Devils front line   作:白黒モンブラン

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気付けばお気に入り登録が100件超え、そして評価も赤が付いているという事に驚きが止まらない作者でございます。
この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございます。

色々話が分かりづらく不備が沢山あり完全に私の文章力が皆無ですが…
今後とも「Devils front line」をよろしくお願いいたします。


Act6 人に近いが故に

静まり返る鉄の墓場。

あの戦闘から数時間が経っており、静寂がその場を支配していた。

404小隊は迎えのヘリを要請、到着するまで各々身を休ませていた。時折高台に上っては周囲の警戒に当たっているのを何度か見た為、交代で見張りをしているのだろう。確かに周囲一帯に鉄血がいないとは言い切れない。一時的な安全を確保出来たとしても気が抜ける筈がないのだから。

 

―事あるごとに撃ち落される、エンジントラブルが発生するのがお約束なヘリじゃなかったら良いがな

 

「それで落ちた先ではゾンビやらロケットランチャーを持った化け物に追われるのがセット、か」

 

事あるごとに面倒に巻き込まれるヘリなんぞ乗りたくもない。下手すれば自然災害も良い所だ。

それにそんな事が毎度起きるのであれば、最早神様がそう運命付けているに違いない。

 

「…」

 

風が吹く。コートが揺れ、肌に当たるそれはとても心地よい。今が壊れた世界だと忘れる位に。

…思えば「あの日」からどれ程経っただろうか。

一度暴走したあの時から…悪魔として生きる事を決めて各地を放浪しようと決めた日から数えるのも馬鹿らしくなる程の月日が経っている筈。下手すれば年すら越しているかも知れない。

その間自分は何か掴めただろうか?力だけではない…別の何かを。もしそうならこの放浪は意味を成したのだろう。

だが…この放浪にてそれを掴んだという実感は未だに感じられない。或いは掴めているが自分がそれに気付けていないのか…。

 

「自分もまだまだ…という訳か」

 

「何がまだまだなんですか?」

 

「ん?」

 

静かに呟いた声はどうやら来客に聞かれた様だ。

体を後ろへと向けるとそこには95式がいた。先程まで下の方で休んでいた筈だったが高台までやってきたのだろう。吹く風によって乱れそうになる黒髪を手で押さえながら彼女は自分の隣に並び立つ。その表情は少し無理している様な感じだ。やはりというか当然か…。大事な者を一瞬にて失くしたのだから…無理もない。

 

「何時振りでしょうか…。風がこんなにも心地良いと感じたのは…」

 

「風はいつだって心地良いものだ。どんな奴でも受け入れてくれる…それが悪魔であろうと」

 

「そうかも知れませんね…」

 

静かに昇ろうとする朝日。そしてそれを眺める彼女。

今彼女の瞳にこの朝日はどう映っているのだろうか。自分は誰かの気持ちを覗ける様な力は持ち合わせてなどいない。ただ…戦う事しか芸のない男なのだから。

でも…それだけしか出来ない自分でも出来る事があるとすれば…もしあるとするのであれば…。悪魔の自分に成せる事があるのであれば。

 

「え…あ、あの…?」

 

「無理はしなくていい」

 

「…!」

 

この手を伸ばして抱き寄せて。

彼女に寄り添う事位は出来るのでないだろうか。

 

「誰かを失うと言う事は辛く悲しいことだ。その気持ちは俺も知っている」

 

「…」

 

「その都度涙を流し、そして歩みを進めた。その人たちの分まで生きようと。生きて欲しいと願ってくれたその人たちの願いを無駄にしないようにと」

 

「その人たちの分まで生きる…」

 

「あぁ。…辛い思いも悲しい気持ちも…。君たち人形が人間に似せられて作られたというのであれば……思いも、流れるものも間違っていない」

 

彼女でも気づいていない…その瞳から流れる涙をそっと指で拭き取る。

人は何故彼女達に感情というのも与えたのか?自分は学者ではないので分からない。だが…もし彼女達という人形を生んだ親が人間の様に生きて欲しいと願ったとするのであれば…。

人間の様に心があるとするのであれば。

 

「人形も人の様に泣く事が出来るのだからな」

 

流れる涙は本物なのだから。

 

「…あぁ……ぁぁ……」

 

すすり泣く95式。

抑えていたものが崩れ、それが表に出てきたのだろう。顔を胸に埋めすすり泣いていた。

そっと彼女の頭を撫で、慰める。かつて自分がそうしてもらった様に。少しでも気持ちが軽くなる様に…。

 

 

 

「お願いがあります…」

 

暫くして…若干涙声であるが95式は言ってきた。

 

「何だ…?」

 

「最後に……私が所属していた基地へ連れていってくれませんか…」

 

「…」

 

「私が生きている事を……97式や指揮官…皆に伝えたいのです…」

 

断る理由などない。

彼女なりの踏ん切りを付けたいのだろう…。

この後はグリフィンの連中に捕まる予定ではあったが予定変更するとしよう。場所がどこにあるのかは分からないが時間は沢山ある。時間など自分にとってはあっという間なのだから。

…それにそう簡単にここから離れる事は出来ないと判断している。404小隊がどの様な任務を遂行していたかは分からないが……恐らく…。

 

「良いだろう…。ならば少し頼みがある」

 

「頼みですか…?」

 

「あぁ。ここから出る為のな…」

 

自分の捕獲も任務の内に入っているのだろうから。

 

 

95式に頼みたい事を伝え、暫くした後。

後ろから誰かが歩み寄ってくる音が聞こえた。と言う事は迎えが近いか…あるいは…。

どちらにせよタイミングを見計らっていたのは間違いないだろう。

刀を杖の様に立てた状態で目を伏せたまま口を開く。

 

「何か用か」

 

「ええ、少し」

 

伏せていた目を開き、隣に立った人形を見る。

左目に傷の跡…という事は…彼女はUMP45か。確かあの時も小隊を纏めていたのは…。

表情からして読めない所があったが……何だろうか?この感覚は…。

何となく自分と関わりがある416が来ると思っていたが…。まぁ…誰が来ようが何ら問題ない。

風は鎮まり、隣に立っている45はこちらをじっと見つめてくる。何を思っているのか分からないが、流石にみつめられたままなのは気恥ずかしいのでこちらから問いかける。

 

「何か?」

 

「いいえ。…只、あの時に見せた姿とは全然違うと思って」

 

あの時…デビルトリガーを引いた時の姿か。

確かに人間とはかけ離れた姿になるのだからそう思っても不思議ではない。それをどう思うかは目撃者次第だが…いずれは誰かに見られる覚悟はしていたのだ。どう言われようが気に留めるつもりはない。例え目の前の人形が「化け物」だと思ったとしても、だ。

 

「正直なところ…死を覚悟したわ」

 

「…」

 

「頭が割れそうになる痛みにうずくまり、敵の頭が一人、また一人を爆発して死んでいく様を見た時は尚更ね。……替えがあるとは言え…あんな死に方はトラウマになるわ」

 

受け継がれる記憶というのも全て良い訳ではない。楽しい記憶も悲しい記憶も覚えるのなら…その最期も覚えてしまう。もしかすればそこだけを消す、或いは封印するという方法もあるのかも知れないが…それはそれで良いのかと思ってしまう。都合が良い記憶も考え物なのだ…。

 

「けど…貴方が装置を破壊してあの姿になった時…何だが私達人形の為にあの男へと怒っている様にも見えたわ。…そう思うと何故かしら…」

 

「…」

 

「貴方の事を全て知りたくて仕方ないの」

 

決して表情に出る事はないが…だが彼女の瞳を見た時薄っすらと凍える何かが背筋を走った。

彼女と出会って日はかなり浅い。にも関わらず何故UMP45がそんな事を言うのか全く理解が出来ずにいた。当然ながら自分は彼女達を救う為に戦った。それ以外の事は何もしていない筈だ。

なのに何故だ?

UMP45の瞳が少しだけ暗くなっているのだ?

 

「…今は答えられないな」

 

「どうしてかしら」

 

「それについて話す気がないのと…」

 

響き渡るエンジン音。ちらりと下を覗くとそこではバイクに乗ってこちらが落ちてくるのを待っている95式と肩で捕まっているニャン丸の姿が。どうやら上手く着地点近くまで持って来てくれたようだな。

一本踏み出し、地を蹴り大きく外壁の外へと跳躍。空中へと浮かび上がるまま彼女へと告げる。

 

「まだ捕まる気はないのでな」

 

「ッ…。気付いていたのね」

 

「最初の内は気付かなかったがな。だが君たちにも俺の情報は回っているとふと思ってな。あの男を追うとは別に俺を捕らえる事をな」

 

「…」

 

「しかし今は無理だ。どんなに手を駆使しても捕まる気は一切ない。本気で逃げるまでだ。だが…ほとぼりが冷めたら喜んで捕まろう。その時はお迎えの方を頼むとしよう」

 

「ええ。その時は私達が迎えに行くわ。楽しみにしてて」

 

「期待するとしよう。じゃあまた会おう」

 

言いたいことを伝えて下へと落下。バイク近くで着地するとつかさず跨る。

エンジンを吹かしてバイクを走らせてその場からすぐさま離れる。

幾ら人形でもバイクには追いつく事は出来る筈がない。最も彼女達が同じくバイクを持っているのなら別だが…。

あの場において自分が乗ってきたバイク以外の車両は一切見当たらなかったので問題ないだろう。

 

「さて…。目的地は君が所属していた元基地で良いのだな?」

 

「はい。お願いします」

 

「分かった。…ついでに花でも買って行こう…。何も無しでは失礼だ…」

 

「えぇ…そうですね…」

 

「にゃっ…」

 

バイクのエンジン音を響かせ、95式が居た基地へ目指す。

 

しかし…あの感覚は一体何だったのか…。それに何故彼女の瞳が少し暗く…。

 

―あぁー…。これは今後がとんでもないことになるかもな…

 

蒼?それはどういう…

 

―何…。只…「重たくなる」だけさ。そう…「重たく」、な…。

 

重たく…?

 

何処か諦め口調の蒼に不思議に思いつつも、彼が言った「重たくなる」という言葉を気に掛ける。

一体何が重たくなるというのだろうか…全然予想が付かん…。

 

 

走り去るバイクを見つめる。

まさか気づかれていたとはね。まぁ…何となく勘が良さそうだったから上手く行く自信はなかったけど。

にしても…私にもこんな感情があるとは思いもしなかったわ。最初こそはメンタルモデルにバグでも起きたのかと思ったけど。けどそれがどうしてもバグとは思えないのだ。

私達が人間に近い様に作られた故かもしれないけど…。

でもまぁ今はそんな事はどうでも良い。大事なのはこの気持ちは確かなものである事だけ。

彼が私達人形を助ける理由…何よりも彼の正体が知りたい。そして彼の隅々まで知りたくて仕方ない。

この興奮は暫く収まる事はないかもね…。

 

「行ってしまったのね」

 

そう言って私の隣に並び立つ416。

静かに吹き始めた風で乱れそうな髪を押さえて走り去る彼の方へと見つめている。

 

「ええ。あっという間にね」

 

「お礼を言いそびれた訳だけど…まぁ良いわ。どうせ「迎え」に行くのだから」

 

「そうね。その時が楽しみだわ」

 

ふふっ…この感じだと416もかしらね?ほかの人形だったらどうしようかと思ったけど、まぁ小隊のメンバーなら問題ないわ。

…今は逃がしてあげるけど…

 

「次会う時は…」

 

アナタノコト スベテ オシエテネ?




という訳で出しました。病みです……病みです(大事な事なので二回言う)

正直な上手く表現できる自信はございませんが…何卒ご容赦くださいませ…。

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