Devils front line   作:白黒モンブラン

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─飛び入り参加はよくある事─


Act178-Extra Ironblood May Cry Ⅸ

この時、ダレンの表情は険しかった。

数分前にへリアンからの通信内容が彼女の眉間に皺を寄せる事態を作ったしまったのだから。

襲撃してきた鉄血は片付いた為戦闘は終了し、libraryにはダレンに呼び出されたシーナ、マギー、ルージュがこの場所に訪れていた。

室内に響くのは本達が移動し合う音のみ。それだけがその場を支配していた。

 

「まずは…状況から話そうかの」

 

気を静める為に咥えていた煙管から紫煙を吐き、ダレンは自ら沈黙を破った。

 

「作戦領域全体に恐らく鉄血製だと思われるジャミングで現場におる者達と通信が取れなくなった。それが今から十分前に起きた出来事じゃ」

 

「今でも通信が取れない状態が続いており、向こうの戦況がどうなっているかも分からずじまい。ただ最後に拾った音声データから、ある事が聴けました」

 

持っていた端末を操作し、ジンバックは最後に拾った音声データを再生する。

 

『どういう事……ダミー…機能…停…した!』

 

『なん…の!?こいつ…は……まるで……エンドモデル……ない!?』

 

ノイズが酷く、聞こえてくる声も途切れ途切れであるがそこで何が起きているのかはこの場に呼び出された三人は容易に察する事が出来た。

ダミーの機能停止。

そんな事を出来るのはどう考えても鉄血のみ。

そして現れた敵に対して声の主はハイエンドモデルみたいだと叫んでいた。

そこから判断できる事は二つ。

戦況はひっくり返り、混成軍が窮地に陥っている事。鉄血の攻撃によりダミーが機能停止し使い物にならなくなってしまった事。

 

「…最悪だね」

 

「うむ…最悪の一言に尽きる。だから…シーナよ、いや、シーナ指揮官。貴女に許可して欲しい事がある」

 

グリフィン諜報部所長という立場に居る筈のダレンがいち前線基地の指揮官でしかないシーナに対して敬語を使った事にジンバックとマギー、ルージュは驚きを覚えた。

初めて会った時からフレンドリーに接してくる彼女が改まった様な口調になったのだから。

 

「聞きましょう」

 

らしくない様子にシーナも改まった口調へと切り替わる。

了承を得られるとダレンは静かに頷き、許可して欲しい内容を伝える。

 

「我が魔術を持ってルージュを作戦領域に投入する事を許可してもらいたい。戦力が激減した状況では戦える者は必要となる」

 

「…」

 

ダレンの言う事がシーナには分からない訳ではなかった。

状況から察するに戦況は最悪。戦える者が必要になるのは明白であった。

 

「それは本人に尋ねて下さい。私の一存では決める事は出来ません」

 

幾らこの基地を統べる指揮官とは言え、それを即答出来る様な事はシーナはしない。

確かにルージュはグリフィン所属ではない。どちらかと言うとギルヴァやブレイクと同じく協力関係にある一人だ。

高い戦闘能力を持つとは言え、協力関係だけの存在とは言え、生きて帰る事すら困難と思える戦場に自分だけの一存でその人物の運命を決める事などシーナにはできなかった。

だからこそ自分が決めるのではなく、本人が決める必要がある。その旨をダレンへと伝えた時、シーナの隣に立っていたルージュはそっと彼女の肩に手を置き答える。

 

「行きます。戦場では見知った人達が…そしてあの二人が苦しい中で必死に戦っているんです。この『力』が戦況を一転できる程のものではなくても、私は行きます。だって─」

 

そこでルージュは言葉を止めて、自身の胸に手を当てた。

偽り、模造品。決して祝福される事はなく、道具としても見られる事もなく、その果てに行き着いたのは復讐と怨嗟の宿した化け物へと成り果てた自分。

だが運命は彼女に希望を与えた。人の姿を取り戻し、子供みたいな感情を宿しながらも世界を旅した。旅した先で彼女はダレンに拾われ育てられた。

血の繋がりなんてない。それでも我が子の様に彼女は自身を育ててくれた。

この基地に来てからは多くの人達と関わる事が出来た。人の営みと言うのは不思議で暖かくて、何物にも代えがたい何かを有していた。

そしてそれは自分に限った話ではない。今まで関わってきた人達にも帰るべき家があって、待ってくれている人達がいるのだ。

 

「私の魂がこう叫んでいるんです」

 

だから絶対に失わせない。

 

「命を懸けて守り通せって」

 

例えそれが己が犠牲となって得られた結果になろうとも。

 

「だから行きます。いえ…行かせてください」

 

彼女の名を呟きながらもシーナはその目を見つめる。

赤く彩られた瞳には決して折れる事のない信念と覚悟が宿っていた。

ならば自分も覚悟を決めなくてはならない。ごちゃごちゃと言うのは彼女の覚悟に対して無礼というもの。

 

「分かりました。許可します。…但し無理は駄目。そして無事に皆と一緒に帰ってくる事。良いね?」

 

「はい…!」

 

よし、と頷くとシーナは全員にへと視線を送る。

その視線が何を意味しているのかと察した全員は一斉に動き出す。

戦う者達の明日を、未来を守る為。

S10地区前線基地が保有するもう一人の最大戦力を戦場へと送り込む準備が始められた。

 

ルージュを戦場へと送る為の準備にそう時間はかからなかった。

地下図書館の中央にはダレンが展開したゲートらしきものが広がっており、それの前に立つのは鴉刃、漆、朱を携えたルージュ。また姿こそは見えないが愛用の大鎌も持ち出している。

後はこの中に飛び込むのみなのだが、そこにマギーが彼女を呼び止めた。

 

「これを」

 

そう言ってマギーが差し出したのは盾の様に見えれば、若干大きい籠手の様にも見える武装。

だがただの武装ではない事は明白であった。その武装はどういう仕組みか薄っすら冷気を放っていたのだから。

それに見覚えがあったのかダレンが叫ぶ。

 

「おいおい…マギーよ、それを何処で得たんじゃ!?」

 

ダレンにはそれが何なのか分かっていた。

魔具である事は明白。しかしその魔具は既に魔界にて破棄されている。

何故なら彼女はそれが破棄されるのを目撃しているのだから。

既に失われた魔具がどうしてマギーを持っているのか不思議で仕方なかった。

 

「得たというよりかは…託されたといっておきましょうか」

 

「託されたじゃと…?」

 

「はい。得た経緯を話したい所ではありますが、そんな余裕はありません」

 

確かにその通りだと納得したダレンはそれ以上の事を問おうとはしなかった。

そしてマギーはルージュに差し出した魔具の説明に入る。

 

「名は『コキュートス』。氷結の能力を有し、触れた敵を一瞬で氷漬けにする事が可能です。また高い多様性を有しており、ルージュさんのイメージに合わせて攻撃が変化致します。ただし氷には敵、味方関係なく巻き込むので、周囲の状況には留意してください」

 

「了解です」

 

差し出された魔具『コキュートス』を背に背負うルージュ。

それを見ていたシーナがある事を思いつき、首に提げていたものを取り出しルージュへと差し出す。

それは白銀の懐中時計型の魔具…『クイックシルバー』である。

 

「いいのですか?」

 

「うん…この子の力なら窮地を脱する事が出来る筈。使って」

 

「…分かりました」

 

クイックシルバーを手に取り、それを首に提げるルージュ。破損しないように衣服の内側へと仕舞いながら、小さく息を吐くルージュ。

鴉刃を握り直し、開いて目を伏せる。

彼女なりの精神統一だろう。誰もその背を見つめ、急かすような事は口にしない。

伏せられていた瞳が静かに開かれる。それは準備が整った事を示している様であった。

ゲートへと歩み寄り、あと一歩と来た時、ルージュは振り向き、見送ってくれる彼女達へと口を開く。

あどけなさが残る笑みを浮かべながら。

 

「行ってきます」

 

そしてルージュは返答を待つ事もなく、ゲートへと飛び込んでいった。

一瞬にして彼女の姿は消え、ゲートも閉じられる。

その場に残った者達に出来る事はやった。後はただ無事に戻ってくるのを祈る事しか出来なかった。

 

 

「え…ちょっ!?はぁっ!?今度は何だよ!??」

 

鉄血基地内部、オートスコアラーのトゥーマンは天井に突如として広がった穴を見て声を荒げた。

異常事態、異変に続くそれは誰も予期していない事であろう。

当然それは敵も予期していない事であり、先程まで起きていた銃撃戦が嘘の様に静まり返った。

 

「コキュートスよ…」

 

穴の向こうから誰かの声は響く。

その瞬間、穴から何かが勢い良く飛び出し、敵の群れの手前で地面に突き刺さった。

籠手の様なもの。薄っすらと冷気を放っている。

爆発物ではないと認識し、Vespid RC達が手にしている銃器を構える。

 

「私に力を貸して下さい!」

 

少女の叫ぶ声が響いた瞬間、Vespid RC達が一瞬にして氷漬けされた。

全くもって一瞬の出来事だった為か、反応出来ず視線は穴の方へと向けられたまま。

突然として発生した氷。氷霧が辺りを包む中、穴からその者は降り立った。

白と赤のグラデーションが掛かった長髪。臙脂色のコート、赤い瞳。頭の側面に付けたセンサーの様な飾り。

敵達を一瞬にして氷漬けにしたコキュートスと呼ばれるそれが少女の元へと帰っていき、彼女はそれを背に背負うと左手に持った太刀、鴉刃の柄に手を添える。

 

「だ、誰…?」

 

「!…もしかしてS10地区前線基地の……貴女、ルージュですか?」

 

トゥーマンが疑問の声を上げる傍らで以前基地に訪れた者の一人に彼女が居たのを思い出したのか、スユーフがその名を口にし、名前を呼ばれたルージュは後ろへと振り向く。

 

「ご無事ですね。S10地区前線基地…ルージュ。今から戦線に加わります」

 

もう一人の最高戦力…紅蓮を纏う少女がこの戦場に降り立った。

 

 

ルージュが参戦した一方でブレイクはギルヴァと合流を果たしていた。

敵は相当強化されており、元より危険人物扱いされている為、行く先々で敵の攻撃に合っていた二人だが、寧ろそれが返って二人を本気にさせてしまった要因となっていた。

 

「成程。これならマジな遊びが出来る訳だ」

 

手にしたアレグロをくるりとスピンさせながらブレイクはニヤリと笑みを浮かべる。

対してギルヴァは前方からとある気配を感じ取っていた。

聞こえてくるのは爆発音やら破砕音、微々たる程度の銃声。撤退途中だった味方が敵に襲われている。それを察したギルヴァは駆け出し、彼が駆け出した事によりブレイクも走り出した。

前方に居るのは八脚の兵器。蠍の様な形をしており、備え付けられていた武装で乱射していた。

その他にもWraith達の姿をあり、それを確認するとギルヴァは無銘の鯉口を切ったと同時に敵達の頭上に無数の幻影刀を展開し、それを降り注がせた。

何人かはそれによって頭を貫かれ、回避した一部のWraithが幻影刀を見て叫ぶ。

 

「青い刀…まさか!?」

 

「そのまさかだ」

 

Wraithの傍で響く男の声。

青い刺繍が施された黒いコート。鞘から抜き放たれた刀身がWraithの頭を一閃。そのまま仕留め損ねたWraith達の間を疾走居合で駆け抜ける。

舞い上がる頭部。噴き出す人工血液。体の半分を失った亡骸が後ろへと倒れる中、ギルヴァはBehemahへと振り向く。

Behemahがギルヴァへと攻撃を繰り出そうとした時、巨体の後方からブレイクがパンドラをロケットランチャーにした状態で飛び出す。

空中で体が上下反転しながらも、彼は余裕の笑みを浮かべておりロケットランチャーの砲口がBehemahを捉える。

 

「プレゼントだぜ」

 

三つの砲口からロケット弾が放たれ、Behemahに着弾。放った反動を活かしてブレイクがそこから離れ、爆炎と煙は広がった時、巨体であるBehemahの体を何かが一閃、広がっていた煙が一瞬にして払われる。

煙が晴れ、Behemahの前に居たのは既に無銘を抜き放ったギルヴァの姿。

構えを解き、刀身を鞘へと静かに収めていく。そして鞘と鯉口がぶつかり合う音が響かせたと同時にギルヴァはBehemahへと話しかける。

 

「もう斬ったぞ」

 

その瞬間Behemahの体が真っ二つに崩れ、そのまま機能停止。

突如として起きたそれ。啞然といった表情を浮かべるとある部隊…DG小隊へとブレイクが歩み寄り話しかける。

 

「よお。無事かい?」

 

「あ、ああ。……あんたら、マジで何者だ…?」

 

リバイバーと呼ばれる者に何者かと問われるとブレイクは小さく肩を竦めた後、問いに答える。

 

「ただの悪魔狩人さ」

 

ギルヴァとブレイク。

偶然というべきか二人はDG小隊と合流を果たしたのであった。




状況が状況なので、S10地区前線基地からギルヴァとブレイクに続く最高戦力、ルージュの参戦です。

取り敢えず彼女はオートスコアラーの援護に入ります。
また今回のルージュは三振りの刀【鴉刃】【漆】【朱】に加え、いつでも呼び出す事が可能の大鎌、そして盾にも使え籠手にも使える魔具『コキュートス』、シーナから借りてきた時を操る魔具『クイックシルバー』を装備しています。

一応『コキュートス』を軽く紹介

:コキュートス
ルージュがマギーから譲り受けた魔具。
盾でありながら籠手としても使える魔具であり、氷結の能力を持つ。
使用者のイメージ次第で攻撃が変化し、生み出された氷は何もかもを氷漬けにする。
その為、使用の際には味方がいない事を確認しなくてはならない。

そしてギルヴァとブレイクが本気になりました。(その強さは原作の難易度で言う所のDMDに相当します)
一応あちらさんが大変そうなので援護に入りました。…良かったかな(言われたら直す模様)

では次回ノシ
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