Devils front line   作:白黒モンブラン

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─楽しいひと時を─


Act217-Extra Coffee time after work Ⅵ

異世界で起きた一連の騒動は収束し、世界を渡ってきた者たちは喫茶 鉄血にて打ち上げ会を楽しんでいた。

見知った者、初めて邂逅を果たした者。

それら全員が世界を渡り、この世界で起きた危機に立ち向かった者達であることは間違いないだろう。

そして賑やかでありながらどこぞのカップルのせいか甘ったるい空気が店内を漂う中、カウンターの端で椅子に腰掛けるネロとギルヴァの姿があった。

特に会話に参加するわけでもなく、世界を渡ってきた者たちが喫茶 鉄血の面々と盛り上がっている様子を只々眺めるだけ。

わざと壁を作っている訳でもないのだが、何処か作っている様に感じさせる二人に声を掛ける者はいないかと思われた時、群青色で桜の形をした髪飾りを身に付けた一人の少女が二人に歩み寄り声をかける。

 

「ご、ご久しぶりです」

 

「…む」

 

緊張しているのか、少々言葉がどもりながらもかけられた声にギルヴァは伏せていた目を開き、そちらへと視線を向けた。

どこかもじもじしている彼女…フォートレスを見て、ギルヴァは口を開く。

 

「…久しいな」

 

「は、はい!ギルヴァさんも、その…お元気そうで何よりです」

 

「ああ」

 

(…え!?それだけか!?)

 

そこで会話が途切れてしまい二人の間が沈黙に包まれた時、隣に座っていたネロがギルヴァに視線を向けつつ内心ツッコミを入れる。

元より口数が多い方ではないことは理解していたネロであるが、ここまでとは思わなかった。

流石にこれはまずいと判断し、適当な話題でも振って二人の間での会話を広げようと口を開きかけた時、ギルヴァが口を開いた。

 

「付けているのだな」

 

そういってギルヴァはフォートレスが身に着けている群青色で桜の形をした髪飾りへと視線を向ける。

それはかつてこの世界に初めて訪れたギルヴァがおかわりのコーヒーを淹れてくれたフォートレスへのお礼として、自身の魔力を錬成したものを渡したもの。

普通の髪飾りとは違い、魔力で形成されていることからどことなく透き通っており、気にしなければ分からないほどではあるがうっすら妖気のようなものを放っているため、お礼として渡したところで不気味に思われ捨てられるだろうとギルヴァはそう思っていた。

しかし今回再びこの世界に訪れ、フォートレスと再会してみればあの時渡したそれを身に着けていたので彼からすれば少なからず驚きを覚えるほどであったのだ。

 

「はい…。これをもらった時からずっと…」

 

ギルヴァが何に対しての問いなのかと理解しつつフォートレスは身に着けている髪飾りにそっと手を伸ばし触れる。

その表情はどこか懐かしくも、悲しそうにも見える。ギルヴァもネロもそれを感じずにはいられなかった。

とは言えそれ以上の事を問わないのは二人だ。

場の雰囲気を読んでギルヴァが静かに伝える。

 

「一杯淹れてもらおうか」

 

「!」

 

そのセリフに肩を跳ね上がらせたフォートレスだったがその表情は一瞬ですり替わる。

 

「ブラックで頼む。こいつの分も淹れてもらう」

 

「かしこまりました」

 

ネロの分を含めて、ギルヴァからの注文内容を聞くとフォートレスは一礼してから厨房へ向かっていった。

その後ろ姿を見届けたギルヴァだがそっと視線を周りを向けた。

するとギルヴァの目を通してその光景を見ていた蒼が喋りだした。

 

―平和な世界で起きた事件。それを解決しに現れたのは世界を渡ってきた連中ってか…

 

(…随分な大舞台と化したがな)

 

─まぁな。…確かカライナだったか?どうやら派手に飛んだらしいな?誰がやったかは大方検討がつくが…

 

(…奴か)

 

―恐らくな

 

そこで二人の間で会話が途切れる。

これ以上言う気などないと判断したためである。

しかしコーヒーが届くまでは時間があるため、蒼が話題を切り替える。

 

―そういやあの嬢ちゃん…どうやら『幻影』のせいで飛ばされたみたいだな?

 

(そうらしい。理屈は分らんが)

 

例の作戦にて引き金を引いた彼女。

そして気まぐれで渡した刀が魔力の塊であった刀から魔剣へと化した。

今回この世界に渡ってこれたのも『幻影』が突如として光りだし、気づけばここに飛ばされていたとのこと。

何故そうなったのかはギルヴァにも分りかねるほどであったが──

 

―いや、それならわかるぞ?店に来たお前があの嬢ちゃんの後ろを通り過ぎた時に理解したからな

 

(なに?)

 

ギルヴァの中にいる彼は…蒼だけはその原因を分かっているようであった。

 

―確かに魔剣と化した幻影はあの娘のものとなった。意思を有し、彼女を主として認めた事で保有する魔力もお前の魔力とは違うものを内包している。だがな?根本的な部分…謂わば『核』部分はお前の魔力が残ったままなのさ

 

(…それで?)

 

―親離れしたのは良いが、お前の事も忘れずにいる天真爛漫娘みたいな意思を有したのさ。今回お前が世界を渡ってたのをどういう訳か感じ取り、自分も行くー!ってなったんだろう。そして、あ!どうせならこの二人もご招待しなきゃね!みたいなノリでぶっ飛ばしたんだ

 

(…)

 

―…

 

(…二人が巻き込まれたのは俺が原因だと?)

 

―全部じゃないが一部はお前が原因だな

 

その事を告げられるとギルヴァは静かにため息をついた。

まさか二人がこの世界に訪れることになってしまったのは少なからず自身が関わっているとは思わなかったからだ。

額に手を当てるギルヴァを見て、ネロは首を傾げるのだが彼がそれを語る事はなかった。

 

(…取り敢えず今は黙っておくとしよう。いずれ時期を見て、マギーに見てもらったほうが良いだろう)

 

すぐに伝える必要性はないだろうとギルヴァがそう判断した時だった。

 

「お、お待たせしました!」

 

フォートレスが二人の前に立った。

ソーサーの上に置かれたカップには彼女が淹れてくれたコーヒーが注がれており、二人の前に出される。

ネロはもらうぜと一言伝えるとそのままコーヒーに口をつけ、ギルヴァもそれに続いた時、ふと彼は気づく。フォートレスの表情がどこか不安げなものであることに。

 

―ほら、さっさと一口飲んで感想言ってやんな。あの表情はそれを待っている顔だ

 

蒼にそう促され、ギルヴァはコーヒーを一口含む。

そしてゆっくりとカップをソーサーの上へ戻すと彼は口を開いた。

 

「悪くない」

 

「!」

 

彼の一言にフォートレスの顔に安堵の表情が浮かぶ。

その様子を見ていたネロは小さく笑みを浮かべ、内心つぶやく。

 

(…フォローが必要かと思ったが、いらねぇみてぇだな)

 

店に来てからと言うもののほとんど喋っていないネロであったが、ギルヴァとフォートレスの間での雰囲気は和やかなものになったと感じ取っていた。

このまま美味しいコーヒーを味わいながら、この一時を過ごそうとした時、ネロの前にある人物が立つ。

前に立った彼女に気づいたネロはカップを置き、話しかける。

 

「こっちは最後でいいんだぜ、代理人?」

 

「そういう訳にも行きませんよ。…お元気そうで何よりです」

 

「ああ、そっちもな」

 

軽く肩をすくめながら、笑みを浮かべるネロ。

 

「…それで?世間話をしに来たって訳じゃねぇんだろ?」

 

「世間話もあるのですが…まぁ目的はこちらの方です」

 

ゴトリと重々しい音を立ててカウンターの上に置かれたそれを見て、ネロはへぇ…とそんな声を漏らす。

それはこちらの世界のアーキテクトに譲り渡したデビルブレイカーの一つ『ブリッツ』であった。

アーキテクトに渡したはずなのだが、何故代理人が持っているかはネロ自身何となくであったが察していた。

 

(やっぱりな)

 

こうなるであろうと予想していたため、ネロは驚きはしなかった。だがその様子が不思議に感じたのか代理人はネロへと尋ねた。

 

「驚きはしないのですね?」

 

「まぁな。悪魔をぶちのめすためにあるモンだからな。返品されることは何となく察していたさ」

 

そう言ってネロはブリッツを装着する為に、右袖をまくってしまった。

この時ネロは道路橋での戦闘でデビルブレイカーのアタッチメントを外していた事と悪魔の右腕『デビルブリンガー』が姿を現している事をすっかりと忘れてしまっている。

何の疑いもなく袖を捲ってしまい、露わとなったデビルブリンガーを見た時ネロは目を見開き、つい声を漏らす。

 

「やべっ…!」

 

「ん?どうかされ──」

 

その小さな声が決して聴き洩ら巣ことはなく、代理人はネロの方を向いた瞬間、右腕に現れる異形の腕に目を見開き固まってしまった。

幸いにして周りには気づかれていない。最もギルヴァには気づかれているのだが、彼はあえて無視している。

そんな事を知るはずもなく、どう話したものかと頭を悩ませるネロだが意外と復帰が早かったのか現実へと戻ってきた代理人が恐る恐る尋ねた。

 

「…そ、その腕は一体?」

 

「…見たまんまさ。悪魔の右腕ってやつでね。…俺に戦う力を、だれかを守る力をくれている」

 

「…」

 

「…不気味かもしんねぇがこいつが勝手に動き出す事はねぇから安心しな。それによ…」

 

デビルブレイカーのアタッチメントを装着し、代理人から渡されたブリッツを装着しようとするネロ。

するとデビルブリンガーは自ら幽体化。なんの問題もなくブリッツが装着され、ネロは義手の指を動かしそれを見せつける。

 

「幽体化できるからな。義手つけてりゃ特に何の問題ねぇさ。だから何でああなっちまったのかは聞かないでくれ」

 

「…分かりました」

 

「ありがとよ」

 

代理人が頷いたことにより、ネロは静かにコーヒーを味わう事にする。

この楽しいひと時がどこまで続くかは分からないが、それでも彼と彼女は今を楽しむのであった。




えっと…本来であれば六月中には投稿したかったのですが…。
メンタルがボロボロになってしまい、中々執筆できず、やる気も中々に沸かず異常に遅くなりました。本当に申し訳ございません。

投稿頻度は一気に遅くなりますが、何卒宜しくお願い致します。

次回はシーナ編の続きをやっていこうかと。
今回のコラボ回でActの次にUndecided (未定)と付けたのはシーナ編が完結していない為、一時的な仮題として付けました。

では次回
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