フロントの方から銃声が聞こえる。
私が二発撃った事が合図となり、それを受けヘルメスが戦闘を開始したのだろう。
敵として現れたら厄介な存在だが、味方としているとなると何とも心強い存在である。
暫くの間は彼女に任せるとして、私は殺した男のズボンのポケットから牢屋の鍵を奪った。
「…」
手にした鍵を見つめた時、脳裏に【あの時】の光景が過った。
あの時もこんな感じだった気がする。十人ぐらい殺し、そしてその先に行く為、鍵を奪う。
もはや今自分がやっている事はあの時の繰り返し、或いは再現としか言いようがないが、一つだけ違いがある。
私が当時ここを襲撃した際に、囚われていたのはまだ年端の行かない子供達ばかりだった。今回ここで囚われているのは人形。とは言え違いはその程度でしかないのだが。
本当にどうしてこうなったのだろうと自分自身に問いかける。
思えば、再現に至ったのもカジノ制圧作戦の時に女の子を人質にとっては喚ていた男が、実はあの時の生き残りだと知った時からこうなるのは決まっていたのかも知れない。。
ではあいつが現れなかったらこんな事にはならなかったのではと思う事はあったが、現れようが現れなかろうが、どの道にこうなっていたに違いない。
とは言え今は昔を振り返っている場合ではない。近くにあった牢屋へと近寄り、奪った鍵で扉を開いた。
その部屋には三人囚われており、一人はローブを纏っている少女。恐らくであるが民用人形だろう。
「え…?」
そしてもう二人を見た時、私は目を丸くした。
服装からして、民用人形が着るものではない。戦術人形が着るような物だが、グリフィンの戦術人形かと言われたら違う様な気がした。
片方に関しては見覚えがないが、もう一人は知っている。それどころか見覚えがあり過ぎた。
隣の基地に居るあの子とそっくりなのだ。とは言え顔が同じというだけであり、彼女は私が知る彼女とは別人という事は間違いないだろう。
しかしどうしたものか。グリフィンの制服を着ていない為、彼女達からすれば今の私は奴らの仲間か、或いは別組織の人間のどちらかだと思われているに違いない。
このまま去り、MG4かコンテンダー辺りに頼んで保護してもらった方が良いかも知れない。その後で自分が指揮官だと明かせばいいだろう。
「貴女…あいつらの仲間かしら?」
二人へと通信を繋ごうとした矢先、瞳を閉じた人形が私にそう尋ねてきた。
瞳を伏せているというのにまるで見えているかのようにこちらを見つめ笑っているが、声からして警戒しているのが分かる。
「違うと言えば信じてくれる?」
「さぁどうかしらね。別の組織の人間…という事もあり得るでしょ?」
「確かに。その考えは間違ってはないかな。…でも私は味方だよ。貴女達の、ね」
ヘルメスがショットガンを乱射している間はこちらに敵がやってくる事は気にしなくていい。
ここは4年前と変わっていないから、この先を歩いていった所で行き止まり。敵が出てくる可能性は低いと見ていい。
「制服を着ていないから分からないと思うけど…こう見えてグリフィンに所属してるよ。私はシーナ・ナギサ。S10地区前線基地で指揮官を勤めています。…信じるか信じないかは任せるから」
私は相手の反応を待つ事無く、ローブを纏い、ずっと座り込んだままの彼女へと歩み寄った。
片膝をつき目線を合わせると彼女は伏せていた頭をゆっくりと上げ私を見つめてきた。
赤い髪。赤い瞳。顔には埃や泥などが付着しているが、私は彼女の事を知っている。
「はじめまして」
グリフィンから渡された情報の中にはなかったが、ダレンさんが集めてくれた情報の中に彼女の情報があった。
彼女は…とある村に住む人たちによって神として崇められた人形だった。
【だった】という事…それは過去の事であり現在の事を指していない。
では何故ここに居るのか?答えは簡単だ。
彼女は役目を果たせなかったのだ。神としての役目を。
そして追放された。新たな神様を用意されてしまったから
「…はじめまして」
私の挨拶に彼女は返答してくれた。
ただこちらを見つめる瞳はこう尋ねてきている。
何故私を助ける?役目を果たす事の出来なかった私を、と。
理由を話したい所であるが、今はそんな悠長にしていられない。彼女の手を取り引き上げると驚いた様な表情を浮かべていた。それを見て私は笑みを浮かべ伝える。
「理由は後で話すから。今はここを出る事だけを考えましょ?…で、貴女達はどうする?」
「そうね…。ここで終わるのも良いかと思ったけど…もう少しだけ生きてみようかしら」
目を閉じたままの人形が立ち上がるともう一人も立ち上がる。
どうやら彼女もその気の様だ。
奴らは品揃えは良い方だと言っていたが、ダレンさんの情報だとここで囚われていたのはこの部屋に三人しかいない。一人は知っていたが、まさか残り二人が戦術人形だった事に関しては驚ているが。
恐らくであるが既に売られてしまったか処分されたかのどちらだろう。
ともあれこの後も入荷する予定だったろうがこの店は経営悪化により店じまいだ。
誰にも悔やまれる事無くだ。
「さて…」
未だに銃声が聞こえる。という事はまだヘルメスは戦っているという事なのだろう。
だがここで待っている訳にも行かない。現場近くまでは移動した方が良い。
私としてもこんな薄暗い所には居たくない。
「まずはこの部屋から出よっか」
ローブを纏った彼女の手を引きつつ私はもう二人と共に部屋を後にするのであった。
「ハハハッ!!もっとだ!もっと来いッ!!!私はまだまだ遊び足りないぞ!」
焦らされた反動か、或いは久しぶりの戦闘か。
そのどちらかによってヘルメスの気分は最高潮へと達しており、笑みを湛えたままショットガンを乱射していた。
先程まで使っていたStriker12とソルシエールが手掛けた水平三連装ショットガンに装填されていた弾丸は底を尽き、現在彼女の手には同じくソルシエールが一から設計し作り上げたショットガン、【トールハンマー】とヘルメス用に調整が施されたAA-12が握られていた。
再装填という動作を必要としない為、敵に攻撃させる隙も与えず、そして次々と放たれる散弾の嵐によって最早ミンチと化した死体がそこらじゅうに転がっていた。
増援として現れた敵達も店内に踏み入れた瞬間、肉塊に早変わりする始末。
これは戦場ではない。蹂躙し、ただ肉塊を作り出すだけの精肉加工工場へと化してしまっていた。
「む…」
漸くと言うべきか騒々しい戦場は静まり返り、ヘルメスは手にしていたショットガンの弾が尽きた事に気付きながら周りを見渡した。
先程まで大量の敵がなだれ込んできたというのに、今は誰一人と来店する気配がない。
外で待ち構えているのかと思い、彼女は外で待機しているソルシエールへと通信を飛ばした。
「ソルシエール、こっちは終わったぞ。外に敵の姿はあるか?」
『いいや、誰一人とて居ないね。これで終わりって事だね』
「ちっ…、これから本番だというのに」
『そう言わないで、指揮官達と合流したら君もとっととこっちに戻ってきて。こんだけやらかしてるんだ、そろそろ警察も飛んでくる。ローブを纏うのも忘れないでね』
「…了解した」
この煮え切らない感覚を覚えながらもヘルメスは渋々とソルシエールの指示に従う。
持ってきていた銃を回収し、裏から戻ってきたシーナ達と合流するとヘルメスは店内を出ていった。
警察が訪れる前に部隊はS09地区から離脱。
私はMG4が運転するハンヴィーに揺られながら外を見つめていた。車内にはMG4とコンテンダー、私以外にあの場所にいた彼女達も乗っている。
ソルシエールが運転するハンヴィーに続く様に私達の乗るハンヴィ―がそれを追う。
時間が時間という事もあってラジオは流れずノイズが走る音が響くだけ。それを耳ざわりと感じラジオの電源と消すと私は星空を眺める。
舗装工事されていない道路を車両が駆け抜ける中、私はMG4へと呟く。
「帰ったら…私の事話そうか」
先延ばしする訳には行かない。
知りたい者も多い。ならば自分の口から全てを語ろうじゃないか。
10年前の2月14日のあの時を起きた事、そして4年前の2月14日に復讐に身を投じた私の事を。
隠していても意味はない。だから語ろう。2月14日は私の誕生日に起きた全てを。
今回はグダグダですが…。
次回は前半は色々と詰め込み、後半からシーナに起きた事…その始まり部分を書こうかと(未定
では次回ノシ