Devils front line   作:白黒モンブラン

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─彼女に悪魔を─

─彼女には時を─


Act223-Extra Those who end the nightmare Ⅴ

「E.L.I.Dだと?」

 

"彼女"からの依頼を成すべく、前線へと引き返そうとしていたギルヴァ。

その道中でダレンから通信が入り、聞き返すかのように彼はその単語を口にした。

 

『うむ。一体はオートスコアラーの方に、もう一体がこの市街地の何処かにおる。パラデウスの方にも被害が出ておるそうじゃが、最悪な事にアイソマーらにも被害が及んでおる。さっさと片付けるのがいいんじゃが…』

 

「汚染か」

 

『然り。故にお主はそやつを見つけても相手にするでない。いくらお主が強かろうと崩壊液を纏った相手では分が悪い』

 

「…ああ。分かった」

 

その身にいくら異形の血が流れているとは言え、崩壊液を纏っているのであれば話は変わってくる。

接近戦をメインとするギルヴァでも、このタリンに現れた崩壊液を纏ったE.L.I.Dを相手に、接近戦を仕掛けるのは良いとは言えない。

ダレンから忠告を素直に聞き入れ通信を切るとギルヴァは足を止め、同時に蒼が喋り出す。

 

―E.L.I.D、ねぇ…。どこから沸いて出てきたのやらか

 

「報告だと擬態能力を持ち合わせているらしいがな」

 

―魔界じゃそんなのウヨウヨいるさ。今時珍しくもない

 

「この世界にとっては別だろう」

 

―確かにな。…っと、おしゃべりはここまでだな

 

まさしくその通りであった。

ギルヴァが向かう先。その先にはオートスコアラーの方でも確認された強化されたパラデウス兵の軍勢が迫ってきていた。

その数は数えるだけでも五十。いや、それ以上はいるだろうか。

戦闘が起きているとは言え前線から離れているにも関わらず、何故ここに居るのか。

向かってくる敵を見つめるギルヴァに対し、蒼が口を開いた。

強化されたパラデウス兵らの行動に疑問を抱いた為だ。

 

―…お前を狙って来た感じじゃなさそうだな。となると…

 

「アイソマーか」

 

―多分な。となるとこの辺りにはアイソマーらが隠れている訳、か…。それとも他に何かあるのかね?

 

「考えた所で意味などない。それに奴らが敵である事に変わりはあるまい」

 

そう、敵である事は変わらないのだ。

手にした無銘の鍔に親指が押し当てられ、鯉口を切る。

鞘から僅かに玉鋼の刀身が姿を晒した瞬間、彼は一陣の風となった。

駆け抜けるは黒。狙うは白き軍勢。

煌めく片刃の刀身。鋭き斬撃が音を置き去りにして先頭立っていたロデレオを襲った。

駆け抜ける疾風。訪れる静寂。

攻撃を受けた事すら気づいていないパラデウス兵らの後ろには、いつの間に抜刀したのか刀身を鞘へと納める黒い外套を纏う男。

ゆっくりと刀身が鞘へと納められていく。

白銀の刀身が自身を知らしめるかのように僅かに煌めくと鞘と鯉口がかち合う音がその場で木霊した。

次の瞬間、まるで今動く事を許されたかのように一刀両断されたロデレオが地面へと崩れ、ようやく攻撃を受けた事に気付いたのか音が鳴った方へと振り向き出すパラデウス兵。

光学兵器が、一人を潰す事くらい容易くやってのける鋼鉄の腕が、全てを木端微塵に吹き飛ばす事が出来る大型火器が、たった一人の男を殺すには過剰ともいえるそれらがギルヴァへと向けられようとしていた。

 

「…」

 

攻撃の時がやってくる。

にも関わらずギルヴァには焦りもなければ、恐怖もなかった。

只々冷静。それ以外ない。

相手を見据え、片足を一歩前へと出すと同時にギルヴァは強化されたパラデウス兵らへと突進した。

まさしく瞬歩とも言えるそれ。それなりに空いていた筈の相手との距離を一瞬で詰めると、その大きさと高い堅牢度を誇る事から盾として君臨するグラディエーターの懐に飛び込み、抜刀。

脚部を一刀にして斬り落とし、支える足が無くなったグラディエーターが落ちてきたと同時に片足を軸にし回転と同時に薙ぎ払い。そのまま巨体を真っ二つに両断しつつ、背後へと回りながらまるで滑るかのように駆け抜けつつストレツィとロデレオの集団の間を疾走居合と同じ要領で無数の斬撃を放ち、無力化。

敵に背を見せる状態になり、そこに目掛けてガンナーが重火器を構えるがそれを見越していたと言わんばかりにギルヴァは魔力を込めつつ左手に持った鞘をガンナー目掛けて投擲。

槍の如く放たれた鞘がガンナーの腹部を穿ち、後方にいたもう一体のガンナーの腹部に刺さると勢いをそのままに鞘はガンナーの頭に突き刺さったまま、体を後ろへと吹き飛ばしジェットパックを用いてギルヴァに接近しようとしていたロデレオらと吹き飛ばすと建物の壁に激突。

飛んできたそれとの衝突の勢いで周囲が軽く吹き飛ばされた所を見計らい、素早く反転したギルヴァはその群れの中へと突進し無防備な状態を晒す敵らを一瞬の内に斬り刻む。

わざと残した一体を袈裟斬りで一太刀浴びせつつ移動し、激突に巻き込まされていなかったストレツィに接近し頭部を斬り落とした同時に無銘を投擲。回転する刃と化した無銘が半円を描きながら次々とパラデウス兵を切り裂き、主であるギルヴァの元へと向かっていく。

既に鞘が突き刺さったまま動かないガンナーに背を向けようとしている途中でありながらギルヴァは左腕を背中へと回し、無銘を見向きもせず受け止めると無銘を逆手で握ったまま、タイミングを合わせたかのようにガンナーに突き刺さった鞘へと刀身を収めながらさらに深く押し込むように力を入れつつ納刀し、動かなくなったガンナーの体から無銘を引き抜いた。

そこに広がるはあれ程居たにも関わらず、たった一本の刀で斬り刻まれ、残骸だけとなったまま地に伏せる強化されたパラデウス兵らの光景。

まさしく一瞬の出来事。

十分どころか五分も掛からぬ内に出来上がった光景だという事を忘れてはならない。

 

「…」

 

そんな光景を一人で作り上げたギルヴァは、パラデウス兵の亡骸が転がる光景を一瞥することもなく、踵を返し前線で戦っている味方を援護する為に歩き出す。

本来であればこの花畑付近に留まり、『彼女』やアイソマーらを狙う敵を始末しようかと考えていた彼であったが、状況は良くない方へ持っていかれつつあることを戦闘中でありながらも通信で聞き及んでいた。

同時にリヴァイバルらが『彼女』と接触する為にこちらへと向かっている事を聞いていたことからこれ以上、ここに留まる必要性がないと判断していた。

とはいえ無言で去るは気が引けたのか、或いはそれ以外の理由があるのかギルヴァは通信機の周波数を合わせ、『彼女』と繋ぐ。

 

『ど、どうされました?』

 

状況が状況。

依頼を請け負った顔も知らぬ名前しか知らない誰かからの通信が来たのだから、『彼女』の声は戸惑い気味であった。

それを分かっていながらも、ギルヴァは普段通りに返答する。

 

「少しばかりこの辺りから離れる。…その内、お前に会いに来る奴がいるがな」

 

『会いに来る人?』

 

「味方である事は変わりないが…奴の詳細は知らん。聞く限りだとお前たちの事を知っているみたいだが」

 

『私たちの事を知っている…?』

 

「…どう判断するかはお前次第だ。それまでどうにか上手くやり過ごす事だ。…運が良ければ顔を合わす事もあろう」

 

それだけだ、と口にするとギルヴァは通信を切る。

前線へと戻っていく中で、彼は蒼へと話しかける。

 

「蒼、お前は奴の援護に行け」

 

―援護って…誰にだ?

 

「…銃爪を持つ女の所だ。銃爪を引き、制御を手伝ってやれ。今の奴にはそれが必要だ」

 

―成る程ね。そういうならほんの少しばかり魔力をもらっていくぜ?どうせすぐに回復するだろうしな

 

「構わん。行け」

 

―あいよ!ちょいとばかりお嬢さんにダンスのお誘いをしてきますかね!

 

元より肉体を持たぬ存在。

ギルヴァの中から飛び出た蒼は向かう。その身に銃爪を持つ彼女の元へと。

壁を抜け、敵の体をすり抜け、幾度もなくそれを繰り返しながら蒼は彼女がいる気配を感じながら突き進んでいく。

 

(近い…ん?これは幻影か?おいおい…あいつ、俺を察知して呼んでやがるぞ。探知能力がギルヴァ並みに高過ぎないかね。おまけに……あの"歌姫"さん来てたのかよ。惜しい事したなぁ、下がる前に声をかけておくべきだったな)

 

幻影が自身に反応し、誘導してくれている。

それを察した蒼は誘導に従い、進んでいく。

そして例のE.L.I.Dと遭遇した蛮族戦士、RFBと共に居るアナを見つけると、蒼は彼女の背中から飛び込んだ。

 

「ッ!?」

 

まるで何かがぶつかった様な、そんな感覚に襲われるアナ。

敵の攻撃かと思えばそうでもなく、突然のそれに警戒を強めた時、彼女の中に飛び込んだ蒼が話しかける。

 

―警戒はしなくていい。ギルヴァに頼まれて飛んで来たんだからな

 

己の中から聞こえた男の声。

声を上げれば蛮族戦士やRFBに心配されると思ったのだろうか平静を装うアナに蒼は言葉を続けた。

 

―初めましてだな。蒼と言う。先も言ったようにギルヴァに頼まれて、お嬢さんの手伝いに来た

 

(ギルヴァさんが…?それにこの声、どこかで…)

 

―覚えていたのか?確かにあの訳分からん事が連発するあの作戦の最後辺りで姿も見せたし喋りもしたが…

 

(最後辺り……まさかあの時の!?)

 

―正解。まぁこのような形で顔も姿を見せずに、それどころかいきなりにお嬢さんの中に潜り込んだ事は詫びる。だが今はそういう状況じゃない事を理解してくれ

 

決して気を緩めていい状況ではない。

そんな事は言わずとも知れた事であろう。

幻影を構えるアナに蒼はフッと笑みを漏らす。そして自身がやるべきことを成すべく、行動を起こす。

 

―ギルヴァからちょいとばかし魔力を貰ってきている。ちょいとと言うのは多いんだが…まぁそんな事はどうでもいい。お嬢さん…銃爪の準備は良いか?時間はどうにかなってるみたいだし、あとはお嬢さんのフレームが耐えられるように魔力の制御と魔力で再現した武器を展開して援護させてもらう。分かりやすく言えば共闘という訳だが…悪魔の援護は不要だったりするか?

 

(まさか。…あとでギルヴァさんにはお礼を言わなくていけませんね)

 

―その台詞が出るという事は、了承ってことで良さそうだな。

 

ギルヴァから蒼を通じて流れるは蒼き魔力。

それはイグナイトトリガーを更なる高みへと導く存在。

果たしてその力は悪魔の力か、或いは彼女が望む力となり得るか。

答えは分からない。だがその力は決して彼女の足枷になる事は決してならないだろう。

 

─んじゃ行くぜ、お嬢さん!Are you ready(準備はいいかい)

 

(何時でもどうぞ!)

 

銃爪に指がかかる。

イグナイトトリガーに混ざるは悪魔の力。

故に今、この時だけはこの名前が相応しいだろう。

その名は──Devil Trigger(悪魔の銃爪)

 

 

同時刻。

ヨルムンガンドに搭乗していたシーナはルージュからの通信を受け、オートスコアラーと保護されたアイソマーらと合流していた。

合流した時には、偶然にもブラウ・ローゼ隊のメンバー全員が合流を果たし、ヨルムンガンドを操縦するジンバックとS10地区前線基地特殊部隊のメンバーがアイソマーらを連れて一時戦域から離脱。

そして─

 

「さて…」

 

戦力は大いに越したことないと周りからの反対を押し切り、シーナがブラウ・ローゼとオートスコアラーと共にこの戦場に残る事になった。

 

「出てきて、グリフォン、シャドウ」

 

制服の上からかけるようにして羽織ったロングコート型の魔装「サーヴァント」から影が飛び出し、形を作り上げる。

一体は猛禽類の姿をした魔獣『グリフォン』と黒豹の姿をした魔獣『シャドウ』だ。

 

「はぁー、やっと外に出れた。やっぱり俺はこうしている方があってるぜ」

 

呑気な事を言いながらグリフォンはシーナの肩に留まる。

最早S10地区前線基地は悪魔が居るという認識はオートスコアラーの方でも通っているのか、特に驚きはしていないのだが何故かシーナはクスリと笑った。

それを見て改装が施された新たなワーロック…『ワーロック・シャルフリヒター』を装備するソルシエールが問いかける。

 

「何か面白い事でもあったのかな?」

 

「まさか。ただオートスコアラーの皆を見て、こうして慣れさせてしまったのはうちが原因なんだなぁと思ってね」

 

「今更じゃないかい?」

 

「かも知れない」

 

しゃがみ込み傍で控えるシャドウを頭を撫でつつ、シーナは周りを見渡す。

状況はよろしくない。和んだ時間が少しはあってもいいと思いたいが、現実はそれを許してくれない。

表情を真剣な面持ちへと切り替えるとシーナは立ち上がり、指示を飛ばす。

 

「ルージュとネロ、ヘルメスは周囲の捜索。アイソマーの保護及び敵の排除。シリエジオ、ソルシエール、シャリテはオートスコアラーの護衛。彼女らが回復し次第、共に行動して」

 

その指示に頷くブラウ・ローゼの面々。

するとある事が気になったのか、ワーロックと同じく改装されたベルフェゴール…『ベルフェゴール・フルリベイク』を装備するシャリテがシーナへと問う。

 

「ナギサさんはどうするつもりですか?」

 

「私はグリフィンとシャドウを連れて、近くの建物に入ってアイソマーの保護に動く」

 

他の面々と比べるとシーナは決して強い方ではない。

魔獣と魔具の力を借りてどうにか立ち回れているだけなのだから。

パラデウスやE.L.I.Dに加え、アブノーマルが徘徊するこの戦場で動こうとするのはどう考えても普通ではないだろう。

しかしシーナの中では、あるものが熱く煮えたぎっていた。

それを知るのは無論本人のみ。ブラウ・ローゼの全員が知る訳がなかった。

 

「そ、それでは何かあった時に…」

 

「大丈夫。何かあればクイックシルバーを使って逃げ出すから」

 

普段と変わぬ彼女の笑み。

そこから何かを感じ取りながらもシャリテは何故かシーナを引き留める事は出来なかった。

否、ブラウ・ローゼの全員が彼女を引き留める事が出来なかった。

結局誰も彼女を引き留める事は出来ずに、各々が行動を起こし始めた。

ルージュらは合流した地点から少し離れた方へと向かい、シーナは比較的合流した地点から近い建物へと入っていた。

ビルの様な建物。廊下を歩くはナギサとシャドウ、そして宙を飛ぶグリフォンだ。

 

「マジで良いのかよ、ネェちゃん」

 

傍で羽ばたきながら移動するグリフォンがシーナに問いかける。

 

「何が?」

 

そう答えるもシーナは分かっていた。

グリフォンが聞こうとしているのは単身で動こうとする事に対してだと。

 

「いやさ、幾らネェちゃんが俺らを従えているからと言ってもよ、敵はめちゃくちゃつえぇし、ぶっ殺しても沸いて出来る奴も居るは、汚染物質塗れの化け物もいんだぜ?どう考えても一人で動くなんざ自殺行為でしかねぇよ。気でも触れちゃった?」

 

「そんな訳ないよ。私は至って冷静だよ」

 

なワケねぇじゃん…と内心つぶやくグリフォン。

サーヴァントの中で潜んでいた為、彼はシーナが今有している感情を理解していた。

それは怒りだ。誰も言い返せなくなるほどの圧力を持ち合わせた怒り。

オートスコアラーからアイソマーら保護した際にうち一人から聞かされた内容を聞かされた瞬間、彼女の怒りは最早地獄の炎よりも危険なものへと変質していることもグリフォンは見抜いている。

引き返す様に伝えようとした時、シャドウとシーナはピタリと足を止め、グリフォンもその場で滞空した。

 

(血の匂い…)

 

廊下を抜けた先。

大部屋だと思われる場所から余りにも濃すぎる血の匂いが漂ってきていたのだ。

警戒しつつもシーナは無言でホルスターから愛銃のPainekillerを引き抜き、撃鉄を起こした。

そしてグリフォンとシャドウに視線を飛ばし、お互いに頷き合うとゆっくりと足を進める。

シャドウがシーナの先に出て、グリフォンが何時でも迎撃できるように電撃の準備を始める。

外で戦闘が起きているとは思えない程辺りは静寂に包まれており、かえってそれが不気味さを増す。

そんな中をシーナは物怖じせず大部屋へと足を踏み入れた瞬間、そこにあった光景を見て固まった。

 

(こいつはひでぇ…)

 

大部屋の奥。

そこには多くの遺体…アイソマーらの死体が転がっていた。

衰弱して息絶えたのか?或いはパラデウス兵に見つかってしまい殺されてしまったのか?

否、どれも違った。

 

(全員、首をすっ飛ばされてやがる…)

 

そう…この部屋にいたアイソマーらは全員、鋭利なもので首を刎ねられていた。

床には彼女らの頭が転がっており、頭と死体から流れ出た血が床を赤く染め上げていた。

余りにも惨すぎる光景。最早常人がやるような行いではない。

シャドウも元から言葉を発さない為に静かだが、グリフォンは言葉が出てこなかった。

ただ彼女は違った。

 

「……して?」

 

「…ネェちゃん?」

 

何かを呟き出し始めたシーナにグリフォンが訝しげに声をかける。

 

「どうしてなの?」

 

下ろされていた顔があげられる。彼女の頬には瞳から流れる涙が伝っていた。

 

「彼女達は沢山苦しんできた。苦しんできた筈なのに…何でこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?彼女達が自由に生きる権利なんてない事なの?」

 

涙を流しながら、シーナは胸に抑えた。

痛いのだ。心が余りにも痛くて仕方ないのだ。

顔も名も知らないアイソマーらの死に対し涙を流せるのがシーナ・ナギサという人物なのだろう。

だからこそ、彼女の中にある炎はかつて復讐を掲げた時に燃え盛った炎を何倍にも上回るものへと変貌した。

怒りは悲しみへ。

そして悲しみから再び怒りへと戻ったその時、胸に吊り下げたクイックシルバーが微かに振動した。

 

「ゲリュオン…?」

 

クイックシルバーへと変身した悪魔の名を口にするシーナ。

 

(泣く私に怒っているの…?)

 

胸の中で問う。

しかしクイックシルバーはそうではないと言わんばかりに、二回震えた。

では何を伝えようとしているのか。

それが何故か理解できたシーナは尋ねる。

 

(許せないんだね…あの娘たちを殺した敵が、殺そうとする敵が)

 

確信を持ちながらも確認するように尋ねるシーナ。

対するクイックシルバーは一回だけ震えた。

魔界の戦馬は敵に怒っているのだと。

怒りでどうにかなりそうな程に怒っているのだ、とシーナへと伝えた。

その意を汲み取ったシーナは、魔界の戦馬へと問いかける。

 

(お願い…力を貸して…!!)

 

これ以上誰も死なせない為、彼女は更なる力を魔界の戦馬に乞うた。

それに応じたのかクイックシルバーの秒針が回り出し、シーナの体に光が集まり出した。

それが魔力である事に気付いたのかシャドウは驚いたようにシーナへと顔を向け、グリフォンはマジかよと口にしながら、シーナへと叫ぶ。

 

「おい、ネェちゃん!ネェちゃんってば!だー!くそっ!聞こえちゃいねぇ!!ネコちゃん、備えな!!下手したら吹っ飛ぶぞ!!」

 

グリフォンがシャドウに備えるように言った瞬間、シーナを中心にナニカが放たれた。

部屋を突き抜け、高層ビルを突き抜け、それは世界を駆け巡る。

そして次の瞬間、世界は一瞬だけ白黒へと彩られ、再び元の色へと戻る。

戦場に居た誰しもがこれで何度目になるのだろうかと思える現象に驚き、知識を有る敵すらも突然の現象に驚きを覚えた。

何故なら自身も含め映るものが全てが一瞬だけ、まるで時を緩やかにされたかのように遅くなったからだ。

それが一体何なのか分かるはずもなく、攻撃を再開する。

だがもし──その一瞬の現象が理解できていたのであればこの場に現れた敵は速やかに撤退すべきだったかも知れない。

"時"を操るという事はどれ程強力であるかを。

 

「ネ、ネェちゃん…?」

 

突然の事には驚きながらもグリフォンはその場で立ち尽くす彼女へと声をかける。

先ほどまで黒かった髪はまるで色素が抜かれた様に白く染まりつつも水色のグラデーションが入っており、黒い瞳も水色へと変色。サーヴァントも白く染まり、一人の少女の体からは妖気にも似た青いオーラが放たれていた。

 

「おい、ネェちゃん…?大丈夫かよ…?」

 

「…うん、大丈夫だよ。少しびっくりしてただけ」

 

グリフォンにそう伝え、部屋の出口へとシーナは歩き出す。

その後ろ姿を見つめながらもついていくグリフォンは察する。

 

(トリガー?いや…それに近い奴か。でも…こりゃとんでもねぇのが来たな。敵を片っ端から止める気じゃね?)

 

俺らの出番あんのかと愚痴りながらもグリフォンはシーナの後に続く。

全ての敵を黙らせる為、時を操る少女が動き出した。




という訳で…。

ギルヴァから抜け出し蒼がアナさんの中へと侵入。
ギルヴァから持ってきた魔力を用いてイグナイトトリガーならぬデビルトリガーを発動。

そしてシーナちゃんがぶちギレました。
クイックシルバーと呼応し、トリガーに近いものを発動。
アイソマー及び味方を狙う敵を問答無用でクイックシルバーの能力で動きを緩やかにさせます。
緩やかといってもそのレベルはまるで止まっているかのように見えるレベルで、イレギュラーや突然現れた敵を狙いに向かいます。
じゃあシーナちゃんを狙えばいいよねと思いますが…彼女の視界に入る入らない関係なく敵であれば止めにかかります。
つまり動けなくされたくなければ、戦場から離脱しなさいという事です。

何かあの時の…イレギュラー祭り大規模作戦みたくなりそうな予感がして、この様な行動させていただきました。

まぁ…その、主催者様から怒られることがあれば修正いたします。
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