「全くとんでもないパーティーに招待されたものね。初手からパーティークラッカー鳴らし過ぎでしょ」
デビルメイクライ、そしてブラウ・ローゼの面々が前線に飛び込んでいった一方でヨルムンガンドの増設された荷台で装甲を盾に身を隠しつつパラデウスと銃撃戦を繰り広げるS10地区前線基地特殊部隊のメンバーであるUMP45は弾倉を交換しながら苦笑交じりに呟いた。
「それに分かりやすいぐらいに違和感たっぷりね。この程度で敵が終わる筈がないか」
その違和感を感じ取っているのはUMP45だけではない。
寧ろ全員。この戦場に居る全ての者達が違和感とやらを感じ取っている。
「余裕そうに言っている暇があるなら早く撃ってくれないかしら。お客さんの群れが迫ってきているのよ」
「偏向障壁持ちかしら?」
「ええ。偏向障壁マシマシのお客様達よ」
Ots-14らしくない冗談に45は笑みを浮かべる。
こんなドンパチ賑やかな戦場でそんな冗談を言えるのはある意味、S10地区前線基地に居る者達ぐらいだろう。
何故なら悪魔という訳の分からない者らとやりあっているからだ。
ともあれOts-14から告げられた嬉しくない情報に45はそっと顔を出す。
ストレツィとロデレオの複数編成に、最悪とも言うべきかドッペルゾルドナーに、後ろに控えるウーランの姿もある。
「うっわ…これは酷い」
「さっきの盛り上がりもだだ下がりね。パーティーの楽しみ方間違えてない?」
「グローザの冗談がうつった?WA2000」
「さて、それはどうかしらね、9」
9の問いに肩を竦めるWA2000。
近くで聞いていたMG4、AUG、95式がくすくすと小さく笑う声が響く。
だがそれも束の間、全員の表情は真剣なものへと変わり、そして思った。
そろそろ冗談はおしまいにするべきだと。
リヴァイルからもたらされた弱体化パッチがあったとしても偏向障壁を剥がすのは容易な事ではない。
「そういえばあのデカい奴…聞いた話だと白い悪魔って言われているみたいね?」
白い悪魔と言う言葉が出た時、全員がドッペルゾルドナーへと視線を向けた。
そして何故かG11と9は首を傾げた。
(あれが白い悪魔?)
(偏向障壁がシールドで…腕の装備がライフル?いや、バズーカかな?)
(そして最後は片腕と頭を失って、上へと向かって──)
((AUG、それ以上は駄目))
「…成る程。では本当の悪魔というのを教えてきましょう」
勝手にコントをおっぱじめた三人をよそに衣装を一新したルージュが反応する。
白のケープコートを纏い、下はホットパンツに改造を加えたものを穿いていた。
数か月前のあの大規模作戦で愛用していた臙脂色のコートがボロボロになってしまった為にルージュが新たに購入したものだ。
『やれる、ルージュ?』
「はい。兵隊と白い悪魔は私が片付けます。そちらは後ろの戦車を」
『分かった。無理しちゃダメだからね?』
「分かっていますよ。では─」
シーナへ返答しつつゆっくりと立ち上がるルージュ。
すると背に背負ったコキュートス・プレリュードが呼応し始める。
そしてまるでこの時を待っていたと言わんばかりに彼女の背と腰に凍てついた天使の羽を模った二つのスラスターが展開され、同時にヘル=バンガードの大鎌がその手に握られる。
「行ってきます」
跳躍から彼女は翼を羽ばたかせ勢いよく飛翔、突撃。
襲い掛かる弾幕の中を踊るかのように優雅に躱し敵の群れに急接近。
手にした大鎌を構え、すれ違いざまにストレツィとロデレオの集団を一閃、両断。
スクラップと化した敵に目もくれずにルージュはドッペルゾルドナーへと突撃していく。
両腕の機銃から放たれる弾幕を嘲笑うかのように回避し『白い悪魔』とやらの目の前まで距離を詰める。
そのまま大鎌で一閃しようとした時、ドッペルゾルドナーに装備された榴弾砲が動いた事に気付く。
不味いと判断したルージュはスラスターを動かし、上へと飛び上がった。
体を回転させつつ、大鎌を別空間へと放り込み、拳を作ると同時に冷気を纏わせる。
「偏向障壁…確かに厄介ですが─」
そう呟きながらルージュはスラスターを最大にし真下にドッペルゾルドナーへと突進。
装甲へと目掛けて拳が叩きつけられた次の瞬間、巨体を誇る白き悪魔は氷の棺桶の中で眠りについた。
「全ての機能を停止させる氷の中で、それは展開できますか?」
問いかけるように呟きながら氷漬けにされたドッペルゾルドナーから降り立つルージュ。
そして氷に向かって軽く蹴りを入れると氷に亀裂が走り、ドッペルゾルドナーが入った氷の棺桶は硝子細工の様に砕け散った。
広がる氷霧。冷気が肌を撫で、砕け散った勢いで突風が発生。
ケープコートが揺らめく中で立ち尽くすルージュにシーナからの通信が入る。
『ごめん、ルージュ!あなたはそのまま前線で頑張っている皆の援護に向かって!』
「分かりました。味方を見つけ次第援護に入ります」
『お願い!……ジンバック!戦車同士のガチンコ対決と行くよッ!』
通信越しから指示を飛ばすシーナの声が響く。
軽い冗談じみた台詞を口にしている辺り、彼女もまたそれなりに染まっているらしい。
それを感じ取ったルージュは笑みをこぼし、指示通り前線で奮闘している味方の援護へと向かう為、再び飛び上がり空へと舞い上がる。
その時は彼女はP基地のピポグリフとS01AB基地に属する四機のヘリを発見する。
自身が後ろから迫る形になっているのを気付いたルージュはシャマールという今回の作戦で初の顔合わせとなった女性から参加メンバー全員に配られた色々搭載された万能通信機を起動しピポグリフへと通信を飛ばした。
「後方から失礼します」
『え!?』
ピポグリフの操縦士『81式』の驚く声が届くも束の間、ルージュはピポグリフの真横を通り過ぎ、そのまま前線へと突入。
両手に専用の大型ライフル二丁を携え、味方の援護へと入ろうとした時だった。
「がおおおおおお!!!」
突如として響いた大声。
少女が獣を模倣する時に表す鳴き声の様に聞こえたその大声にルージュは発信源へと視線を向けた。
「あれは…」
ルージュの視界に映ったのは偏光障壁を持った敵を相手に大暴れするジャウカーンと偏光障壁を持った敵に少々苦労しつつも何とか善戦しているオートスコアラーのメンバーの姿。
「ふふっ…ジャウカーンの活躍は凄まじいですね」
可愛らしい見た目からは想像出来ない暴れっぷり。
ならばと思ったルージュは両手に握った大型ライフル『プレリュード・ライフル』を並行連結させ『ツヴァイ・プレリュード』状態に変更させると地上へと向かって構えた。
狙いはオートスコアラーへと狙おうと迫る敵の増援部隊。
両者が交戦開始するには距離は少しばかり離れているため、着弾の際に発生する爆発の影響はない。
狙いは定まった。二つの銃口に光が集まり出し、まだかとせかす様に銃身が揺れる。
そして引き金に指がかかった。
「狙い撃つ」
二つの銃口から迸る巨大な光線。
紫電を纏った光の濁流はパラデウスの増援部隊へと突撃し、着弾。
ありとあらゆるものは光の中へと消え、あまりの威力に爆風が敵へと捧げる墓標の様に炸裂する。
『な、なんだぁ!?』
『援護射撃?どこから?』
オートスコアラーからどよめきの声を耳にしつつ、そこに残った敵はいないと確信するとルージュはツヴァイ・プレリュードを片手に持ち、ヘル=バンガードの大鎌を空いた方の片手に携わるとゆっくりと降下。
まるで天から使者を思わせるようにオートスコアラーの前に降り立つルージュ。
そんな彼女にトゥーマンが叫んだ。
「出たな、非常識!」
「はい、非常識の登場です」
もはやS10地区前線基地に居る大半は非常識と化しているので、何とも思わなかったルージュは微笑みながら答える。
そして迫りくる敵に気付くとツヴァイ・プレリュードを構えながら、静かに告げた。
「S10地区前線基地所属非常識メンバー、ルージュ。これよりオートスコアラーの援護に入ります」
ルージュがオートスコアラーの援護に入った一方でジンバックが操縦するヨルムンガンドはパラデウスのウーランと激突していた。
ウーランの装備は機銃だけであるが偏向障壁を展開し、車体による体当たりが非常に厄介と言えた。
荷台に必死に捕まりながらウーランに対して特殊部隊の面々も銃撃を仕掛けるが偏向障壁に阻まれてしまう。
このままでは面倒だと思われた時、ジンバックの後ろに座っていたシーナが叫んだ。
「416、榴弾を足に向かって撃って!45は416の砲撃と同時にスモークを投擲!出来れば車体に落ちるようにして!ほかの皆は弾幕形成!少しだけ時間を稼いで!」
「何をなさるつもりで?シーナ」
突然の指示に少々困惑といった表情を浮かべるジンバック。
それに対しシーナは笑みを称えたまま答える。
「ヨルムンガンドの第二形態を使う。マギーさんが施してくれた改造を使わない訳ないでしょ?」
ヨルムンガンドの第二形態。
それは例のカジノ制圧戦以降にマギーが改造して、搭載されたヨルムンガンドの新たな機能を指す。
実の所、ヨルムンガンドの外見は以前のと比べると変化があったりする。
とは言え、それは第二形態にならないと分からないようになっているので初見では分かるはずもないが。
「…では第二の演劇開幕ですか?」
「その通り。ジンバック、派手に開演して」
開演の許可が下りた。
特殊部隊のメンバーがシーナの指示通りに動き時間を稼いでいる中、ジンバックは笑みを浮かべ操縦桿のスイッチを押した。
するとヨルムンガンドが変形開始。
伏せていた顔を上げるかのように本体が姿を現し、装甲に収められた腕…30mmガトリング砲を装備した腕が現れる。
「さぁ開演と参りましょうか!」
第二形態へと変形したヨルムンガンド。
ジンバックが開演を告げ、大蛇はウーランに突撃する。
装備されたスモークディスチャージャーが発射され、ウーランを覆い隠す様に煙幕が展開されると30mmガトリング砲による弾幕が偏向障壁を削り、ジンバックはブレーキを踏みつつ操縦桿を勢いよく左へとひねった。
まるでドリフトするかの様にヨルムンガンドが地面を滑り、ウーランの背後へと回る。
偏向障壁を剥がした今、ウーランの防御力は、その身に有する装甲のみ。
徹甲弾を装填した120mmの砲がウーランを捉えるとジンバックが口を開く。
「第二の演劇を彩る花となって下さいませ」
次の瞬間、徹甲弾がウーランを貫いた。
一撃を受けたウーランが沈黙するヨルムンガンドが見つめる。
しかしこれで終わった訳ではない。
現状防衛戦力を排除したに過ぎず、敵はまだまだいる。
異性体が見せられている悪夢。
その悪夢を終わらせる悪魔達が、戦場を歩き出す。
おう、ウイ〇グ〇ロとヒ〇ド〇ブモドキを呼んだの誰だよ(私です)
という訳でルージュちゃんがオートスコアラーの援護に入ります。
ん?通信機?
せっかくいいもん貰ったんだ。使わない手はないだろう?
防衛戦力は突破しそうですが……色々と違和感たっぷり。
本当に派手でクレイジーなパーティーはこの先に起きるんだろうなぁ…。
では次回ノシ