Devils front line   作:白黒モンブラン

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─最終局面の始まり─


Act174-Extra Ironblood May Cry Ⅴ

作戦は最終局面を向かえた。

鉄血陣営最終防衛ラインでは第一、第二防衛ラインでの戦闘が可愛く感じる程、最終防衛ラインでの戦闘は激しさを増す一方であり、熾烈な攻撃により混成軍は苦戦を強いられていた。

特にこの最終防衛ラインの三箇所に配置された巨大な塔【Hell guard tower】と言われる大量の重火器やジュピター砲で武装した塔による攻撃が混成軍を苦しめる要因となっていた。

その他にも多数の鉄血人形部隊、また複数のハイエンドモデルに加え、自立機動兵器などがこの最終防衛ラインに配置されており、一概にHell guard towerだけに苦しめられている訳ではなかった。

このままでは壊滅する恐れがある。状況を打破する為には三つのHell guard towerを何とかしてでも破壊しなくてはならなかった。

最終防衛ラインに到達して間もなく戦闘を開始したギルヴァとブレイクもあれを何とかしなくてはならないという事は理解している。

 

『・・・・・・こちらタロス1、鉄血の最終防衛ラインに強力な防衛施設があって攻めることができない状態に陥っている・・・・そのためその状況を打開する決死隊を編成を考えている・・・・・そこで腕に自信があるやつに協力を頼みたい・・・・・・無論、腕に自信がない奴は参加しなくていいし、無理して来なくてもいい・・・・・・参加して攻める際は我々の戦術人形を盾にしてもらって構わない・・・・協力を頼む!!あの防衛施設を攻略すれば基地まであと一歩なんだ!!』

 

通信機に響く声。

参加してやりたいのは山々。だが二人がその決死隊に参加する事は出来ずにいた。

両手に持ったアレグロとフォルテを連射しながらブレイクは笑みを浮かべる。光弾やら砲弾やらが飛び交う戦場のど真ん中で彼はいつもの様に軽口を叩く。

 

「やれやれ。こっちに幾らか差し向けてきたか。モテるのは辛いな」

 

「なにごちゃごちゃと言ってやがる!」

 

自慢の機動力でブレイクへと距離を詰め寄るは鉄血ハイエンドモデル 処刑人。

左手に持った大剣を振りかぶり、彼の頭へと目掛けて振り下ろす。

 

「おっと!」

 

その一撃をブレイクは上半身を後ろへと反らして回避し距離を取ると処刑人へと反撃しようとするが、それを邪魔するかのように前方から無数の光弾が飛来。

魔力を込め双銃を引き金を引くブレイク。魔力を込めた事により強化された弾丸が次々と放たれ、光弾を撃ち落していく。自身を狙った無数の光弾を全て撃ち落とすと二撃目を仕掛けようとしていた処刑人に気付き、ブレイクは素早くリベリオンを突き立て突進。

 

「くぅっ…!」

 

直撃を受ける直前で反応し処刑人は大剣の剣幅で強烈な一撃をを受け止める。だが少しタイミングが遅かった事もあって後方へと吹き飛ばされ地面を転がるも素早く態勢を立て直し、もう一人のパートナーの傍で制止しゆっくりと立ち上がった。

 

「はぁ…はぁ…助かったぜ、狩人」

 

「ああ。…不用意に接近するな。下手をすれば一撃でやられかねんぞ」

 

「言われなくても分かってる」

 

そう言って二丁の拳銃をブレイクへ向けるは処刑人と同じくハイエンドモデルの狩人。

この場にいるのは決してこの二人だけではない。

錬金術士までも集結している。ブレイクとギルヴァは複数のハイエンドモデル及び人形、機械兵の軍団との戦闘を強いられている状況にあった。

どうやら自分達は相当警戒されている。戦っている中で二人はそれを感じ取っていた。

すると錬金術士の攻撃を受け流し、彼女を刀身を納めた無銘で吹き飛ばしたギルヴァがブレイクの後ろに立つ。背中合わせになった所を突く様に瞬く間に周囲を囲まれる中、ブレイクが彼へと話しかける。

 

「さてどうする?デカい塔はぶっ壊さなくちゃならねぇ。だが美人共に囲まれちまって動けねぇ。色紙にサインでも書いてやったら帰ってくるかね?」

 

「下らん事をぬかしている暇があるならこいつらを手早く始末する方法でも考えろ」

 

「そう言うがこいつらが一筋縄じゃ行かねぇこと位分かってんだろ?」

 

「…」

 

無言は肯定と捉えたのかブレイクは肩を竦める。

言われなくてもギルヴァも分かっている。

そして彼は彼女達と戦闘を開始から、その動きにある違和感を覚えていた。

自身が無銘を抜刀しようとした時或いは次元斬を繰り出そうとした時、それをさせまいと言わんばかりに周囲の敵が集中砲火を浴びせてきたのだ。

空間さえも切り裂く事の出来る無銘を警戒し技を出す前に集中砲火を浴びせ自身の行動を妨害している。

 

(学習したか)

 

当然かと彼は思った。

いつまでも鉄血という組織が何も学習しない存在ではないことぐらいは子供でも分かる話である。

しかしだ。こう何度も妨害されたら良い気などしない。若干であるがギルヴァの機嫌は良くなかった。

そして同時にそれが二人を囲む彼女達にとって最悪の事態を招く要因となるのだが、気付く事はなかった。

 

「覚悟が出来たか?貴様ら。デビルハンターなどという御大層な名もこれまでのようだな?」

 

錬金術士からの遠回しの殺害予告に反応せず、ブレイクはちらりとギルヴァの方を見た。

何時の間に出してきたのか彼の両手には籠手、両脚には具足が装備されており、金色の雷がバチバチと音を立てながら発っしていた。

それを見て小さく口角を吊り上げながらブレイクは最近手に入ったオモチャを取り出す。

その手に現れるは冷気を放つ三叉の鎖。その名もケルベロスである。

決して種切れという訳ではない。ただ方法が少し変わっただけに過ぎない。故にこの二人が諦めたという話にはならないのだ。

 

「お前が錬金術士をやれ。俺はあの二人を引き付ける。…後は合わせろ」

 

「ダンスの相手交代か。確かにそれが良さそうだな」

 

ふっ…とギルヴァが小さく笑みを漏らした時、二人は動き出した。

ギルヴァが処刑人、狩人の方へ、ブレイクが錬金術士の方へと向いて動き出したと同時に二人はエアトリックでダンスの相手へと急接近した。

 

「なっ…!?」

 

「!?」

 

「何だと…!?」

 

処刑人も狩人も錬金術士もほんの一瞬で距離を詰められた事に驚きの表情を見せた。

たかが普通の人間だと思い込んでいた為か、まさか瞬間移動するとは思っていなかったのだ。

そしてその一瞬が隙となり、ブレイクは錬金術士へとケルベロスを素早く振り回し攻撃を仕掛け、ギルヴァは処刑人目掛けてフードゥルで回し蹴りを連続して放つ。

氷すら作り出す事の出来るケルベロスの冷気が錬金術士の持つジャマハダルを凍てつかせ、強力な雷を生み出すフードゥルによって、ギルヴァの攻撃を大剣で防ごうとした処刑人が感電し動きが一気に鈍くなり、援護に入った狩人が拳銃を連射するも、ギルヴァは跳躍して回避。その際自身に雷を纏わせ、飛んできた光弾を全て何処かへ弾き飛ばす。

二人が戦い方を変えた事により流れが変わり始める。

 

「ちっ!面倒なッ!」

 

 

普段は冷静かつ残忍。敵を弄る様に殺し、その都度笑みを浮かべる錬金術士に焦りの表情が浮かぶ。ヌンチャクの様にそれを振り回しながら攻撃を仕掛けてくるブレイクに対して苦戦を強いられ、回避を重視しながらも残った複合兵器で迎撃する。もう片方がケルベロスの攻撃を防いだ時に凍てついてしまい、使い物にならず、短距離であるテレポートを用いて距離を取ってもエアトリックでブレイクが接近してくるという結果。

ありとあらゆる手段を講じても、まるで分かっていたかのように封じてくる。

 

「おいおい逃げてばっかりか?来いよ、ベイビー。本気出せよ」

 

おまけに挑発までしてくる。

乗らない様にしていたとしても錬金術士の苛立ちは募る一方であった。

 

「安い挑発に乗ると思うな!」

 

「そいつは残念…だ!」

 

ケルベロスを下から上へと振り上げ錬金術士の攻撃を弾き飛ばすとブレイクは流れる様に攻撃を仕掛ける。

負けじと錬金術士もジャマハダルを振るい、そのまま二人はすさまじい剣戟を展開しながら動き回る。

それにより周囲の敵はブレイクに狙いを定める事が難しくなり、同時に錬金術士の援護に中々入れない事態に見舞われる。

その一方でギルヴァは処刑人、狩人を同時に相手にしながらも圧倒していた。技量もさながらフードゥルの持つ雷撃の能力が人形にとっては厄介極まりなく。一発殴られただけでも電脳がイカれるのではないかと思える程の雷撃が襲ってくるのだ。現に人形兵と機械兵の何十体かは雷撃による感電死でやられていた。

処刑人は不用意に接近できず、ならばと狩人が攻撃を仕掛けるが構える動作もなく移動中でも放つ事が出来る魔力で錬成された刀【幻影刀】がマシンガンの様に投射される為、ギルヴァを狙う事が出来ず只々それを撃ち落とすのに専念する他なかった。

狩人に自身を攻撃する隙を与えず、そして処刑人にへと連続して回し蹴りを繰り出すギルヴァに蒼が話しかける。

 

―どうする?このまま戦っても良いが、塔を潰さないと不味いぞ?

 

(分かっている。時間をかけるつもりなどない)

 

ブレイクがケルベロスを振い錬金術士と剣戟を広げている最中にも関わらず段々とこちらへと近寄りつつある事はギルヴァも分かっていた。

後は自身が相手している二体とその他をおびき寄せる必要があった。それを実行する為にギルヴァは後方へと跳躍し、わざと後退した。

 

「逃がすか!」

 

「おい!馬鹿!!ええい、あの突撃馬鹿が!!」

 

ギルヴァが後退した事を隙と見た処刑人がまんまと策に引っかかり、そんな彼女を呼び止めようしながらもその声が届かず舌打ちしながらも追いかける狩人。

ブレイクを追う錬金術士、ギルヴァを追撃しようと迫る処刑人と狩人。

二人の男達が再び背中合わせになった時、ブレイクが地面を蹴り大きく跳躍。アレグロとフォルテを抜き取り宙で上下反転すると回転しながら周囲へと銃弾をばら撒き始め、敵の視線を自身へと集める。

その隙にギルヴァはフードゥルをゆっくりと拳を天へと向かって伸ばしながら、籠手に雷を溜め始めた。

破壊力だけならば無銘よりもフードゥルが適任と言え、フードゥルだからこそ出来る技がある。

 

「合わせてやったぜ?後は適当にやんな」

 

「言われなくても分かっている」

 

地上に降り立ったブレイクがギルヴァへとそう伝えると素早くその場から離脱。

自然と敵の視線がギルヴァへと向けられた時、彼の左手は天へと高く掲げられていた。

準備は整った。後は一撃を地面へと叩きつけるのみ。

見知った顔が居るがこの者達は基地に居る彼女達ではない。完全な敵である以上は倒すほかない。

痛みは与えない。ただこの一撃で終わらせるだけ。故に彼は伝える。

 

「安らかに眠るが良い」

 

掲げた左拳が振り下ろされる。

その渾身の一撃が地面へと叩きつけられた瞬間、金色の閃光が破砕音と衝撃波と共に勢い良く迸った。

辺り一帯照らす様な閃光。処刑人、狩人、錬金術士、そして人形兵、機械兵はその光へと抵抗する間も与える事無く飲みこまれていった。

ほんの一瞬で広がっていった光が静かに消え去ると地面に叩きつけた拳をゆっくりと引き上げるギルヴァ。彼の周囲には彼女達の亡骸は塵一つ残っておらず、焼け野原だけが広がっており、戦場の音が未だに響いているだけだった。

フードゥルを解除し、無銘を左手に携え歩き出した時ブレイクが姿を現し彼の隣に並びながら歩き出す。

 

「出遅れた分は仕事しねぇとな?」

 

「ああ」

 

決死隊による攻撃は既に始まっている。

出遅れてしまった訳だが、この二人も塔の破壊を目指すのであった。




この二人の事だから鉄血には警戒されている事を踏まえて複数のハイエンドモデル達に囲まれ、出遅れたという感じです。
決死隊には参加していませんが、塔の破壊には乗り出すつもりです。

では次回ノシ
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