべる二人を見て敵に向かってアニマを連射していたネロが叫ぶ。

 

「バテるには早すぎんだろうが!笑い合ってねぇで撃て!」

 

二人の方に向かって叫びながらも、後方から迫ってくるセキュリティメカを見向きもせず的確に当てるのは、ネロにとって造作ない事なのだろう。

リロードを終えた二人。迫りくる敵に対し銃を向けながら、ネロの台詞に返答する。

 

「言われなくても…」

 

「分かっている!」

 

浮かび上がるは獰猛な笑み。

銀色のリボルバーが、改造が施されたショットガンが銃声と破砕音で奏でられる曲に色を足す様に吼える。

流石はというべきか、二人の狙いに狂いはない。

狙った獲物は決して逃がさないという意思が攻撃に現れており、もし相手が人間であれば恐れをなしているだろう。

それ程までに二人の攻撃は強烈で瞬く間にその数を減らしていく。それでこそパトローネを装備しているネージュの仕事を奪いかねない程に。

最もこの後にも敵となる傭兵も悪魔もこれを味わう事になるのだが。

 

「全くはしゃいでからに…」

 

シルヴァ・バレトではなくニーゼル・レーゲンをガトリングガン形態にして掃射しながらシリエジオは呆れた様に呟く。

それを聞いていたのか、ネージュが答える。

 

『だが、盛り上げるにはこの程度の事は必要なのかも知れんぞ、母さん』

 

「そんな事を言うとなれば、貴女も少しはしゃいでますね?」

 

『否定はしない』

 

ヨルムンガンドの後衛に就き、両手に持ったジェラシーを連射しながらシリエジオと会話するネージュ。

圧倒的な火力を誇るパトローネの前にセキュリティメカ如きでは太刀打ちできる訳もなく、彼女は後方から迫りくる群れに瞬く間に殲滅していた。

同時に彼女は…否、この場にいる全員が感じ取っていた。

 

「ぬるい。明らかに誘われてるな」

 

進みゆくヨルムンガンドの上でパイソンが静かに呟く。

その言葉に誰もが静かに頷く中、ネロは笑みを浮かべる。

 

「おもしれぇ。招待状も持ってきてねぇのに歓迎してくれるとは、もてなす気はあるみてぇだな」

 

『でしたらもてなしてくれるお礼として、会場の勝手口からお邪魔しましょうか』

 

「派手にやっちまえよ、ジンバック」

 

『仰せのままに。…勝手口から侵入後、ソルシエールは発電機の破壊後会場に乱入。ヘルメスはソルシエールの援護。シャリテ、パイソン、人質の救出及び敵勢力の排除。ネロは悪魔を優先的に排除。シリエジオは私の護衛を。ネージュは貨物用のエレベーターを利用して屋上に移動。天窓を突き破ってカジノ側の援護をしてください。では会場に失礼致しましょう』

 

コックピットでジンバックがアクセルを踏み込むとヨルムンガンドの速度が上がる。

そして地下会場から少し離れた距離はあるものの元よりそこから突撃予定であった荷物受領エリア…またの名を勝手口の閉ざされたシャッターに向かってヨルムンガンドが突撃。

破砕音と轟音が響き、シャッターに大きな穴が開く。その音を聞きつけた傭兵たちが集まり出す前にシャリテ、パイソン、ネロは人質が居る牢屋へと繋がる廊下へと向かって行く。

その直後に武装した傭兵たちが集結した。

 

「くそっ!使えねぇブリキどもだ!!てめぇら、やっちまえ!!」

 

舞い上がった土埃の中で傭兵の1人がセキュリティメカに対して悪態をつきながら、周りの仲間達に攻撃の指示を飛ばした時であった。

 

「悪いが─」

 

「!?」

 

突如として後ろから響いた声。

それに気付いた男が後ろへと振り向こうとした瞬間。

 

「死んでもらうぞ」

 

繋がっていた筈の男の頭が空へと舞い上がった。

首と舞い上がった頭から噴き出す鮮血。崩れ落ちる体。

一瞬の出来事にその場にいた傭兵たちは啞然とし、首を刎ねた彼女…ヘルメスはゆっくりと頭だけを動かして傭兵たちを見た。

頬に付いた血糊。両手に持った複合兵器。

大きく開かれた瞳に浮かび上がる笑みは歪んでいる。そこにいる彼女は最早【死】そのものであった。

敵対する者が恐怖に抗いながらも銃を構える中、隣に並び立ったソルシエールへとヘルメスは話しかけた。

 

「ソルシエール、悪いが少し遊んでから向かう。任せるぞ」

 

「はいはいっと。やり過ぎないでね」

 

「そいつは無理な相談だな。こうも殺気を向けられてしまえば─」

 

発電機がある部屋へとソルシエールが向かった刹那ヘルメスの姿が消える。

それはヘルメスの名を貰う前から彼女が使っていた短距離テレポート。

突然の事に傭兵たちが驚くのも束の間彼らの背後から銃声が鳴り響き、内一人の頭が散弾によって吹き飛び、もう一人の首が刎ねられる。

 

「つい加減が出来なくなるからなぁ!」

 

銃声、断末魔の連鎖。

混ざるそれらの中で久方ぶりの戦いにヘルメスは笑みを浮かべながら傭兵たちへと襲い掛かった。

 

「退屈しのぎに遊んでやる。お前たちなら何分耐えられるかな?!」

 

 

「全くこっちも命懸けなんだけどなぁ」

 

ワーロックのスラスターを吹かしながら通路を突き進みながらソルシエールは静かにぼやく。

敵は人質の救出組、そしてヘルメスたちの方へと向いているのか奇跡的に彼女の方に敵が現れる様子はなくスラスターを全開にして彼女は発電機のある部屋へと侵入。

 

「よいしょっと!」

 

発電機を発見すると手にした大鎌を勢い良く振いそれを破壊。

その瞬間、辺りは暗闇にへと包まれるがソルシエールは迷う事もなく会場へと通ずる道を辿っていく。

暗闇の中で行動は装備しているワーロックの専売特許。まさしく死神とも言える外見をもった装備だからこそ出来る事。

予備電力に切り替わるまで約30秒と僅かな時間。それでも彼女は止まらない。

通路を突き進み、何とかして会場に到達。会場が暗闇に包まれ観客のざわめく声が聞こえる中、自分にスポットライトが当たる様に中央で待機。

そして破壊された発電機から予備電力に切り替わり、狙った通りにスポットライトが彼女を照らした時、ソルシエールはこの会場にいる富裕層と周囲の者達に向けて口を開く。

 

「こんばんわ、皆さん」

 

手にした大鎌を軽々と振るい、構えながらも笑みを浮かべるソルシエール。

周囲に向かって放たれる殺気。それは被害者である子供と人形に向けられたものではない。

しかし浮かべる笑みは、かつての追跡者を彷彿させる。

突然の事にその場に居る誰しもが困惑する中、彼女は告げる。

 

「人として腐った君たちを狩りに来たけど覚悟を出来ているかな?」

 




という訳で、地下に突撃したブラウ・ローゼ視点を描きました。
次はどうするかな…

では次回ノシ
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