Devils front line   作:白黒モンブラン

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─復讐に囚われた私は知っている─

─復讐には痛みと苦しみが常に伴うことを─


Act200 February 14th Revenge 8

屋敷内のそこら辺から銃声が響く。

また一人、また一人とギャング組織の構成員が倒れ、戦術人形がダミーと連携して攻撃を仕掛ける。

戦況はグリフィン側に傾いてるもギャング組織は決して戦意喪失などしない。それどころか強力な重火器を持ち出して反撃する姿を見受けられていた。

まだまだ油断できない戦場。そんな中にMP5を手に敵と激しい銃撃戦を繰り広げるナギサの姿があった。

 

「!」

 

神経は最大にまで尖らせている影響か。或いは復讐の炎が影響しているのか。

MP5を三点バーストにした状態で撃ち続ける彼女の表情に焦りは見られない。

それどころか銃弾が頬を掠っても、表情を歪ませる事すらない。人を殺した時も同じ表情。

淡々と撃ち、淡々と殺す様に敵は恐怖を覚える。

 

「あ、あいつも人形か…!?」

 

「な訳ねぇだろ!!とりまきみてぇのが居ねぇだろうが!!」

 

そう言うもその声は震えていた。

いつ自分が標的になるのか、見えもしない結末に体が震えてしまう。

その恐れが油断となってマグナムを手にしていた男の頭に銃弾が直撃。開いた穴から血が噴き出し、男が後ろへと倒れると周囲の者達がどよめく。

グループ内でいうリーダー的な存在だったのだろう。それを失ったせいか戦意喪失…

 

「このガキがッ!!仲間を殺しやがってッ!!」

 

ではなく、怒りを露わに男達はより一層激しくナギサへと銃を連射した。

誰であろうと仲間がやられたら憤るのは当然の事。

だがその台詞がナギサの怒りを更に増幅させる要因となった。

何も関係ない、ただ普通に生きていた人の人生を滅茶苦茶にしておきながら、のうのうと生きていた奴が死んで、何故その同類が怒りを覚えるのかが分からなかった。

 

「奪っておきながら何をッ…!!」

 

そして何よりもそれが許せなかった。

怒気を交えながら呟き、ナギサはMP5に新たな弾倉を差し込むと身を隠していた壁から飛び出した。

駆け出しながらMP5をフルオートで連射し弾幕を形成。敵との距離を縮めていく。

鬼気迫るその姿に敵はついたじろぎ、その隙を見逃さなかった彼女は地面を蹴り勢い良くサブマシンガンを持っていた男の顔に膝蹴りを叩きこんだ。

 

「がッ…!」

 

強烈な一撃を受け、ゆっくりと倒れる敵。

その隙にナギサは手に持っていたMP5を銃を向けようしてくる近場の敵に向かって投げ飛ばした。

投擲されたMP5が顔面に直撃するが、その直後銃の引き金が引かれる。

しかし吐き出された弾丸は濡鳥の様な黒髪を掠ったのみで終わり、ナギサは素早くホルスターに収めてあったM92Fを引き抜き、お返しと言わんばかりに撃ってきた敵へと連射し確実に息の根を止めた。

だがまだ終わっていない。

後方から伝わる殺気に素早く反応し、振り向いたと同時に不意を打とうした敵に向けて三発発射。

弾丸が胴体に直撃し相手が倒れるのを確認するとナギサは足元の鼻から血を流す敵へと銃口を突き付ける。

 

「ま、待った!待ってくれ!!降参する!!だから命だけは…!」

 

仲間をやられた事に男は両手を上げ降参の意を示した。

 

「お断りよ」

 

敵の降参など聞くつもりなどない。

無慈悲に告げられた言葉と共に銃の引き金に指がかけられた。

だが男は命欲しさか、ある事を提案した。

 

「ボ、ボスの場所を教える!あんたの狙いはボスなんだろ!?どこに居るか知ってる!!だから撃たないでくれ!!」

 

その提案にナギサは引き金を引こうとしていた指を止めた。

確かにボスであるG.Sはこの屋敷にいる。だがどこの部屋に居るかは分かっていない。

手当たり次第部屋を当たる気でいたのだが、それでは弾の無駄遣いになる事も理解していた。

 

「…良いよ。()()()()()()()()()()

 

ボスの居場所を知れるのであれば良い。

突き付けられていた銃が離れると男は少し安心した様に話し出した。

 

「多分ボスは三階にある奥の部屋だ。階段上がった廊下の先にある」

 

「そこにはボス以外にサウロウもガルドもいるの?」

 

「ふ、二人か?それは分からねぇ…」

 

サウロウとガルドの居場所が分からなかった事に関しては落胆しつつもG.Sの居場所だけでも知れたことにナギサは内心喜んだ。

そのまま約束通り見逃してくれると思ったのか男は安堵の息を漏らすが、何故かナギサは銃口を突き付け引き金を指をかけていた。

 

「お、おい!?話がちげぇじゃねぇか!!?ボスの居場所は話しただろッ!!?」

 

「…今は撃たないといっただけよ。話した後は誰も撃たないとも言っていないし殺さないとも言っていない」

 

最初から生かして返す気などない。

だから言ったのだ。()()()()()()、と。

そして相手は全てを話した。ボスの居場所が分かった以上、この男は要済み。

生かす理由などなかった。

 

「情報ありがとう。そしてさようなら」

 

「ま、まっ─」

 

発砲。

鉛玉が男の頭に風穴が開き、命乞いの声はピタリと止んだ。

死体へと化したそれを冷たい瞳で見つめながらも、興味が失せた様に彼女は先程投げ飛ばしたMP5を回収し、ショルダーバックから新たな弾倉を取り出し装填すると先へと歩き出した。

 

「三階…出来ればグリフィンと鉢合わせしないように気を付けないとね」

 

敵対するつもりなどない。

だが自身がしている事を向こうが知ったらと止めに来るだろうと彼女は思った。

出来るだけ鉢合わせしないにしなくてはならない。

それを再認識した上でナギサは階段を上がり始める。

二階を超え、そのまま三階に到達した時だった。別の階段から誰かが上がってくるのも視界の端で捉え、素早くナギサは近くの壁に身を寄せ、そっと覗き込んだ。

 

「イイ女だと思ったらにニセモノかよぉ~…でも楽しめそうだなぁ。そう思わねぇか、サウロウ?」

 

「本物の女どころか人形の…ダミーか?それ。それすら抱く気か、ガルド?」

 

「ぐひひひ…使える穴もあるし、胸もあるしなぁ……早くおっぱじめたいぜぇ」

 

「…はぁっ、お前のそういう所は分かんねぇよ。無表情なのを見てもなんも面白くねぇ」

 

巨漢な男が抱えた人形のダミーをなめ回す様に見つめる傍らでナイフを手にした細身の男が気持ち悪そうにその様を見ていた。

サウロウ・ハウンセン、ガルド・メイカー…ナギサの家族を殺した三人の内の二人がゆっくりと向かってきていた。

 

「…見つけた」

 

手にしていたMP5をショルダーバックにしまい、そこから彼女はイサカM37とスタングレネードを取り出した。二人がすぐそこまで近寄ってきていることを確認し、スタングレネードを投擲した直後に耳を塞いだ。

 

「!!?」

 

「…!?」

 

二人は待ち伏せされていた事を察するもすでに遅く、投げ入れられたスタングレネードが炸裂。

強烈な閃光と劈く様な爆発音が視界と聴覚を奪うと二人の断末魔が広がった。

手にした銃もナイフもダミーをその手から離れた直後、散弾を装填したイサカM37を構えたナギサが飛び出す。

 

「くそったれが!!くそっ!!くそっ!!」

 

「目が!目が!目がああああっ!!!」

 

転げまわるサウロウとガルド。

その様は何とも哀れとしか言えず、近寄ったナギサが二人を見つめる目は冷たい。

さっきまでの余裕のある態度はどこへ消えたのか。

 

「どうせ耳もやられているのでしょうから聞こえないよね…」

 

そう言って彼女はサウロウの体を勢い良く踏みつけ押さえつけるとショットガンの銃口を突き付けた。

 

「六年分の恨みを込めた銃弾…。有難く受け取りなさい」

 

それがサウロウへ向ける最後の言葉であった。

引かれる引き金。銃声と共に近距離で放たれた散弾がサウロウの顔面を吹き飛ばした。

飛び散る肉片と血。頬に付着した血を拭う事はせず、フォアエンドをスライドし排莢すると動かなくなったサウロウからガルドへと視線を向ける。

その方へ歩み寄りながらナギサはイサカM37を左手に持ち、右手でマテバを引き抜いた。

サウロウが殺された事は知る訳もなく、のたうち回るガルド。

そしてナギサはマテバを構えるが、体ではなく─

 

「これはお母さんの…そしてお前に酷い目に遭わされた彼女達の痛みよ」

 

あろう事か男の一番大事と言える所へと目掛けて銃弾を叩きつけた。

そんな所を撃たれてしまえば、たまったものではない。醜い豚の言葉にならない叫び声が高らかに響く。

 

「うるさい」

 

今度は胴体に目掛けて残りの五発を全弾叩き込んだ。

脂肪が多いからか、ガルドはまだ息をしていた。とは言えほぼ死に掛けだった。

弾倉に新たな銃弾を装填すると再びガルドへと連射。

この時ガルドは死んだのだがそれにも関わらず死体にナギサは執拗なまでに銃弾を叩きつけた。

家族を殺され、母親に限ってはこの男に犯された後に殺害された。

冷たくなった夫の前にしながら母を生き地獄を味わされたのだ。

ナギサとしてはこれぐらいしなくては気が済まなかった。

 

「…」

 

六発撃ち切ると彼女は弾倉を取り出し薬莢を捨て、新たに銃弾を装填。

弾倉を元の位置に戻し、そのままマテバをホルスターへ収めた。

目を反らしたくなる程、無惨な姿になった二人に背を向けるとナギサはG.Sのいる部屋へと歩き出した。

銃声が鳴り止む事を知らないこの屋敷で一歩ずつ着実に彼女は部屋へと近寄って行く。

そして扉の前に来ると、中から男の声がナギサの耳に届いた。

 

「サウロウ!ガルド!返事しろ!おい!!?聞いてんのか!?」

 

死んだ事は知らずに叫ぶ男の声。

その声にナギサは確信する。

声の主は間違いなくG.Sだと。

 

「…ふぅ…」

 

軽く息を吐き、己を落ち着かせる。

手に握った銃は冷たくも彼女に力を与える。

G.Sを殺した所で復讐は終わっていない。寧ろ始まったばかり。

ドアノブに手を掛け捻る。開いた扉の先へナギサは足を踏み入れる。

その体に修羅を宿らせながら。

 

「ッ!!」

 

G.Sだと思われる男が部屋に入ってきたナギサに気付くと素早く振り向きながら銃を構えようとする。

だがナギサの方が早かったのか、ホルスターから抜き放たれたマテバがG.Sが握っていた銃を撃ち飛ばし、そのまま彼の片足と両肩に銃弾が叩き込まれた。

襲った激痛に地面に倒れるG.S。その隙に接近したナギサは撃たれた箇所を踏みしめながらマテバの銃口をG.Sを向ける。

襲う激痛に顔面を歪ませるG.Sにナギサは告げる。

 

「…おしゃべりしましょうか」

 

ただ雇い主を知る為、彼女は問う。

今に至る原因となったあの日。それを知る者へと。

 

「…六年前の二月十四日。とあるカフェを営む夫妻が惨殺され、暮らしていた家が放火された事件。その事は覚えてる?」

 

「知る訳ねぇだろッ!!」

 

「…」

 

まだ自分は命令できる立場にあると勘違いしているのか、苦痛に満ちた表情を浮かべながらもG.Sは反抗的な態度を取っていた

グリフィンがいつこの部屋に飛び込んできてもおかしくない今、時間をかける訳にはいかない。なるべく早めに終わらせる為にかナギサは、G.Sの片足へと目掛けて発砲した。

開けられた穴に断末魔をあげそうになるG.S。しかしそれすらも許さんとばかりにナギサは更に強く撃たれた箇所を踏みしめる。

 

「よく聞きなさい、親玉さん。貴方達が誰かに命令されてそのカフェの夫妻を殺した事は分かっているの。私が知りたいのは雇い主。話すのであれば撃たない。反抗するなら何発か撃ち込む。さ、どうする?」

 

協力者の情報もあって、ナギサはG.Sがどういう奴かは理解していた。

クスリのし過ぎで少しばかり度胸がなく、常に苛立っている。憂さ晴らしに十代ぐらいのコールガールを呼んでは憂さを晴らしているという。

ともあれG.Sが自信にありふれた奴であればどんなに銃弾を叩きつけた所で吐きはしない。

しかしナギサの目の前に居る男は違う。息を荒くし、どちらかというと怯えていた。

 

「…」

 

引き金に指をかけられ、無言の圧がG.Sに襲い掛かる。

そして己の保身の為か、彼は大きな声で言った。

 

「分かった!分かった!教える!!その事なら覚えてる!店を襲った事も全部!!」

 

「じゃあ誰が貴方達に金を出したの?」

 

「カデーノだ!カデーノ・ババラって女だ!!そいつが俺達に頼んで来たんだ!!その店に居るガキを攫えって!今日も話があるってあいつが働いている学校で落ち合う予定だったんだ!!」

 

「成程…」

 

G.Sが吐いた雇い主の名を知った時、不思議とナギサは驚きはしなかった。

むしろカデーノのが雇い主だった事よりも、自分が狙われていた事に驚きを覚えていた。

そして思った。

自身が生まれなければ、両親が死ぬ事などなかったのかも知れない、と。

 

「名前も場所も教えただろう!?だからもう撃つな!」

 

「ええ、そうね。約束通り撃たない」

 

足を退け、彼女はそっとコートの懐からあるものを取り出した。

撃たれた事によりその痛みに悶えるG.Sを少し間見つめると、彼女は手にしていたものをG.Sの傍へと転がした。

それは安全装置が外された手榴弾。しかし痛みに悶えるG.Sはそれには気付かない。

ゆっくりと閉じられる扉。扉に背を向けて歩き出すナギサ。

 

「…これなら撃った事にはならないでしょ」

 

撃たないとは言ったが、誰も殺さないとは言っていない。

扉の向こうから聞こえた爆発音を背に彼女はその場から去っていった。

 

 

屋敷があった方向から未だに銃声が響く中、屋敷を出た私は町の中を歩いていた。

黒く淀んだ雪の上を歩きながら、考える。

全ては私が生まれてきた事が原因だった。私が生まれたからこそ、両親は死ななくてはならなかったのだ。

卑屈な考えかも知れないが、この寒い中で歩いていると思考はそれに染まり、同時に私は両親と共に死なせてくれなかったこの世界を恨む事にした。

 

「懐かしいなぁ…」

 

かつて何度も歩いた通学路。その思い出を辿る様に私が学校へと目指す。

全ての原因は私にある。しかしだからといって復讐を止めるという考えはない。

もう足を踏み入れてしまったのだ。今更後戻りはできない。

 

「…」

 

学校にたどり着いた時は、部屋には灯りが灯っている筈がなかった。

しかしカデーノ・ババラはここにいる。

G,Sが苦し紛れにいった嘘という可能性もあっただろう。だが私の勘は告げていた。

あの女はここにいる、と。

正門をよじ登り校庭に侵入する。

この時間帯は校内に入るドアは全て施錠されている。

しかし老朽化により施錠が出来ない扉が一つだけある。

私の記憶が正しければ、西側の入り口からすこし離れた場所にその扉がある。

そこが修理されていない事を願いながら、校庭を抜けていく。

西側の入り口前を通り過ぎ、立ち入り禁止と綴られた黄色のテープを跨ぎ例の扉の前に到達する。

嬉しい事に修理はまだされていない様子だった。ドアノブを握り、そのまま内部へと侵入する。

校内はとても暗く、見通しが悪い上に窓の僅かな隙間から入り込んでくる風が低く音を立てながら駆け巡っていっていた。

この学校の何処かに彼女…カデーノ・ババラという魔女がいる。

魔女狩りなどとうの昔の話だが、どうやらそのちょっとした再現を自身が担う形になりそうだ。

 

「さて…」

 

銃を片手に私は歩き出す。

魔女が身を潜めているであろう部屋を目指して。




(悪党が)目に入れば殺す。(悪党が)目に入らなくても殺すという状態のシーナ。
もうこの娘あれですわ、止まらないわ…

それと現在計画中のコラボ作戦ですが、一つ情報を上げると…シーナが大きく関係します。

では次回ノシ
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