Devils front line   作:白黒モンブラン

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─偶然だった─

─誰にも想像出来なかった偶然だった─


Act189 By chance

「それはまた面倒な事を寄越してくれたのう…。あの作戦からそれなりに経ったと言うのにもう仕事かえ?グリフィンは年配者を労わる事が出来んのか?」

 

基地内の通信室で、ダレンは画面に映るへリアンに向かって呆れた様な表情を浮かべた。

 

『そう言うな。こちらとて満足に動けないのだ。膨大な事後処理のせいで合コンにも行けやしないし、説明の為に色々回らなくてはならない…あのハゲ爺共が!!』

 

「これこれ、本音が出とるぞ。大変のは分かるが下の者に八つ当たりせん事じゃ。お主の真面目な所は評価するが、そんな事をしてたら独身生活が更に伸びる事になるぞえ?」

 

『うぐっ…』

 

指摘され苦い表情を浮かべるへリアンを見てダレンは咥えていた煙管から紫煙を吐く。

さて…、と前置きを呟くと彼女の表情は一変。神妙な面持ちへとすり替わった。

 

「お主の仕事もある。談笑もここまでしようかの」

 

『そうだな。…お前も知っている通り、現在グリフィンでは先の作戦で甚大な被害を被り、急ピッチで立て直しを図っているが今の所先が見通せない状況にある。各地の基地の戦力も激減し、まともな作戦すら行えない中、如何やらこの事を一部の違法組織がこの事を耳にし、行動を起こしたらしい。違法行為で一稼ぎしようという根端だろう』

 

「で、その一部をワシらでぶっ潰せと。しかし情報少ないのう。…まぁそれも立て直しを優先しているせいか」

 

『済まない。だがお前ならこちら以上に集められるだろう?』

 

「言ってくれるの。ともあれ承知した。シーナにも伝えておくとしよう」

 

『ああ。頼んだ』

 

それを最後にへリアンとの通信を切るダレン。

彼女から伝えられた情報を土産に通信室を後にし絶賛執務室で奮闘しているシーナの元へと向かうダレンであったが、その表情は浮かないものであった。

与えられた情報は確かに少ないが問題ない。その点は自身が補えば良い。ただ…

 

(…変な胸騒ぎがするの)

 

この情報をシーナに伝える事に彼女は何故か躊躇いを感じ取っていた。

 

 

以前の慌ただしさはどこかへと消え去り、また時間が昼食時間という事もあり食堂へと向かう人形や職員達とすれ違いつつ、ダレンはシーナが居る執務室へと訪れていた。

食堂がごった返している事は分かっているのか、彼女は書類仕事を一時中断して昼食を取っており、偶然にも報告の為に執務室に訪れていたヘルメスがシーナの手作り料理をご馳走になっていた。

どうやら今日の昼食はペペロンチーノの様らしい。

珍しい組み合わせだと思いながらも、ダレンは何時もの様に笑みを浮かべながら話しかけた。

 

「ワシの分はあるかのと言いたいが無さそうじゃな。…シーナよ、少し時間を貰っても良いか?」

 

「良いよ、何かな。それとパスタなら多めに作ってしまったからダレンさんも良かったら食べてね」

 

「それは良い事を聞いた。では手短に終わらせる様にしようかの」

 

自分も昼食を取りたかった所。

折角ならばご伴侶預かるのもやぶさかではない。

作り立ての料理が冷めてしまう前に、ダレンは頼まれた仕事を伝える。

 

「グリフィンから命令じゃ。この期に乗じて金稼ぎしようとしている違法組織を潰してほしいとの事。詳細はこれに乗っておる。ただ全て乗っている訳ではない。向こうも色々大変そうじゃったからの」

 

食事の手を止めシーナはダレンから差し出されたタブレット端末を手に取り、内容に目を通し始めた。

 

「……ここは」

 

そして違法組織の拠点があるであろう場所の名を見て、シーナはそんな声を漏らした。

その呟きを聞き逃さなかったヘルメスはコップに注がれた水を飲み干すとシーナへと尋ねる。

 

「何か心当たりがあるみたいだな?」

 

「…」

 

だが彼女は問いに答える事はせず、ただ端末の画面と睨めっこを続けるのみ。

シーナの様子がおかしい。

そう感じたのはヘルメスだけではなかった。ヘルメスと相対する様にソファーに腰掛けたダレンもまたそれを感じ取っていた。

質問しようにもシーナは無言を貫いている上に放たれる雰囲気に当てられたのか、ヘルメスもダレンも行動を起こす事が出来ず彼女が話し出すのを待つほかなかった。

 

「…」

 

画面に記載された場所の名前をまるでなぞる様に指を滑らせるシーナ。

 

(…まだ残っていたなんて)

 

結局の所、その場所がどの様な関係があるのかはシーナ本人から語られる事はなく。

シーナは了解したという返事しか返さなかった。

ただその直後に作戦をあろう事か今夜決行するという異例の事態となったのは、その場にいたヘルメス、ダレン、そして後にその事を聞いた所属する人形達が驚きを隠す事が出来なかったのは無理のない話だろう。

 

 

その日の夜はこの時期には珍しく妙に暖かった。

厳密に言えば温いと言うのだろう。ジメジメとはしていないが、寒さ対策に厚着していたとしても、この暖かさではその意味も薄くなると言ってもいい。

明日は晴れると示唆している様に雲一つない満天の星空に彩られ、地上では一台の車両がS09地区にへと入っていた。

幾度もなく踏まれ、一本の道へと化した道を駆け抜けるハンヴィーの運転席にはソルシエールが、後部座席にはヘルメスとvector。そして助手席にはシーナが座っており、それぞれ武装している。

 

「珍しいね。何時ものなら入念に準備してから動くのに」

 

夜間ラジオをシーナが耳を傾ける中、己と同じ名を冠した銃に弾倉を刺しこみながらvectorが口を開く。

独り言のようでその問いはラジオに聞いていたシーナへと向けられたものであり、それを察した彼女はラジオを切りつつ答える。その手に【Painekiller】と銃身に彫られたマテバ2006Mを握りながら。

 

「無視して良い相手じゃないからね。それに…あの場所は私にとって忘れない場所だから」

 

「……どういう場所だったか聞いても?」

 

「そう、だね…」

 

運転しているソルシエールと目を伏せ静かにしていたヘルメスがこっそりとその話に耳を傾ける中、彼女は何処か悲し気な笑みを浮かべつつ星空を見つめながらvectorの問いに答える。

 

「四年前の話。……その場所で起きた戦いは私を一般人から大量殺人者へとなった。…いわゆる生誕の地と言うのかなその場所は。只々復讐する事だけに執着した私が生まれた、ね」

 

「…何で復讐とか…そんな事を?」

 

そう問いかけながらもvectorは分かっていた。

できるのではあればそれが嘘であってほしい。だが確信めいたものは感じ取っている。

見限るという事は最初から無い。彼女がその座に就いてほんの少し経った後にvectorはそこの所属になったのだから。どんな人かなど分かっている。

それでも本人の口から聞きたい。そうなってしまった、その理由を。

 

「……」

 

だがシーナは答えようとはしなかった。

無理もない。そうなってしまった理由は決して明るいものではない事を分からないvectorではない。

今はこれ以上この話をすべきではないと判断し、別の話題へと切り替えようとした矢先、運転していたソルシエールが声を上げた。

 

「もう少しで到着だよ。全員気を抜かないでね」

 

どうやら別の話へと切り替える必要もなく。

車両は目的地付近に辿り着くのであった。




はい。次回からシーナの過去についてを展開しようかなと。(未定)

では次回ノシ
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