Devils front line   作:白黒モンブラン

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─奥の手─


Act186-Extra Ironblood May Cry ⅩⅦ

RFBの傍でギルヴァが行ったそれはどう考えても常軌を逸脱していた。

愛刀たる無銘を自身に突き刺したのだから。

 

「ギルヴァさんッ!!!!」

 

RFBが叫び、無銘で自身を貫いたギルヴァを見てノア、アナが素早く彼の元に駆け寄り、ブレイク、ルージュが今のギルヴァの状態を察し、果敢に接近戦を仕掛け始め、そしてこの場で戦闘を繰り広げていた他の面々は彼の行いを目撃し、言葉を失っていた。

 

「こんな時に何を考えてやがるッ!?アナ、出来るだけあれを近づけさせんなよッ!!アレがギルヴァに近づいたら取り返しのつかない事態になる気がしてならねぇッ!!」

 

「言われなくても分かっています!!ギルヴァ、返事してくださいッ!!!」

 

自ら刃を突き刺すなど普通ではない。もはや自殺にしか見えない。

ノアとアナが己が持つ力を総動員させ周りの者達と共にリーダーユニットへと攻撃を仕掛ける。

その時、ギルヴァの近くにいたRFBが何かに気付いた。

ギルヴァが無銘を自身に突き刺し片膝を地に付けた時、彼の体が青紫色の靄に包まれ、同時に背から人の形をした靄の様な物が飛び出した事に。

狂った訳ではない。そして自殺などではない。まるでこれは─

 

「何かと入れ替わろうとしている…?」

 

RFBがそう呟いた時、ギルヴァの背中から飛び出した靄が一瞬にして消え去り、それはこの世に姿を現した。

湾曲した二対の角、左右非対称な胴体、まるでコートの様に靡く鱗、左腕から生えだした様な鞘の様な何か、刀でも納めているのか柄のらしきもの、そして全身から青いオーラの様な物を放っていた。

ギルヴァではない。何故なら彼は青黒い靄になったまま地に片膝を着いたままなのだから。

本人ではない別の誰か。その誰かは誰にも分からない。

 

「さて─」

 

どうする事も出来ない自身に怒りを覚えながら、お気楽を装ってただただ我慢に我慢を積み重ねた。

それで何か成す事無く出番もなしに終わると思った。

だが今がその時と言わんばかりにそれは訪れた。一世一代の大仕事をぶら下げて。

奥の手はないのか?そんな事はない。キッチリとあった。

偶然に偶然が重なり合う様にして出来たこの状況だからこそ生まれた奥の手。

それが無ければこんな無茶はしない。

 

「ここからは─」

 

ここに至るまで多くの者達が、己が有する力を総動員させて戦ってきた。

戦いに戦い、幾多の困難を切り抜けてきた。そして漸く訪れた終幕が再び離れようとしている。

そうはさせない。ここで終わらせる。無茶と無理は上等。逆境こそ我の本懐。

今は霊体。本来の名を捨て、与えられたのは漢字一文字で表す色の名。

二度と戻らぬと思われた体は再び器として、失われた力は今を、そして全てを守るために─

 

「俺の仕事だ」

 

今は名前無き片割れの魔剣士…蒼が現世に蘇った。

 

 

彼の登場はギルヴァを除く、全員にとって予期せぬ事と言え、どういう訳かリーダーユニットすら出てきたそれにどことなく困惑した様な様子を見せるも攻撃を再開。

回避性能、迎撃能力は馬鹿げており、倒す事すら困難と言えるがそれでも近づけまいと銃身が焼き付いてしまいかねない程に味方は銃を連射し弾幕を展開。

出てきたそれが敵かどうかなど今はどうでも良い。攻撃の手を止めてしまえば死ぬのは自分なのだ。

そして蒼も同じ考えでいた。

自分が敵と思われようが、味方と思われようがどうでも良い。

重要なのは敵を倒す事。そして敵はフード付きマントの敵。それだけの事なのだ。

 

「…その盾でこいつを守ってやってくれ。嬢ちゃんなら出来る筈だ」

 

傍にいたRFBに靄に包まれ片膝をついた状態のギルヴァを守って欲しいと伝えてから彼女の頭を一撫ですると蒼は敵を見据えつつ歩き出す。

ギルヴァ、ブレイク、ルージュ、アンの計四人が引いたトリガーによる魔力は十分に足りている。

すると蒼はフッと小さく笑いを零し敵へと話しかけた。

 

「もう数え切れないほどの魂が築かれちまった。人形人間関係なくな。あのお嬢ちゃんが歌ったとしても、まだまだ逝けねぇのが多すぎる。それぐらいにまで増えちまった。……中身が何なのかは知らねぇが無茶してんだろ?呪いに対抗する様にリミッターを外してんだからな」

 

戦場に鬼火の様な物が一つ、また一つと浮かび上がり、歩き出す度に空間が、否、世界そのものが振動している様な低い音を響かせる。

もはや何が起きているのか分からない。更なる超常現象に味方は困惑した時、リミッターを外しているにも関わらず、まるで時を止められたかの様にリーダーユニットたちの動きが止まった。

首一つすら動かす事は叶わない。そしてリーダーユニットたちの耳に声が響く。

 

「オマエタチ モ コイ」

 

万力の如く、無数の怨霊がリーダーユニットたちに憑りつき動かさない。

もう逃がさない。どこにも。道連れにしてもらう。

怨霊の一体が蒼の方を見ると小さく笑みを浮かべ、口を開く。

 

「アトハ オネガイ シテイイ?」

 

「任せな。キッチリまとめて送ってやる」

 

「…アリガトウ」

 

「どうも致しまして。…じゃあ始めようか」

 

次の瞬間、蒼の足元から地面を描く様に無数の光脈の様なものが広がった。

そして彼を中心に何かは放たれた。だからといって味方に影響はなかった。

影響を受けたのは敵だけであり、敵だけに見えぬ光景が広がっていた。

味方には何が起きているのかすら分からない。

ただ一つ分かるとするのであれば寒い。

まるで戦場全体が氷獄と化したかの様に寒い。

でも何が起きているのか全く分からない。まるで先程起きた怪奇現象の様に。

そして敵のリーダーユニット含め蒼にはその光景が見えていた。

全ては灰色へに彩られ、浅葱色の炎がそこらかしこで燃え盛り、無数の鬼火が浮かび上がり、無数の銃、剣が地面に突き刺さっていた。

まさしく墓場でもあり地獄でもあり悪夢。そんな中で蒼は手を広げ地面へと翳す。

 

「敵は無茶苦茶、手札も無茶苦茶。だが偶然に偶然が重なり合って得た奥の手。勝負のテーブルに座るには十分すぎる一手」

 

炎が、鬼火が、銃が、剣が呼応する様に自らを光へと姿を変え、蒼の手へと集い始める。

パチパチと弾ける様に火の粉がゆらりと舞い上がり、それは次第に激しさを増し、炎の濁流とも言うべき何かがその手に流れ始め、何かを形成し始めた。

何かが起きようとしている中で蒼は静かに口を開く。

 

「友を想い、敵を恨み、怨嗟と化した。成せぬと逝けぬと嘆くなら…この身、この魂が一時の依り代となろう」

 

確かに偶然だった。本当に誰も予期していなかった偶然だった。

だが精神だけという存在だったからこそ干渉が出来た。ただ救おうと歌う彼女が居て、そして自身が何をすべきなのかを知った。

生者と死者の二つの世界を行き来した事により一時の間だけ得た力。

 

「それらを持って業となし、業を持って業を断つ…」

 

憑りつき動きを止めるだけで敵が大人しくならないなら、それら全てを引き継いで力へと変える技。

それこそ今の自分に今だけ許された力。

 

「創り上げるは究極の一振り…!ここに散った奴ら全員を連れて─」

 

炎は柄を作り上げ、刀身を作り出す。

そして炎、光が集約して広がった時、蒼の手に握られる柄の無い茎の状態の一振りの太刀。

纏うは怨嗟を宿し浅葱色の炎。

この地で散った者達によって生み出された怨嗟の太刀を構え、蒼は地面を蹴り突進。

全ての想いをこの太刀に、この攻撃に。

動けずいるフード付きマントのリーダーユニットたち目掛けて、太刀を振りかぶりながら叫ぶ。

 

「あの世に成仏しなぁッ!!!!!!!」

 

一閃。

ブレの無い研ぎ澄ました斬撃が複数のリーダーユニットをまとめて斬り裂く。

その一撃は全ての音を消し去り、山を切り裂き、空間も切り裂き、彼の目の前にいた全てを切り裂いた。

ただ斬撃どころでは留まらず、切り裂かれた地面から破砕音と共に浅葱色の炎が噴き出し、切り裂かれたリーダーユニットたちを焼き尽くすと言わんばかりに燃え上がり、次第にそれは天高く昇る火柱へと化し、全てを塵へと変えた。

この地で散った者達の為の墓標か、或いは怨嗟が積もりに積もって出来上がったものか。それは誰にも理解する事は叶わない。

だがどの様な形にしろ複数のリーダーユニットがほぼ同時に撃破された事には変わりなかった。

一瞬だけ訪れる静寂。銃声は小さく木霊し、硝煙が漂う。

そんな中で空を見つめる蒼。手にした太刀に罅が入り、次第にそれは大きくなっていき、最後は役目を終えたと言わんばかりに硝子細工の如く太刀は砕け散っていった。

 

「ぐっ…」

 

太刀が砕け散っていた事を受け、その反動か蒼は地面に片膝をついた。

 

(ここまでか…。まぁ我ながら良くやった方かね)

 

体が靄に包まれ、蒼はギルヴァの元へと戻っていく。

彼が戻ってきた事により、ギルヴァを包んでいた靄は晴れ、普段と変わらぬ青い刺繡が施された黒いコートを羽織るギルヴァが戻ってくる。

 

「はぁ…はぁ…」

 

呼吸を整えながら、自身に突き刺した無銘を引き抜き、刀身を鞘へと納めると彼は小さく呟く。

 

「…無茶苦茶も良い所だ」

 

傷は既に塞がっている。

ただギルヴァとしては二度目となる切腹紛いな事がない事を祈るばかりであった。




まぁ…うん…許して。

とりあえず蒼がやったのは、所謂この戦場で散った者の魂やら怨嗟やらを全て引き継いで、武器へと変え、全力の一撃をリーダーユニットらに叩きつけたという感じです。

M82A1があれをやってくれなかったら、蒼もそれを認識する事は出来ず、同時に行き来する事も出来ませんでしたし力を得る事も出来ました。
偶然に偶然が重なった結果、あれが出来たという訳です。


自身もそうでしたが、ネタが尽きかけてヤバいという所もありましたし…これ以上長くなったらヤバいよな思い、やらせていただきました…。

では次回ノシ
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