Devils front line   作:白黒モンブラン

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─叫べ。己の内にある怒りを─


Act224-Extra Those who end the nightmare Ⅵ

シーナがクイックシルバーと同調しトリガーに近いものを発動した同時刻。

ルージュとヘルメスと共に行動していたネロは、オートスコアラーと合流した地点から離れた建物…廃れた教会に足を踏み入れていた。

ここに訪れたのは単純明快。アイソマーの反応が確認出来たからだ。

 

「ここに反応があって来た訳だが…」

 

教会の祈りを捧げる場にて、辺りを見渡しながらネロが呟く。

そこにあるのは破損した長椅子や神様を模した像だけで肝心のアイソマーらの姿は確認できない。

機器のミスか?と口にするネロにある方向を見つめていたヘルメスが答える。

 

「そうではなさそうだぞ」

 

「あ?」

 

ヘルメスが顎を使い、ある方向を指す。

彼女が指した方向へと視線を向けるネロ。

祈りを捧げる場所とは真反対に位置する場所。窓すらなく明かりになるものすらない部屋の隅…薄暗い場所に、彼女らの姿。

お互いに身を寄せ合い、この場に現れたネロとヘルメスを見つめるその目は恐怖が含まれていた。

そんな彼女らを見て、どうしたもんかとネロは頭をガシガシ掻きながら悩んだ。

 

(ビビらせようって訳じゃねぇ…けど俺やこいつが近寄った所で、ややこしくなるだけだしなぁ…)

 

品行方正かどうかと言われたら、正直なところ怪しいと思われてもおかしくないネロとヘルメス。

本人らにその気はないのだが、こうも怯えられたら成す術がない。

かと言って放置できるはずもないのでネロが頭を悩ませるのは無理がないと言える。

 

「ふん…。悩むほどでもないだろ。私が話をつけてくる」

 

そんな彼女にヘルメスが鼻をならし、歩き出そうとする。

だがネロが左腕を伸ばし、ヘルメスを止める。

 

「お前じゃ三秒で終わりだ。すっこんでろ」

 

「ならお前が行くか?私の予想なら一秒で終わりだ。喜べ、記録更新するぞ?」

 

「うるせぇな。…ったく、こんな下らねぇ喧嘩している場合じゃねぇんだよ…」

 

戦闘中であり、シーナからの命令を守らなくてはいけない。

軽くため息をつきながら仕方ないと呟くネロ。

彼女が一歩踏み出そうとした時、二人のやり取りを見ていて見かねたのかルージュがその横を過ぎた。

コキュートス・プレリュードは今の所、停止させている為、アイソマーらに影響を及ぼす事はない。

愛用する大鎌も異空間に収めている為、不安を与える事もない。

ゆっくりと歩み寄り、アイソマーらの前で止まるとルージュは身をかがめ、視線を合わせた。

そしてそっと彼女は目の前にいるアイソマーの頭に手をのせた。

乗せられた手に目を丸くする少女にルージュは優しく微笑む。

 

「…大丈夫。私たちは貴女たちに危害を与える事はしません」

 

「ホント…?」

 

「はい。…あの二人は見た目が少々怖いですが、とても良い方々ですから。驚かせてごめんなさい」

 

聞こえてんぞ…とネロが呟く声がルージュの耳に届くも、彼女はあえてそれを無視。

アイソマーの頭を撫でながら、周りを見た。

ここに彼女らは見るだけでも三十人は居る。正確に数えれば、その数は五十人に上るだろう。

流石に彼女らを連れて、戦場を移動するのは無理がある。

下手をすれば、パラデウス兵やアブノーマルに見つかり彼女らを死なせてしまう可能性が大いにある。

 

(…ヨルムンガンドに通信を繋ぐ必要がありますね。あの巨体なら五十人は乗せられるでしょうし)

 

ヨルムンガンドに通信を繋ぐため、立ち上がるルージュ。

その時、アイソマーの一人がルージュの羽織る白のケープコートの裾をつかんだ。

何かあったのだろうかと思いながらその者へと視線を向けるルージュ。

 

「…お父様の部隊が私たちを殺そうとしているのって本当…?」

 

「…!」

 

お父様の部隊。

そのお父様が誰なのかはルージュには分からないが、部隊が何なのかは分かる。

 

「…もしかして、殺されそうになって此処に隠れていて…?」

 

その問いに少女は小さくうなずいた。

対するルージュは唇を噛み締め、どう答えるべきかと思った時、ネロが歩み寄り口を開いた。

 

「現実を突きつけんのは気が引けるが…。…お父様の部隊ってやつはお前らを殺そうとしてる」

 

「…な、んで…?どうして…?」

 

「…細かい事は分かんねぇ。ただ俺らはお父様の部隊にお前らを殺させない為に助けに来た。それだけは信じてくれねぇか?」

 

信じていたものに裏切られる。

そのショックは測れるものではないだろう。

狼狽え、目を見開いたまま動かなくなるアイソマーらを見てネロは言葉を続けた。

アイソマーという彼女らが生まれた経緯を思い出しながら。

 

「依頼主から聞いた。今の今まで嫌になるくらい苦しい思いしてきたんだってな」

 

「…」

 

「そりゃ死にたくなる理由ってのも分かるさ…。それにこうも思ってねぇか?苦しい思いばっかりするんだったらこの命なんていらねぇって」

 

無理もねぇさと前置きを言葉にしながら、ネロは右腕に装着したデビルブレイカー『ブリッツ』を外した。

そして現れるは異形の腕…悪魔の腕『デビルブリンガー』だ。

突然現れたその腕にアイソマーらは目を見開くもネロは気にする様子はない。

 

「確かに今は苦しいさ。けどお前ら苦しいしか知らねぇだろ?だったらこんな所からオサラバして、楽しい事や幸せな事を覚えて、旨いメシでも食って生きていこうじゃねぇか」

 

デビルブリンガーを差し出すネロ。

差し出されたソレをアイソマーは迷い、周りと視線を交わす。

周りが頷くと、彼女もまた頷き意を決したかのようにネロの手を握った。

此処から出ていく。

その意思を確かに受け取ったネロは笑みを浮かべ、彼女を引き上げる。

 

「此処から出ていくのに、ちと時間がかかるがそれでもいいか?」

 

「…少しだけ怖いけど…でも大丈夫」

 

「そうこなくちゃな。んじゃ、そこで待ってな。──お前らを狙うゴミを掃除してくるからよ」

 

教会に近づいてきている敵の気配はデビルブリンガーのおかげでしっかりと気付いていた。

この者達をこんな場所から脱出させる為には、最初の障害を取り除かないと事は始まらないだろう。

ブリッツを専用のホルダーに収め、ネロは敵が近づいてきている方向へと歩き出す。

 

「ルージュ、そいつらを頼むぜ。俺とヘルメスでゴミ掃除をしてくる」

 

「了解です」

 

アイソマーをルージュに任せると、ネロは踵を返し歩き出す。

敵が迫ってきていることはヘルメスも気付いていたらしく、腰に提げた二挺のブレードショットガン『ファル・バイル』ではなく、もう一つのホルスターに収めた今回新しく装備してきた複合火器『フェアダムニス』を引き抜いた。

その形状はヘルメスがまだアルケミストと呼ばれていた際に愛用していた複合火器に酷似しているが、光学から実弾式になっているなど、変更点は多い。

上下から挟み込むようにして供えられた頑丈かつ鋭利な刀身は整流カバーとしての側面を持つ。

そして二つの刀身の間には高い火力を誇る実弾式のマシンガンが備えられており、ヘルメスがソルシエールに注文した兵器である。

 

「話はついたか?」

 

「ああ。後はゴミ掃除だけだ」

 

ネロが答え、ヘルメスが背を預けていた壁から離れたその時。

ステンドグラスを突き破って、パラデウス兵がなだれ込んできた。

ドッペルゾルドナーやグラディエーター、ウーランの姿はなさそうだが、その代わりというべき多数のストレツィとガンナー、ロデレオで構成されていた。

数で圧倒し、そして高い火力を有する敵らにたった二人で立ち向かうのは無謀もいい所だろう。

 

「よくもまぁ…こんなにも粗大ゴミを揃えたものだ。業者泣かせにも程があるぞ」

 

「業者なんかいらねぇよ。必要なのは地獄の底で待っている悪魔だけさ」

 

しかしこれだけの敵を前にして、二人には焦りもなければ恐怖もなかった。

それどころか互いに軽口をたたきながら笑みを湛えていた。

戦闘が始まるまで残された時間はごくわずか。ネロが背に背負ったクイーンの柄に手を伸ばそうとした時、ふと何かを思い出したのか、伸ばしていた腕を下ろし何故か通信機を繋ぎ始めた。

 

「あー…ブラウ・ローゼのネロだ。えっと、リヴァイバルって言ったか?悪いが応答してくれねぇか?」

 

『聞こえている。何だ?』

 

突然として通信機を繋いだネロが話しかけたのは今回の作戦の依頼主であるリヴァイバルであった。

何故彼に通信を繋ぎ始めたのか、隣に立っていたヘルメスも理解出来なかった。

ただぶつかり合うまで五秒前だというのに、ネロの行いによって五秒どころでなくなったのが唯一理解できることであろう。

 

「忙しい状況だと思うが質問に答えてくれねぇか?」

 

『手短に頼む』

 

「あいよ。んじゃ聞くぜ。…アイソマーが言うお父様ってのはどうしようもねぇクソ野郎という認識で良いんだよな?」

 

『ああ。奴の行い、その他諸々を含めればどうしようないクソ野郎の言葉では片付けられんほどの外道だ。それどころか自らの保身の為に彼女らを殺そうとしている。…今の状況みたいにな』

 

「成る程な。…それじゃあそっちがそのお父様に会う事があれば伝えてくれねぇか?アイソマー全員かどうかは知らねぇが、一部からお父様に対しての有り難いお言葉ってやつがあるんでね」

 

『…聞こう』

 

伝えてくれる事を了承したリヴァイバルの声にネロはニヤリと笑みを浮かべた。

右手を開いたり閉じたりを繰り返しながらネロは歩き出し始める。

同時に彼女は己の中にある銃爪に指をかけ始めていた。

平静を保っているネロではあるが、内心ではキレていた。

なんなら開戦してすぐにトリガーを引いて大暴れしてやろうと思っていたほどに。

しかしそれを行動に起こさなかったのは、怒りが少しずつ収まり冷静になれた事にあった。

相手の行いはどう考えても許せるはずもない。

ましてや生み出しておきながら、失敗作と断じ、育児を放棄して彼女らをこんなところに放置しており、挙句の果てには自身の保身の為に、殺そうとしている。

ただ怒りに任せて暴れるのは何か違う気がしてならない。

そこで思いついたのがお父様と言う誰かに向かって一言伝えてから、暴れる。

怒りや何やらをそれに全てぶち込めば、スッキリするというもの。

だからこそネロはわざわざリヴァイバルに通信を繋いでまで、伝言を頼もうとしていたのだ。

 

「良いか?一回しか言わねぇからよく聞けよ」

 

右腕に格納した魔剣『狩人』から流れ出る魔力を彼女の体へと流れていく。

やがてそれは形を作り始め、オーラとなって具現化しその背には何かが現れようとし始めていた。

 

(ああ、そうさ。一回しか言わねぇ。溜まりに溜まった一言だからな)

 

右手の"中指"を立てられる。

 

(やる事やった挙句、育児放棄?そんでもってこれってか?ざけんじゃねぇぞ…この──)

 

悪魔の右腕たるデビルブリンガーを天へと向かってのばす。

そして溜まりに溜まった一言をネロは大きく叫んだ。

 

Fu○k y○u!(クソ親父が!)

 

それが教会全体に響き渡った時、ネロを中心に魔力の暴風が勢いよく広がった。

爆発に似たそれが敵を吹き飛ばし、態勢が崩れた所にネロはクイーンを引き抜き突撃。

その背にかつての相棒であったハイエンドモデル『狩人』が魔人化したようなソレを引き連れ、ネロはパラデウス兵と戦闘を開始。

 

『く、クソ親父…?』

 

リヴァイバルの困惑した声が響くもネロはあえて無視。

その代わりにヘルメスが対応に当たる。

 

「良いじゃないか。貴様がパラデウスに居た時はお父様と呼ばれていた訳ではないのだろう?」

 

『……私が属していた事を気付いていたのか?』

 

「少し考えたら分かる事だ。やけに事情に詳しい点を考えれば、な。…それにこの作戦はお前にとっては、贖罪を含めているのだろう?」

 

『…』

 

「ならば彼女らにどう呼ばれようが、殴られようが仕方ないと思うがいい。むしろそれぐらいの覚悟ぐらいは有していると私は思っているがな。…何故お前が彼女らを見捨てる様な事になったのかは聞かん。こちらもそちらの事は良く知らんからな」

 

S10地区前線基地のメンバーはそうだが、リヴァイバルという人物を知ったのは今回が初なのだ。

相手の事情を知らないが故に物申す事が出来ない。

同時にリヴァイバルの相手をしているヘルメス含め、S10地区前線基地のメンバー全員は深く追求するつもりなど全くなかった。

この世界で生きている以上、誰しもが一つや二つ、何かを抱えて生きているのだ。

依頼主もまたその一人なんだろうという事は誰しもが気付いている事であった。

 

「話は終わりだ。こちらも忙しいのでな」

 

反応を待つことなく通信を切るヘルメス。

フェアダムニスを構えると彼女もまたパラデウス兵へと突撃開始。

未だ終わりの兆しを見えない戦場に、銃爪が引いた彼女とかつて錬金術士と呼ばれた彼女は暴れ始めるのであった。




色々あれですが…ネロもデビルトリガー発動です。
本来であればもっと書こうかと思いましたが、こちらの体力がもたないで…。
うちの面々の事で知りたい事があればいつでも言ってくださいな~

次回はブレイク&シリエジオらかな?(未定)

では次回ノシ
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