Devils front line   作:白黒モンブラン

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─過去との決着を─


Act160-Extra operation 777 Ⅴ

番犬から先を通される事を許され、ブレイクが乗るエレベーターは最上階を上がっていく。

映る外の景色には全く興味を示さず、彼は窓にもたれかかって腕を組みながら沈黙を保っていた。

何を考えているのか、何を思っているのか。それは本人にしか分からぬ事だった。

顔を上げ、組んでいた腕を解き、ホルスターからアレグロとフォルテが引き抜かれる。

普段なら彼は何時もみたいに笑みを湛えているだろう。だが今回は違っていた。

 

「…とっとと終わらせるぜ」

 

全て自身が招いた事。

それが今になって姿を現し、あまつさえは基地の者達や別の基地の者達にまで迷惑をかけてしまった。

これ以上問題の先延ばしは出来ない。

必ず終わらせる。呟いた台詞の中にはそんな思いが交えていた。

エレベーターが最上階に到着したと音を鳴らす。

開かれるドア。開いた先に長く続く廊下には珍しい事に悪魔一匹もいなかった。

ただ彼を誘導する様に照明が奥にある社長室の扉を照らしているだけ。しかしブレイクは感じ取っていた。

社長室から放たれる魔の気配を。

 

「…」

 

相手の思惑など知った事ではない。

だが誘ってくるのであれば乗るのみ。

ブレイクはエレベーターから降りて社長室のドアへと歩き出した。

一歩踏み出す度に響き渡るのは履いているブーツの底が当たる音。遠く感じられた社長室の扉との距離が半分を切った時、ふとエレベーターが動き出す音が彼の耳に届いた。

足を止めてブレイクは後ろへと振り返るとエレベーターが下へ向かっている指す表示が光っていた。

誰かがエレベーターが呼んだ。考えられるのはギルヴァぐらいだが、分かる筈もない。

増援だったら面倒なので早々にカタをつけるべきだと判断した彼は再び社長室へと歩き出し、扉の前に立った。

悪魔が経営する会社。そんなものがこの世界でのさばっていた事すら許されない。

両手に握っていたアレグロとフォルテを構えると二丁の引き金を引いた。

それが拳銃によるものだとは思えない程の連射。吐き出される弾丸がドアに次々と風穴を開けていく。

そして銃弾の嵐にドアは木端微塵となって吹き飛んだ。

地面へ落ちていくドアの破片。転がる薬莢。漂う硝煙の中を通り抜けブレイクは社長室へと入った。

突然の銃声に全く動じていないのか、スーツを着た女社長…グレイス・モンゴリーは窓際に立ち、赤ワインが注がれたグラスを片手に外の景色を楽しんでいた。

窓に映ったブレイクの姿を一目見た後、彼女は笑みを浮かべ彼へと話しかける。

 

「やっと来てくれた。この時をずうぅぅっと待っていたのよ…?」

 

「俺は待ってねぇけどな」

 

肩を竦めて、彼はアレグロを素早くスピンさせてからグレイスへと銃口を向けた。

 

「お喋りしにきた訳じゃねぇんだが、一つ聞く。…婆さんを殺ったのはお前だろ」

 

「婆さん…?ああ、貴方がよく行ってた銃砲店のあの人の事ね」

 

最後の一滴を飲み干し、彼女は振り向く。

 

「ええ。殺したわ。だって貴方は私のもの、そして貴方は私を殺してくれる人。だからあんなババアは邪魔だった。どうせ遅かれ早かれ死ぬ存在。この世に無様に縋りつく位なら、早々にあの世に送ってあげた方があいつの為じゃない」

 

その表情は殺意が籠ったものではない。

笑みだ。満面の笑みが浮かんでいた。

まるで自分がした事は間違いなどではない。この行いは正しいのだと言わんばかりの笑みであった。

 

「…」

 

それに対しブレイクは珍しく軽口を叩く事はしなかった。

戦う力の一つであり相棒たるアレグロとフォルテを製作してくれた恩人をそんな風に言われたら憤りを覚えるのは当然の事。

人に害を与える悪魔は討つべき存在。その信念を貫いているブレイクからすれば、到底許せる様な事ではなかった。

だがグレイスは彼の怒りの炎に更に強くさせたと言っても良い程のとある事を口にした。

 

「あのババアもそうだったけど、あの酒場に居た金髪の人形もそう!私のものだと言うのに気軽に話しかけていた!民生用人形なら体でも売って大人しくしていればいいのにッ!!あの人形は、あの人形だけは許せなかった!!けしかけたあいつらを寄越して無様に死ぬ様は途轍もなく面白かったけどねぇ!!!」

 

それが誰の事を言っているのか不思議とブレイクには理解出来た。

グレイスの言う酒場に居た金髪の人形。そしてその人形は民生用だった。

該当する人形など一人しかない。

 

(…ローザか)

 

ローザ。

今ではOts-14、またの名をグローザと呼ばれる元民生用人形であり、ブレイクにとって今では公私共にパートナーと言える人形であり大事な存在。

今では元気に生きているが、再会するまで自分のせいで死なせてしまったと思っていた。

だが全て自身に非がある訳ではなかった。

どういう訳か自分に勝手に惚れてしまった悪魔が寄越した手下(悪魔)共によって殺されかけた。グレイスが自ら吐いたそれが証拠であった。

 

「成程ね…」

 

これ以上相手の話を聞く必要は無い。いや、その必要性はなくなった。

どんなに可愛い顔をしてようが、知った事ではない。

こいつは討たなくてはならない。どんな理由があろうが、どんなに許しを乞おうが関係ない。

仇討ちになるのかはブレイクにも分からない。

ただ討伐するのみ。相手が自身に殺される事を望んでいようとも。

 

「さぁ!殺し合いましょう!私が死ぬか、それとも私が勝って貴方に最高過ぎる程の平穏な余生と愛を与えるか!あぁ…!ああ…!!考えただけでも体が火照ってしまうわ!」

 

勝手に盛り上がっているグレイスにブレイクは呆れた様なため息をついた。

これ以上話す気はないと思っていたが敢えてそれを撤回。

妄想暴走しているグレイスに向かってアレグロを引き金を引いた。

銃声と共に放たれた銃弾はグレイスの頬を掠めるとそのまま窓に風穴を空ける。静まり返った社長室でブレイクはアレグロとフォルテをホルスターに納めながら口を開く。

 

「平穏な余生だと?興味ねぇよ」

 

背のリベリオンに手を掛け、笑みを湛えたまま彼はリベリオンの剣先をグレイスにへと突き付けた。

 

「人生ってのは刺激があるからこそ楽しいのさ。そうだろう?」

 

ブレイクがそのセリフを言い終えた時、両者は一気に動き出した。

甲高い音、爆発、銃声が響き合う。

 

「さぁ!さぁ!心行くまで踊りましょう!!」

 

グレイス・モンゴリー…否、グレモリーの攻撃は魔力で生み出した貫通力のある光弾や追尾してくる光弾などを飛ばし比較的遠距離戦を重視した戦いを得意としていると思いきや、いきなり魔力で作り上げた大剣を手に接近戦を仕掛けてくるなど遠近両方を得意としている様であった。

特に回避能力はずば抜けており、今まで見てきた悪魔達の様に高い耐久力に物を言わせ多少の攻撃では動じないタイプではなく、全ての攻撃を喰らうまいとまるで舞台の上で踊っているかの様に軽やかな動きでブレイクの攻撃を容易く躱していた。

 

「やりづれぇな!」

 

ぼやきながら、ブレイクは飛んでくる光弾をアレグロとフォルテで撃ち落していく。

その中で彼は思う。グレモリーの戦い方はまるで自分と似た戦い方をする。

かつて戦った悪魔でモノマネする悪魔(ドッペルゲンガー)と比べるとグレモリーは面倒な相手と言えた。

だが倒せない相手ではない。それだけは彼にも自信があった。

 

「あははははははっ!」

 

狂った様に笑いながら攻撃を仕掛けるグレモリー。

大剣による攻撃に合わせる様にリベリオンを振り上げ弾き飛ばしすと蹴りを叩きこみ吹き飛ばす。

どちらにせよこのままでは泥仕合になるのは明白。とっとと終わらせると決めた以上速攻で行くしかない。

 

「飛ばすぜ!」

 

エアトリックによる瞬間移動でグレモリーとの距離を一気に詰める。

目の前まで距離を詰められた事には流石のグレモリーも驚きを隠せなかったが手にしていた大剣を振い、それに合わせる様にブレイクもリベリオンを振う。

ぶつかる刀身。そこから繰り出しあう技の数々。凄まじいまでの剣戟。

そしてブレイクが動く。

わざと相手の攻撃でよろけたフリを見せつけ、攻撃を飛んでくるのを待った。

何か仕掛けてこようとは知らずにチャンスと見たグレモリーは大剣を突き立て突進。剣先がブレイクのすぐそこまで近づいた瞬間、赤い何かが駆け抜け彼女を吹き飛ばした。

 

「え…?」

 

何が起きたのかグレモリーには分からなかった。

ただ何かによって吹き飛ばされ、宙へと舞い上げられている。

そして反撃を受けた事しか分かっていなかった。

何をどうすれば一瞬の内に宙へ舞い上がらせる程の反撃が出せるのか。

その正体はロイヤルリリースと呼ばれる反撃技にあるのだが、もはやこればかりは彼の戦い方を直に見てきた者達にしか分からないだろう。

 

「これで落ち着いたか?それともまだ火照ってる感じか?」

 

ならよと呟きながらブレイクは新しい玩具…ケルベロスを取り出すと反撃で受けたダメージにより上手く動けないグレモリーへと跳躍。

 

「こいつで体を冷やしな!」

 

そのまま空中で体を回転させながらケルベロスをグレモリーに叩きつける。グレモリーが地面へと叩きつけれバウンドした時には既にブレイクはグラウンドトリックを用いて地上に降り立っておりケルベロスをヌンチャクの様に華麗に振り回した。

回避は出来ない。ただし攻撃に合わせて剣を振るう事は出来る。きつい態勢にも関わらずグレモリーは大剣を振るうがリベリオンを振るっている時以上に速度と手数を重視した攻撃に大剣は悉くはじき返され、防戦を強いられる。

思う通りに行かない事を感じ取ったのか先程まで笑っていたグレモリーの表情に険しい表情が浮かんだ。

 

「くぅ…!」

 

「よっと!」

 

下から上へとケルベロスを振り上げ、そこから飛びあがるブレイク。

宙で体を寝かせながら高速回転しつつをグレモリーへとケルベロスを連続して叩きつけていく。

着地と同時に強烈な一撃を叩きこみグレモリーの態勢が崩れるとそのまま彼はケルベロスからリベリオンへと武器を切り替え、剣先を突き立て突進。

リベリオンによる強烈な一撃がグレモリーの腹部に直撃し、大きな風穴を開け吹き飛ばす。

腹部から血を流しながら地面をバウンドしながら転がっていくグレモリー。慣性が漸く落ち着いた時には、もはや彼女は立つ事で精一杯だった。腹を抑えながら彼女は窓際に立つ。

そこにブレイクが歩み寄り、アレグロをグレモリーの顔へと突き付けた。

 

「ダンスにしちゃ今一だったな」

 

「私なりに振り付けを考えたのだけどね…満足させる事が出来なくて残念だわ」

 

息を荒くしながらもグレモリーは不気味な笑みを浮かべていた。

それがどういう意味を示しているかなどブレイクには分かる筈もない。

だがこれこそがグレモリーの狙いなのだ。

彼に殺してもらう事。そして新たな体を得て姿を現す事を。自分を見てもらい、そして殺してもらう。

それを何度でも続ける。それこそが彼女が望む殺し愛だ。

 

「さぁ私を殺して!そしてまた踊りましょ!!お互い心が結び合うその時まで!あははははッ!!」

 

殺せと言うのだ。

ならば望み通りあの世に送ってやろう。

ブレイクがアレグロの引き金を引きかけた時、戦闘を終えた社長室にある男の声が響いた。

 

「まだ二度目があると思っているとはな。愚かな女だ」

 

その声にブレイクはアレグロの引き金を引く指を止め、声の方へ向いた。

そこに居たのは本社の外で本を読んでいた筈のギルヴァ。彼の手には無銘と共に何故か対戦車ライフルが握られていた。

 

「今更来たのかよ?もう終わりかけなんだが?」

 

「そんな事は分かっている。ただそこの女に伝えなくてはならん事があって此処に来ただけだ」

 

ギルヴァの台詞に首を傾げるブレイク。

そんな彼を無視し、ギルヴァはグレモリーへと伝える。

最後の一人となり、死ぬ事によってこの悪夢を終わらせようとした彼女からの伝言を。

 

「お手製の憑代は奴が消したそうだ。貴様に二度目の生はもう訪れないとな」

 

「ッ!?」

 

ギルヴァの台詞を聞いた時、先程まで笑みを浮かべていたグレモリーの笑みが消えた。

今になってそれを気付いたか様にその顔は青ざめ、体は震えていた。

その様子にブレイクは察した。どうやらこの悪魔は再び自分の前に姿を現す策を講じていたのだと。

だが本人を気付かぬ内にそれが叶う事は出来なくなっていた。それも味方だと思っていた者による裏切りによって。

 

「成程な」

 

頷きながらアレグロとフォルテをスピンさせると二つの銃をグレモリーへと突き付けるブレイク。

死がすぐそこに迫っていると理解したグレモリーは先程までの笑みを無い。

死ぬ事を恐れ、命乞いする様な目を浮かべながら只々息を荒くする哀れな悪魔しかいなかった。

 

「じゃあこれで地獄に帰りな」

 

その台詞と共に二発の銃声が鳴り響いた。

頭部と胸部に銃弾を受けたグレモリーは撃たれた反動で吹き飛び窓を突き破り外へ飛び出る。

完全に息絶えた彼女は地面に激突。美貌を有した体はぐちゃぐちゃとなっており、原形すら残っていない。

空を見上げながら体を消失していくグレモリーを社長室からブレイクは静かに見下ろしながら、アレグロとフォルテをホルスターへと納める。

静寂が社長室を包む。ふとブレイクは静かに呟いた。

 

「…終わったな」

 

討つべき悪魔は討った。

もう思う事無い。その場から翻し赤いコートをなびかせながらブレイクは社長室を出ていく。

それに続く様にギルヴァも社長室を出ていくのであった。




本社編はこれにて終了です!

次回は…本店を制圧したシーナ側を描こうかと。一応次回を持ってoperation777は終了とします。
またシーナの知らぜられるほんの一部の過去を描こうかと。
そりゃあんな風に修羅になれるんだ…色々あるんですよ、彼女にも。

では次回ノシノシ
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