Devils front line   作:白黒モンブラン

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今回は戦闘は無し。
後少しだけ主人公の過去に触れます。

お気に入り登録をしてくれている方々、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございます!



Act2 Run!Run!Run!

―一体…この人は何者なの…?

 

部屋の各所が炎で燃え盛り、暑さを感じながらも私は目の前に男性を見つめた。

突如として現れ、刀一本で鉄血のハイエンドモデルを圧倒。それどころか距離が離れた相手に斬撃を与えたり、急に消えたと思えば接近していたり……正直な所、あの人形が狼狽えても無理もないと思ってしまった。

やっている事が人間の範疇を超えているのだ。しかし私達と同じ様な人形とも思えない。ならば一体何者なのか?

…まさしく「異端者」。もし言葉にするのであればそれが正しいだろう。

 

「っ!」

 

助けてくれた事には感謝している。だが彼の握る刀が自分も向く可能性もあった。

すぐさま彼へと銃を向ける。こんな事している場合ではないのも分かっている。だが余りにも謎過ぎるが故にそうせざるえなかった。

 

「…」

 

自分に銃が突き付けられている事に気付いたのだろう。男性はゆっくりとこちらへと振り向いた。長く伸びた前髪のせいもあって何を考えているのか分からない。だが銃を向けられているこの状況でも恐れや怯えを見せる様子は一切ない。先程の事といい、人形との戦いは慣れているのだろう。むやみに交戦する事になればどうなるか…想像すらしたくない。

お互いに緊迫した空間が生まれる。先に破ったのは男性の方だった。

 

「そうするのは勝手だが…。良いのか?どこか急いでいる様にも見えるが…」

 

「っ!…えぇ。正直な所こんな事をしている余裕はありません」

 

「そうか…。ならばそれを優先するんだな」

 

「どういう意味です」

 

「そちらとの交戦意思はないという事だ」

 

そう言いながら男性は背を向けて歩き出した。普通なら呼び止めて、わざと足元を撃つなりして止まらせる事は出来ただろう。だが今の私には何故かそれが出来なかった。

 

「…守りたいものがあるのだろう?ならばこんな所で油を売っている暇などない筈だ」

 

「…」

 

「力だけでは何もならん…。その意思が、思いが本物だというのなら、その足を止めるな」

 

何か見透かされている様な気分だった。だが同時にその言葉は何か響くものがあった。

何故それを伝えたのか訊ねようとした時、遠くから誰が走ってくる音が聞こえた。数は一。恐らくそれは…。

 

「お迎えが来たようだな…。部外者はさっさと出ていくとしよう」

 

向こうにもそれが聞こえていた様で、そのまま彼は暗闇の奥へと姿を消していった。

結局…彼が何者なのか、そして彼の名前が分からないまま、私は作戦を続行するのだった。

 

 

 

 

「ここまで来れば問題ないか」

 

戦場から離脱し、全体が一望できる丘の上に到達。

戦闘はまだ続いているのだろう。銃声は引っ切り無しに響ていた。

 

―何であんな事言ったんだ?

 

「何がだ?」

 

―最後に言った台詞だ。力だけでは何もならん、どうのこうの…

 

「さてな…俺にも分からん」

 

何であんな事言ったのだろうか…。彼女とは今の今まで関わりなんてない。全くの初対面だ。

彼女を見て何か思い当たる節でもあったというのだろうか…。

只…分かるとするのであれば…。

 

「そうした方がいい。そう思っただけだ」

 

曖昧で感情的な答え。だが今はそれぐらいしか答えられなかった。

あれからかなりの日数が過ぎた。あの日以降、彼女が、グリフィンの戦術人形部隊がどうなったのか知る由もなく何時もの様に各地を放浪していた。以前の様に鉄血との戦闘は極力避けるようになり、何時もとは一部違う日々を過ごしつつ、ちょっとした平和を満喫していた。そう、していたはずだった。

廃墟と化したマンションの渡り廊下を全速力で駆け抜けていく。後ろからは追いかけてくる足音が多数。

 

「蒼!周囲の状況は?」

 

―後方から5!前方の階段から2!このまま行けば挟み撃ちに遭う!

 

「とことん追い詰めて来たか。この手のは向こうが上手か」

 

―言っている場合か!挟まれる前に別の道を探せ!

 

「分かっている!」

 

「止まりなさい!!」

 

蒼が言った通り、前方の階段から駆け上がってきた…グリフィンの戦術人形の姿があった

これでは階段へは向かえない。だからと言って足を止めてしまえば終わりだ。ならば手段は一つ!

 

「なっ!?」

 

「はっ!?」

 

「えぇッ!?」

 

完全にこちらを追い詰めたと思った人形達から驚愕の声が聞こえる。それもその筈だろう。高さは10メートルはあるだろう場所から自分は飛び降りているのだから。普通の人間がこんな事すれば命を捨てていると言っていい。だが自分は「あれ」なのだから、この程度高さはどうという事はない。

 

「何でこんな事になったのか」

 

地上へと落下しながら呟く。束の間の平穏は過ぎ去り…、

現在進行形でグリフィンの戦術人形部隊に追われているのだから。

正直思い当たる節がない訳でない。だが何時から自分の事が向こう側に漏れたのか?それが気がかりだった。

今まで誰かに見られる事無く済んでいた……いや、待てよ…?

思い出すは「あの日」の事。一人だけ会っているじゃないか…。

 

「しかし…」

 

何か違うと勘がそう告げる。ならばどうしてこんな事になっているのか?

憶測だがあのM4A1以外の誰かが偶然こちらの事を見ていたとすれば?同時に鉄血の人形部隊が斬り伏せられている事をグリフィンが認知していたとするのであれば…?そして自分の情報がグリフィンに伝わったとすれば…?

 

「今だけは神様を呪いたくなる」

 

―と言っても大半は俺たちが原因だがな?

 

「否定はせん」

 

一回転して地表に着地。一先ず危機は乗り切ったが、まだ安心はできない。未だにここら一帯では彼女たちがこちらを捕らえる為にせわしなく動いているのだから。正直な所、ここに鉄血の人形部隊がやってこないだろうかと思っている。お互いに敵対する立場なので、戦闘に紛れて逃げる事が出来るから。

だが、そんなのが起きてくれる訳がないのだからこうして逃げ回っているのだろう。

 

「鉄血から追われても仕方ないとは思っていたが、まさかグリフィンの方からとはな…」

 

―モテ期か?

 

「嬉しくとも何とも思わん」

 

互いに冗談を口にしつつ、この場から去る為歩き出す。しかしここからどうしたものか…。

こそこそ動いていたとしてもいずれ見つかる感じがしてならない。だからといって一戦交える様な事はしたくない。さて…

 

―いっそ正面突破で行ったらどうだ?

 

「…だな。こそこそやっていては埒があかないのは分かっているからな…」

 

現場を適当荒らせば指揮系統に乱れが生じ多少の時間稼ぎにはなるだろう。だが向こうは素人ではない。あらゆる事態を予測している上、隙も無いと言っていい。こちらを捕らえる為にあらゆる手段を使ってくる筈。

それはこちらも同じで、今は捕まるつもりはない。ほとぼりが冷めたら喜んで捕まるつもりではあるが…今はそうではない。そう…今はまだ、な…。

 

「行くぞ、蒼。少しばかり暴れる」

 

―了解。こちらを簡単に捕まえられると思っているお嬢様達に一泡吹かせるとするか

 

「あぁ…!」

 

勢いよく駆け出す。さて…ここからが本当の鬼ごっこだ…!

 

 

「居たっ!あそこに…って、うわっ!?」

 

「どうしたの!?きゃあっ!?」

 

人形と出くわす度に、ぶつかる寸前で跳躍して飛び越える、怪我しない程度に人形の肩を足場にして飛び越える、建物から建物へと飛び移るなど言った事を繰り返していた。いくら慣れていても突然の事には対処が疎かになるみたいで、この作戦は上手く行っていた。そのおかげか追手は段々と少なってきており、このまま逃げ出せるのも時間の問題となっていた。しかし気は抜けない。向こうだって黙っている筈はないだろう。

 

「っと…。ここまで来たら少しは安全か」

 

―あぁ。だが油断は出来ないな

 

「分かっている」

 

耳を澄ませば未だに声が聞こえる。まだこの近くに居るのだろう。あまりゆっくりはして居られない。

そう思いつつも、空高く月を見つめた。今日は満月、淡く照れされる月明かりが綺麗だ。この状況でなかったら月見でしたかったものだ。

 

―出来るならば酒も欲しいな。

 

「確かにな」

 

…今思うと…M4A1はどうしているだろうか?急ぎ事は無事に完了したのだろうか?

あれから随分の時が過ぎた為、今や知る手段はない。だが何故か気になってしまう…どうしてだ?

 

―…妹さんに似ているんじゃないのか?

 

「…蒼」

 

―勝手にお前の記憶覗かせて貰ったが…お前、妹さんが居たんだな?血の繋がりはないが…。

 

「あぁ…居たさ、いつも引っ付いてくる妹がな」

 

―性格は違うが、顔や髪型は何処か似ている所がある。あの時、あの言葉を言ったのも…重ねてしまったからじゃないのか?死んだ妹に…。

 

「かも…知れんな。無意識のうちにそうしていたんだろうな…」

 

もしあの子が生きていて…人ではなくなった自分を見てどう思うだろうか。

何て言うだろうか……今やその声は聞く事は出来ない。だが…もしかすれば…。

 

―根が優しく、お前に生きて居てほしいと願った子だ…。寧ろ喜んだのではないか?

 

「どうだろうな…」

 

しんみりした空間が訪れるがそれもすぐに消え去っていく。グリフィンの人形部隊が迫ってくる足音が響いている。直にここに到達するだろう。

 

「さて…もう一回逃げるか」

 

―だな。

 

「ここから逃げ出したら、彼女を探してみるか…」

 

―それも良いんじゃないか?時間は沢山あるからな。

 

「そうだな」

 

月へ飛び込む様にその場から飛び去る。その時、何だか誰かに優しく背中を押してくれる感覚があった。

それが何なのか、一体誰だったのか…結局の所分からずじまいだった。

 

 

彼が飛び去り、無人となった屋上。

月明かりによって照らされるその場において、飛び去った彼を見つめる少女がいた。

可愛らしいワンピースに、花の髪飾りを身に着け、彼女はやさしく笑顔を作る。

 

(私はここで見守っているよ、お兄ちゃん)

 

まさしくその笑みは…月夜に咲く一輪の花の如く、美しいものだった。




次回もどうするか未定。
出したいキャラはいるんですが…うちで持っていないキャラを出していいものか…悩みどころです。

ではまた次回 ノシノシ
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