廃都市「タリン」を舞台とした救出作戦。
都市から約数十キロ離れた地点では今回の作戦に参加を表明した者達とグリフィンの部隊で溢れていた。
顔見知りもいれば、今回が初の顔合わせとなる者もいる中で、S10地区前線基地の指揮官 シーナ・ナギサが率いる特殊部隊及び独立遊撃部隊『ブラウ・ローゼ』と便利屋『Devil may cry』の面々の姿もあった。
「分かっていたけど、豪勢なメンバーだねぇ…」
移動拠点型戦闘車両【ヨルムンガンド】の上に腰掛けながら、グリフィンの制服の上から魔装『サーヴァント』を肩にかけたナギサは感嘆な声を上げた。
今回の作戦の参加を表明していた基地に加え相当規模のグリフィンの部隊が居る事はこの場に来る前に分かり切った事だが、直に目にすればその規模に驚くのも無理もないと言えるだろう。
そこに青い薔薇のネックレスを下げ、新たな武器二丁を腰に携え、黒く赤い光の脈が流れる一見禍々しい色をしたコンテナを背負ったヘルメスがシーナの元に現れる。
「全員の準備が終わったぞ」
「ん、分かった」
腰掛けていたヨルムンガンドの車体から飛び降り、地面に降り立つナギサ。
同時に彼女の表情は真剣な面持ちへと切り替わる。
このタリン市街地に潜んでいると思われるアイソマーと呼ばれる存在。
どのような経緯で彼女達が生み出されたのかを今回の作戦の依頼主であるリヴァイル・ウィッカーマンから聞かされた瞬間、シーナの中で宿る『修羅』が久しぶりに目を覚まし囁いた。
─悪魔より悪魔らしい事をしている組織に一万発…否、百万発の弾丸を叩きつけてやる─
故にそれだけの物を、武器を基地から持ち出してきている。
もしかすればだが、持ち出してきた武器の中には光学兵器や魔具も含まれているので百万発どころで済まなくなってしまうかも知れないが。
最も敵にくれてやる慈悲はない。そして容赦はしない。取引もしない。
死すべきは誰か?無論それは『敵』である。
「さて…」
ヘルメスと共にシーナは戦闘準備を終えた彼ら、彼女らの前に立つ。
上空でリヴァイアサンに搭乗し待機しているネージュとヨルムンガンドのコクピットで待機しているジンバックに通信を繋げると、シーナは口を開く。
「やるべき事は単純。アイソマー…いや、この場合は彼女達と言うべきかな。彼女達を助け出す。市街地に潜んでいる彼女達の数は予測だと、7~800人、或いはそれ以上。今の戦力と彼女達らの人数、そして敵の行動を考えると…正直全員は助け出せる見込みは低い。でも─」
そこで言葉を切り、シーナは制帽をかぶり直し目を伏せる。
そして再び目が開かれた時、射貫く様な鋭い目つきが姿を現す。
「可能な限り助け出す。だから敵は徹底的に排除。恐らく第三勢力の乱入やイレギュラーも出てくるだろうけど…容赦はするな。そして潰せ。この戦場にお前たちの居場所はない事を知らしめろ」
その言葉に全員が静かに頷き、通信越しから二人の了承を示す声が届く。
「それじゃ行こっか。最高に派手で楽しすぎて敵が狂ってしまうようなパーティーをしましょ」
作戦の手始めはタリンの手前に展開されたパラデウスの防衛線を排除。
既に動き出し始めた所に続く様にS10地区前線基地の部隊と悪魔狩人も動き出すのであった。
『見えましたわ。…さすがはP基地。動きが速いですこと』
ヨルムンガンドを操縦するジンバックからの通信に全員が先を見つめる。
既に戦闘は開始されており、ブラウ・ローゼと特殊部隊、そしてギルヴァらは暴れまわるパーティーを主催すればやってくる
良いところを見せつけられたら、黙っていないのがS10地区前線基地。
『ギルヴァさん、ブレイクさん、フードゥルは突っ込んで!』
故に良いところを分けてもらわなくてはならない。
ヨルムンガンドから飛んでくるシーナの声。
つまりはそれはパーティーの開幕を告げるものであった。
「オーライ!派手にかますぜ!」
ブレイクがヨルムンガンドから飛び出し、ヴァーン・ズィニヒを呼び出し跨るとエンジン全開にして突撃。
向かってくる彼に気付くパラデウスの部隊。
そこから光の嵐とも形容すべきか、装備された光学兵器による弾幕がブレイクに襲い掛かるも卓越した運転技術で弾幕を回避し、彼は敵軍に一気に詰め寄った。
「あらよっと!」
バイクと共に跳躍し宙へと身を投じるブレイク。
ヴァーン・ズィニヒを別空間へ収めると背に背負ったリベリオンの柄に手をかけ、真下に居るストレツィ目掛けて振り下ろし頭から一刀両断。
そして次の瞬間、黒き影が敵集団の間を駆け抜けた。
一瞬の内に放たれるは無数の斬撃。黒き影が駆け抜けた後に残るは何故か動かなくなった敵の姿。
いつの間に背後を取ったの青い刺繍が施された黒いコートを揺らめかせ、日本刀を手にした男が…ギルヴァが無銘の刀身を鞘へと納めながら静かに告げる
「死ね」
銃声が連鎖する中、鯉口と鍔がかち合う音が響き渡る。
次の瞬間、先ほどまで動かなくなっていた複数の敵が同時に本来の形を残すこともなくバラバラとなって地面に崩れた。
たった二人の男による攻撃。まるで悪夢を見せられているように見えるだろう。
普通の攻撃で二人が止めらないと判断したのか、偏差障壁を有したユニットがブレイクとギルヴァらへと差し向けられる。
だがパラデウスが見せられている悪夢はまだ終わりを告げない。
何処からともなく響き渡るは雷鳴の音。空は灰色に包まれ、雷光が奔る。
超常現象でも起きたのかと言いたくなる様な突如として発生した雷雲。
そんな事をできるのは一人…いや、一匹しかない。
「そのような紛い物の盾では…我が雷撃は止められぬ!」
誰かの声が響く。
そして次の瞬間、轟音と共に一筋の雷が偏差障壁を持ったユニットへと目掛けて落ちた。
偏差障壁などもろともせず、黒焦げにするどころか消滅させるほどの一撃はそれは正しく金色の一閃。
対象を消滅させ、地に降り立つは気高く、何処か神々しい雷光を纏う一匹の白狼…フードゥルである。
「それでも恐れぬというのあれば向かってくるがよい!」
かつて魔界の精鋭部隊を務めた悪魔はパラデウスへと襲い掛かる。
悪魔狩人に加え、本物の悪魔が敵を蹂躙していく。
流れをこっちに持て来させた。
彼らが前に出た事により今の状況が出来上がったのを感じ取るとシーナが通信機のマイクへと向かって叫ぶ。
『パーティー開始!全員楽しんできて!』
それを合図にS10地区前線基地特殊部隊が銃撃を開始し、ブラウ・ローゼのメンバーがヨルムンガンドから飛び降り、前線に突撃し敵と交戦開始。
その隙にシーナは広域通信を用いて、この戦場に居る全部隊へと伝える。
「こちらS10地区前線基地!航空支援を用意してあります!必要であれば遠慮せず使って下さい!…ネージュ、そっちは任せるからね!但し爆発系の装備の使用は控えて!」
『了解した』
通信を終了するもシーナの目付きは鋭いまま。
そして一つ息を吐いた時、ヨルムンガンドの機銃で援護に入っていたジンバックから彼女に話しかける。
「気分を高める為にも一曲流しますか?」
「こんな時に?…でも良いかもね。曲は何?」
そう問われ、ジンバックは傍に置いてあった端末をシーナに渡す。
それを見てシーナはフッと笑い、ジンバックもつられて笑みをこぼした後、今日の一曲目のタイトルを口にした。
「悪魔の引き金、ですわ」
戦場から少し遠い所で全体が見渡せる場所に彼女はいた。
戦闘の音が聞こえる中、伏せていた目を開く。
手に持ったバイオリンを構え、彼女は静かに口を開く。
「…演奏開始」
タリンにバイオリンの音が響き渡る。
苦しむ者を救うべく行動起こす者を手助けする曲が戦場に彩り始める。
という訳で今回からコラボ作戦!
楽しむぞえ!