Devils front line   作:白黒モンブラン

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─建物も中身もやり方も変わっていない─

─最もそれを知るのは彼女だけ─


Act190 Immutable

違法組織が拠点として使用している場所は建物と建物の間に出来た下へと下る階段の先に存在する小さなバーであった。営業はしているのか、店の明かりがほんのりと漏れ出しているが、どことなく近寄りがたい雰囲気を放っている。

階段の上からバーの扉を見つめるガンケースを片手にローブを纏うヘルメスとグリフィンの制服ではなくお気に入りの服装に身を包み、その上からサーヴァントを羽織ったシーナがいた。

 

『指揮官、聞こえる?』

 

そこに耳に付けていた通信機から車内で待機しているvectorの声が響いた。

 

「うん、聞こえるよ、vector」

 

『こっちは言われた通り、ソルシエールと共にバーから少し離れた場所で待機しているけど、大丈夫なの?裏口の方は警戒しなくても』

 

「大丈夫。実のところ、私たち以外にも何人か呼んであるよ。先に待機してもらってたの」

 

『嘘でしょ?』

 

シーナが嘘じゃないよと答えようする前に、先に待機してしていた人形が通信に割り込んできた。

 

『嘘ではありませんよ、vector』

 

『その声…コンテンダーね?』

 

『はい。裏口は私とMG4が待機しています。私達以外にも別の建物で404小隊の皆さんが待機してますよ』

 

『あー…うん、そう…。問題ないね』

 

四人だけで行動していた意味を悟りつつvectorは通信を切った。

再び訪れる静寂の中、ローブ姿のヘルメスは隣に並び立つシーナが動き出すのを待っていた。

眼帯をしていない瞳がその顔を見つめた同時に彼女は歩き出し、ヘルメスはその後に続く。

一歩、一歩と階段を降りる度に靴底の音が地面と当たる音が響き、バーのドアとの距離が少しずつ縮まっていく。

 

「私が合図するまで攻撃しないで」

 

「ほう?」

 

このまま突撃して撃ち合いになった方がヘルメスとしては望ましかった。

カジノ制圧作戦に製作されたヘルメス専用の二丁のショットガンが更なる改造が施された上に、新たな専用武器も持ちだしてきている。

早々に性能を確かめたいというのが彼女の本音。故に問う様に上げた声は何処か不満げであった。

 

「策があるというのか?」

 

「あるよ。多分同じ事をやっている筈だから」

 

それを聞いたヘルメスがどういう意味かと問おうとするも既に時遅く。

二人はバーの入り口の前まで来ていた。

シーナがドアを開くとドアベルが店内に来客を知らせる。タバコ、酒の匂いが立ち込め席に座っていた男どもはバーに訪れたシーナ達をまるで獲物を見つけた猛獣の目つきで見つめる。

そんな目線を怯える事もなく、シーナはヘルメスと共にカウンター席に腰掛けた。グラスを磨いていたバーテンダーがシーナを見て困ったげな表情を見せ、カウンターに腰掛ける二人の後ろのテーブルでポーカーをしていた男達の一人が煙草を吹かしながらシーナへと話しかける。

 

「ここはお嬢ちゃんみてぇな奴が来る場所じゃねぇぜ」

 

「へぇ…此処酒場だったの?それにしては酒の匂いよりも…()()()()()()()()()()()()()

 

その台詞に辺りが静まり返る。

状況が一変したかに思えばシーナが小さく笑みを漏らした事からそれは静かに消え去った。

男達もポーカーを続け、バーテンダーもグラスを磨くのを続ける。

照明に導かれる様に一匹の蛾が羽を羽ばたかせる音が小さく響く中、シーナはコートの懐からあるものを取り出しそっとカウンターの上へと置くとバーテンダーを差し出した。

それは一枚の紙幣。ただ何故か端の所だけが破り捨てられており、バーテンダーはその一部が欠けた紙幣を受け取ると、ジッと差し出した本人を見つめた。

 

「…何が欲しい」

 

バーテンダーがそう問うとシーナは下ろしていた顔を上げ、酒棚を見つめる。

何処から得たのかは分からないが、多種多様なボトルが揃えられている。中には滅多にお目にかかれる事の出来ないヴィンテージウイスキーも置かれていた。

 

「左端の一番下の棚。右から三番目のボトル」

 

彼女が注文したのは恐らく数年前に存在していたであろう年代もののウイスキーであった。

その注文の本当の意味を知っているのかバーテンダーはポケットから鍵を取り出すと顎でドアをさし、カウンターの裏へと向かっていった。

 

(以前のまんまか…それとも真似しているだけ?)

 

胸の内で呟くとそれに続く様にシーナはカウンターから降り立つも一瞬の隙を突く様に、ヘルメスに一枚のメモ用紙を渡してからカウンター裏へと消えていった。

訪れた静寂。

一人残されたヘルメスだったが、シーナから渡されたメモ用紙を見て誰にも気付かれる事もなくニヤリと口角を吊り上げながら、掲げた何かの持ち手へとそっと手を伸ばした。

その一方でシーナはバーテンダーと共に裏方にいた。

酒棚など物で溢れており、照明も少ないせいか薄暗いのだがそれを気にする事もなくバーテンダーはある場所へと向かって歩いており、シーナもその後に続いていた。

地下に出来たバーにしては裏方は驚くほど広いがその割には在庫の数は少ない。誰がどう見ても妙だと思わせるには十分と言えた。

 

「見た目にしちあんたもあくどい事やってんだな」

 

「褒め言葉として受け取っておくよ。…それで品揃えは良い方なの?」

 

「勿論だ。最近じゃ良いものも入荷した。まぁ俺好みじゃなかったけどな」

 

目的地に着いたのかバーテンダーは足を止め、振り返りながらそう告げた。

そこは決して人目につく事はなく、死角になる位置にそれは存在していた。

何の為に設けられたのか、その壁にはレバーの様なものが一つ。

バーテンダーがレバーを下ろすと、隠し扉だったのか壁が横へとスライド。その先には牢獄の様な通路が真っ直ぐ奥へと続いていた。

物音一つせず、暗く、そして冷気が漂う。ここで行われている事を知っているシーナは表向きは平然としているがその内心では憤怒と殺気がごちゃ混ぜになった炎を燃え盛っており、必死にそれを抑えていた。

 

「商品の味見がしてみてぇなら言え。鍵を開けてやる。見たいだけなら扉の覗き穴から覗きな」

 

自分が殺されるどころか、シーナを本気で自分達と同じ奴だと思い込んでいるバーテンダーはそう告げ、シーナは頷き牢獄の様な廊下へと歩き出す。

そして廊下の一歩手前で足を止めるとバーテンダーへと話しかける。

 

「そう言えば、変な噂を聞いたの」

 

「あん?」

 

突然語り始めたシーナに対しバーテンダーは訝しげな声を上げる。

そんな声もお構いなしと彼女は喋るのを止めない。

 

「最近、ロボット保護団体やら人権保護団体とかと名乗って行く先のない人形や子供達を保護すると言いながら拉致する連中が居るみたいよ。捕まった奴は商品にされ、買い手がいなかったら命を取られるって言うのだから…ホント恐ろしい話よね」

 

「…」

 

黙り込むバーテンダーを見てシーナに確信する。

 

「…おまけに取引の場所はバーみたいらしいの。合言葉を聞いたら味見も見物もさせてくれるって言う。…それってここの事じゃない?」

 

「…さぁ?知らねぇな。でも、よぉ…一つだけ良い事を教えてやれるぜ」

 

観念したのか。或いは交渉を持ち掛ける気でいるのか。

否、そんな筈はなかった。

そう装っているだけでバーテンダーは不気味な笑みを浮かべながらポケットから折り畳み式のナイフをシーナに気付かれぬ様にそっと取り出し、刀身を立てた。

 

「それはな─」

 

キラリと刃先が灯りに反射し、研ぎ澄まされた刀身がバーテンダーを写すと、彼はゆっくりと忍び足でシーナへと迫る。

自身に危機が迫っている事を気付いているのか、或いは本当に気付いていないのかシーナはバーテンダーに背を向けたまま佇んだまま。

無防備な状態な晒し続ける彼女を見てバーテンダーの中で確信めいたものがあった。

持ち手を逆手にし、背後まで接近。彼女の頭目掛けてナイフを振りかぶる。

 

「テメェが死が決まった事だッ!!!」

 

そう叫びながらバーテンダーがナイフを勢い良く振り下ろそうとした瞬間だった。

 

「ッ!!??」

 

振り下ろそうとしていたその腕がピタリと止まった。

目を丸くするバーテンダーの顔面に突き付けられるは銃口。

銃身には【Painekiller】と文字が刻まれた銃の形状はリボルバー。

銃身が下部に取り付けられている特異な形をしたリボルバーの名はマテバ2006M。

そしてそれを構えるのは養豚場の豚を見る様な冷たい眼差しでバーテンダーを見つめるシーナの姿があった。

カチリと撃鉄を起こされ。シリンダーが回転し引き金に指がかけられる。

何時撃たれるか分からない恐怖にバーテンダーの呼吸が荒くなり脂汗が流れる。

抵抗すべきか、降参すべきかその考えすら出てこない。迫る死の恐怖と本当に少女なのかと思わせる程に放たれる強烈な圧におびえるだけ。

 

「死ぬのは…そっちみたいね」

 

冷たく放たれた一言と共に二発の銃声が響いた。

 

 

「銃声!?」

 

その銃声はカウンター席に腰掛けていたヘルメス、そして酒を煽り煙草を吹かしながらポーカーをしていた男達の耳にしっかりと届いていた。

そして二発の銃声はシーナからメッセージである事を知っているヘルメスは席から降り立ち男達の方へと振り向きながら、腰のホルスターに収めている二丁の銃を抜いた。

それはカジノ制圧作戦に彼女専用に製作されたブレードを備えたショットガン。だが更なる強化をヘルメスが求めた事から改造が加えられた事によりベースとなったM1887の面影、機構などは何一つ残っていない。

もはや魔改造の域に当たる二丁のショットガンを、銃を手を伸ばそうとする男達へと向けるヘルメスは不気味な笑みを浮かべながら口を開く。

 

「神様にお祈りを済ませたか?」

 

次の瞬間、二丁のショットガンが火を吹いた。

次々と撃ち出される散弾が男達の体を切り裂き吹き飛ばす。肉片やら鮮血やらがあちらこちらへと飛び散り、それどころか机や椅子も木端微塵に吹き飛んで行く始末。

 

「くそっ!…おい、敵だ!!ありったけの兵隊持ってこいッ!!」

 

散弾の餌食になる前に壁を盾にして隠れる男の一人が携帯端末で叫ぶ様に増援を要請する。

それでもお構いなしとヘルメスは撃つ事を止めず、男達に攻撃させる時間を与えない。

だが弾だって無限ではない。そして弾数が多い訳ではない。

最後の一発を撃つと二丁のショットガンの弾が切れた。

硝煙が漂う中、辺りは静寂に包まれ、ヘルメスは手にしていた二丁をホルスターへと納め、ローブを脱ぎ捨てると傍に置いてあったガンケースのヒンジ部分を軽く蹴り開くとそこに納めらていたものを手を伸ばす。

 

「野郎ッ!!」

 

攻撃が収まったのを悟ると男達は身を隠していた壁から飛び出し、ヘルメスへと銃を向ける。

だがそれが間違いだと気付くのは直後の事であった。

一発の銃声と共に放たれた散弾が自動小銃を構えていた男の頭を吹き飛ばし、中身が周囲にぶちまけた。

 

「餌の方から出てきてくれるとはなぁ…」

 

銃口から硝煙が上がり、独り言ながらヘルメスはガンケースから取り出した二丁を構えた。

しかし同じものではなく、別々の銃を握っていた。

左手には以前まで使用していたRDI Striker12、そして右手には銃身が水平に三つも並んだ短銃身のショットガンを手にしていた。その銃はソルシエールが既存のモノを改造したものであり、試作品である為か名前は付けられていない。

その他にもガンケースには何種類かのショットガンが収められており、中にはソルシエールが自ら設計し作り上げた北洋神話の神が使う槌の名を冠したショットガンも納められている。

ここに来て分かる事と言えば、どういう訳かヘルメスはショットガンだけしか持って来ていなかった。だがこの閉鎖的空間で、しかも武器のその殆どが散弾銃という男達にとっては最悪の一言に尽きる。

増援を呼んだとして生き残れる確率は低いだろう。寧ろ生き残りを探す方が困難である。

 

「丁度良い。こっちも狩りをしたくてたまらなかった所だ」

 

ニヤリと口角を吊り上げ、浮かべる笑みは不気味。

一人も生きて帰さない。眼帯をしていない瞳が男達にそう告げる。

 

「そう簡単に狩られるなよ?それだとつまらないのでな」

 

銃が咆える。散弾が吐き出される。

残るのは肉片か、それ以外か。

少なくとも分かるのはその場に残るのは敵の死体だけという事だろう。




本来なら色々ぶち込みたい所でしたが、一旦ここで切ります。

次回はどんな風にしていこうかな…。

では次回ノシ
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