Devils front line   作:白黒モンブラン

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─語られる時─


Act192 Now is the time

違法組織との戦闘が終了し、無事基地に帰還したシーナ達。

既に陽は上がっており、一時的な休息を挟んだのち、シーナは何時もの様に執務をこなしていた。

また囚われている人形達は一旦S10地区前線基地で保護する事になり、事情を調べる前に修理が行われる事になった。民用人形だった彼女には特に損傷等は見受けられなかったが、残り二人の戦術人形に関しては担当に当たっていた後方幕僚のマギーからシーナに驚きの事実が伝えられた。

 

「あの二人がダミー!?」

 

有り得ないという表情を浮かべながら、勢い良く椅子から立ち上がるシーナ。

対するマギーも薄っすらとであるが二人がダミーという事に関して未だに信じられないという表情を見せていた。

 

「個体名称【AK-12】【AN-94】…二人からその様な証言が取れました。俄かに信じがたいですが、嘘とは思えません」

 

「その理由は?」

 

「ダレンから聞いた話ですが…両名ともグリフィン所属ではなく軍の所属の人形との事です。ダミーですから、回収されると思っていたのですが…」

 

「回収される前に何らかの形で自我が芽生え行動した、と…?」

 

「恐らくは」

 

悪魔に関しては目の前にいるマギーやダレンといった魔界出身の者達なら分かる。

だが今回の一件に関してはシーナも含め誰しもが経験した事の無い出来事であった。

どうしたらいいかと指を顎に当てつつ思い悩む素振りを見せるシーナに追い打ちをかける様にマギーの口から和悪い情報が告げられる。

 

「損傷していた部分の修復は何事もなく完了しましたが、どうやら行く当てがないとの事。戻った所で色々面倒みたいで、置いてくれるのであれば協力すると言っていました。ただ個体名称が今のままなのはどうにかして欲しいとか。それに関しては基地が保有する施設だど少し限界があります」

 

「つまり登録し直す必要がある、と?」

 

「はい。…私の方で頼れる所を探してみます。良い報告をお持ちください」

 

「うん、お願い」

 

分かりました、と答えるとマギーは執務室の出入口へと歩き出した。

自動ドアの手前まで来た時、足を止め彼女は静かにシーナへと尋ねた。

 

「話されるのですか?…あの事を」

 

文字を綴っていたシーナの手がピタリと止まる。

伏せていた顔を上げ、じっとマギーの背を見つめた。

あの事というのはシーナの過去であるのだが、長い間ここで後方幕僚を務めていたマギーですらシーナの過去の事に関しては知らない。

今の今まで隠してきた事をどのような理由があってそれを明かそうとするのか、シーナの行動にマギーは少し疑問を覚えていた。

 

「うん」

 

話すという事に変わりはないのか、迷う事無く答えるシーナ。

 

「何故です…?」

 

「何故って、皆が知りたがっているから。何よりも私がそうしたいから。いつか話すべきだと思っていたし…それが今日になっただけの話だよ」

 

「…貴女にとって辛い過去なのでしょう?」

 

「それでもだよ。私は語るだけ。話を聞いてどう判断するかはその人次第だから」

 

昼時を過ぎた後、シーナは明かすつもりでいる。

私の過去について聞きたい者がいるのであれば、会議室に集まれと言い渡す程だ。

その事はこの基地に所属する人形、職員達全員にも伝えられており、その中にはデビルメイクライの面々にも行き渡っている。

聞きたくても哨戒任務などで基地に残る事が出来ない人形に関してはダレン主導の元、音声録音する事となっており、詳細を聞く事の出来なかった者達にも話が聞けるように配慮されている。

そこまでしたの誰の他でもない。シーナが命令したものだ。

 

「これは私に対する罰なんだろうね。でもそれでいい。いつかはその時が訪れる…既に分かっていた事なんだから」

 

悲しそうな笑み。

矛盾したその表情にマギーは言葉が出なかった。

ただ一つ。一つだけ伝えなくてはならない事があった。

自身の過去を明かした事により必ず何かが起きる。異動願いを出す者も現れるかもしれない。

それでもマギーの思いは揺るがなかった。

 

「貴女の過去が人として踏み外したものだったとしても、恐らくそれはそうせざるを得なかったからなのでしょう。当事者にしか分からぬ事ってありますからね。……私は失望したり、見限ったりはしませんよ。他に行くとこもありませんし」

 

「マギーさん…」

 

「だから安心なさい、シーナ。私は離れたりしないから。……では失礼しますね」

 

まるでその口ぶりは我が子を思う母親の様で。

自身の思いを伝えてからマギーは執務室を出ていった。

部屋に一人残されたシーナは彼女が立ち去った後もじっと出入口を見つめていた。

 

「…ありがとう」

 

瞳から滴が流れ、頬を伝う。

小さく啜り泣きながら小さな声で感謝の言葉を伝えるのであった。

 

 

時間は流れて行き、昼食の時間が過ぎた。

集合場所である第三会議室では最早会見場へと化しており、室内で話を聞きに来た人形達や職員、ブラウローゼやデビルメイクライの面々の姿があった。

教壇では椅子に腰掛けて、静かにその時が来るのを待つシーナの姿があり、そこに猛禽類の姿をした悪魔 グリフォンが現れ話しかけた。

 

「しっかしよぉ、こんなに大袈裟にする必要あったのか?」

 

教壇の上に降り立ち、グリフォンは室内を見回しながらそう尋ねた。

 

「どうだろ。でも話す必要はある。話し終えた先に何が起きようとね」

 

「……覚悟はあるって感じ?」

 

その問いにシーナは静かに頷く。

覚悟は既に決めている。

それが分からないグリフォンではない。何時もの様に憎まれ口を叩こうとはせず、その場から飛び去り後方へと引っ込むのであった。

それから時間だけが過ぎて行き、気付けば第三会議室は満員。

時計が14時を差し示した時、伏せていた目を開きシーナは口を開く。

 

「時間が来たし、始めるかな。ダレンさん、準備は良い?」

 

「オーケーじゃ。いつでも始めるが良い」

 

「うん、ありがとう。……それじゃあ話そっか。皆が知りたがっている私の過去について」

 

室内が静まり返り、彼女の声だけが響く。

 

「全ては十年前…いや、今日が誕生日だから十一年前になるのかな」

 

それは一人の少女の物語。

決して幸せな物語ではない。

あるのは血と銃弾と暗闇と復讐心だけ。

 

「まぁどちらでも良いか。…まぁ、うん。全ては十年前に起きた。八歳の誕生日を迎えた私に起きた出来事をきっかけに、ね」

 

ここから先、語られるはグリフィンの指揮官になる前の彼女…。

シーナ・ナギサ(復讐者)の物語である。




前半は色々と…。さて誰かあの二人の再登録をやってくれるとこねぇかな…
まっ、それはシーナの話が終えたからにしましょうか。

次回「Act193 February 14th Revenge」

という訳で次回は2月14日の復讐者(シーナ・ナギサ)編へと突入です。

色んな所では甘々だったりのんびりとした感じのバレンタインデーを書いているというのに、こっちは何やってんだか…。

では次回ノシ
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