─その過去は復讐に身を投じた少女─
強制的に休むように言われてから数日が経った今日。
未だに指揮官としての仕事へ戻る事を許されないシーナはかつての教官であり、以前の作戦で協力してくれたパイソンから彼女宛に送られてきたガンケースを片手に射撃訓練場へと向かっていた。
通常業務に戻れない事から今の彼女は私服で、黒のブレザーに灰色のワイシャツに黒ネクタイ、白のラインが入った黒のスカートとまるで学生を思わせる様な服装でその上からロングコートでありながら魔工が施された服装【サーヴァント】を羽織っていた。
こういった服装を好む性格なのか、18歳である彼女が持つ私服は学生っぽいものが多い。流石に全部がそうではなく、中には出掛ける用の為の服も存在している。
今回は特に気に入っている組み合わせ。ほんの少しだけシーナの気分は良かった。
すれ違う人形や職員達に軽く挨拶を交わしていきながら、射撃訓練場へと到達。内部から銃声が聞こえた為、誰かが訓練しているのかなと思いながら彼女へ中へと入る。ドアが開く音が聞こえたのか、訓練していた人形…ハンドガンの戦術人形 コンテンダーがシーナへと声をかける。
「おや、指揮官。訓練ですか?」
「訓練というより、教官から送られたこれを慣らしておこうかなって」
「?」
コンテンダーの隣へと歩み寄り、ガンケースを台の上へと置くシーナ。
ロックを解除し、ケースが開かれる。
中には収められていたのは一丁のリボルバーであり、その銃の名はマテバ2006M。
だが誰もがどう見ても収められていた銃が新品とは思わないだろう。
随分と使い古されており、銃身には英語で【Paine killer】と文字が刻まれている。
(ペインキラー…鎮痛剤?)
何故その様な文字が刻まれているのかはコンテンダーには理解できなかった。
ただ隣でその銃の銃身を指でそっとなぞるシーナを見て、何か関連がある事だけは理解出来た。
「捨てても良いって言ったのになぁ…」
本社で居るであろう教官へ向かってシーナは呟きながら、銃を手に取る。
使い慣れているのか手慣れた手つきでシリンダーを取り出し銃弾を込め、全弾装填すると構えると彼女は苦笑いを浮かべた。
「どうされました?」
「…数年経っているというのに、扱い方もこの銃の重みも未だに覚えているんだなぁって思ってね」
「その言い方だと…その銃に思い入れがある様に聞こえるのですが」
「まぁ思い入れというよりかは…この銃をよく使っていたという事かな。マテバ以外にも、6ウニカとかも使ってたし、今使っているM92FやMP5もそうだよ。あ、実は私、コンテンダーも使ってたんだよ」
意外と言えば意外とも言える台詞。
見かけに寄らずシーナは様々な銃を扱った事がある。その事実を聞いた時コンテンダーは内心驚いた。
特に驚いたのは自身の名と同じくコンテンダーを扱った事があるという。
それは嬉しい話なのだが同時に疑問に思う。
いつ、どのタイミングで自身を含めた様々な銃を扱う様になったのかと。
若くしてというのであれば、グリフィンに就く前となるのだが疑問は残る。コンテンダーの知る限りではシーナの実家は軍属ではない。護身の為に拳銃に多少触れる事があったとしても、自動小銃など触れるという機会はそうあったものではないと。
では何があってその様な機会に巡り合ったのか。一人の少女の身に何が起きたというのか。
今それを尋ねようと思えば出来ただろう。しかしその言葉が出てこない。このまま疑問に終わってしまうのではないかと思った時、コンテンダーの表情を見て察したシーナが口を開いた。
「今から4年前の事だよ。私は復讐を敢行した。時期も丁度この頃だったかな。とても寒い夜の出来事。たった一晩で私は大量虐殺を行った少女へとなった」
本人の口から明かされた過去。
その過去にコンテンダーは言葉が出なかった。いや、何を言えばいいのか分からなかった。
何故ならシーナが浮かべる表情が笑っているにも関わらずとても苦しそうだったからだ。
これ以上聞いてはいけない。その話を止めようとした時、シーナは言葉を続けた。しかしその内容は過去に関する内容ではなかった。
「今はこれだけしか言えないかな。あまり語る様な内容でもないし」
「指揮官…」
「そんな表情しないで。大丈夫、気持ちの整理はついてる。でもそうだね…私の過去が知りたいというのであれば、その時は貴女だけではなく皆にも明かそうかなって思う。色んな人達が私の過去が気になっているだろうから」
さ、慣らしを始めないとねとシーナは準備を始める。
いそいそと動いていく彼女を見て、コンテンダーは意を決した様な表情で口を開く。
コンテンダーもまた良い扱いをしてくれなかった基地に居た過去があり、シーナによってこの基地に連れてこられた一人なのだから。
闇から光へ。カッコよく表すならその表現があっているのだろう。
彼女にとってこの基地での生活は光だったから。自分を連れてきてくれた指揮官に恩義を感じているのだ。
「貴女にどんな過去が、どんな事をやってきたとしても…私にとっての指揮官は貴女だけ。それをどうか忘れないで下さい」
「!…うん、ありがとう。ふふっ、コンテンダーにそう真面目に言われると何だか告白されているみたい」
「なっ…!私はそういうつもりではなく…!」
「分かってるよ。ありがとうね、コンテンダー」
例えどんな過去があろうと。
コンテンダーへと向けられたシーナは笑みは本物であろう。
作り笑いではない。心からの笑みであった。
「そう言えば…」
するとシーナが使ってきた銃に関して気になった事があったのか、コンテンダーがある事を尋ねる。
「その銃といい、先程言っていたもう一つのリボルバーといい…何故それを選んだのですか?」
「何故って、最初に使っていたというのもあるけど…そうだね、リボルバーの中では…」
手に持ったマテバを一目見てから、シーナは満面の笑みでコンテンダーの問いに答える。
「マテバが好きなの、私」
まるで何かの影響を受けたのではないかと言いたくなる様な台詞が彼女の口から飛び出るのであった。
今回は短いですがシーナの過去にちょっぴり触れた感じです。
マッ〇ス・ペ〇ンだったのかね…この指揮官は。
では次回ノシ