Devils front line   作:白黒モンブラン

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─これから先、手を借りる事はあるのだ─

─ならばそれ相応の物を用意しよう─

─それがS10地区前線基地にやり方なのだ─


Act164 Devil's delivery service Ⅱ

大型トレーラーの荷台から基地内部の訓練室へと送り込まれた配達品。

その数は何気に多く、内幾つかがどう考えてもメンテナンスキットとは思えぬ物が混じっていた。

本来であればノアにシュトイアークリンゲのメンテナンスキットと+αを渡すのだが、当の本人は今哨戒任務に出ている為、直ぐには戻ってこれない。

 

「うーん、中身が気になる所だけど…そっちの配達は隊長宛なんだよね?」

 

RFBの言う通りであり、アナもその認識でいた。

しかしルージュが首を横に振った事で流れが変わり、RFBもありゃ?と困惑した声を上げた。

 

「ノアさんへの配達だったのですが…実は追加の配達を頼まれまして。もう一人、品を渡さないといけないんです」

 

「そうなの?じゃあ誰に送る事に?」

 

「貴女にですよ、RFB」

 

「へぇ~、そっかそっか、私かー……ん?」

 

漸く自分宛の品がある事を理解し始めたのか、段々とRFBの表情が引き攣った笑みへと変わっていく。

ゆっくりと人差し指で自分を指すRFBにルージュはニッコリと微笑み頷く。

これで自分宛の荷物が確定した。どう言葉にしたらいいのか分からないRFBを他所にルージュが彼女宛の品を持ち出してくる。

それは配達の品の中で一際大きいアタッシュケース。黒を基調とし一筋の黄緑のラインが描かれている。

どう見てもRFB用に製作されたものだと誰しもが言葉にする事もなく理解しており、ルージュがアタッシュケースを開いた。

そこに入っていたのは…

 

「盾?」

 

中身を見てRFBが呟いた通り、入っていったのは大型の盾。

しかしその形は盾とは言い難く、まるで十字架を模った形をしていた。黒色に彩られた装甲、縁の部分は黄緑色で彩色されている。

 

「ただの盾という訳ではないですよ。ブレイクさんから貴女の戦い方を聞き、マギーが一から全て作り上げた一品です」

 

「素材回収に俺が振り回されたけどな…」

 

ルージュが作られた経緯を話す一方でげんなりとした表情でネロが呟く。

どうやら素材にはカジノ本店で現れた片手剣と盾を装備した悪魔の盾の部分が使用されており、その回収にネロが動き回ったのは一部の者しか知らない。

そしてRFB用に製作された大盾【R.ガード】にはブレイクが利用する戦闘スタイル【ロイヤル・ガード】を疑似的に再現した機構が内蔵されている。

城塞の如き防御力と一発逆転という特徴を有した攻防一体の盾と言っても間違いないだろう。

 

「でも盾なんて…実際スーツがある訳だし」

 

確かにRFBの言っている事は間違ってなどいなかった。

彼女には例のスーツがある。

高い防御力、機動力を誇るスーツがあれば、今更盾を渡された所で無用の長物だろう。

 

「ええ、スーツの事は聞いています。確かに不要と感じるでしょうが理由はある。…元よりこの盾は悪魔との戦闘を想定して作られたものですから」

 

「…!」

 

「以前の作戦もそうでしたが…また貴女方に協力を仰ぐ時が来るかも知れません。そうなった時、低級、上級問わず悪魔との戦いが発生する。悪魔と言えど決して一種類ではない。擬態するもの、魔術を得意とするもの、高い再生能力や体内に毒を持つものも居る。強力な悪魔とも渡り合える様にする為、これを貴女に渡すのです、RFB。それとこれは私の個人的な感情ですが、貴女達には死んでほしくないと思っています」

 

普段から大人しいだけあって、饒舌に喋るルージュの姿はシーナ達にとって珍しいと言えた。

その視線に気付いたのか、ルージュは顔を逸らして自身の表情を隠した。

 

「と、取り敢えず受け取って下さい。機能に関しては私が説明致しますので」

 

どうやら少々気恥ずかしかったみたいだ。

流石に顔が赤くなっている事を指摘すればルージュでも怒りかねないだろう。RFBは分かったーと頷きアタッシュケースに収められている大盾【R.ガード】を手に取った。

 

「おー…軽い」

 

見た目に反してその軽さに驚くRFB。

それもその筈でR.ガードの装甲は素材として回収された魔界製の盾が使われている。

ちょっとやそこらでは傷つく事もない上に、同時に軽量。魔界製は大体その様な物が多い。

 

「機能に関してですが、魔力による障壁を生み出す特殊機構がその盾には内蔵されています。使用者に意思に反応し魔力による障壁を展開。タイミング良く受け止める事が出来れば、ダメージを負う事無く防御する事が可能です。また攻撃を受け止めた際はそれをエネルギーへと変換、蓄積。盾の内側にどれ程蓄積されたのか分かるメーターが内蔵されています」

 

「いたり尽くせりだね…。それでその蓄積したエネルギーはどんな使い道が?」

 

「基本的には反撃として利用されます。一番の目玉は【リヴェンジ】でしょうか」

 

「リヴェンジ?」

 

「はい。RFB、盾の持ち手を手前に引き、左へと回転させてくれますか?」

 

「よく分かってないけど…取り敢えずそれをすればいいんだね。…よいしょっと!」

 

ルージュの指示通り、RFBは盾の持ち手を手前に引き、左へと回転させた。

その瞬間、何かの起動音が響き渡りR.ガードは変形を開始。

音を立てながら変形していく十字架。十字架の長辺部分の装甲が展開され、開口型砲身へと変形。盾の持ち手は銃の持ち手へ変形し、RFBの前にその姿を晒す。

 

「え…?」

 

変形した盾を見てRFBは言葉を失う。

そこにあったのは十字架の形をした巨大な狙撃銃だったからだ。

否、狙撃砲と言った方が正解だろう。変形したそれの口径はもはや銃という枠から外れている。

そしてこれこそがルージュの言う一番の目玉と言える【リヴェンジ】と呼ばれるものの正体だった。

 

「一発逆転であり一撃必殺。エネルギーを最大にまで蓄積した時のみ使える形態。全てのエネルギーを消費して撃ち出す一発はどんなに体格が大きい悪魔でも一撃で沈める事の出来る代物。良かったですね、貴女も立派なデビルハンターに昇格です」

 

「これを見せられた上にそれを言われてもどう喜んだら良いのか分からないのだけど!?」

 

「ふふっ、貴女と共闘できる日が来るのが楽しみです」

 

「現実から目を反らさないで!帰ってきてよ!ルージュ!?」

 

結局の所RFBの叫ぶが届く事もなく現実から目を反らす事に徹したルージュ。

後はRFB自身がどうにかするという事で収まったのだが、ノアが哨戒任務から戻ってくるにはもう少し時間は掛かる様であった。

どうしたものかと思った時、ギルヴァがアナへと一声かけた後にある物を投げ渡した。

投げ渡されたそれをキャッチするアナ。それを見て彼女は驚きながらも困惑した声を上げた。

 

「えっと…」

 

彼女の手に握られているのは彼が愛用している日本刀状の魔剣【無銘】を魔力によって再現したものであり群青色に輝く無銘…またの名を【幻影】が彼女の手に握られていた。

何故これを渡したのかアナに分かる筈もなく、彼女はその事をギルヴァへと問う。

 

「これは…?」

 

「単なる気まぐれに過ぎん。ただ託してみるのも悪くないと思ったのでな」

 

彼女に渡した幻影にギルヴァは無銘と似た特徴を保有させていた。

流石に空間を切り裂くとまでは行かないが、魔力の斬撃を飛ばすといった事が可能。同時に幻影には無銘にはないとある能力を付与させている。

それが幻影を装備している時に限って、使用者の身体能力を向上させるという特徴を持ち合わせている。

その恩恵を利用さえすればギルヴァの技の一つである疾走居合もやろうと思えばやれたりするのだ。

 

「使いこなしてみろ。…必要であれば俺を呼べ。相手位はしてやろう」

 

そうは言うがギルヴァは決して託してみたいという理由だけで幻影を渡した訳ではない。

当然ながら先程ルージュがRFBに言っていた事と同じ考えと思いがあった。

ただ彼がそれを口に出す事はしないが。

 

「刀の技術を上げたいなら私も協力しますよ」

 

「貴女も刀を?」

 

「はい。以前は大鎌を使っていましたが、今は刀を三振り使う事があるので」

 

「待って下さい。今、三振りと言いませんでしたか?」

 

「ええ、言いましたよ」

 

自身の聞き間違いではないのかと思ったのか、アナがルージュへとそう聞き返す。

それに対しルージュは頷いた為に、聞き間違いではなかったと思う反面アナは困惑する他なかった。

どういう理由で刀を三振りも使うのか、まずそこに疑問が尽きるのだから。

最もアナは知らないが、ルージュの言う三振りの刀とは【鴉刃】【漆】【朱】の事を指している。余談であるが彼女の戦い振りも最早常識を逸脱しており、引き攣った笑みを浮かべる事間違いないだろう。

 

「さて…配達の品はノアちゃんだけのとなったけど」

 

「さっき連絡したらもう少しで戻ってくるって。その間はくつろいでいてくれってさ」

 

「あー…そうなったら、少しの間のんびりさせて貰いましょうか。ヤークトフントの皆さん分のクッキーと別でお茶する為のお菓子でマフィン焼いてきたから」

 

マフィンを焼いてきたという事はギルヴァ達も初耳だった。

だが同時にクッキー以外の別のお菓子を作って持って来ていた事は分かっていた。少々甘い香りが車内で漂っていた事に気付いていた為である。

 

「今思ったけど…シーナ指揮官ってお菓子作りが趣味なの?隊長に聞いた話だと過去の作戦のお礼としてアップルパイを貰ったって聞いたけど」

 

そこでRFBは気付かなかった。

その事を問われた瞬間、シーナの表情に薄っすらと影が差した事に。

だが表情はすぐに笑みへと変わり、シーナは問いに答える。

 

「趣味と言えば趣味かな。小さい頃、パティシエだったお父さんとお母さんに色々教わって…その影響でお菓子作りが趣味になったという感じだよ」

 

「なるほどー。どおりでお菓子作りが趣味という訳かー。味の方は期待していい?」

 

「勿論。味の保証はするよ。楽しみにしてて」

 

「オッケー!じゃあ隊長にも連絡入れないとね。早く帰って来ないとシーナ指揮官が作ったお菓子がなくなるって」

 

「ふふっ、だね」

 

RFBが端末を取り出し、哨戒任務中のノアへと連絡を入れると彼女の傍でシーナは何処か思い詰めた様な表情を浮かべた。

その表情が誰にも気付かれる事もなく、そして彼女は口を開いた。

 

「…もう10年になるのか。私が復讐を誓ったあの日から…」

 

小さく呟かれた台詞は誰の耳にも届く筈もない。

RFBがノアに連絡を入れた後、シーナ達は一時のお茶を楽しむ為、そしてかつてこの基地で指揮官を務めていた彼女に会いに行く為、訓練室を後にした。




という訳で今回はちょっとしたもののその一を紹介。

今回S10地区前線基地から彼女達に配達したものを簡単に紹介。

【R.ガード】
:ブレイクの戦闘スタイルの一つである「ロイヤルガード」を疑似的に再現する機構を内蔵した十字架型の大盾。
基本的にはブレイクのロイヤルガードと変わらず、防御と反撃の特徴を合わせ持つ。
また変形機構を備えており、リヴェンジと呼ばれる巨大な狙撃砲へと変形する事が出来る。

【幻影】
:ギルヴァが自身の魔力だけ作り上げた群青色に輝く刀。
刀身は鞘に納められており、彼の愛刀【無銘】と同じ姿をしている。
斬撃を飛ばす事が可能な他、装備している時に限って使用者の身体能力を向上させる特徴を有する。


次回はぼのぼの&ノアちゃんへの配達品の紹介じゃい!
んでもってこいつも登場させます。ギルヴァ、ネロ、ルージュという悪魔狩人の三人…あと一人必要だろ?

では次回ノシ
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