Devils front line   作:白黒モンブラン

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─例え不要だったとしてもそれでいい─

─何もせず、ただ待つだけよりかは─


Act184-Extra Ironblood May Cry ⅩⅤ

一休み挟み十分休憩が取れた事でダレンとジンバックは再び作業を開始。

通信から得られる内容から的確な情報を読み取りつつ、コンソールパネルを操作するダレンは呟く。

 

「撤退の開始、か…」

 

問題となる部分は削除したのは良いものの、それで戦いが終わった事にはならない。

今でも戦場では戦闘が続けれており、ダレンは次の策を思案する。

その隣でジンバックが常に変わりゆく戦況、傍受している通信から状況を伝える。

 

「現在敵のリーダーユニットが二機撃破された模様。また各地で第三勢力との戦闘が続けられており、一部では負傷者と共に行動を開始。しかしこのまま引いた所で…」

 

「足が無くては戦場から撤退は叶わん」

 

「…どうしますか?」

 

状況が芳しくない位誰にも分かる。

だがダレンが浮かべる表情は笑みだった。

 

「決まっておろう。次の手を打つまでのこと。…ジンバック、シーナに繋いでもらえるかの?あやつも何も考えてない訳はなかろうて」

 

「分かりました。暫しお待ちください」

 

指示を受け、ジンバックはシーナへと通信を繋ぐ。

数分も掛からぬ内に通信は繋がり、ジンバックは回線をダレンの方へと譲渡。

繋がった事を受け、早速ダレンはシーナに現場での戦況を伝える。

 

『成程。足が必要ですね…』

 

「うむ。現場にどれだけの輸送機があるかは分からん。最悪誰かが見捨てられてしまう事も考えられる」

 

『そうでしょうね。…どうやらそれを想定して行動して正解でした』

 

「やはりの。何やら聞こえると思っておったが、ヘリの音じゃな?」

 

回線を譲渡され、繋いだ時からダレンは通信越しから聞こえるその音の正体を察していた。

あの指揮官が何もせず、ただ待つだけとは思えない。必ず何か行動を起こしている筈。

その読みが外れてなかった事にダレンは小さく笑みを浮かべた。

 

『はい。うちは攻撃用のヘリが少ない代わりに輸送用の大型ヘリは幾らか持っていますし、いざという時に備えて日々メンテナンスは怠りはしませんでしたから。それに輸送部隊の皆さんは…私がここに来た時から死線を共にくぐり抜けた超がつく程のベテランさんなんですよ?』

 

「ほう?それは良い知らせじゃな。じゃが…護衛もつけず戦場を向かわせる様な考えはしとらんな?」

 

護衛もつけず空輸部隊だけを戦場に居送り込もうとは、その者が余程な性格ではない限りそんな事はしないだろう。

 

『わざわざ死に逝かす様な事はさせませんよ。各ヘリに護衛として武装した基地所属のMGの人形を数人を搭乗させており、また即席ではありますがヘリにドアガンを装備。ヘリは作戦領域入るかは入らないギリギリの地点にて待機させます。そして…』

 

「そして?」

 

『先行偵察及び撤退支援の為、リヴァイアサンを動かします。パイロットはネージュ。戦場に到達後、高度と取りつつ支援を行う形です』

 

(あれを出すとはの…)

 

リヴァイアサンはS10地区前線基地が保有する兵器の中では別格とも言える兵器である。

高機動、高耐久に加え、長長距離狙撃を可能とする武装を多く有している。過去に二度運用されてた経緯がある事は知っていながらもまさかそれを使用する関してはダレンは少し意外だと感じた。

 

『もしかすれば手は足りているかもしれません。無駄だと気付いてその時が不満に思ったとしてもいつかの笑い話になりますからね。…ですが何もせず、静観しているよりかはマシと言うもの。現在基地総出で負傷者受け入れ態勢の調整を整えており、現状ある一定数の受け入れは可能となっています』

 

「行動が早くて助かるの。…ではワシはジンバックと共に裏方支援に回ろう。何かあればワシらがサポートしよう」

 

『分かりました。何かあれば報告を。私は受け入れ態勢の調整に回ります』

 

「承知した」

 

無駄だとしても構わない。無駄だったらその時は憤りを覚えたとしても、いつか訪れる思い出話になる。

そうなってもいい。だが何もせず、静観している事はしたくない。

それはシーナだけの思いとは言えず、この基地のいる者達が思っている事であろう。

戦場にいる三人は必死で戦い、この基地に居る者達が今自分が出来る事を全力で成そうと動いている。

ここまでしていながら自分だけ全力にならない理由などダレンには見当たらなかった。

 

「全く…こうも当てられたら疼くというものかの」

 

そう小さく呟くとダレンは対電子術式機構【library】の機能を最大解放。

それによりlibraryが外部から得られる情報が膨大となり、浮かび上がる中空ディスプレイの数が無数に展開された。処理するだけでも手一杯と言える程の情報の羅列が流れていく。

その光景にダレンもそうだがジンバックも思う。これ位どうという事はない、

二十歳にも満たぬ少女が自ら苦境へと飛び込んだ。ならばこの程度でへこたれる訳には行かないのだ。

 

「さぁ、始めましょうか…!開演を宣言するには今しかないというもの!」

 

「ふっ、お主らしいのう…!」

 

 

基地のヘリポートでは複数の大型輸送ヘリが二基のローターを回転させながらまだかまだかと待機している中、空戦装備【ラヴィーネ】を纏ったネージュはカタパルトデッキの上で佇みながら静かに出撃の時を待っていた。風は吹いておらず、空も雲一つない青空が広がっており、飛行には何ら問題はなかった。

すると何かを感じ取ったか、伏せていた目が開かれる。バイザー越しから青い瞳が煌くと彼女は呟く。

 

「…来たか」

 

後方から響く昇降エレベーターの駆動音。そして姿を見せるはノーネイムのもう一つ専用武装とも言える大型飛行ユニット【リヴァイアサン】。

主を見つけたかのようにゆっくりとネージュの後ろから迫りつつその口を開く様にコクピットを展開。同時にネージュもラヴィーネを合体の為の形態へと変形させた。

お互い距離が零になり、リヴァイアサンとラヴィーネが重々しい音を小さく響かせて合体した。

リヴァイアサンのメインブースターが点火。同時に囲むかの様に防御壁が展開されていく。

準備は整った。後は飛び立つのみ。

 

『ネージュ、準備は整った?』

 

「ああ。何時でも行ける、シーナ」

 

『分かった。貴女が先行して進路の確保。作戦領域に到達後は高度を維持して援護射撃。恐らく戦況は驚く位に変わっていくから、それを忘れないで』

 

「了解した」

 

『よし。…全員の帰還をもって作戦成功とします。皆を…お願いね』

 

「任された。…リヴァイアサン、ネージュ…出るぞ」

 

その掛け声と共にネージュを乗せたリヴァイアサンのメインブースターが最大点火。

白きを纏いし巨体が上空へと飛び出すと、大事な仲間達が戦っている戦場へとその巨体から想像出来ぬ速さで急行。同時に出迎える為に基地のヘリポートから複数の輸送ヘリが飛び立った。

 

 

リヴァイアサン及び輸送部隊が基地を発って30分が経った時、戦場では魔訶不思議な事を起きていた。

まるで何かの影響を受けたのではと言わんばかりに敵の動きが鈍くなったのだ。それも一体だけには限らずこの戦場にいる全ての敵が鈍くなっていた。

それだけではない。まるで見えない何かへと撃ち始め、あまつさえは同士討ちになったりなど、もはや言葉では表す事の出来ない事がこの戦場全体で起きていた。

不気味とは言えば不気味。だがこの機を逃す訳には行かず、ランページゴーストと共にギルヴァらは本隊との合流を目指しつつ味方を援護していた。

 

「ホント何が起きていて…」

 

鴉刃を振るいながら、ルージュはこの状況について言及する。

その背後でブレイクはアレグロとフォルテを連射しながら、答える。

 

「さぁな?それが分かれば苦労しねぇさ。それにこれを考えている場合じゃねぇだろ?」

 

「それはそうでしょうけど…」

 

ちらりと彼女は味方の援護の為に無銘を振るうギルヴァを見た。

まるで混乱したかの様に武器をあらぬ方向へと乱射するフード付きマントの敵らを次々を次元斬を繰り出し斬り裂き、研ぎ澄まされた隙の無い身のこなしで群がる敵を殲滅していた。

 

(…彼は何か感じているのでしょうか?)

 

自分やブレイクでは分からずともギルヴァは何か感じているのではないかとルージュはそう思いながら、味方の援護へと駆け出していった。

一方ギルヴァは魔力で錬成した幻影刀を連続投射しながら、この状況について考えていた。

ハッキングの類ではない。自分達の目では見えない何かが起きている。

悪魔の仕業でもない。それなら自分や他の二人が気付いている。

では何かとギルヴァが思った時、彼の中で存在している蒼が話しかけた。

 

―ギルヴァ、ちょいと外に出る。すぐに戻るから安心してくれ

 

(何の為に出る気だ)

 

―なーに、挨拶に向かうだけさ。目には見えない事をやってのけてくれている本人にな

 

(待て、どういうつもりだ)

 

ギルヴァの制止を聞く事もなく、蒼は外へと飛び出していった。

 

 

そこは決して生者には見えない世界。

敵に纏わりつく何かが居れば、味方を友軍の元へと導こうとしている何かが居る。そんな光景が広がる世界で、蒼は居た。その姿こそはギルヴァがデビルトリガーを発動させた時の姿だが、それはこの世界に留まる為の仮の姿でしかない。

魔訶不思議な事が起きている実態を知りつつ、彼はある方向へ向かって納得した様な声を上げた。

 

「世の中不思議が腐る程転がってるが、俺が見てきた中であのお嬢さんが一番の不思議だな。あの感じだと人形の筈だが…どういう訳か魂だけがこっちに留まってやがる」

 

立っている地点から遠いが、蒼はその目で捉えていた。

まるで祈りを捧げているかの様に、しかしその歌の内容はどういう訳か聞き取れない。それを歌う白きローブを纏う少女の姿を。

挨拶という名目の為、蒼はその少女の元へと歩き出す。ただ真っすぐと迷う事無く。

敵の体をすり抜けながら、蒼は少女の元へと歩いていく。

彼がその者の近くまで来た時には、彼女は丁度一つ歌い終えた様子だった。

歩み寄ってきた蒼に気付き、ジッと彼を見つめていた。

見えざる世界でまるで実体を保つ様に居るのだ。警戒されていても可笑しくないにも関わらず蒼は話しかけた。腕を広げ、役者を演じる様に身振りしながら。

 

「…善意なんだろう?その歌を歌うのは。確かにこの戦場で命を落とした奴らが多すぎる。人形人間関係なくな。加えて例のフード付きマントの敵が出てきた時には更に増えた。何かを成す事も出来ず、ただ蹂躙されるだけ。そんな扱いをされちゃ成仏できるもんもできはしない」

 

「…貴方も昇る事を望むのですか?」

 

「天にか?悪いが俺は悪魔でね。天に召される訳には行かんのさ。逝くとしたら地獄の方があってる」

 

ただ、と前置きを呟き、彼は空を見上げた。

 

「こんな悪魔でも天に逝けるなら行ってみたいね。もしその時が来たらお嬢さんの胸に抱かれて、その歌を聴きながらあの世に召されたいね」

 

「ふふっ…貴方は変わった悪魔ですね」

 

「まぁ…確かに変わってるかもな。基本悪魔ってのは無慈悲な奴らだ。だがこの世には居るのさ…心を持った悪魔ってのがな。誰かの為に戦い、傷つき、誰かの為に涙を流す悪魔がな」

 

ふと彼は静かに背を向けた。

ギルヴァのいる地点を把握すると蒼は言葉を続けた。

 

「ま、ただの独り言さ、適当に忘れてくれ。悪魔の言葉なんて覚えてたくもねぇだろうしな」

 

じゃあな、と告げ蒼は歩き出した時だった。

ローブ姿の少女は彼を呼び止め、呼び止められた蒼は足を止め振り向いた。

 

「…最後に名を聞いても?」

 

「名前か?」

 

聞き返す様に尋ねると彼女は首を縦に振り、頷く。

何時もの様に今でも良く呼ばれる名前を伝えようかと思った蒼だが、ふとある事を思い出した。

どうせならこの少女だけには己の【本当の名前】を教えてやろうではないかと。

 

「■■■■。魔界じゃ良く片割れの魔剣士とか色々言われてた悪魔さ」

 

「■■■■、ですね。覚えました。またお会いしましょう、変わった悪魔さん」

 

「ああ。会う事が出来たらな」

 

いつか会う事を約束しながら蒼はその場から去っていく。その後ろで彼女の歌う歌声を耳にしながら。

 

 

その頃ネージュの乗るリヴァイアサンは既に戦場にたどり着いていた。

地上で戦っている者達が小さく見える程高度を保っており、ネージュはリヴァイアサンをアサルトモードへと変形させ、新たに追加された武器を構えた。

それはレールキャノンとも言える代物であり、この時の為にマギーが即席で作り上げた重火器であり彼女はそれを二丁携えていた。

砲身を展開したレールキャノンを地上へと狙いを定めながら、ネージュは通信に割り込む。

 

「こちらS10地区前線基地所属ネージュ。射撃支援に当たる。それと作戦領域ギリギリのところで輸送ヘリを待機させてある。待機地点の座標を今から送る。必要であれば使ってくれ」




色々ごっちゃしておりますが…。

要らないかもしれませんが、S10地区前線基地から送迎用の大型輸送ヘリ部隊とネージュが搭乗している大型飛行ユニット「リヴァイアサン」を戦場に向かわせました。
ヘリ部隊は作戦領域入るか入らないかギリギリの所で待機させ、リヴァイアサンは上空で待機。高高度で狙撃させます。お好きに使ってください。

そして戦場で魔訶不思議な事を起こしている彼女に蒼はちょいとご挨拶にね…。

では次回ノシ
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