Devils front line   作:白黒モンブラン

213 / 278
─決意、怨嗟─


Act194 February 14th Revenge 2

辺りは真っ暗。

 

 

 

何も見えなくて。

 

 

 

何も聞こえない。

 

 

 

そんな所に私はいる。

 

 

 

とても怖い。

 

 

 

どうしてここにいるのだろう?

 

 

 

ここはどこなんだろう?

 

 

 

もしかして夢の中なのかな?

 

 

 

ならば早く朝になってほしいなぁ。

 

 

 

学校に行って、アリシアちゃんと会っていっぱいお話をして、いっぱい遊びたい。

 

 

 

それに─

 

 

 

目を覚ましたら─

 

 

 

お父さんとお母さんはいつもの様に笑いかけてくれるのかな?

 

 

 

 

「!」

 

目を覚ました時、ナギサの目に映ったのは白く彩られた天井だった。

ゆっくりと体を起こすと自身がベットの上で眠っていた事に気付く。

 

「ここは…?」

 

とは言えナギサからすればそこは見知らぬ場所。

頭を右へと向ければ外の景色を映し出す窓。

左へと向ければ少し離れた位置にドア。体を見れば包帯が巻かれ、左腕には点滴用のチューブが輸液ポンプへとつながっていた。

医療機器、医療用のベッド…ここがどういう所かはナギサでも分かった。

 

「びょう…いん…。どうしてここに…?」

 

何故病院に居るのか思い出せない。

思い出そうとしても、何故か知ってはいけない気がしてならない。

どうしてだろうと首を傾げるナギサだったが、病室のドアが開く音に気付き顔をそちらへと向けた。

そこに立っていたのは一人の看護婦。起き上がって見つめてくるナギサの姿を見て看護婦はあり得ないと言わんばかりに目を見開いていた。

 

「ちょ、ちょっと待っててね!すぐ先生を呼んでくるから!」

 

看護婦はここに来て間もないのだろうか。或いはナギサが目を覚ました事により何か都合が悪いのか。

目を覚ましたナギサを見た瞬間、そう伝えてから狼狽した様子で看護婦は先生へと呼びに向かって行った。

再び部屋に一人残されたナギサであったが、何かをする訳でもなくベットに体を預けると看護婦が言っていた先生とやらが来るまで待つ事にした。

 

(ああ…そっか……)

 

ふとした瞬間で、彼女は全て思い出した。

 

 

看護婦が戻ってくると、隣には白衣を着た男が居た。

年齢は三十代辺り。手に指輪をはめている辺り、既婚者。

何らかの理由で怪我をし、病院に運ばれたナギサの治療に当たったのが彼であった。

ナギサに対して痛い所はない?や気分はどう?など優しく話しかけており、ナギサからしてもこの人は良いお医者さんという認識でいた。

病室で怪我の状態を医師が診てくれている中、ナギサは尋ねた。

 

「せんせい」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

「…お父さんとお母さんは…死んじゃったの…?」

 

「…!」

 

医師の手が止まる。

その表情はどこか後ろめたさを感じさせ、どう言えばいいのか分からないという顔だった。

それも無理もない。

十にも満たない少女に対してそうだよとそんな酷な事を言えるだろうか。

 

「…もうあえないの?」

 

「…」

 

答えない。

いや、答えられなかった。

適当な嘘を言って、その場を凌ぐ。その様な事をしようとは医師は微塵にも思っていない。

しかし現実を伝える勇気がない。言葉が出てこない。奥歯を噛みしめる医師。

 

「わたしね…みたの…」

 

「! 何をだい?」

 

「…お父さんとお母さんが…死んでる、ところを…」

 

「ッ…」

 

確かに見た。

二人が冷たくなって動かなくなっているのを。

確かに見た。

その体から流れる大量の血を。

理解したくなかった。だが理解してしまった。

それが死であるという事を。

幼き少女が負った傷は例え時間が経とうが癒える事はない。

 

「…もう…」

 

頬を伝う一筋の涙がシーツを濡らす。

まだまだ話したい事があった。まだまだ連れていって欲しい所があった。まだまだお菓子作りを教えて欲しかった。

何よりも─

 

「あえないんだよね…」

 

もっと一緒に居たかった。

ナギサの中でその想いが一番強く、医師もそれを感じ取る事が出来た。

自身は涙を流す少女の親ではない。

だがそれをただ見ている事は出来ず、医師はそっと涙を流すナギサを優しく抱きしめた。

白衣が濡れたとしても知った事ではない。

深い傷を負った少女が落ち着くまで、泣き疲れ再び眠りにつくまで医師は傍に居続けた。

 

 

ナギサが落ち着いたのは目覚めてから一時間が経過していた。

一人になりたいと医師にそう伝えた後、ナギサは顔を伏せたまま微動だにせずにいた。

しかしその胸の内では、ずっと何故両親が死ななくてはならなかったと言う疑問を延々と繰り返していた。

赤子だった時、そして学校に行く前の記憶はうろ覚えでしかない。

だがナギサには分かっていた。両親は決して何か悪い事した訳ではない、と。

夢を叶え、普通に暮らしていた筈だ。

だというのに何故死ななくてならない?二人が何か悪さをした訳ではないというのに。

 

―どうして…?─

 

理不尽によって奪われた命。

理不尽が当たり前と誰かに言われたとしてもナギサは納得しない。

それ故か、彼女の中では轟々と何か…炎の様な物が燃え盛っていた。

奪われた痛み、失った辛さと悲しみが入り混じった炎はさらに大きくなっていく。

 

─……さない…─

 

その感情は決して八歳の少女が持つにはあまりにも早すぎる代物。

 

─…るさない…─

 

だがそれを与えたのは、神でもあり、この世。

故に彼女の人生は決まってしまう。

普通とは違う運命を辿るという事に。

 

─許さない…─

 

誰にも気付かれる事無く。

地獄の炎の如く燃え盛る炎はシーナ・ナギサという復讐者を作り上げ始めた。




今回短いですが…ご容赦を。

では次回ノシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。