Devils front line   作:白黒モンブラン

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―さぁ始めよう─

─最高に刺激的な戦いを!─


Act234 Proof of preparedness Ⅲ

S09P地区早期警戒基地内にある演習場はイグナイトトリガーを発動させたアナから発せられる魔力が渦巻く場と化していた。

それであって言葉すら発するのを禁じられているのではないかとつい思ってしまいかねない程の緊迫感溢れる状況にも関わらずギルヴァはそれがどうした?と言わんばかりに平然としていた。

だがルージュはそうではなく何故か体が震えていた。

イグナイトトリガーを発動させ、更には己と向き合ったことで覚醒したアナを見て恐れているのか?

或いは勝つつもりで来ており、既に覚悟完了を決めているRFBを見て恐れているのか?

否、そのどちらでもない。

 

「全身全霊を以ってぶつかる、そして勝たせてもらうつもりでいる…それは大変結構。寧ろそう来てもらわなければ、今日という日に備えていた意味がないので」

 

高ぶる高揚感。止まらない震え。そこから結びつくはただ一つ。

武者震い。それこそがルージュを襲う体の震えの正体。

あのルージュが珍しくも武者震いを覚えていた。

それと、と前置きに口にしルージュは手の平から桜色の炎を発火させる。

 

「気を抜いていると─」

 

「っ!!」

 

ルージュが何かする気だといち早く感づくアナ。

咄嗟に動こうとしたがそれは間に合わず、揺らめく炎を宿したルージュの腕が勢いよく振り下ろされる。

その瞬間、大爆発ともいえる爆音と共に巨大な桜色の炎が炸裂。

演習場を包み込んでいたイグナイトトリガーを発動させたアナから放たれる魔力の渦が跡形もなく焼きつくされ、まるで舞い散る桜の花弁の様な火の粉が静かに降り注いだ。

 

「大怪我どころでは済まないので。死ぬ気でかかってきてください」

 

その言葉と同時にルージュから濃密な殺気が放たれる。

濃密な殺気は観戦室で戦いの様子を見ていたキャロルらとルージュが来ている事を何処かで知ったのか観戦室にきていたオートスコアラーの面々にまで届いており、つい得物を引き抜きそうになるも何とか抑え込みルージュを見つめていたキャロルが口を開く。

 

「凄まじい殺気だな…。あの大規模作戦やタリンでの救出作戦でオートスコアラーを援護してくれたルージュの強さはスユーフやトゥーマーンから聞いていたが…」

 

「今回ばかりは訳が違うってやつだろうな…。あんな雰囲気を纏うルージュは初めて見た」

 

キャロルの呟きが聞こえていたのだろう。隣で立っていたノアが答える。

オートスコアラー程とは言えずともノアもまたルージュの強さを知る一人。

だからか、今のルージュを見て軽く信じられないといった表情を浮かべている。

 

「甘く見るなとは言ったのが…ルージュがああだと、この戦いの結末が読めなくなった。それに─」

 

「…ギルヴァがどう出るか、でしょ?」

 

キャロルの台詞の先を読んでいたのか、副官の57が問う。

その問いにキャロルは小さく頷き、視線をギルヴァらがいる室内へと向ける。

魔力、殺気、沈黙にそれら三つに包まれる中、マギーは神妙な面持ちでイグナイトトリガーを発動させたアナとRFBへと視線を向けると内心であるが二人へと言葉を投げかける。

 

(本来であればすぐにもでもお渡ししたかった。しかし物がモノ…故にこの様な形を強いた事に悔いはありません。…さぁ、見せてください。貴女たち二人の覚悟とやらを)

 

一方、ルージュが好き勝手やっている隣でギルヴァはアナを見つめていた。

 

(この気配は…やはりか)

 

鋭い気配察知を持つギルヴァだからこそ分かるのだろうか。

彼は彼女から感じられるもう一つの変化に気付いていた。当然ながら蒼も気付いており、エラブルに至ってはそれが変化とは気付かずとも、どこか困惑している様子であった。

 

―アナさんって人形…なんですよね?でもこの感じ…

 

―エラブルにも分かる程ってことはこの変化は相当だな。嬢ちゃんがそれに気づいているかは分からんが

 

色々手助けしたり、勝手にやったりなどしてきた蒼であったがここまでの変化するとは彼ですら驚きを覚えずにはいられなかった。

 

(ギルヴァやブレイクが半人半魔。ネロは人形でありながら右腕の影響もあって純粋な戦術人形から半分悪魔の血を流す事になってしまった。明確な名こそが無いが名付けるとしたら半形半魔ってやつだ。今の嬢ちゃんはそれに近いんだろうよ)

 

エラブルに分からぬ様に蒼は笑みを浮かべた。

ギルヴァに頼まれたからでもあるし、強制ではない。

だがこのような形になってしまったのであれば──

 

(こりゃあ俺も参加しねぇとなぁ)

 

蒼は黙ってはいられないのである。

 

 

「さて会話も程々にして…では、やりましょうか」

 

「ええ。…先も言った通り──」

 

絶刀「天羽々斬」を構え直すアナ。

二人を見据えると同時に右目から放出される青き炎を一段と大きく燃え盛った。

 

「"私たち"の全身全霊の技、それらを以って覚悟の証明とさせていただきます」

 

「行くよ!ルージュ!ギルヴァさん!」

 

ガングニールを纏い、その手にR.ガードを構えるRFB。

対するルージュは桜色の炎を両手足に纏わせ、籠手と具足を形成し構える。

 

「私はRFBを、ギルヴァさんはアナさんを」

 

「ああ」

 

頷きギルヴァは無銘の鍔に親指を押し当てた。

微かに響き渡る鯉口を切る音。鞘から僅かにその姿を晒す刀身。

ギルヴァとアナが、ルージュとRFBが一歩踏み出す。

そしてギルヴァとアナが瞬間移動したかのようにその姿を消し、ルージュとRFBが地面を蹴り勢いよく突進した瞬間…

 

「!」

 

「っ!!」

 

宙で無銘と天羽々斬の刃が鋭い音を立てぶつかり、地では城塞並みの堅牢を誇る大盾と炎を纏った拳が真正面からぶつかった。

全力対全力。それら双方が同時にぶつかれば伝わる反動も凄まじい。

それを物語るかのように四人の態勢が僅かに崩れた。

だがその一瞬ですら命取りになる事が分からない四人ではない。

ギルヴァはエアトリックで、アナもまたエアトリックに似た技で地上へと降り立ち、両者は突進。

目に追うのですらやっととも言える速さで激しい剣戟を繰り広げていく。

対するルージュとRFBは違っていた。

 

「っ!」

 

拳による連撃から流れる様に繰り出される足技による数々。

炎を纏いながら放たれる一撃は下級の悪魔であれば間違いなく抵抗する間もなく焼き尽くされるだろう。

ルージュによるそんな驚異的な連撃をRFBはR.ガードを用いて見事に全て受け流していた。

己の身体能力をフルに生かして攻撃を繰り出しても全て受け流されるのみ。

隙を突くのも相手が相手である故にそう簡単に出来るものではない。

 

(…やりづらい!)

 

(受け流すのだけでも反動が伝わってくる…!)

 

だからかルージュは今のRFBに対してやりづらさを感じ取っており、対するRFBもまた中々反撃できずにいる事を感じ取っていた。

 

(しかし…!)

 

(でも…!)

 

両者ともに本気なのだ。苦戦することだって分かっている。

やりづらいから諦める?

受け流すだけで精一杯だから諦める?

 

((負けられない!!))

 

否、この程度で諦めるようであればこの戦いの意味がなくなる。

心の中で自身を鼓舞するかのように叫ぶ両者。その思いを上乗せした拳と盾が凄まじい音を立てぶつかる。

反動によって崩れる態勢も一瞬の出来事。素早く立て直し両者は反撃へと移行。

最速で放たれた右ストレートが勢いよくぶつかり、両者の間で小規模の衝撃波が周囲へと走った。

拮抗する力。お互いに動かない。だが次の攻撃へと素早く映れたのはRFBであった。

押して駄目なら引け。まるでそれを示すかのように後方へとステップを踏み、RFBはルージュの態勢を崩す事に成功。

 

「うおおぉりゃぁあああああああッ!!!!」

 

そしてR.ガードを前面に展開し、地面を削りかねない勢いでRFBはルージュへと突進。

反撃は間に合わない。回避も間に合わない。

姿勢が前のめり状態であるルージュが取るべき最良の手段は防御。

誰しもが態勢を崩している彼女を見てそう思った。

しかしその予想は容易く裏切られる形となる。

 

「ッ!?」

 

最初に気付いたのはRFBだった。

先ほどまで態勢を崩し隙を晒していたルージュがRFBに気付かせる事もなく攻撃の構えを取っていたのだ。

それどころか握りしめた拳にはあの炎が発火している。

 

(まずっ!!)

 

攻撃から即座に防御態勢へと移行し始めるRFB。

飛び出している為、攻撃を受ければ確実に後ろへと飛ばされる。だがそれは甘んじて受けるほかない。

問題はこのわずかな時間で完全な防御態勢へと移行できるのかにある。

 

「遅い」

 

だがそんな僅かな時間でさえ、ルージュからすれば遅すぎるの一言に尽きた。

冷たい一声とは打って変わり、拳を纏う炎が轟々と激しく燃え盛る。

次の瞬間ルージュの姿は消え、一筋の炎がまるで閃光の如く駆け抜けRFBを吹き飛ばした。

しかし寸での所で防御が間に合ったのか、後方へと大きく吹き飛ばされるも何とか受け身を取り、RFBは立ち上がると両手足の装着した籠手と具足から炎を放出するルージュを見つめる。

呼吸を少しも乱す事もなく、構える彼女がそこにいる。

そんな彼女を見て流石はルージュとRFBは内心そう呟き、ニヤリと笑みを浮かべた。

確かに先ほどの一撃は尋常じゃないと思えるほどのスピードと威力を誇っていた。

だがRFBからすれば──

 

「これで終わり?」

 

だからどうした?とその一言に尽きる。

この程度で終わったと思うな。さぁ来いよ。まだ覚悟を証明していないのだぞ?

そんな声なき言葉がRFBからルージュへと向けられる。

 

「いいえ…今のウォーミングアップとでも言っておきましょうか」

 

静かに構えの形を変えるとルージュはニヤリと笑った。

まだやれますね?と挑発的な笑みを向けるとRFBもまた額の汗をぬぐい構えた。

 

「行きますよ、ヒーロー(RFB)?」

 

「来いッ!!!」

 

再び両者を突進し、攻撃と防御の応酬を繰り広げていくルージュとRFB。

ついそちらに目が行きがちになる一方で観戦室にいるノアとレイはギルヴァと相対しているアナへと視線を向けた。

爆炎と破砕音を幾度も響かせるルージュとRFBらと違い、ギルヴァとアナの戦闘は最早目で追う事すら難しく人智を超えているのではないかと言いたくなる程、熾烈を極めていた。

 

「!」

 

「疾ッ!」

 

駆け抜ける黒い影。疾走と共に神速の居合から放たれるは無数の真空刃。

普通であれば回避。しかしアナは回避を取ろうとはせず、逆にギルヴァが得意とする『疾走居合』と似た技を繰り出し、無数の真空刃を生み出すとギルヴァの攻撃を全て弾く。

すれ違い、そして睨み合う両者。

完全に真似てはいないとはいえ、自身が繰り出す技をやってのけたアナを見てギルヴァは小さく笑みを浮かべ、アナは天羽々斬の切っ先をギルヴァへと突きつける。

 

「そう簡単に好き勝手はやらせませんよ?」

 

「面白い」

 

お互いに余裕をかましている様なそんなやり取り。

だがそれも束の間、二人は突進と同時に姿を消す。

そして刃をぶつけ火花を散らし、鍔迫り合いへと持ち込んだと思えば再び離れ技を繰り出していく。

あれは本当に二人がやっているのかと思わず引き攣った笑みを浮かべそうになる観戦室の面々。

だがノアだけが、ギルヴァとアナの戦闘を見てある事に気付いた。

 

「イグナイトトリガーを発動させたアナを相手にしてるってのにデビルトリガーすら発動せず素の状態でやり合うとはな…。ホント、ギルヴァが敵じゃなくて良かったとつくづく思うぜ」

 

「え…ギルヴァって人、あれでマジになってないの?」

 

信じられないといった表情でレイはノアへ問う。

その問いにノアは頷くと口を開いた。

 

「ああ。まだ序の口ってやつだ。使ってる得物もあの無銘っていう刀だけだし、それにあいつだけにしか出来ない技をまだ使ってない。となりゃまだマジになってねぇんだろうよ」

 

「…もしかして手を抜いている?」

 

「どうだろうな。まぁ…本気でやるって話だから手は抜いていないと思うがな…」

 

最早この戦いの結末がどうなってしまうのかとなど誰にも予想すら出来ない。

今彼女らに出来る事はこの戦いを見届ける事。

激闘を繰り広げる四人の戦いは模擬戦が開始して早々に熾烈さを極めていく。

しかしまだ始まったばかり。覚悟を示す戦いはここからが本番なのだから。




まだまだ模擬戦【覚悟証明】は続くよ!

てかRFBとアナさんの戦い方ってこんな感じでいいのかしら…(震え)
あ、ちなみにギルヴァもルージュも自身が愛用する武器を全て持ってきています。

ではでは次回ノシ
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