Devils front line   作:白黒モンブラン

212 / 278
─残酷な運命─


※内容が雑すぎたので、一度削除し、内容を加筆修正したものを上げさせて頂きました。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。


Act193 February 14th Revenge 1

十年前、某地区。

そこはそれなりに広く平和な街。

高々とそびえ立つビルが並ぶ市内を人々が行き交い、そこから少し離れると複数の商店街が存在し、住宅街が存在する。交通面も発達し、また病院や学校も存在する為、この町に移住してくる者も少なくない。

そんな誰にでも知られた街のある表通りに一軒のカフェ。

【Cake cafe sheena】と名付けられた店を経営する夫婦、シーナ・ハルオとシーナ・シズクの間に生まれた娘…シーナ・ナギサはバレンタインデーと言われる日にて八歳の誕生日を迎えていた。

 

 

時刻、朝七時。

この近くにある学校に通うナギサは何時もの様に母親であるに起こされ、リビングにて朝食を取っていた。するとナギサと対面する様に椅子に腰かける人物が一人。

良くも悪くもない平凡な顔立ち。素なのかどことなく微笑んでいる様に見える。

その人物こそナギサの父、ハルオである。

 

「そう言えば今日誕生日だったね、ナギサ」

 

「うん!わたし、今日で八歳になったんだよ!」

 

「そっかそっか。じゃあ学校から帰ってきたら誕生日パーティーをしなくちゃいけないね」

 

「ホント!?」

 

誕生日パーティー。

その言葉を聞いただけでナギサは立ち上がり、満面の笑みを浮かべながら目を輝かせた。

そんな姿に父、ハルオは頬を緩ませる。

 

「ほらほら、急いで食べて準備しなさい。遅刻するわよ」

 

壁に掛けられた時計に指を指すは母 シズク。

黒く艶のある長い髪、整った顔立ち。世間一般では美人に当たる。

ナギサも母よりの顔立ちしており、ハルオからすれば、母よりの顔立ちになってくれた事には内心嬉しく思っていたりする。

 

「ほんとだ!急がないと!アリシアちゃんを待たせちゃう!」

 

時計は既に七時十五分を過ぎている。そこから身嗜みを整えて着替えるとなるので時間が掛かる。

幸いにも家から学校まではそう遠くないが、ナギサはアリシアと呼ばれる友人と共に登校していた。

待たせる事になったら良くない上に急いで早く食べ終えなければ遅刻は確定。

シズクに言われた通り急いで朝食を食べ終え席から立ち上がるとナギサは急いで登下の準備を整える。

洗面所で顔を洗い、寝癖を直し、歯磨きをした後は自室で制服へと着替え、鞄を背負うと家の玄関前へと向かう。

 

「気を付けて行くのよ。それから今日は誕生日パーティーをするから、早く帰って来なさいよ」

 

見送りでシズクがそう伝えるとシーナは笑顔を浮かべる。

その笑顔につられてシズクが笑みを浮かべた。

 

「うん!それじゃあ行ってきまーす!」

 

今日一日頑張れば誕生日パーティーをしてくれる。

その嬉しさも相まってナギサは元気な声で家を飛び出した。

玄関の前で手を振りながら、ニッコリと微笑むシズク。

その笑みこそ…シーナが見た()()()()()()()()()()()()()であった。

 

 

いつもの合流場所では同じ学校の制服を着た少女が一人いた。その少女を見つけるとナギサは元気よく挨拶した。

 

「アリシアちゃん、おはよう!」

 

「うん!シーナちゃん、おはよう!」

 

年相応の笑みを浮かべ、透き通った銀髪が揺れる。

ナギサに元気よく挨拶を返すのはアリシア・アナスターシャ。

ナギサにとって大切な友人でありクラスメイト。

二人は何時もの様に待ち合わせ場所で合流すると共に学校へと歩き出した。

 

「そう言えばシーナちゃん、今日が誕生日だったね。おめでとう!」

 

「ありがとう!これで同じ歳になったね」

 

「ふふーん、私四月が誕生日だから先に偉くなっちゃうなー」

 

「えー、ずるいー」

 

他愛のなく、そして年相応の会話を広げながら仲良く学校へと向かう二人。

何てことの何時もの風景。変わらぬ日常。でも今日だけはちょっぴり特別な日。

明日にはなれば特別ではなくなるが、悲観する事はない。

大事な友達と学校で過ごし、家に帰ったら大好きなお父さんとお母さんに学校であった事を伝えて楽しく過ごす日々を過ごし、時にはお店の手伝いをして常連さんと少しだけ話したり、お菓子作りを勉強したりする。

ただそれだけの事だというのに運命は許さなかった。そして残酷だった。

八歳になったばかりの少女の人生が大きく変わるその瞬間は誰にも気付かれる事無く、すぐそこまで迫っていた。

 

 

学校を終えたナギサとアリシアであったが、非常勤講師から頼み事されてしまい、いつもなら帰宅している筈なのだが、つい先度まで二人は学校に残っていた。

重たい物を運ぶ訳ではなく、ちょっとした軽い荷物を運ぶの手伝ってほしいとの事。

ただ数が多い為ので人手が必要らしく、その量はナギサから見てもアリシアから見ても一人で運ぶには時間が掛かり過ぎると、八歳の二人でも見て分かる事であった。それを分かっていたが故に手伝いを引き受け、学校を出た時には15時を過ぎていた。

 

「大変だったねー…」

 

「だねー。でもお手伝い出来て良かったと思う。それに私まだまだ動けるよ!」

 

「ナギサちゃん、元気過ぎない…?」

 

各々の自宅へと向かう道を歩きながら二人は先殿手伝いの事について話していた。

体力に関してはナギサの方が上なのだろう。若干疲れた顔を浮かべるアリシアに対し、ナギサはまだまだやれると笑みを浮かべる。

 

「あ、ここでお別れだね」

 

「うん。じゃあまた明日!」

 

いつもの分かれ道に到達しそこでナギサはアリシアと別れた。

去っていく友人の姿を見届けると、彼女は行こっかと呟き自宅へと歩き出した。

いつもならゆっくりと道中の町の風景を堪能しながら帰るのだが、今日は自身の誕生日。

家に帰ったら両親が誕生日パーティーしてくれる。

それ故にナギサの足取りは軽やかで、小走り気味であった。

長く真っすぐと続く大通りを抜け、複数ある商店街の入り口前を横切っていく。

この通学路を使う様になって一年も経たない。だがナギサにとっては毎日が変化で溢れている楽しい通学路だと認識していた。

自宅兼お店がある通りに到着するとナギサは駆け出した。父と母は今でもお店で頑張っているだろう。もしかしたら常連さんが来ているかも知れない。

 

「あれ?」

 

そんな思いを胸に店の前に来たナギサだったが、そこにあった光景を見て首を傾げた。

この時間帯でも店は開いている。何か特殊な事情がない限り店が休みになる事はない。

十にも満たないナギサでもそれに関しては何となくであるが覚えていた。

しかし店が開いている様子もなく、店内の明かりも灯っていない。それどころか店の出入口に掛けられたドアプレートはclosedになったまま。

いつもと違う事にどういう事だろうと疑問を覚えながら、ナギサは学校に通い始めた時からシズクに渡されていた店の鍵で出入口の鍵を開け、ドアを開いた。

 

「ただいまー」

 

声だけが反響するも誰も反応しない。

それどころか店内は奇妙な静寂に包まれていた。

 

「お父さーん、お母さーん、居ないのー?」

 

声を上げて二人を呼ぶも、反応が無い。

どこかに出かけてしまったのだろうかと思い、薄暗い店内の周りを見渡しながらある物を探すシーナ。

もし出かけたのであれば書置きをしている筈。今までそういった事は何度か経験していた為、探したがどれだけ探しても書置きらしきものは見当たらなかった。

 

「臭い…」

 

そんな中でナギサは今まで嗅いだ事のない臭いが店内に充満している事に気付き、顔を顰めた。

異臭とも言えるものが辺りに立ち込めており、決して良い物ではない。

本当に父と母はどこへ行ってしまったのだろうか。

もしかして何かあったのだろうか。

不安が募るもナギサは勇気を出して大切な父と母を探し始めた。

恐る恐ると忍び足でナギサはカウンターから店の奥へと向かった。

体が小刻みに震える。それでも一歩、一歩と歩みを進める。

段々と近づくにつれて異臭が酷くなっていく。それも厨房から伝わってくるのだが、ナギサはそこへと向かおうとはせず先に二階にあるハルオとシズクの部屋に向かった。

もしかしたらそこに居るかも知れない。淡い希望を胸にナギサは階段を上り部屋へと向かうと扉を開いた。

 

「…居ない」

 

しかし居るであろうと思われた二人の部屋に両親の姿はない。

落胆するナギサであったが、気を取り直して二人が居そうな所を手当たり次第に探そうとした時だった。

ガタン、と。一階から重々しい何かが崩れる様な音が響いた。

その音に肩を跳ね上げ、素早く後ろへと振り向くナギサ。

 

「だ、誰かいる、の?それともお父さん…?お母さん…?」

 

両親の部屋から廊下へと出て、階段を降りる。

異様な雰囲気に泣きそうになるもナギサは必死にこらえる。

階段を降り切り、物音がした方へと歩き出した。その先にあるのは厨房。

明確な発信源は分かっていないもののナギサは物音はそこからではないかと思っていた。

あくまでそれは勘でしかない。厨房からだという確信に近いものがあった。

厨房の出入口までやって来たナギサ。

そこで何かがあるのだと理解しながらも、中々にその一歩が踏み出せずにいた。

だがこのままジッとしている訳には行かない。意を決してナギサは厨房へと足を踏み入れた。

そしてそこに広がった光景に固まった。

 

「…え?」

 

赤く染められた厨房の床で倒れていたのは生きていたはずのハルオとシズクの死体だった。

ハルオは体の各所からは何発もの銃弾によって撃たれた形跡があった。空けられた無数の穴から大量の血潮が流れており顔面は何か鈍器な様な物で殴りつけられた形跡があった。

一回どころか何十回も殴りつけられており、顔は原型をとどめていなかった。

シズクもハルオと同じ様な状態だったが、着ていた服がビリビリに裂かれていた。

そして何故かズボンと下着だけ下ろされていた。

下半身が裸にされたままであり、そこから何か生臭い…異臭が放たれていた。

 

「お父さん…?お母さん…?」

 

震える声で二人の名を呼ぶナギサ。

しかし二人はその声に答える事はない。それどころか一つも身動ぎしない。

恐る恐る二人に歩み寄るナギサ。そして母、シズクの腕に手を触れた時、その冷たさに彼女は驚きのあまり尻餅をついた。

 

「なんで……?」

 

理解したくない。だけど理解してしまう。

知りたくない。考えたくない。忘れたい。夢であってほしい。

しかし現実は無慈悲だった。

それでも彼女は何度も繰り返す。理解しないようにするために。

自らに呪いをかける様に。

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も繰り返した。

だがナギサは理解してしまった。

両親が死んだという事実に。

計り知れないショックが襲われ、視界は暗闇へと包まれる。そのままナギサは気を失ってしまった。

微かに外から漂う焦げ臭さとパチパチと何かがはじける様な音を耳にしながら…。




今回はシーナの過去編。
色々視点が変わっていきますので、何卒ご容赦を。


それとこれは当分先にはなりますが告知です。

シーナの過去編終了後…ちょっとしたコラボ作戦を考えています。
また今回は異世界との入り口を作る魔具「映されし異界の鏡」によって別世界との繋がりを作る気でいます。
つまりそれは別世界から参戦も出来るという訳でございます。
何卒楽しみしていてくださいませ。

では次回ノシ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。