まぁチマチマと頑張るとしましょう。
今回特殊タグというのはつかってみました。これ結構いいですね。
ではAct4人智を超えた力(下)、どうぞです。
「あは……あははっ…」
血に濡れた刀を持って私は嗤う。
漸くだ…漸く…皆の仇を討つ事が出来た。出来たはずなのに…。
どうしてだろう…
「何で…涙が流れるのかしら…」
頬を伝う疑似冷却液。
仇を討った。ここに放り込まれて、ずっとその事だけを考えてきた。
何時か訪れる機会を待ち続けて…待ち続けて……なのに何故…?
『あーあ…やってしまったか』
「ッ!」
この部屋に取り付けられているスピーカーから聞こえた声。あの忌々しいあの男の声。
間違いなく私がこの手で討ったはずなのに何故イキテイル!?ドウシテ!?
『私が何故生きている事に驚いている様だな?だが私は今ここで生きているさ』
『最も貴様が…殺す相手を間違えただけの話だがな?なぁ、95式』
「え…」
そう言われて、頭の中がクリアになる。
思えば何もかも不自然なのだ。あの男が何故一人で入ってきたのか?本来であればあの男が一人で入ってくる事なんてない。今の様にマイク越しで語りかけてくる筈…。
じゃあ…今私が刺した人はダレナノ…?
何もかもが冷える感覚が襲う。恐る恐る私は、倒れている人へと顔を向ける。
黒いコートに銀髪の男性。そして彼の周りに血が広がっている。
「あぁ…あぁぁぁ…!」
理解なんてしたくない。
自分が何をしてしまったのか。でも理解してしまった。
そしてその思いは叫びへと変わってしまった。
「あああああああああああああぁぁぁぁッ!!!!!!!」
『ハハハハハッ!!!!良いザマだ!よもやここまで上手く行くとはな!』
あの男が何か言っている。しかしそれは聞こえない。
頭の中はぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくて、数分前の自分を壊したくなる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…あぁぁ…っ」
殺してしまった彼へと謝罪の言葉を只々述べるしかなかった。
いくら謝ろうとも死んでしまった男性は起きる事はない。謝罪の言葉が届く事もない。どうすれば彼に許しを請う事が出来るか。否、許しなんて与えられる訳がない。肩を抱きしめ、震えて…どうしたらいいのか分からない。
『いくら人形と言えど、精神的なものは存在する…。いやはや、良い余興だったよ』
嘲笑うかの様な声。
今の今まで私はずっと男の手の平で踊らされていただけ。何もかも奴に筒抜けだった。
絶望が襲い掛かる。あまりにも大きて、抗うことすら出来ない絶望が。
もう…楽になりたい。なって何もかも忘れたい。この現実の中で生きていくのが辛い。
『扉は開いてしまったが…行くなら行けばいいさ。但し、ここの人形は全員強いぞ?あの時…お前が居た基地の全員をあっけなく殺して、破壊できる位にな?まぁ…今の状態で行ける筈もないがな。』
大事な妹、大事な指揮官、大事な仲間…全て奪われ…仇を討つ事さえできなくなった。
今の私に残るものなんて何一つない。もう何も残っていない…。
『さて…。私は他の客人の相手でもしてくるとしよう。ではな?95式』
それを最後に奴の声は聞こえなくなった。
絶望に打ちひしがれて…殺してしまった男性のホルスターに収まっていたリボルバーを手に取る。
撃鉄を起こし、銃口を自分の顎下に向ける。幾ら人形でも至近距離から大口径の一撃を喰らえば一瞬で機能停止する。
「97式…指揮官…皆……ごめんなさい…」
謝罪の言葉を口にする。
これでやっと…楽になれる。
目を閉じて、ゆっくりと引き金を……
「成程。全てはあいつが原因だったという訳か」
…引く事は出来なかった。
誰かに銃を奪われ、伏せていた目を開く。
そして私は自分の目を疑った。何故…どうして…?どうなっているの…?
「まさか刺されるとはな…。まぁ大した問題にもならんが」
死んだ筈の黒いコートの男性がまるで刺された事なんてなかったかの様に平然とした様子で居た。
その様子を見て、つい疑問を口にする。恐らく何度も言われたであろう言葉を。
「貴方は…何者なのですか…?」
「まぁ…その言葉が出ても可笑しくもないか…」
彼は血が付いた刀を手に取り、血を振り落として鞘にへと納める。
そして彼は言った。私の目を見て、はっきりと。
「悪魔。…最も心は人間のままのだが」
自ら命を絶とうした戦術人形…95式と名乗った彼女は未だに信じられないと言った表情を浮かべ、こちらを見てくる。確かにこの世の中に「悪魔」という存在は迷信、本の中の存在くらいにしか思われていないのだろう。そう考えるとその表情は当たり前というか、正しいといった方だろう。だが今はその事に関して質疑応答をしている暇なんてない。ここの主に…名前は知らないが色々聞きたい事が出来たからな…。
「さて…これからどうする気だ?」
「え…」
「え、ではない。このままずっと寂しく機能停止を選ぶか、あるいはここから出る事を目的とし、生きる事を選択するか…どちらかを選べ」
あの強い怒りはここの主に向けられたもの。
そして計画は失敗し、彼女は絶望に打ちひしがれていた。確かにここにいる人形は他と比べ物にならない位強化が施されている。死んだふりをしたまま聞いていたが、95式が所属した基地を襲撃して容易く壊滅に陥れたのだから。絶望するのも無理もない話だろう……だが、それではダメなのだ。
諦めたまま終わりなんて言うのは、彼女は望まない筈。それに彼女を残して逝った基地の人たちも願っている筈だろう。生きてほしい、と。
「私は……」
「…」
95式の体が小さく震える。
その姿は…かつての自分に似ていた。
大事な者を失い、何も出来ず…只々縮こまって震えたあの日。
心に大きな穴が空いた損失感を覚えながらも逃げて…そして…。
……その痛みも、その辛さも、その悲しさも知っている。でもそれをここで話せば彼女の身にならない。
どんなに辛かろうと自ずから前を向く強さも必要なのだから…。
「…生きたい。いえ…生きなくてならないんです…」
顔をあげて彼女はそう口にした。少し震えているが…それでも彼女はまだ諦めていない。
正直不安だったが……「今」は何とか問題なさそうか…。
「そうか…。なら行こうか」
「はい…!」
後は416と合流して…ここを脱出か。
その前にここの主と対面と言った所だな……。自身が被害を被った訳でないが…。
それなりの報いは受けてもらうとしよう。
95式を連れて416達と合流。
合流した当初は傷に言及されたが、何でもないと答えてはぐらかす。416はどうも納得いかない様子だったが、404小隊の隊長 UMP45が脱出が優先を提言した為何とかやり過ごす事が出来た。そのまま地上へと向かう事になるのだが、流石はプロと言った所だろうか。小隊規模となれば動きが全く違う。基本一人で動く事が多いのでこの手のは目にするのは初めてだ。
「前方…クリア」
「後方…クリア。敵の姿なし」
「了解。このまま前進。警戒を怠らないで」
順調に地上へと向かうものの…敵の姿が見えない。やはりここの主はどこかに戦力を隠していると見ていいだろう。しかし何故今ここで戦力と投入しないのか、そこが気掛かりだ。少しでも戦意を削る等…そういった事も出来ない訳ではないだろうに…。余程自分で手を加えた人形に自信があるのだろう…。しかし何故そうでまでして襲撃する必要がある?単純にイかれているのか、あるいはグリフィンの戦術人形に対し強い怒り、恨みを持っているのか…どちらにせよ本人聞かなくては分からない話か。
―人間ってのは何時も過ちを犯す…それは何時の時代でも変わらないようだな…。
蒼…。
―分かっている。お前の事は信用してる。だが忘れるなよ?心ってのは脆いものだ。強く保たないと簡単に崩れる。…お前も一度経験しただろう?
あぁ…。まだ悪魔になって間もない頃に、な…。あの時は迷惑をかけた。
―気にするなよ。俺が持つ力は強大だ。正直な事言えば、あの時の蘇生に不安がなかったと言えば嘘になる。上手く行ったとしても力を制御出来るかとな。…そしてその不安は現実となった。
…
―お前は…復讐をしたんだ。力の暴走で派手に暴れまわり、そして仇を討った。同時に更なる力を求めようとしていた。そうなった時、俺は思ったよ。このままでは不味いとな…そしてお前を殺そうとも思った。だが…それも気鬱に済んで安堵したさ…。
あの時……薄っすら聞こえたんだ。「あいつ」と「あの人」の声がな…。理性を失いかけ、心すら失いそうになった時…自分が暗闇に落ちそうになった時…二人が手を引いてくれたんだ…。
―悪魔としてではなく…心を人間として確立させる為、二人がお前を導いた…いや、願ったんだろう。お前の事をずっと見ていたから…。
そうだな…。今でも思うよ…二人が俺を助けてくれた。後は俺自身の問題だった。心を飲まれない様に足掻く事を選んだ。そして…
―お前は悪魔として、心を人間として。矛盾した存在として確立する事が出来た。その後は…
今に至る訳だがな。
「地上よ」
蒼と内心話していた事もあり、UMP45の一声もあり気付けば地上へと到達。風は吹いておらず相変わらず不気味の雰囲気を醸し出している。先程倒した人形の亡骸も無数に転がっており、状態はあのままの様子だった。だが…ここであの男が簡単に逃がす事などする筈がない。どこから隠れていたのか、あるいはわざわざお見送りする為に待っていてくれたのか、無数の人形と高台からこちらを見下げる白衣の男がいた。やはりと言うか…予想通りというべきか。戦力を隠し持っていたか。恐らくこれが此処にいる全戦力を言っていいだろう。
「やっぱりね。そう簡単に逃がす訳ないか…」
「みたいだね…。それにこんなにも」
「罠…だったのかな」
「あの男……!」
それぞれが今の現状を口にする中で、隣に立つ416だけが無言を貫いていた。
一度弾倉を取り出して装填されている弾数を確認した後、こちらを見つめてきた。決して諦めないという目…だが表情は何処か不安げと言っていいだろう。そして彼女は一つ息を吐くと、言葉を口にする。
「貴方なら…こんなの大した戦力にはならないよね?」
もしここでそれを否定する様な言葉を言えば彼女を不安にさせてしまう事は考えなくても分かる。
だがこういう時…どんな事を言ってあげればいいのか分からない自分が居る。
言葉に困っていると、彼女はそっと微笑んだ。もしかすれば思ったのかもしれない…いくら自分でもこれは難しいと…。勘違いされたままなのは嫌なので、手を伸ばし416の頭の上に置く。そして口を開こうとした時、白衣の男が喋りだした。
「ようこそ。君たちの墓標となる場所へ」
「貴方が……皆をッ!」
男を見るな否や、95式が手にしているアサルトライフルを発砲。
しかし弾は男の手前で何かによって止まってしまう。…良く見るとあれば防弾ガラスか。何とまぁ用意周到だな。
まぁそんな事をしていても可笑しい話ではない。高台に立っている時点で狙って下さいと言っている様なものだ。動く気配もないのだから、防弾ガラスを用意していても不思議ではない。
「おぉ…怖い怖い。何も出来ずにいたお前が威勢良くなったものだな?」
「黙りなさいッ!!全ては貴方から始まった…!貴方が大事な者を何もかも奪った!」
「あぁ、奪ってやったとも。だがそれの何が悪い?そもそもの話……そんなに奪われるのが嫌なら死ぬ気で守れば良い話だろう?それが出来ずにいるという事はお前にとってはどうでも良い者だったのだな」
「違うッ!!」
再度狙いを付けようとする95式に黙っていたUMP45が彼女の前に一歩出て射線を遮る。
金色の双眸は男を捉えて、その表情からは何を考えているのか分からない。
対する男は彼女は興味深く、舐めまわすかの様に見つめて口角を吊り上げる。下ろしていた髪をかき上げて気持ちの悪い笑みを浮かべている。そこには何やら狂気の様なものでさえ感じ取れる。
「成程…。君が404小隊のUMP45か。潜入と情報…そう言った類には強いみたいだな。だが今は君たちの事なんてどうでもいい。気になるのは…」
「…」
「君だよ。黒いコートの君」
男の視線がこちらを捉える。それに対し睨み返す。
「私と同じ人間…だが何かが違う。私自ら施した強化人形兵を圧倒、そして刺されて大量に出血したにも関わらず平然と生きている異常性…。非科学的過ぎる……。君は一体何者だ?」
「気になるのであれば近づいて調べればいいだろう」
「そうしたいのは山々なんだがね…こちらも我が身可愛さにここから降りたくないものでね。だから君以外を破壊した後、君を生きたまま解剖して調べるとしよう」
そう言いながら男は指を鳴らした。
彼が立つ高台の周りに現れるは何かの装置らしきもの。何の用途に使用されるのか想像すらつかない。
だがそれはすぐに明らかになる。
「う…あぁ……頭が…!」
「な、何これ…頭が割れそうになる…!」
「うぅ……気持ち悪い…!」
「これは…何、なの…」
「ダメ…頭が…」
頭を抱えてうずくまり苦しむ404小隊のメンバーと95式。一体何が起きている…!?
―ギルヴァ!周りを見てみろ!こいつらと同じように頭を抱えてうずくまってる!
「!?」
蒼に言われた通りに周りを見渡すと、あの無数の人形が全員頭を抱えてうずくまっている。
その瞬間…うずくまっていた敵の一人の頭が
「ッ!?」
―なっ…!?
首から大量の疑似血液を流し、それは倒れる。
また一人、また一人と敵の頭が爆発し、血が流れる。
余りにもおぞましい光景がそこに広がり、自分も蒼も言葉を失っていた。
「ははははははっ!どうだ!私が作った人形だけを殺す兵器の威力はッ!人形がもがき苦しみ死ぬ様は実に美しいッ!これが見たいが為に作った甲斐があったというものだ!はは…ははははははっ!」
「下衆が…!」
「何とでも言えば良い!さぁ!共に見届けようではないか!何も出来ず!もがき!苦しみ!死んでいく!君と共に戦った人形の最期をなぁッ!!」
その時だった。
「ギ…ルヴァ……た、す…けて…」
416が苦しみながらも助けを乞う姿を見た瞬間。
自分の中で何かが切れた。
「っ!?」
腹を抱えて笑っていた男は驚愕していた。
自分が作った兵器が突如として黒い煙を上げて壊れたのだから。
何が起きたのか分からず、彼はギルヴァを睨む。そして男は全身から冷や汗を流す。
彼から放たれる濃密な殺気。呼吸すら出来なくなる程の殺気が全てを包み込む。
「何者かと言っていたな…?」
ノイズが掛かったかのようにギルヴァの声が響く。
体から青い光が溢れ出し、彼を包もうとしていく。
「ならば教えてやる…」
そして彼は…
「悪魔の力をな…」
己に存在する内なる「魔」の力に引き金を引いた。
という訳で次回は魔の力に引き金を引きます。
え…全然暴れてなくね?…次回で暴れるから許して…(´・ω・`)
では次回お会いしましょうノシ