Devils front line   作:白黒モンブラン

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─ここまで来たら、もう楽しむほかない─


Act180-Extra Ironblood May Cry Ⅺ

「どうなっている!?こいつはなに─」

 

「なんだ、こいつは…。や、やめ─」

 

「待って!イヤ・・!イヤッ!!お願い、た─」

 

少女が一歩、一歩と歩く度に次から次へと氷のオブジェが出来上がっていく。

困惑する敵、恐怖する敵、命乞いをする敵…それらを納めた氷の棺桶が地面へと倒れると硝子の様に砕け散っていき、また氷の棺桶が出来上がっていく。

それでも敵は果敢に攻めてくる。戦闘態勢を取らない少女へと仕留めようした時、彼女…ルージュは敵に見向きせず、小さく呟く。

 

「目障りです」

 

一瞬にして氷の棺桶が出来上がる。硝子の様に散っては、また敵の誰かが氷漬けにされる。

積み上がっていく屍。亡骸を残す事を許されない。

まさに地獄であり、それを作り上げているのがたった一人の少女というのは驚きでしかないだろう。

ふとその時、青黒い光彩を放っていた瞳がまるで大人しくなった様に本来の赤へと戻った。

 

「…ッ!」

 

それと同時に何かが体の中で刺さった様な痛みを感じ、ルージュの表情が小さく歪む。

全身の力が抜け、地面に片膝をつくとどこからか何かが崩れる音が彼女の耳に届く。顔を上げ、その方へと視線を向ければ、先程まで敵の殲滅を行っていた氷の城塞が崩れゆく姿が視界に映った。

同時に敵を殲滅という考えに思考の半分を支配されていた頭はまるで嘘の様にクリアになっていくの彼女は感じ取っていた。

 

(…反動、というべきでしょうか)

 

軽く肩で息をしながら、ルージュは自身の身に起きた事を察する。

完全な暴走を引き起こしていなかっただけにルージュは自身が強引に発動させたデビルトリガーが可笑しかった事に気付いていた。

ただ敵を殲滅するという考えに固執していた為かおかしいと気付くまでは時間が掛かった。

おかしいと気付きながらも敵を殲滅を選んだのは、彼女なりの援護であり、この地に居る敵の数を一気に減らす事が出来るチャンスだと踏んだ為である。

 

「…コキュートスの力もその一つなのでしょうね」

 

不安定な状態でのデビルトリガーを引いた事、そしてその魔力解放にコキュートスが予想以上の呼応を示した事が半暴走状態に至った原因ではないかとルージュは思った。

 

「託されたという魔具…マギーさんが作ったものではないのが分かります」

 

魔具というものはそこら辺の武器がちっぽけに見える程、巨大な力を有する道具だ。

だがこのコキュートスと呼ばれる魔具の力は、ルージュですら想像していなかった力を有していた。

 

「一体誰が…」

 

破棄された筈の魔具。それがどういう訳か後方幕僚のマギーが持っていた。

そして本人は託されたと言っていた。

コキュートスをマギーに託した製作者が誰なのかと気になるのはごく自然の話である。

 

「今はその事を気にしている場合ではありませんね…」

 

ゆっくりと立ち上がるとルージュは空を見上げた。

上空では即席で作ったであろう大型飛行ユニットで鉄血の航空部隊と戦闘を繰り広げるノアの姿。ふとその時、ルージュは敵の動きに違和感を覚えた。

 

「…何かを悟られぬ様にしている?」

 

勘違いかも知れないと思いながらも、何故かその違和感が拭いきれない。

気になって彼女は戦場を眺めた。

未だに銃声やら爆発やらそこらかしこで響いており、戦いは未だ終わっていない事を告げていた。

その中でルージュはある事に気付く。

 

「おかしい。戦闘音が少なすぎる…」

 

ハッとしてルージュは周りを見渡す。

さっきまでの勢いは何処へ行ったのか、敵が少ない。

居るには居る。だがやはり可笑しい。まるでこの地に留まらせようとしている様だと彼女はそう感じられずにはいられなかった。

 

「引いた…?いいえ、これではまるで…」

 

─何かを自分達に擦り付けようとしている─

 

その何かが何なのかは分からない。

ただ鉄血が自ら引く程の何かが迫ってきている。戦場に漂う違和感、向こうからやってくる何か。

悪魔ではない。それなら自分や彼らが一番に反応している。

ちらりとルージュは背に背負ったコキュートスを見つめる。

デビルトリガーは今でも発動した状態だが、先程までの暴走状態ではなく安定しており、コキュートスも冷気を放ちながらも安定している。

その何かはもうすぐそこまで来ている。その事をこの戦場にいる者達に知らせなくてはならない。

まだやれる事はある。ならばそれを全力で成すまで。

片翼だけであった氷の翼をもう一つ展開し、両翼へと変える。足を曲げ、空へと飛び出そうとした時ルージュの視界の隅にある物が映り、彼女は離陸態勢を解除しそれへと歩み寄った。

 

「えっと…」

 

それは鉄血のマークが施されたコンテナ。物資にしては大きく、サイズからして武器を納めるウエポンコンテナなのだろうが、ただ武器だけを納めるにしては大袈裟とも言える程にそのサイズは大きい。

そして何らかの衝撃でコンテナは破損、中身が丸見えの状態となっていた。

 

「これは…」

 

コンテナの中に収められていたのは、スラスターユニット。その翼の形は天使の羽そのものと言え、大きさの異なる翼を備えたメインスラスター、腰部に装着する為に製作されたのか砲と天使の羽が組み合わさったサブスラスター、そしてこのスラスターユニットを運用するに当たって製作されたであろう同じ形をした大型ライフルが二挺。

悪魔を討つ為に作られた天使の装備とも言うべき兵装がそこにあった。

 

「名はプレリュード…前奏曲と言う意味ですね。形からして、悪魔と対になる様に作られた兵装と言うべきですね…」

 

収められていた兵装を見て、ルージュは苦笑いを浮かべる。

鉄血らしくないと思いながらも、これをどうしたものかと悩んだ。

放置されているという事は下手すれば敵が回収する可能性もある。だが破壊している暇があるかどうかと言われたら、そんな暇はない。

 

「仕方ないですね…」

 

破壊しようと思い、ルージュが鴉刃の柄に手を掛けた時、コキュートスが反応する。

放たれた冷気がプレリュードと包み込み氷漬けにしたと思えば、氷漬けにされたプレリュードが光に包まれルージュの元へ向かって行き、彼女はそれへと手を伸ばし触れた。

触れた瞬間広がる光であったが数秒も経たぬ内に光は消え去り、ルージュの背には氷で凍てつきながらも大きな天使の翼が広げられ、その手には凍てついた二挺のライフルが握られている。

鉄血製のプレリュードでコキュートスによって魔具へと変換し、ルージュの新しい力となりて、それは顕現する。

その名はコキュートス・プレリュード(氷獄の前奏曲)

魔と科学の融合によって生まれた奇跡が今、この時をもって誕生した。

 

「不思議な事もあるものです」

 

新たな力を得て、彼女はコキュートス・プレリュードの翼を勢い良く羽ばたかせ空へと飛翔した。

鉄血の航空部隊と戦闘を繰り広げているノアの援護へと入ろうとした時、通信が流れ込む。それは男性の声であり、ルージュは分からなかったが、その声はリバイバーの声であった。

 

「お前ら!現在未確認のフードマントの勢力が乱入し、鉄血含めて被害が出ている!そこで‼︎この俺リバイバーが鉄血と独断で交渉して一時同盟を組んでジャミングを解除してもらった!勝手を承知だが、こうするしか道が無かった!各員鉄血と敵対行為をやめ、フードマントの勢力の迎撃に当たってくれ!奴らは下手を打てば万能者並の力と思われる!無謀と思うが、ここで奴らを退けなくては俺らは助からない!頼む、鉄血と協力してそのハイエナどもを蹴散らせ!」

 

向かってくる何か。

それは当たっていた事にルージュの表情は険しくなる。

その何かはこの場に残った鉄血にも攻撃を仕掛けていると知ると、構えようとしていたライフルをゆっくりと下ろし、ジャミングが解除された事もあり、ルージュは大型飛行ユニットに搭乗しているノアへと通信を飛ばした。

 

「こちらS10地区前線基地のルージュ。ノア、聞こえますか?」

 

『ああ、聞こえてる。てかルージュ、何時の間にここに来たんだ?』

 

「信頼できる悪魔の力のおかげと言っておきます。それよりも先程の…リバイバーの通信は聞きましたか?」

 

『あんだけデカい声で叫ばれたら、嫌でも聞こえるさ。どういう訳か協力しなきゃならないみたいだな?』

 

「みたいですね」

 

敵もこちらへと向けていた武器を下ろし始める姿を見つめるルージュ。

上位種の命令なのか、或いはリバイバーの通信を受けて一時的な敵対を避けようと考えたのだろう。自ら鉄血の航空部隊はリバイバーの言う『ハイエナ』の方へと向かって行った。

 

「途中からの参戦だったのですが、今なら分かります。最初から本気出せというものです」

 

『作戦として考えるのであれば、小出しにすんのが当たり前だろうがな。でもまぁ小出しにしていた挙句、面倒ごとだけはこっちにぶん投げ。それでこのザマなんだ、イラつくし鬱憤だって覚える』

 

「小細工と小出しをしていた挙句の果てがこの状況。この状況なら悪魔どもを相手にしていた方が楽です。アレの方が単純で分かりやすいので」

 

『確かにそれもそうだな』

 

一時休戦となってしまった以上はやる他ない。

コキュートス・プレリュードを展開したルージュは手にした二梃のライフルを並行連結させるとハイエナどもへと向かって狙いを定めるのであった。

 

 

一方、鉄血の本拠地にてリバイバーが鉄血との一時同盟を結ぶことが出来た事を受け、ブレイクは彼に声をかける。

 

「流石だな。俺らには出来ねぇ事をやってくれるもんだ」

 

「まぁな。…俺だからこそ出来たにしてといてくれ」

 

「オーケー。そういう事にしといてやるよ」

 

愛銃たるアレグロとフォルテを連射するブレイクは思った。

ハイエナどもを何とかしないと不味いのは明白。

そしてこれこそがファイナルステージ。ならここで狂ってしまいそうな程の事をやって盛り上げようじゃないかと判断。

迫りくる敵を片付けるとアレグロとフォルテを収め、ブレイクは人差し指を立てながら天へと向かって突き上げ高らかに叫ぶ。

 

「楽しすぎて狂っちまいそうだなッ!」

 

その台詞と共にブレイクは人から魔へと姿を変える。

同時にギルヴァも使うなら今しかないと判断し、内包する魔へとその引き金に指をかける。

 

「悪夢の時間だ…!」

 

赤と青。

二体の悪魔が姿を現した。




はい。ルージュが新たな力『コキュートス・プレリュード』を得ました。

元々は鉄血製だったプレリュードを魔具と化したもので。プレリュードのイメージは『スノーホ〇イト・プ〇リュード』の装備をイメージして頂けると幸いです。

さてと、こっから本番だ。飛ばすぜ!

では次回ノシ
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