Devils front line   作:白黒モンブラン

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──悪魔はその願いを請け負う──

──もう一つの悪魔はこの空で高らかに咆哮する──


Act222-Extra Those who end the nightmare Ⅳ

ダンタリオンとセイレーンが戦場に姿を現し、参戦を表明した同時刻。

劇化する前線から離れた市街地の奥…彼女らがいる花畑から少し離れた場所は異様な静寂に包まれていた。

遠くから聞こえる戦闘の音を耳にしながらもアパートらしい建物の屋上に彼はいた。

青い刺繍が施された黒いコート。銀髪に鋭い目つき。

日本刀状の魔剣『無銘』を携えるは便利屋『Devil may cry』本店のオーナーにして、今回の作戦に参加しているギルヴァである。

彼は無銘を杖の様にして立て、静かにその先に広がる例の花が群生している花畑を眺めていた。

 

『こいつは圧巻だな。見渡す限り、例の花が咲いてる』

 

「ここからでも見ていて分かる。…これがリヴァイルが言っていた優曇華という花か」

 

『崩壊液を球根に溜め込み無害化する一方で、開花したら溜め込んだ崩壊液を放出する花、ね…。何でそんな欠陥品がこんなにもあるんだか』

 

「気になるのであれば、その先にいる『奴』に直接聞けばよかろう」

 

そんな会話を広げる二人であるが実の所、蒼はギルヴァの中から出て行っている。

では何処にいるのかと言うと、蒼は優曇華が群生している花畑に居た。

それもギルヴァが展開したドッペルゲンガーに憑依し、その手には通信機を携えながら。

その為、蒼の声がギルヴァの中からなく外から聞こえるのは通信機を介して会話をしていた事にあった。

 

「で?この通信機を例のお嬢さんに渡せばいいんだな?」

 

『ああ。それを渡したらお前は戻ってこい』

 

「あいよ。でも何故そんな事をする必要があるんだ?お前も見た筈だ。蛮族戦士がこの花畑から出てきたのを」

 

今いる場所にたどり着いた時、二人は蛮族戦士が花畑から出てきたのを目撃していた。

つまりにそれは彼が花畑にいる彼女らと接触した事を意味している。

そしてパラデウス兵に襲い掛かるという事は味方であると判断できる。

にも関わらず、ドッペルゲンガーに蒼を潜り込ませてまで『彼女』に通信機を渡そうとする彼の行動は正直言えば意味がないと言えるだろう。

 

『分かっている。ただ確認したい事がある』

 

「確認したい事ねぇ?何を尋ねる気だ?」

 

『…本当に"それ"を望んでいるのか。それを確かめる』

 

そこで蒼は何も言わなかった。

彼が何を確認しようとしているのか。その意味を察したからだ。

 

「あんまり強い言い方はすんなよ?お嬢さん…いや、お嬢さんらだってこんな苦しい状況に望んで飛び込んでいったとは思えないからな」

 

『…分かっている。今は接触を急げ』

 

「ん、了解」

 

ギルヴァに促され、蒼は花畑を進んでいく。

もしこの優曇華が何ら害のない花であれば、少しばかり観賞していこうかと思っていた彼だが今は接触が重要である事は言わずとも分かっている。

彼女らへと接触を急ぐ最中、ふと蒼は疑問を覚えた。

 

(…お嬢さんらは何故この花畑に留まっている?この花の特性を理解しているんだったら、ここに留まる必要なんてないと思うが)

 

肉体を持たない蒼もギルヴァを介して優曇華の特性を理解している。

そんな危険極まりないものに留まる理由がないと言えよう。

そこで蒼は逆の考えを導き出した。

 

(いや…留まる必要があるのか。開花するのを待っている。開花することで得られるその"何か"の為に留まる必要があるから)

 

ではその"何か"とは何か。

蒼は移動しながら思考を巡らせていく。

優曇華の特性。アイソマーらが優曇華が群生するこの場に留まる理由。

そして開花することで起きる何かを待っている。

 

(…恐らくだが、答えの一つは"死"だ。リヴァイバルの話じゃアイソマーというのは、失敗作扱いとなっている。そして苦痛に苦しんでいると言っていた。それも長い間、苦しんでいる。恐らく…死による救済を望んでいる。じゃあ他はなんだ?)

 

そこで蒼は足を止め、成る程ねぇと呟いた。

何故ギルヴァがドッペルゲンガーに自分を憑依させ通信機を持たせたのか、その意味を理解した。

 

「…お前は聞きたいんだな?心の本心からこの悪夢から逃れたいかどうかを…」

 

空を見上げながら蒼は静かに呟く。

今この場に居ないギルヴァへと向かって、優しく問いかけるように。

一陣の風が花畑を駆け抜ける。優曇華の花びら舞い上がり、幻想的な景色を作り上げる。

そして蒼がそのまま歩き出そうとした時、ふと彼は足を止めた。

 

「…」

 

まるで信じられないものを見ていると言わんばかりに目を見開く彼女がそこに立っていたからだ。

対する蒼は驚くことなく、むしろそこにいる彼女を見て疑問を覚えた。

 

(こいつがアイソマー?にしては成長しているというか…幼い少女だけじゃねぇってことかね?)

 

ドッペルゲンガーに憑依した蒼の前に立つ彼女は一回り成長していた。

個体差があるのだろうかと考える蒼に『彼女』が問いかける。

 

「あなたは一体…」

 

目の前に半透明の悪魔みたいな何かが現れたのだ。

驚くのも無理もないだろう。

 

「あー…確かにこんなのが現れたら驚くか。悪いね、分身とはいえ驚かせてしまって」

 

「い、いえ…さっき似たようなものを見ましたから…」

 

「あいつか…。まぁそんな事より、お嬢さんとぜひ話がしたいという奴が居てね。良かったらこの通信機を手に取ってくれねぇか?」

 

彼女に歩み寄り、手にした通信機を差し出す蒼。

差し出されたそれに少々戸惑いを見せる彼女に蒼は大丈夫と諭す。

それを信じたのか彼女は蒼が差し出した通信機を手に取った。

 

 

 

『えっと…聞こえてますか…?』

 

手にしていた通信機から聞こえた少女の声。

蒼が無事接触できたことを確信したギルヴァは伏せていた目を開き、通信機で返答する。

 

「ああ、聞こえている。…顔を見せず、この様な形で接触したことは流してもらいたい」

 

『…大丈夫です。その、話がしたいと…?』

 

「ああ。…聞きたい事がある。出来れば答えてほしい」

 

ギルヴァはナデシコから伝えられたアイソマーらの居場所を知った時から考えていた。

正直言えば、今自分たちがしていることが偽善に等しい。

死の救済を望んでいたというのに突然やってきては助けようとしているのだから。

だからこそ聞きたいのだ。

 

「…明日を生きたいか」

 

長い間苦痛に苦しめられてきた彼女らが本当に生きるという救いを望んでいるかを。

 

『……救ってくれるんですか?』

 

すぐに返ってきた純粋な問い。

何処となく懇願するような声にギルヴァが返答しようとした時、彼女は言葉を続けた。

 

『お父様にも花にも認められなかった…それでもとずっと苦痛に耐えてきた。妹達が倒れていくのを見届ける事しかできなくて、只々絶望を知るしかなくて…。けど…先ほどの方から聞きました…一部の妹たちがここ以外の何処かで元気で過ごしているって…』

 

「…」

 

『それを聞いて思ったんです。…自分たちもここから逃れた妹達と同じ様に元気で過ごせるようにならないかって…。でも、ここから抜け出すのは容易な事じゃないのも知っています。…でも!』

 

「…」

 

ギルヴァは答えない。

『彼女』からその言葉…否、その依頼が口に出されるのを待っていた。

 

『お願いです…!本当に救ってくれるのであれば…この悪夢から解き放ってくれるのであれば……私たちを助けて…!』

 

そして悪魔も泣き出す者に特別な依頼が出された。

 

「ああ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その依頼(願い)、叶えよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、この瞬間をもって悪魔は彼女からの依頼(願い)を請け負った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女からの依頼(願い)を請け負ったギルヴァ。

ドッペルゲンガーを解除し、蒼が戻ってきたのを確認するとアパートの屋上から地上の大通りに降り立つ。

パラデウス兵がギルヴァに向かってきている様子はないが、遠く響く戦闘の音は未だに響いている。

この悪夢を終わらせる為、歩き出し始めるギルヴァに通信を繋げたのか、彼女からの声が届く。

 

『貴方の名は…?』

 

「…ギルヴァだ」

 

悪魔を狩りし者は動き出す。

彼女からの依頼を成す為に。この悪夢を終わらせる為に。

 

 

一方、シーナから接近してきている航空部隊の『核』を取り除いたという報告を受けたネージュは航空部隊を撃墜する為にリヴァイアサンの高度を維持しつつ上空を駆け抜けていた。

そしてある程度の距離まで接近すると高度を維持しながらネージュは視線を下へと向けた。

 

「あれか」

 

方角的にタリンへと向かう航空部隊が彼女の視界に映る。

航空部隊と言えど、その数は多い。

幾ら核を取り除いたとは言え、相手が何をしでかすか分からない。

相手が気づいていない内にリヴァイアサンの武装で攻撃を仕掛けようとした時、突如として航空部隊の間で爆発による花が咲いた。

 

(…砲撃か。遠方からだが…)

 

その攻撃が遠方からだと察するとネージュは航空部隊から砲撃が飛んできた方向へと視線を向ける。

そこに映るは、パワードスーツを纏うS09P基地のノアの姿と同じくパワードスーツを纏うリバイバーの姿。

二人がこの航空部隊の排除に動いている。それを理解したネージュはリヴァイアサンを動かし、急降下。

 

(ここにアレは咲いていない。…ならば)

 

「大喝采を聴かせてやる」

 

そのセリフと同時にリヴァイアサンに装備されたミサイルコンテナのハッチが展開し、一斉発射。

ミサイルのシャワーが航空部隊に降り注ぎ、襲い掛かると無数の火球が咲き誇る。

 

『ミサイル!?上からだと!?』

 

『上空から高熱原体!?いや…こいつは、まさか!』

 

ミサイルのシャワーにリバイバーは驚き、迫りくる悪魔にノアが叫ぶ。

ようやく自身の出番が与えられたことにネージュは喜びつつ、静かに口を開く。

 

「ブラウ・ローゼ隊の一人、ネージュ。リヴァイアサンを以て援護する」

 

リヴァイアサンの装備を全て利用し、弾幕を展開。

航空部隊の対空砲をリヴァイアサンの機動力を利用し、掻い潜りつつネージュは二人に静かに伝えた。

 

「さぁ…悪魔と踊ろうか」

 

巨体を誇る悪魔が今、この空に吠える。




という訳で…。

依頼(願い)を受けたので、こっからはギルヴァも頑張ります。
そして航空部隊の排除する為、ネージュが操縦するリヴァイアサンが援護いたします。

てか何故この時間帯に投稿を、だって…?

…夜勤・ドゥーエがあるんだよ…

では次回ノシ
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