Devils front line   作:白黒モンブラン

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今回は短め。
そして今回でギルヴァの内なる「魔」の力に引き金を引きます。

ではAct5 内なる「魔」の解放(Devil trigger)どうぞです。



Act5 内なる「魔」の解放

ギルヴァを包んでいく光。どこか稲妻にも似ており、それが彼の中に存在する「魔」の力とは誰が思うだろうか?

彼を中心に巻き起こる風圧。突風とも言えるそれに装置の攻撃から解放された人形達は腕で前を塞ぐ。

一体何が起きているのか誰にも理解できない。分かるとすればギルヴァが何かしている事だけだろう。

風は数秒程度で収まり、誰よりも先に416は視界を塞いでいた腕を下ろす。

 

「ッ…!?」

 

彼女は自身の目を疑った。

先程までそこに立っていたギルヴァの姿は無い。代わりにいたのは人間とは思えない異形の何か。

蒼いオーラの様な物を纏い全身が鱗で覆われ、肘からは蒼い炎の様な何かが刃の形を作りながら放出されている。一つに束ねていた銀髪は解かれ、頭には一対の角が生え…何よりもコートの様に揺れる鱗は大きく広がり、四枚の羽として広がる。まるで鬼と悪魔が混ざった様な何かがそこに居た。

得体の知れない何かに416は動けずにいた。それは周りにいた404小隊のメンバー、95式、敵の人形、白衣の男も同じで異形の何かに目を見開き、言葉が発せない状態だった。

あれは一体何なのか?彼は何処へ行ったのか?疑問が尽きない中、416は気付く。

自分達に背を向けて立っているそれの手にはギルヴァが愛用する刀、鱗で形成されたホルスターの様な物に収められているリボルバー。それを見て彼女は確信する。

今自分達の前に立っているのが…

 

「ギルヴァ…なの…」

 

自分達と共に行動していた彼しかいないと判断した。

その言葉に異形のそれはそっと416の方を顔だけ向ける。

その顔は正しく人間の顔ではない。悪魔そのもの。

鋭い蒼い双眸が彼女を見つめる。そして…内なる「魔」の力に引き金(デビルトリガー)を引き、魔人化を果たしたギルヴァは彼女に声をかける。

 

「大丈夫か?416」

 

「!…えぇ、何とか。まだ少しだけ頭が痛いけど…」

 

「そうか…。大事が無くてよかった」

 

その顔からはどんな表情をしているのか分からない。だがギルヴァのその声はどこか安堵した様子だった。

そして彼は刀の柄に手を添え、高台に立つ男を睨む。

鉄の墓場全体を包む濃密な殺気に男は呼吸困難に陥りそうになるも、微かな声でギルヴァへと問いかける。

 

「な…何な、のだ……お前、は…!」

 

未だに彼を悪魔という存在として認めたくないのか、目は血走っている。

だがギルヴァはその問いには答えようとはしない。彼からすればその問いは聞き飽きている。未だにこの現実を認めようとはしない男の姿に内心辟易していた。

無言のまま自身の周りに複数の幻影刀を配置。1セット8振りの幻影刀が3セット展開され三方向に立つ強化人形兵達に向けて連続して投射。魔力により強化が施された幻影刀は一人どころか五人も貫き風穴を開ける。それが一振りで五人なのだから、その数は一気に削られる。

突然始まった開戦の狼煙に強化人形兵達は銃を彼へと向けるが、その瞬間ギルヴァの姿が掻き消える。姿を消したギルヴァに強化人形兵達は背中同士をを合わせ攻撃に備える。だが何処からも彼の姿は現れない。

 

「砕けろ」

 

頭の上から聞こえるノイズが掛かった声。強化人形兵の一人が不審に思い顔を上げた瞬間、そこには自身に迫る刃。回避も反撃も出来ずにその人形は頭から真っ二つに斬り伏せられる。敵の頭上から攻撃を叩きつける兜割りからギルヴァは一度愛刀の「無銘」を鞘に納める。腰を低く下ろし居合の構えを作ると、勢いよく地面を蹴り目では追う事が出来ない速度で全ての敵に疾風居合を仕掛ける。何度も繰り出される無数の真空の刃の渦と追撃として投射される幻影刀が敵を切り裂き、追撃の幻影刀が爆発して体がバラバラに吹き飛ぶ。抵抗も回避も一切許さない魔人化したギルヴァの攻撃は最早蹂躙といっても差し支えがない。だがこの程度では彼の攻撃は終わらない。

疾風居合からその場で跳躍。空中で滞空した状態で神速の抜刀が繰り出される。その斬撃は空間を切り裂き、地上の敵に空間が歪むと同時に斬撃が浴びされる。連続して次元斬が繰り出され、また一人、また一人と人の姿から鉄屑へと変えられていく。その光景は死屍累々といったところ。鉄屑へと成り果てた人形が半数に上った時、どこで隠れていたのか増援部隊が到着。追加として投入された戦力は最初の時へと振り出しに戻る。

そこで何を思ったのかギルヴァは無銘の刀身を鞘に納め、それを腰に携えた。そして両腕を伸ばすと…

 

「遊んでやろう」

 

その言葉と同時に魔力で形成されたガトリング砲らしきものが出現し、敵に向かって一斉掃射。その武器の名は魔装型多連装機関砲「カリギュラ」。ギルヴァが魔人化している際に使用できる武装であり、その威力と連射速度は破格の性能を誇る。魔力の弾丸が絶えもなく放たれ、人形共はあっという間に蜂の巣へと変えられていく。

只普通にカリギュラを撃つだけでは飽き足らないのか、彼は同時に幻影刀を連続して射出。蜂の巣かあるいはハリネズミか。そのどちらかへと敵はその姿へと変えていき増援も虚しく殲滅され、またもや敵の数は半数以下となる。だがここでまた増援部隊が出現し、再度振り出しへと戻ってしまう。

流石の彼も一つため息をつき、カリギュラを収納。無銘を手に取るとその場で居合の構えを作る。

彼から膨大な魔力が溢れ出しその膨大さに暴風が発生し吹き荒れる。何度斬り伏せても、撃っても、貫いても埒が開かないのであれば全てを同時に斬り伏せるまで。

ノイズが掛かった声で彼は告げる。

 

「死の覚悟は出来たか」

 

死の宣告を。

地を蹴り超高速移動から彼の分身達が放たれる。そしてそれぞれの分身が、全ての敵に向かって行き一斉にして無数の斬撃を浴びせる。

回避を試みた人形も攻撃を仕掛けようとした人形もまるで時が止まったかのように一斉に動かなくなる

そして最初に立っていた場所で敵に背を向け片膝を着くギルヴァ。鞘を縦にして持ち、静かに刀身を下ろしていく。刀身が音を立ててその煌きを一瞬だけ見せて納まったのを合図に全ての敵がそこから消滅した。

その技こそギルヴァが持つ技の中で超強力かつ超広範囲。

無数の敵がいるのであれば全てを同時に斬り刻み消滅させるその大技の名。

その名は…「次元斬 絶」

 

そこには何も残っていない。最初からそこには何もなかったかの様に綺麗さっぱりと。

誰もが言葉を失う。あれだけいた人形兵達が一瞬にして全て消滅したのだ。まるで赤子の手をひねるかの様にいとも簡単に、容易く。圧倒的な力の前に男は息を荒くし、発狂寸前まで来ていた。

あまりの恐怖に冷や汗を流し、体は小刻みに震えている。最早彼の頭は理解が追いつかずいた。否、理解などしたくもなかった。現実を逸脱した存在がこの世に居る事ですら認めたくない。科学ではどうしようもなく、決して適う事もない。だからこそ…彼はその場から逃げ出そうとしていた。ここから逃げて生き残る。今はそれしか頭にない。だが……悪魔はそれを許さない。

 

「ひぃっ!」

 

恐怖の声を上げる男。

いつの間に自分の隣に立っていたのか、魔人化した状態のギルヴァが男の顔面に向けて大口径リボルバー レーゾンデートル を構えていた。男の顔を見る事はせず、銃だけが向けらている。

いつ銃弾が放たれるのか、刻々と迫る死の恐怖に男は動けずにいる。

銃身に紫電が纏い始める。段々と大きくなっていき、紫電の激しさが増す。

 

―こういう時…何て言うか覚えているか?

 

(…ふっ)

 

蒼に言う事に何かを思い出したのかギルヴァは内心笑う。

 

「や、や…やめ…」

 

何とか喉の奥から命乞いの言葉を口にしようとする男。だが恐怖のあまりその言葉が出せない。

引き金に指が掛かる。そして彼らは言葉を口にする。

 

―「JACK POT(大当たり)!」―

 

一発の銃声が空高くに木霊し、戦いに終幕の弾丸が撃ち込まれた。




これだけ暴れたから許して。
次回は主人公のちょっとした紹介とAct0~5に出てきた武器の紹介をしようかと。
なので本編はちょっとお預け。

あ、そうそう。
うちのギルヴァさんを使いたかったらご自由にどうぞ。
まぁ…えげつない技を乱発するので世界観をぶち壊しかねないと思いますが…

では次回お会いしましょう!ノシノシ

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