Devils front line   作:白黒モンブラン

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─覚悟証明前のちょっとした戯れ─


Act233 Proof of preparedness Ⅱ

ギルヴァらがS09P地区にある早期警戒基地に到着した時は既に昼時を過ぎた辺りであった。

模擬戦の為に訪れるという事は既にギルヴァらを知っている者らに知れ渡っていたのだろう。マギーが運転するR.ガードの追加パーツとその他諸々を積んだトレーラーが基地内に入ると手早く哨戒任務から帰還してきたランページゴーストの隊長を務めるノア、早期警戒基地の指揮官であるキャロルと副官である57、そして最近になって基地に来た少女『レイ』の計四人が訪れた三人を出迎えた。

三人がトレーラーから降りるとマギーが代表となって、指揮官であるキャロルと歩み寄る。

 

「此度は急な申し出に対し受け入れてくれた事に感謝いたします、キャロル指揮官」

 

「気にしないでくれ。事情はシーナ指揮官から聞いているからな。…それで例の『モノ』はトレーラーの荷台に?」

 

その問いと共にキャロルの視線はマギー達が乗って来たトレーラーの荷台へと向けられた。

例の『モノ』とはRFBに渡す事になるかもしれないR.ガード用の追加パーツを乗せている。

だが普通の追加パーツという訳ではなく、悪魔が姿を変え道具へと変えた魔具がそのまま使われているというのが一番目を引くだろう。

その件に関してはキャロルもシーナから聞かされていた。

 

「ええ。最もお渡しなるかどうかは分かりませんが…」

 

「分かっている。だが一つだけ言わせてもらおう」

 

彼女の視線がトレーラーの荷台からマギーの後ろで控えるギルヴァとルージュへと向けられる。

何処か凄味を感じさせるその視線に対しギルヴァとルージュは真向から受け止める。

そして二人は分かっていた。彼女の口から次に発せられる言葉を。

 

「あいつらを甘く見るなよ…?」

 

辺りが静まり返る。

彼女らしくないその台詞に57やノア、レイが目を丸くする中、ルージュは笑みを浮かべた。

想像していた通りの言葉が出たからもあるが、キャロルからのその言葉がちょっとした戯れの誘いである事を受け取ったからでもあった。

 

「何を言うかと思えば…。最初から私たちは二人を甘くなど見ていませんよ」

 

寧ろ…、と前置きを呟きつつ目を伏せ、マギーの前へと出るルージュ。

そして伏せていた目をゆっくりと開かれると同時に彼女は戯れのお誘いに対する礼を示した。

 

「手加減など不要。私たち二人をそう簡単に破れる相手だと思わないでいただきたい」

 

赤き瞳はどことなく輝きを見せ、誰であろうと反らす事の出来ない鋭い眼光へと化したそれをキャロルへとぶつけながらも微笑むその様相はある意味ルージュらしからぬと言えよう。

だがそれがちょっとした戯れである事は誘ってきた本人が一番理解していたのか、小さく笑みを浮かべたと同時にルージュも放っていた殺気を収め、キャロルへと問う。

 

「戯れにしては少しやり過ぎましたか?」

 

「どうだろうな。…最も作戦でオートスコアラーの面々を手助けしてくれているお前が乗って来たのは意外だったが」

 

「こうして話す機会などそうありませんからね。折角だったので乗らせていただきました」

 

「にしては、目が本気だったのは気にせいか?」

 

「さぁ?どう受け取ったかは貴女次第ですよ。キャロル指揮官」

 

軽く肩を竦めルージュはそれ以上の事は言わなかった。

対するキャロルも軽く笑みを浮かべるだけで、どうしたらいいのかと言った空気が周りを包む。

これでは無駄に時間が過ぎてしまうだけだと感じたギルヴァが軽く呆れた様なため息を付くと、話を変える為にノアへと話しかける。

 

「ノア、隣に居るそいつは新入りか?」

 

「え?あ、ああ、そうだ。名前はレイって言ってな。ランページゴースト所属する事になったから、今後も顔を合わせるだろうぜ」

 

ノアから紹介を受けてどうもどうも~と手を振るレイ。

軽い挨拶を終えると彼女の目は二人を興味深そうに見つめていた。

どうしたんだろうかと首を傾げるルージュであったが、隣で立っていたギルヴァが尋ねた。

 

「俺たちの事は聞いているみたいだな」

 

「えっと、ギルヴァであってるよね?うん、ノアから簡単にだけど聞いてる。しかしまぁ…悪魔、ね。E.L.I.Dと見間違えたんじゃないの?」

 

広域性低濃度感染症。

この世界に広がっている汚染 崩壊液コーラップスによって低濃度の被爆で起きる症状。

高濃度の被爆の場合は死に至り、低濃度の被爆の場合、被爆者の姿の変貌する。

正しく「化け物」と言っていい程であり本当の姿が何だったのか分からなくなる程までに変貌する。

そういった意味では見た目が『悪魔』の様だと思い、それを悪魔と見間違えたとしても誰も笑いはしない筈だ。

レイに至ってはこの早期警戒基地に来る以前までは汚染地域でE.L.I.Dを腐る程相手にしてきたのだから、彼女が言う事もあながち間違ってはいないと言えよう。

だがその台詞は間違っていると断言できる。

ギルヴァら、そしてS10地区前線基地と関わりを持った事のある者らはその目でしっかりと見ているのだ。

人知れず存在するソレ、『悪魔』という存在を。

 

「人の姿ですらなかったというのであればE.L.I.Dと見間違えてもおかしくないだろうな」

 

「でしょ?…って、待って。あれとやり合った事あるの?」

 

「ああ。グリフィンと協力関係なる前の話になるが、放浪している時に腕試しがてら危険視されている奴らを幾つか仕留めた。相手にもならなかったが」

 

「…マジで?てか、あの話本当だったんだ。刀一本でアレらとやり合った狂人がいるっていう話は」

 

「お前が言う話が何なのかは知らんが、あれらとやり合ったというのは事実と言っておこう」

 

何処か引き気味になっているレイを放置し、ギルヴァはルージュへと視線を飛ばす。

今のうちに行動しろというその意図を感じ取ったルージュはシーナが作ったチョコチップマフィアが入った箱をキャロルらへと差し出し、57がそれを受け取った。

 

「シーナ指揮官からのお土産です。個数に限りはありますけど良かったらどうぞ」

 

「ありがとう。シーナ指揮官が作るお菓子ってすごく美味しいって聞いてたから、お茶する時が楽しみになってきたわ」

 

「…取り合いにならないでくださいね?」

 

「大丈夫大丈夫。自分の分はちゃんと確保しておくから」

 

先ほどの雰囲気は何処へ消えたのか。和やかの雰囲気が辺りを包む。

ちょっとした挨拶も程々にした後にギルヴァらは早期警戒基地内へと足を踏み入れる。

普段通りであればランページゴーストの二人、アナとRFBにも挨拶するのだが今回は事が事である為かそれは断念し、ギルヴァとルージュは一足先に模擬戦の舞台となる演習場で待機する事に。

二人が来るまでの間、軽いウォーミングアップを済ませていく最中、ギルヴァの中にいる蒼が傍に居る同じく精神のみの存在であるエラブルへと話しかける。

 

―エラブル。いきなりで悪いが少しおつかいを頼まれてくれねぇか?

 

―おつかいですか?えっと…難しいのは無理ですよ?

 

―安心しな。大して難しくはねぇさ。ただアナって言う嬢ちゃんにイグナイトトリガー一回分の魔力を渡して欲しいだけさ

 

―魔力をですか?それだけならいいですけど…でもそれだけなら蒼さんが行った方がいいんじゃ?

 

―そうしたいのは山々なんだがね。俺が行くとどうも余計な手助けをしそうなんでね。そうなると平等とは言えねぇだろ?

 

蒼の言い分は最も言えた。

それどころか相手が顔見知りである為か必ずと言っていいほど余計な手助けとしてしまうのは蒼自身が一番理解していた。

だからこそ蒼はエラブルに自身の代わりに魔力を渡すように頼み込んだのだ。

 

―アナって言う嬢ちゃんが誰なのかはちゃんと教える。悪いが頼まれてくれねぇか?

 

―そういうでしたら…分かりました。

 

そう言われ軽く悩みエラブルであるが、それだけであるのであればと思い蒼の頼み事を了承。

ギルヴァの許可を得て、エラブルは外へと飛び出すとアナの元へ向かっていった。

彼女が外へと飛び出し、演習場に二人の姿が見受けられない中ギルヴァは無銘を杖の様にして立てながらその時が来るのを静かに待つことにした。

その時はまだ来ない事を理解しながら残り僅かな時間を楽しむ事にするのであった。




遅くなり申し訳ございません。

今回は模擬戦前の軽い戯れ編です。
次回からは模擬戦【覚悟証明】へと突入いたします。

では次回ノシ
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