Devils front line   作:白黒モンブラン

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─影に潜むもの─

─それは歌を封じ、その力を曲へと変えた悪魔─


Act231 Siren

『成る程な。それらの類に対する理解はそちらと比べると浅い方だが、確かにその『力』とやらは容易く渡してもいい代物とは言えんな』

 

「はい。普段であればマギーさんがそちらに連絡する形となっていたのですが、今回はモノがモノという訳ですのでこの基地の指揮官として私が連絡させて頂いた次第です」

 

S10地区前線基地内部、作戦指揮を行う部屋にてシーナはS09P地区の早期警戒基地指揮官のキャロルへと連絡を取っていた。

その目的は、マギーがルージュとギルヴァに依頼した配達品に関しての情報及び対象であるアナとRFBの両名に模擬戦を依頼すること。

普段であれば依頼主であるマギーが対応するのだが、モノがモノである為に今回ばかりは基地の指揮官であるシーナがこうして連絡を取っている訳である。

 

『最初こそはマギーではなくシーナ指揮官だった事に何かあったのかと思ったが…取り敢えずその話に関しては了解した』

 

「という事は…」

 

『ああ、模擬戦の申し出を受けよう。二人にはこちらから伝えておくが直ぐにとは行かん。こちらもある作戦に出なくてはならないのでな』

 

「遅くなっても構いません。そちらの都合が良い時にご一報いただければ二人を向かわせます。もしかすれば多少人数が増えるかも知れませんが」

 

『分かった。予定の空き具合の確認が出来次第連絡を入れる。当日を楽しみにしているぞ』

 

「こちらこそ。お忙しいところ対応していただきありがとうございました。では失礼します」

 

それを最後に向こうとの通信が終了し画面が元の画面へと戻る。

完全に通信が終えたのを確認するとシーナは傍に置いてあった椅子に腰かけると同時に軽く息を吐いた。

何処か疲れを感じさせるようなそれ。

そこにサーヴァントに身を潜めていたグリフォンが飛び出し、シーナへと声をかける。

 

「随分とお疲れ気味じゃん、ネェちゃん。もうそういう歳ってヤツ?」

 

「次そんな事言ったら45に頼んで焼いてもらうらからね」

 

「おっと、45ネェちゃんのまな板で焼かれるのは勘弁」

 

くくっと笑みにも似た鳴き声を嘴から漏らすグリフォンを見てシーナは全くと呆れた様な表情を浮かべながら、先ほどグリフォンが言っていた事を思い出す。

彼が言ったように随分と疲れ気味なのは当たっていた。

タリンでの大規模作戦があったからと言えば疲弊するのも当然なのだが、他の基地と協力し作戦を行ったのは今回が初めてではなく、疲労感を覚える事は余りなかった。

だが今回に限ってどういう訳かシーナはかなりの疲労を感じ取っていた。

今まで感じてこなかった疲れが一気にやってきた様な感覚に襲われる。

言葉にするのであれば、それが一番正しかった。

 

「まぁ45ネェちゃんにはこの事を黙ってて貰うとして…ネェちゃん、一つ聞いていいか?」

 

「なに?」

 

「最近、俺やネコちゃん、ナイトメア、それとあの馬以外の悪魔を使役したりしたか?」

 

いきなり何を言い出すのか。

グリフォンの台詞を聞きシーナは一番にそれを思った。

タリンでの大規模作戦以降シーナはおろか、S10地区前線基地及び便利屋「デビルメイクライ」の面々は悪魔が関与している作戦に参加していない。

それどころかそんな事件すら発生していない。

そんな事はグリフォンも知っているというのに、何故そんな事を言い出すのか彼女は不思議でならなかった。

しかしあのグリフォンがふざけた様子を潜めて尋ねてくる辺り、何かあるのではと感じたシーナは聞き返したりはせず真面目に答える。

 

「していないよ。最近は外に出てないから。…もしかして何か取り憑いている感じ?」

 

それならば大問題なのだが、グリフォンはその問いに対して首を横に振った。

 

「取り憑いているって言うよりもよぉ…なんつうか、潜んでるってやつ?」

 

「潜んでいる?何で?」

 

「それが分かんねぇんだよ。何かやる気という訳じゃねぇし、それどころかやけに大人しい。引きこもりニート生活でもエンジョイしてんのかも知れねぇけど」

 

「それは違うような…」

 

苦笑交じりに答えるもその頭の中でシーナは思い返していた。

記憶が正しければ、あの作戦以降悪魔が絡む案件に赴いた事すら無ければ、悪魔が絡む案件が発生したという記憶もない。

にも拘わらずグリフォンは自身に潜む悪魔の気配を察知している。

 

(…作戦以降じゃなく、作戦終了以前まで遡って……)

 

幾度となく過去の記憶を辿り、そして名を思い出し、いつ出会ったか記憶の棚から引っ張り出していく。

それを繰り返すこと数分経った時、ハッとした様子でシーナは気づかぬ内に下げていた頭を起こした。

居た。確かに居た。

それは確かにシーナの記憶の中にしっかりと存在していた。

悪魔だと思い出せなかったのは、それが()()姿()をしていたからだ。

 

「そこに居るんだね」

 

座っていた椅子から立ち上がるとシーナは地面に映る自身の影に向かって話しかける。

すると彼女を映し出していた影はまるで生命を与えられたかのように姿を変え始め、そして影の中からゆっくりと姿を現した。

すらりと伸びた美しい黒髪に水色のメッシュ。

黒と水色で彩られたドレスをその身に纏い、手には一風変わったバイオリンを握った見目麗しき女性。

あの作戦…タリンでの大規模作戦にて突如姿を現しバイオリンを奏でながら裏で味方を支え、最終局面においては姿を見せ、戦ってくれた悪魔。

 

「久しぶりだね、セイレーン」

 

「ええ…。ご久しぶりでございます」

 

本当に悪魔なのかと思いたくなる程、セイレーンと呼ばれた悪魔はシーナに向かって美しい笑みを見せるのであった。

だがここに居るのはシーナとセイレーンだけではない。セイレーンが姿を現した辺りから、何故か無口になってしまっているグリフォンがいる。

それに気づいたシーナが肩に留まったまま微動だにしないグリフォンへと声をかけようとした矢先、グリフォンは声を漏らす。

 

「あー…やっぱりか。どおりで感じた事のある気配な訳だぜ」

 

「貴方は気づいていたのですね、グリフォン」

 

「何となくだけどな」

 

そんなやり取りを繰り広げる一羽と一人。

お互いにして魔界出身というだけあって顔見知りであるのだろう。

だが流石に久しぶりに会って、はい終わりという訳にはいかない。

それを分かっていたからこそ、シーナがセイレーンへと尋ねる。

 

「いつから私の影の中に?」

 

今のシーナにとっては一番に聞きたかった事だった。

あの作戦にて手助けしてもらったと言えど、力を貸してくれているグリフォンやシャドウ、ナイトメアにゲリュオン、ダンタリオン、マキャ・ハヴェリの様な善意があるとも言えない。

もしかすれば何らかの狙いがあるかもしれない。

それを危惧しているからこそか、シーナの手はホルスターに収めてある愛銃のリボルバー『Painekiller』のグリップに掛けられている。

正直な所、普通の銃弾でどうにかなるのか言われば否定すべきなのだが、現在彼女の愛銃に装填にされているのはあのゲリュオンの力が備わった弾丸が装填されていた。

一発でも当てさえすれば、この場から逃げ出す事は出来るだろうがシーナからすればあまり取りたくない策と言えた。

 

「…」

 

「…」

 

両者の間を沈黙が包む。

無音の空間にカチリと銃の撃鉄が起こされる音が静かに響き渡った時、セイレーンがそっと手を上げ警戒心を示すシーナを制する。

 

「あの戦い以降です。行く当てもないので、勝手に潜ませて頂きました」

 

「潜んだのは何らかの害をもたらす為?」

 

「まさか。そんな気など一ミリたりともありません。ただついていこうと思っただけに過ぎません。…必要とあらば、自らこの命を差し出しても構いません」

 

そう微笑むセイレーンだがシーナは警戒を緩めない。

ただじっとセイレーンの瞳を見つめるのみ。

だがそれも数分間で終わってしまい、シーナは静かに銃の持ち手から手を離した。

 

「うん…嘘は言っていない感じだね。ごめんなさい、疑ったりして」

 

「いえ、気にしてはいません。寧ろ疑うのも無理もないかと。この身は人の姿を模っていたとしても悪魔という事実には変わりなし。信用を得る事が簡単ではない事は分かっていました」

 

ですが、と前置きを口にするセイレーン。

そして手に持っていたバイオリンは消し、ドレスの裾をつまむと軽く一礼した。

 

「信頼していただけるのであれば、この力を貴女の為に使いましょう。我が名、セイレーンの名に誓って」

 

かくしてセイレーンがこのS10地区前線基地の指揮官であるシーナの力として、この基地に居座る事になる。

後にセイレーンがここに居座る事になったのを基地全員に説明しなくてはならなくなるのだが、今のシーナがそれに気づくのであればこの後の事であった。




お久しぶりです。
という訳であの作戦にて手助けしてくれたセイレーンがシーナの力として、今後姿を見せます。

あと最初の部分は前回の話を向こうの指揮官さんに伝えた場面を描かせて貰いました。
まぁ向こうはコラボ作戦に参加してますので…新しい力は云々は追々になるかな?

ではでは次回ノシ
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