Devils front line   作:白黒モンブラン

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冷たい中でも──

喜びはあった──


Act203 February 14th Revenge 11

亡霊と狂信者が集う廃れた遊園地は、数年前までは大人気スポットとして有名な場所であった。

しかし営業成績不振により遊園地は閉園。

解体には莫大な費用が掛かり、その目途が立つ事もなく、かつて人気だった遊園地は錆と埃、そして不気味さが蔓延する幽霊スポットへと化していた。

それから数年間、人が訪れたという経歴はないが何時の間にかここはカルト教団の巣になっていた。

何を目的にしているかは知る気など一切なかったが、ヴェルデは知っていた。

選ばれた者こそ楽園に向かう事が出来る、故に我々は選定者としてこの世界で生きる全ての人間を選定し楽園に導くとのことを目的としているらしい。

 

「楽園に導くための選定、ねぇ…」

 

「元々は全員普通の人達だったのさ。けど誰かにそそのかされたのか、まともな思考が出来なくなってしまった。自分達は正しく導かれた存在…つまり神の使者だと思い込んでじゃっているのさ」

 

「そう。でもどうでもいい。相手が何だろうが知った事じゃない。向かってくるのであれば殺すだけ」

 

道路を駆け抜ける車内の助手席でナギサはいそいそと戦闘準備をしていた。

それぞれの銃に弾倉を差し込み終えた後、M37に散弾を装填するとフォアエンドを動かす。

M37を構える彼女の瞳には光が宿っておらず、纏う雰囲気ももはや少女が持つものではない。

人ではない何かを宿したそれにヴェルデは息を呑むも何とか気を取り直して、ナギサへと話しかける。

 

「ところで気にならないかい?何でカルト教団がマルセルの商品の管理をしているのかを」

 

「言われてみたらそうね。どうして奴らが?」

 

「マルセルが教団に武器、資金提供してるのさ。同時に権力で警察を抱き込み、奴らの存在やその行いを隠蔽。そして良い人材が居たら許可さえ得れば自分達のお仲間に出来るようにした。…まぁマルセルが生きている以上はカルト教団は好き勝手出来るという事さ」

 

「…そんなカルト教団は壊滅させても?」

 

「構わないよ。どうせ誰も困りはしない」

 

「それなら良かった」

 

しばらくしてから車は、カルト教団が拠点として利用している遊園地の駐車場で停車。

雪降る遊園地。しかし看板は色褪せ破損。入場門は風に煽られて開いたり閉じたりを繰り返すばかり。

錆だけに覆われたその遊園地にかつて存在していた煌びやかで華やかな姿は消え失せていた。

閉園からずっと時が止まったまま。言うなれば死んでいた。

車から外へと出る二人。ナギサが銃を携えたまま古びた遊園地を眺めている間、ヴェルデは車のトランクから持ち込んできた装備を取り出していた。

タクティカルベストを身に付け、一丁のライフル…スコープとサプレッサーを装備したL96A1に弾倉を差し込み槓桿を操作し薬室に弾丸を装填。そしてホルスターにグロック18cを収めるとトランクを閉じヴェルデはナギサの隣に並び立つ。

 

「昔遊びに来た事あったけど思えば随分と大きい遊園地ね。そう言えばここってホテルとかあった気が」

 

「あるね。そしてカルト教団の巣はそのホテルであり、同時に囚われている者達が居る」

 

「…敵の数は?」

 

「武装した元一般人が沢山。僕は遠くからこいつで君を援護する。あとこれも渡しておくね」

 

ヴェルデから渡された小型通信機を受け取り、それを耳に付けるナギサ。

準備は整った。

亡霊と狂信者たちが跋扈する庭園へと二人は足を進める。

そして数分後にはかつての賑やかよろしく、銃撃戦が幕を開いた。

 

 

吹雪、鉄が軋む音、銃声、爆発音、断末魔。

雑音に雑音を混ぜ込んだそれ。

もはやそこがかつては遊園地だったと思う事が出来ない程、熾烈な戦場へと姿を変えていた。

 

「神はお前を見捨てたぞ!」

 

「我々には神がついているのだ!」

 

(神ね…)

 

銃撃から身を隠しながら、冷静に一発一発丁寧に散弾をM37へと装填していくナギサは信者が言う神という言葉に内心で呟いた。

確かに神とやら自身を見捨てた。これまで人の命を奪ってきた奴に神が見ててくれている筈がない。

そんな事はナギサはとうに分かっている。その手で初めて人を殺した時から。

 

「この世界が滅茶苦茶になっているというのに、何もしない奴が神って言える?」

 

身を隠していた場所から体を出し、ナギサは散弾をばら撒きながら信者に問う。

当然ながら銃声でその声は聞こえない。

そして彼女はその答えを聞かない。

銃声が闇の中を駆け抜け、吐き出される散弾が信者の体を切り裂き死へと追いやる。

そして遠方から飛んでくる一発の弾丸が信者の頭を貫く。

無論それは遠方から狙撃支援を行っているヴェルデによるもの。

暗闇と銃声。その中から静かに迫る銃弾は信者たちを一人、また一人と屠っていく。

 

『ホテル側から五人。その後方から武装したトラックが一台』

 

ヴェルデからの通信にナギサは身を隠していた場所からそっと頭だけを出した。

奥には廃墟と化したホテル。まるで巣を守ろうとしている蜂の如く、武装した信者と武装したトラックが迫ってきていた。

それを確認するとナギサはショルダーバックから手榴弾を取り出し、ヴェルデへと伝える。

 

「車をお願い。五人は引き付けて手榴弾は吹っ飛ばす」

 

『了解』

 

敵が迫ってくる。

その後ろからはトラック。荷台を銃座として改造したものであった。

次の瞬間、遠方から飛んできた銃弾がトラックのタイヤを撃ち抜いた。

速度が出ていた為か、トラックはバランスを崩し横転。

 

「スナイパーだ!」

 

横転したトラックに気付いた信者が周りの仲間へと叫ぶ。

全員が狙撃されないように動き出そうとした瞬間、集団の中心に何かが飛来。

気付いた一人が視線をそれへと向ける。そこにあったのは既に安全ピンが引き抜かれた手榴弾だった。

 

「しゅり─」

 

それが手榴弾だと気付いた時、信者は周りに知らせようとするが時すでに遅し。

五人を巻き込む様に手榴弾が爆発し、全員が何が起きたのかと気付く間もなく吹き飛ばされていた。

吹き飛ばされ、地面を転がる信者たち。その中には辛うじて息をして居た者も居たが、歩み寄ってきたナギサによって頭を撃たれ絶命する。

先程の喧騒はどこへ行ったのか。辺りは吹雪だけが残っていた。

防衛ラインを下げたのか、或いは別の理由があるのか。

それを知る方法は今のナギサには無い。

そこに狙撃地点から移動したヴェルデが彼女の後ろから歩み寄る。

 

「守りを固めて、一気に僕らを叩く感じかな」

 

「でしょうね。このまま行けば終わりだろうけど…」

 

戦っている最中にナギサはあるものを見つけて、それへと視線を向ける。

突然の襲撃だった為か、信者たちはとある忘れ物をしていってしまっていた。

武装したトラックを一台だけしか保有していないわけがなく、カルト教団はこの園内各所に武器したトラックを配置していたのだ。

その一台を倉庫の傍らで停まっていたのをナギサは見つけていた。

 

「丁度良いオモチャがあったら使わない手はない。そう思わない?」

 

ヴェルデへと向けられる笑みは笑っているものの、その目こそは笑っていなかった。

この時ヴェルデはナギサが宿しているものが何なのかを理解した。

 

(修羅…)

 

復讐をその身に宿した少女。その復讐と同時に修羅を宿し始めている事にはヴェルデは気付いていた。

故に彼女に対する恐怖を覚えた。

学校で初めて会った時よりも、それが分かりやすくなっていたのだから。

 

「そうだね。どうせなら使ってみようか」

 

ナギサに対する恐怖心を何とか抑えつけながら、ヴェルデは頷き、ナギサと共にその武装したトラックの元へと歩み寄る。

建物の隣に止まっていたトラックはしっかりと整備はされており、ガソリンも満タン。

銃座には弾倉が取り外された軽機関銃が装備されている。

運転にヴェルデが乗り込み、ナギサが銃座へと向かう。

 

「どうだい?扱い方は分かるかな?」

 

「ええ。色んな軽機関銃を銃座に固定された状態で何度も撃ってきたから」

 

荷台の端に置かれてあった弾倉を手に取り、軽機関銃に装填し始めるナギサ。

そして奇しくもというべきか。

銃座に固定されていた軽機関銃はH&K MG4であった。

数年後ナギサはとある作戦にて同じ名を持つ戦術人形を救う事になるのだが、今の彼女がそれを知る筈もない。

エンジン音が響く。そしてお互いに視線を交差させるとヴェルデは車を走らせた。

冷たい雪の中を切り裂く様に車両は駆け抜けていく。だが車両は何故かホテル側へ向かわず、別の方向を走っていた。

しかしその事についてナギサは問わない。

それどころか何故そうするのか分かり切っている様な表情を見せていた。

 

『迂回して東門から仕掛ける。少しの間だけ観光でもしてのんびりしてて』

 

「周りを眺めていた所で何にも楽しくない」

 

『たしかに』

 

園内を駆け抜ける車両は柵を破り東門付近から突入。

当然ながらそこは敵で溢れている。突入してきた二人に気付き銃を構えようとするがそれよりも早く銃座にいたナギサがMG4の引き金を引いた。

銃口から無数に吐き出される弾丸がいともたやすく信者たちを蜂の巣へと変えていく。

反撃の暇を与えない。誰一人とて生かして帰さない。一人、また一人とまるで草を刈る様にナギサはMG4の引き金を引き続ける。

その表情は無表情に近い。G.Sの屋敷の時と同じ様に淡々と機械の様に人を殺すマシーンと化していた。

そして見事なドライブテクニックでホテルの周囲を駆け巡るヴェルデは敵から奪った自動小銃を片手に、ナギサと同じ様に銃撃を仕掛けていく。

 

『そろそろホテル入り口に着く!速度を落とすから荷台から飛び降りて裏口からホテル内に侵入して!僕とは一旦分かれて行動しよう!僕は敵の殲滅。君は人質の救出をお願い!』

 

「人質が居る場所は知っているの?!」

 

『シャーレイの調べだと人質は地下二階にいる!ただ気を付けて、ここと同じ様に中も奴らで一杯だろうから!』

 

「言われなくても!」

 

トラックが段々とこれまでにない程の敵が集結している正門近くまで来た時、ヴェルデは一瞬だけトラックのスピードを下げた。

それを見逃さなかったナギサは荷台から飛び降り、着地。そのまま裏口へと駆け出した。

 

 

裏口のドアは面白い位に簡単に開いた。

外の冷気が中にまで浸透しているのだろう。中も薄っすらとした灯りの中で冷気が漂っている。

外からは銃声が聞こえている中、私は地下へと繋がる階段を探しながら散弾を装填しようとショルダーバックに手を差し込んだ時、ある違和感を覚えた。

一度立ち止まり、大きめの木箱に身を寄せショルダーバックをのぞき込むと散弾を入れていた箱の中身が既に空っぽになっていた。

実の所、散弾はそう多く持ってきてはいない。空っぽになっていても可笑しくなかった。

M37の方にも散弾は残っていないので流石にこのまま持っていくわけには行かないが、同時に新たな武器が必要になる。

何かないかと周囲を見渡した時、私の目にあるものが映った。

 

「これは…」

 

偶然とでも言うべきか、私が身を隠す様に使っていた木箱は開けられており、その中には銃が収められていた。

大方マルセルから支給された武器なのだろう。

M37を木箱に立て掛けると木箱の中に収められてあった銃を手に取る。種別からしてアサルトライフル。

そして私はこの銃を知っている。叔父さんが言うのはこの銃にはコードネームが存在する。

それを聞いた時、私は純粋にかっこいいと思った事があって何度かこの銃を撃った事がある。

木箱から弾倉を取り出し差し込むと私はその銃に挨拶をした。

 

「暫く宜しくね、OTs-14(グローザ)

 

雪の代わりに響くは雷雨。

天候に関する事にはどうやら私は好かれているみたいらしい。

 

「さて…」

 

ここに何時敵が現れても可笑しくない。

駆け足で私は地下へと通ずる階段を探し始める。木箱があった物置部屋を抜け、そのまま別の部屋へ。

しかしそこにも階段らしきものはない。どこからか足音も聞こえるので信者たちが私を見つけて殺そうそているのだろう。

このまま居た所で敵に見つかるのがオチ。急いでその場から離れ、再び別の部屋へと移動。

そこは壊れた洗濯機やらが無数に並んだ部屋で、嬉しい事に地下へと繋がる階段が部屋の奥にあった。

迷う事無くそこへと向かい、ヴェルデが教えてくれた地下二階を目指す。

電力が通っているおかげで照明が灯っており、階段を踏み外す事無く降りていく。

小さくであるが銃声が聞こえる中、私は囚われた友人を助ける為、人質を助ける為に駆け出し、そのまま地下二階へと到達した。

ヴェルデが引きつけてくれているおかげか、警備を務めている信者はおらず、慌てて出ていったのか人質がいる部屋の鍵が机の上に置かれたままであった。

それを手に取り、私はこの地下にある扉の中で一番大きな扉がある場所へと向かい、その前で止まった。

 

「一人欠ける事無く全員居てよね…!」

 

そんな願いを口にしながら私は鍵穴に鍵を差し込み、捻る。

鍵が開く音を耳にすると私は力いっぱいドアを勢い良く開いた。

そこに映る光景は決して良い物ではない。

心臓すら凍てつかせてしまう寒さの中、下着姿でこの牢屋に捕まっていた若い女性達がいた。

ただほんの僅かな救いといううべきか、全員が私を見ていた。

すなわちそれは生きているという証拠に過ぎない。

 

「シーナ、ちゃん…?」

 

ああ…。その声は忘れる事もない。

年を経た今でもその声を私は忘れない。

こんな私を見て、そしてその名を口にした本人は長く伸ばした透き通るかの様な銀髪を揺らしながら私へと歩み寄ってくる。

 

「シーナちゃん…だよね…?」

 

こんな状況で、こんな姿で、汚れていなかったら…。

多分最高の再会になっていたのかも知れないだろう。

 

「また会えたね…」

 

家族を失って、叔父を失って…。

本当に辛い事ばっかりだったけど…どうか──

 

「アリシアちゃん…!」

 

この一瞬だけは涙を流す事を許して欲しい。




生きていたという事実。
安心していい事であるが、この先の事も心配しなくてはならない。

次回も多分ドンパチかな。
さぁて、二月十四日の復讐者もそろそろ終盤だな…。

では次回ノシ
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