武装した塔に対する決死隊による攻撃が始まる。
破壊を可能とする者達が行動を起こした時、ギルヴァとブレイクは一つの塔に対し熾烈な攻撃が飛ばされるその光景を目撃していた。
レールガンを撃つ者も居れば、リバイバーの攻撃によって開いた脆い所へと攻撃を仕掛ける者。三つある内の一つへと塔に攻撃を仕掛けていく。
このまま上手く行けば塔の一つは破壊が可能となるだろう。だが防衛装置とも言える塔は残っている。
遅れてしまった分を取り戻す為、ギルヴァとブレイクは残った塔の一つへと破壊を行う事にした。
飛んでくる攻撃の中を掻い潜りながら、ブレイクは塔を見つめた。
ハリネズミの様に多種多様な武装が装備されており、防衛装置としては凶悪の一言に尽きる。
「やけにデカい木だな。ガーデニング気分で建てたにしちゃ物騒だが」
随分と大きくそびえ立っている為、まるでその塔を大樹だと彼は例える。
それを耳にしながらもギルヴァは無視。どうやってアレを破壊するかを考えていた。
「ただデカければ良いって訳じゃねぇんだが…アレを見て何か感想は?ギルヴァ」
「役に立たんよりかはマシだろう」
問いに答え、ギルヴァは塔へと向かって歩き出す。
先を行く彼の背中を見てブレイクは小さく肩を竦めるも後を追い、隣に並び歩きながら共に塔へと近づいて行く。
近づけば近づく程、塔の大きさは圧巻と言わざるを得なかった。どこからこんなものを引っ張り出してきたのかとそんな思いをあっても良いかも知れない。
だが二人はどこから引っ張り出してきたのかとか言った事に関しては興味を示す様子はなかった。
塔に近づくにつれて現れる鉄血の兵士達。二人を塔へ行かせんと妨害するも、ブレイクの持つアレグロとフォルテの連射とギルヴァの持つレーゾンデートルの威力の前には成す術もない。
一体が木端微塵に吹き飛ばされ、一体が大口径の弾丸によって頭を吹き飛ばされる。辛うじて生き残った敵が居たとしてもギルヴァが投射する幻影刀によって止めを刺される。
誰にもこの二人の進行を止める事は叶わず、塔へとの接近を許してしまう形となってしまった。
正規軍の列車砲ですら傷一つ負う事のない塔。外が駄目なら内部から破壊するのが得策と言えるだろう。
「取り敢えずぶった切るか。ほら、お前の出番だぜ?ギルヴァ」
だがこのブレイクという男には内部から破壊するという考えはなく、取り敢えずぶった切るという考えしかなかった。
自分の出る幕はないと思っていた故に判断であり、ギルヴァに任せる気でいた。
言われずとも切り捨てるつもりでいたギルヴァであったが、ふと何かを思ったのか足を止めて無銘をブレイクへと差し出した。対してブレイクは怪訝な表情を浮かべギルヴァを見つめていた。
「お前が斬れ」
その一言にブレイクは目を丸くした。
こういう時は大概何も言わず行動を起こす筈のギルヴァがそんな事を言ってきたのだから。
「どういう心境だよ?今更になっていい子ちゃんになったのか?」
「そんな訳あるか。お前に指示されて動く事が癪に障っただけだ」
「やれやれ。いつも命令してくるのにここぞという時に限って我儘かよ。まぁ見せ場を譲ってくれるなら喜んでやらせてもらうぜ」
ギルヴァが差し出した無銘を手に取ると、ブレイクは塔へと歩き出す。
幸運とも言うべきか、塔の武装は別の方へと向けられており歩み寄ってくるブレイクに気付いていなかった。その右手には無銘が握られており、彼は塔へと言葉を投げかける。
「大した建造物なんだが──」
右手に持った無銘を左手へに持ち帰ると、人差し指を立て塔を指す。
「ぶった切らせてもらうぜ」
親指で鯉口を切り、素早く右手で柄を握り無銘を抜刀。
鞘から抜き放たれる刀身。振り下ろした一撃が目には見えない斬撃となって飛び出し塔を一閃。
刀痕が一瞬だけ光を放った時、ブレイクはその場で無銘を振った。
逆袈裟から右へと薙ぎ払い、最後は片足を軸にして回転しながら刀身を左から右へと薙ぎ払い。
塔を背に残心とも言うべきか、力を緩めながらも周囲を意識した様子を見せるブレイク。
そして刀を回転させ、刃を鞘に当てた後そのままゆっくりと鞘へと刀身を納めていく。
曇りなき刀身が空の色に彩られるもそれはほんの一瞬だけの事。最後は力強く無銘が納刀される。
鍔と鞘がかち合う音が響く。数秒間だけ訪れる静寂。
それも束の間、まるで動く事を今許されたかの様に塔が轟音を立てながらずれ落ち始めた。
いつ斬られた事すら分からず配備されている武装が次々と爆発を引き起こすと内部に納められている弾薬に誘爆。
塔全体から火球と黒煙が浮かぶ中、斬り落とされた部分が地面に墜落しそのまま前へと倒れる。
破砕音と轟音が響き渡る。そして数秒も経たぬうちにかつて塔だったそれは盛大な爆発をこの戦場の空へと花を咲かせた。
爆風が赤いコートと髪が揺れる中、ブレイクはゆっくりと態勢を直し後ろへと振り向いた。
先程まで猛威を振るっていた塔の姿はなく、炎と黒煙だけが残っていた。すると彼の耳に付けていた通信機から困惑の声が飛び交った。
『おい、何が起きたんだ!?塔が文字通り斬られて破壊されたぞ!?』
『知るかよ!!だがこれで塔は残す所一つだ!!』
塔が残す所一つなり、意気込む者も居れば…
『おいおい、マジかよ…。あの馬鹿みたいに硬い塔をぶった斬っただと…?』
『そんな事を出来る奴がこの戦場にいるのか…?』
信じられないといった口ぶりで困惑した声を上げる者も居た。
当然の反応だなと思いながらもブレイクは通信機のマイクへと話しかける。
「こっちは一つ終わったぜ。デカいだけの塔は残す所一つみてぇだし、俺らもそっちに向かうとするさ」
相手の反応も待つ事無く、ブレイクは通信を切る。
すると後ろからギルヴァが歩み寄り、それに気付いた彼は手にしていた無銘を投げ返した。
投げ返された無銘を容易くキャッチするとギルヴァは残った塔の方を向いた。
「残りはアレだけか」
「みたいだな。後は草みてぇに別の塔が生えてこない事を祈るだけだな」
「奴らにそこまでの資材があるとは思えんな」
もし地面から生えてきたとしてもこの二人のやる事は変わらないだろう。
ジュピター伐採といい、やけに建物の破壊が多いと思いながら二人は残った塔へと歩き出す。
そんな中、ブレイクはある事を口にした。
「こんなに派手にやってんのに、悪魔どもの姿がねぇとはな」
ブレイクの言う通り作戦が開始してから随分と時間が経つが、この戦場に一匹たりとも悪魔が出現していない。
行動理由が分からずとも悪魔という存在はこっちの事情も知らずに突如現れる事がある。
そのせいで戦場が滅茶苦茶になるのはよくある話なのだ。
だが今回に限ってはそんな事は一度も起きていない事がかえって不思議とすら言えた。
「まぁその方が助かる。ゴミ掃除しなくて済むからな」
居ないのであれば居ない方が良い。
その分、自分達の仕事に専念できるというものである。
そしてまだやるべき仕事は腐る程ある。休憩している暇などないだろう。
だが忘れてはならない。この二人、作戦が始まってから一度も休憩を取っていない事を。
「さぁてパーティーもそろそろお開きにしねぇとな。だろ?ギルヴァ」
「ああ」
随分と長いパーティー。しかしそれにも終わりがあるというもの。
だが延長というのはよくあることだろう。
パーティーの裏方には確実に何かが動いている。それを分かっていながらも二人を歩んでいく。
そしてここからが本番。二人の悪魔狩人が本気を出す時が刻々と迫っている事に敵達は気付かない。
泣かされる側か、或いは泣かす側となるか。
その結末は神のみぞ知る。
という訳で…はい、ブレイクが無銘を使って塔をぶった切りました。
これで残すのは一つになるけど…良かったのかな、これで。
あ、そうそう。ギルヴァとブレイクを適当に絡ませて良いんですぜ。
扱いづらいとは思いますけど…うん。
では次回ノシ